初回2失点も動じず、鶴羽連斗が反撃の一発 西大條監督が見据えるのは春の全国、そして夏のジャイアンツカップ
中学硬式野球・ボーイズリーグ北海道支部が主催する「第14回日本少年野球秋季北海道選手権大会(全国大会2次予選)」は10月12日、札幌市東区のモエレ沼公園野球場で決勝が行われ、旭川大雪ボーイズが札幌手稲ボーイズを7-2で下し、5年連続10度目の優勝を飾った。初回に2点を先制されながらも、二回に1点、三回には鶴羽連斗の本塁打などで逆転。四回にも4点を加え、持ち前の攻撃力で試合を決めた。旭川大雪は来年3月26日から東京都などで開催される「スターゼンカップ日本少年野球春季全国大会」へ北海道代表として出場する。一方、初回に鮮やかな先制攻撃を見せた札幌手稲は、9年ぶりの決勝進出を果たしたものの、あと一歩及ばず準優勝。それぞれの指揮官と選手たちが語ったのは、秋の成長と来季への決意だった。
イニングスコア
旭川大雪ボーイズ
0124000=7
2000000=2
札幌手稲ボーイズ
(旭)鈴木、鶴羽-馬道
(手)服部、五十川-木村
▽本塁打:鶴羽(旭)
▽三塁打:土田2(旭)、折戸(手)
▽二塁打:中嶋(旭)
いきなりの2失点。それでも揺るがなかった王者の自信
決勝の立ち上がり、先に主導権を握ったのは札幌手稲ボーイズだった。
旭川大雪の先発・鈴木旬(東光サンボーイズ出身/2年)に対し、札幌手稲は初回から積極的な攻撃を仕掛ける。
先頭の1番・岩森禮大(発東ヤンキース出身/2年)が四球を足が掛かりに二死二塁とチャンスを作ると、4番・折戸冠太(手稲山口メッツ出身/2年)が左翼への三塁打を放ち、先制。さらに5番・木村結都(あいの里バイソンズ出身/2年)にも内野安打が飛び出し、2点目を奪った。
2-0。
王者を相手に、札幌手稲が理想的なスタートを切った。
しかし、旭川大雪のベンチに焦りはなかった。
「鈴木旬の立ち上がりが最近あまり良くなかったので、こういう展開になることも想定していました。先に点を取られても焦るんじゃないぞと、ずっと話していましたから」
そう振り返ったのは、旭川大雪を率いる西大條敏志監督だ。
「選手たちも、まだまだ、まだまだという気持ちでした。全然不安はなかったですね」
その言葉どおり、旭川大雪は二回以降、じわじわと反撃を開始する。
鶴羽連斗、初球を一振り――逆転への流れを呼び込んだ本塁打
二回、旭川大雪は7番・中嶋優心(永山西クラブ出身/2年)のスクイズで1点を返し、1点差に迫った。
そして三回。
この回の先頭、主将の2番・村田晴紀(当麻野球少年団出身/2年)が右前打で出塁する。
「ストレートに絞っていました。ちょうど甘い球が来たので、ここを逃すわけにはいかないと思って強く振りました」
村田の一打が、反撃の口火を切った。
二者が倒れ二死三塁で、迎えたのは鶴羽連斗(永山西クラブ出身/2年)。
1点を追う場面で打席に立った鶴羽の胸には、強い決意があった。
「ビハインドだったので、絶対に自分のバットで同点か逆転してやるという気持ちで打席に入りました」
狙っていたのは本塁打ではなかった。
しかし、初球を迷わず振り抜いた。
鋭く捉えた打球は外野の頭上を越え、そのままフェンスの向こうへ。
鶴羽の一発が飛び出し、旭川大雪は逆転に成功した。
「打った瞬間に入ると思いました」
今季、公式戦では2本目となる柵越え本塁打。最初の一発はゼット旗での旭川道北ボーイズ戦だったという。
それでも、今回の一打は格別だった。
「打ったことで、勝てるぞという気持ちになりました。みんなも『すげえ』と言ってくれて。でも、次の打席からまた切り替えていこうという声もありました」
一発に沸きながらも、気持ちを緩めない。
旭川大雪らしい集中力が、そこにはあった。
西大條監督も、その一打を高く評価した。
「2年生であの場面で柵越えを打つんですから、大したものですよ。タイミングもばっちりでした」
鶴羽は今大会の最優秀選手賞に選ばれた。

四回に一挙4点 受け継がれる走塁意識が試合を決めた
逆転した旭川大雪の勢いは止まらなかった。
四回には打線が再びつながり、一挙4点を追加。7-2とリードを広げた。
単に長打力があるだけではない。
走者を進め、相手の守備の隙を逃さず、次の塁を狙う。
西大條監督が強調したのは、代々受け継がれてきた走塁への意識だった。
「走塁の意識は、毎年上級生から受け継いでいます。相手の外野手がファンブルしたり、中継でミスがあったりしたら、次の塁を狙う。それはずっとやってきたことです」
打球の行方だけを見ているのではない。
相手野手の動き、送球の方向、わずかな処理の遅れ。
その一瞬を見逃さないことが、得点力を支えている。
「今日はそういうこともやってくれましたし、いい試合運びだったと思います」
三回の逆転から四回の大量得点へ。
試合の流れをつかんだ旭川大雪は、そのまま札幌手稲の反撃を許さず、5点差で頂点に立った。

