函館港西、東日本の頂点! 大空との北海道決戦制す

函館港西、東日本の頂点! 大空との北海道決戦制す

7年ぶり4度目の出場で初優勝 薮下芯太が投打で躍動

イニングスコア

◆決 勝

函館港西リトルシニア(北海道)8−5大空リトルシニア(北海道)

函館港西
0032003=8
0010103=5
大空
(函)薮下ー長谷川
(大)小西、武田、深澤、大門ー武田、中村、武田
▽本塁打:薮下(函)、岡本(大)
▽二塁打:岡本、安斉(大)

「先制点を取る」函館港西が三回に試合を動かす

 北海道勢同士による頂上決戦。函館港西・出村隼也監督がポイントの一つに挙げたのが「先制点」だった。

 今大会を通して、先攻から早い段階で主導権を握ることを意識してきた函館港西。初戦から先制する展開をつくっており、決勝でもその形を再現した。

「この大会では先制点を取れたことが大きかった。先攻だったら絶対に先に点を取ろうという流れでやってきたので、決勝でも先制できたことで、うちのペースに持っていけたかなと思います」

 両チーム無得点で迎えた三回、函館港西打線がつながった。相手守備の乱れも絡んだ好機を逃さず、一挙3点を先制。続く四回にも2点を加え、5-1とリードを広げた。

 出村監督が選手たちに求め続けてきたのは、結果だけではなく「得点するための形」を何度つくれるかだった。

「点が取れるか取れないかは相手もあること。まずは自分たちの攻めの形をちゃんとつくろう。それを7回の中で何回できるかの勝負だよ、とずっと話してきました」

 その言葉通り、函館港西は好機を確実に得点へ結びつけていった。

ベンチ前の函館港西
ベンチ前の函館港西

「アウトを一つ使わず進める」走力強化が実を結ぶ

 今大会の函館港西を語る上で欠かせないのが、昨秋から力を入れてきた「走る力」だ。

 昨年11月頃から、走りに特化した外部指導を取り入れた。野球選手が速く走るための体の使い方やトレーニング、走塁技術まで徹底して学び、春先のオープン戦でも指導を受けたという。

 出村監督は、その成果をこう振り返る。

「3年生が本当に地道に、8カ月、10カ月とやってきました。足が速くなっただけじゃなく、投げることや打つことにも効果が出た。目で見ても分かるくらい変わった選手もいました」

 これまでなら犠打で一つのアウトを使って走者を進めていた場面でも、自らの足で次の塁を奪えればアウトを増やさず好機を拡大できる。その考えがチームに浸透し、攻撃の選択肢を広げた。

「バントならアウトを一つ取られて進める。でも走れれば、アウトを取られずに進める。子どもたちが一生懸命取り組んでくれたことが、今大会で得点を多く取れたことにもつながったと思います」

 ただし、走るだけではない。決勝では状況に応じてバントも使いながら、勝利のために必要な一つの塁、一つのアウトを積み重ねた。

整列時の函館港西リトルシニア
整列時の函館港西リトルシニア

薮下、決勝を託され「準決勝が終わった時から気持ちを入れた」

 その攻撃を支えたのが、先発・薮下芯太だった。

 2回戦では先発したものの、自身が納得できる投球ではなかったという。それだけに、チームが準決勝を突破した瞬間から決勝のマウンドを意識していた。

「2回戦は思うように投げ切れなくて、不完全燃焼で終わってしまいました。準決勝はエースの山﨑が先発だったので、決勝まで勝ち進んだら絶対に自分が先発するだろうと思っていました。準決勝に勝った時から気持ちを入れていました」

 決勝で意識したのは、自分一人で抑え込もうとしないことだった。

「自分たちは守備からリズムをつくっていきたいと思っていました。自分一人で三振を狙うんじゃなくて、後ろにどんどん取ってもらって、チームの士気を上げていこうと思って投げました」

 圧倒的な球速だけを追い求めるのではない。薮下自身が持ち味とするのは、120キロ台後半の直球を安定してコースへ投げ分ける制球力。力のあるボールを軸に、大空打線と真っ向から勝負した。

走力強化は投球にも 「去年の自分より圧倒的に速くなった」

 チームで取り組んできた走力強化は、薮下の投球にも好影響を与えたという。

 外部指導の際には、臀部周辺の筋肉の硬さを指摘され、ストレッチ方法を教わった。それを現在も継続している。

「ピッチングでの足の上げ幅にもつながりましたし、脚力の面でも去年の自分より圧倒的に速くなっているのを実感しています」

 地道に続けてきたトレーニングが、走塁だけでなく投球、打撃へと波及した。出村監督が語った「走ることが、投げること、打つことにもつながった」という言葉を、薮下自身も体で実感していた。

金メダルを受け取りダイヤモンドを一周する函館港西リトルシニア
金メダルを受け取りダイヤモンドを一周する函館港西リトルシニア

七回、薮下が値千金の3ランニング本塁打

 函館港西が5-2と3点をリードして迎えた七回表。大空に反撃の余地を残さないためにも、どうしても追加点が欲しい場面だった。

 走者を一、二塁に置いて打席には薮下。普段なら右方向への打撃を意識し、走者を進めることを徹底する場面だった。

 しかし、この打席では出村監督から違う言葉が飛んだ。

「フリーバッティングくらい、ゆったりして気持ちよく振ってこい」

 薮下はその言葉に背中を押された。

「自分の好きな球を待って、気持ちよく振ろうと思いました。ストレートを待っていたんですけど、変化球にもしっかりゆったり対応することができました」

 捉えた打球は外野を突破。二塁を回り、三塁へ。薮下自身は三塁で止まるものと思っていたという。

「打った瞬間、二塁まではいけると思いました。三塁まで行ってストップだと思って少し安心していたら、回されたので、ホームへ行く時はちょっと焦りました」

 それでも鍛えてきた脚力を生かして一気に本塁へ。3ランニング本塁打となり、8-2。土壇場で函館港西に大きな3点が加わった。

 出村監督も「あれは結果的に本当に大きなホームランになりました」と振り返る。大会を通じて積み重ねてきた走力強化が、最後の最後、大一番で象徴的な形となって表れた。

大空も最終回に猛追 北海道勢同士で演じたナイスゲーム

 しかし、東日本の頂点を争う決勝は簡単には終わらなかった。

 6点を追う大空は七回裏、最後まで諦めない。岡本の本塁打などで一挙3点を奪い、8-5まで追い上げた。

 薮下も大空打線の圧力を肌で感じていた。

「初球からガツガツ狙ってくるタイプもいれば、追い込まれてからしっかり対応してくるバッターもいたので、配球は少し難しかったです」

 それでも最後は目の前の打者に集中した。

「点差があったので、帰らせてもいいランナーをチームでしっかり確認して、僕はバッターだけに集中しようと思いました」

 最後のアウトを奪い、ゲームセット。函館港西ナインに歓喜の瞬間が訪れた。

 出村監督は、最後まで食らいついた大空への敬意も口にした。

「本当に力のあるチームですし、ピッチャーもみんな良い。馬力もある。今日はたまたまうちだったというくらいの気持ちです。北海道対決ができて、お互い最後まで一生懸命やって、盛り上がるナイスゲームができた。それが一番良かったと思います」

初優勝の瞬間、マウンド上で歓喜する函館港西ナイン
初優勝の瞬間、マウンド上で歓喜する函館港西ナイン

7年ぶりの東日本選抜 37年目の球団史に新たな1ページ

 函館港西リトルシニアは1989年9月に「函館リトルシニア球団」として誕生し、1995年に現在の「函館港西リトルシニア球団」へ名称を変更。今年で球団創立37年目を迎えた。

 今大会は7年ぶり4度目の出場。そこでつかんだ東日本の頂点は、3年生にとっても、後輩たちにとっても大きな財産となる。

 出村監督は「一つ大きなタイトルを取れたことは自信にもなると思います。後輩たちは、この3年生の姿を見て、これからどうするか。きっと心は動いていると思います」と期待を寄せる。

 そして何より、指揮官が繰り返したのが周囲への感謝だった。

「皆さんの協力がないと絶対にできません。関係してくれている人たちのおかげで野球ができているということは、子どもたちにもこれから伝えていかなければいけない。本当に感謝しています」

 函館から札幌への遠征を支え、長期間滞在しながら選手たちを見守った保護者たちにも、「時間も含めて、子どもたちのために惜しみなく使ってくれた。本当に感謝です」と頭を下げた。

薮下「野球でも人間としても成長したい」

 薮下にとっても、今大会は忘れられない舞台となった。

「自分が入団してから、チームとしてこういう全国規模の大会に出場する経験がなかったので、初めての経験でした。一戦必勝でいこうと思っていました」

 その大会の最後に先発を任され、投げて、打って、走って、優勝をつかんだ。

 中学野球の先には高校野球が待っている。

「自分の持ち味である脚力と投手としての部分を生かしながら、自分が成長できる高校を探して、そこでしっかり野球も人間としても成長していきたいです」

 昨秋から地道に積み重ねてきた「走る力」。一つ先の塁を狙い、一つのアウトを大切にし、守備からリズムをつくる。その積み重ねが、最後は薮下の3ランニング本塁打という最高の形で結実した。

 7年ぶりに挑んだ東日本選抜。函館港西リトルシニアは北海道の仲間・大空との熱戦を制し、37年目の球団史に「東日本制覇」という大きな勲章を刻んだ。

初優勝に輝いた函館港西リトルシニア
初優勝に輝いた函館港西リトルシニア

協力:一般財団法人 日本リトルシニア中学硬式野球協会 北海道連盟

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