「今年は点を取らなければ勝てない」――西大條監督のチームづくり
5年連続10度目の優勝。
その数字は、北海道のボーイズリーグにおける旭川大雪の存在感を物語る。
しかし、西大條監督は今のチームを完成形とは見ていない。
むしろ、例年とは異なる戦い方が求められているという。
「去年、一昨年と比べると、投手力は落ちると思っています。その分、点を取っていかないと勝てない。だから打撃には力を入れてきました」
その成果が、決勝での7得点だった。
鶴羽の本塁打に加え、土田一颯(東聖イーグルス出身/2年)が三塁打2本を記録。中嶋にも二塁打が飛び出した。
長打を軸にしながら、走塁で相手にプレッシャーをかける。
攻撃力を磨いてきたチームづくりが、大一番で実を結んだ。
それでも指揮官の視線は、すでに次の戦いへ向いている。
「まだまだ伸びる要素はあります。まだスタートしたばかりですから」

目指すのは全国出場ではなく、全国で勝ち上がること
旭川大雪が掲げる目標は、春の全国大会出場だけではない。
その先にあるのは、来夏のジャイアンツカップだ。
西大條監督は新チーム発足時、選手たちに問いかけたという。
「全国に行くことが目標ではなく、全国に行って勝負して、勝ち上がることが第一目標です。そこに向かうには、きついこともある。それでもやるのかと聞いてからスタートしています」
選手たちは「やります」と答えた。
その覚悟が、日々の練習を支えている。
「まずは春のボーイズの全国大会に行って、強いチームといい試合をしたり、勝ったりしないと。ジャイアンツカップに向けても、強いチームだと思ってもらえるようにならなければいけない」
全国の舞台で結果を残し、さらにその先を目指す。
北海道代表としての誇りと、全国で勝ち抜く覚悟。
西大條監督が求めているのは、そこにふさわしいチームへの成長だ。
12月までは身体づくり 北海道の冬を乗り越える独自の強化
春の全国大会は3月下旬。
北海道では、屋外で十分な実戦練習を積むことが難しい時期だ。
だからこそ、旭川大雪は冬の過ごし方を重視する。
西大條監督によると、12月いっぱいまではボールを使った練習を抑え、身体能力の向上に重点を置く。
「12月いっぱいはボールをそんなに使わず、瞬発力を高めたり、ジャンプしたり、走ったりという練習を中心に考えています」
1月以降は複数の室内施設を活用し、実戦を意識した練習へ移行する予定だ。
「会場も3つ、4つ借りてやりますから、場所に合わせてメニューを変えています。北海道は外で十分に練習してから全国へ行けるわけではありません。冬の真っただ中から東京へ行く準備をしなければならない」
雪国のハンディを言い訳にはしない。
限られた環境の中で、全国で戦える身体と技術をつくり上げる。
それが、旭川大雪の冬の流儀だ。

「チームが一丸となって戦える」――鶴羽連斗が語る強さの理由
決勝で本塁打を放ち、最優秀選手に選ばれた鶴羽連斗。
その打撃力を支えているのは、幼い頃から続けてきた自主練習だった。
自宅では父親が投げるバドミントンのシャトルを打つ練習を続けているという。
「小学校の低学年ぐらいからやっています。練習がない日にも、できるだけやるようにしています」
派手な一発の裏側には、地道な積み重ねがあった。
鶴羽は投手としてもチームを支える存在だ。
直球に加え、スライダー、カーブ、チェンジアップを操る。
決勝では救援登板も果たしたが、本人は課題も感じている。
「最終回に少し疲れが出てしまったので、そこは修正していきたいです」
それでも、自らの強みを問われると、打撃への自信を口にした。
そして、チーム最大の強みについては迷わず答えた。
「チームが一丸となって戦えることです」
春の全国大会では、投打両面での貢献を誓う。
「ピッチャーでもバッターでもチームに貢献して、勝利をつかみたいです」
さらに、その先には高校野球での甲子園出場という夢がある。
「高校野球で甲子園に出ることが目標です。まずは春の全国大会で本州のレベルの高いチームと戦って、自分もレベルアップしていきたいです」
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プロフィール
鶴羽 連斗
旭川大雪ボーイズ/2年
右投げ、右打ち
177センチ、72キロ
投手兼内野手
持ち球:直球、スライダー、カーブ、チェンジアップ
今季公式戦本塁打:2本
学童野球は永山西クラブ出身
家族は両親と兄の4人
将来の目標:高校野球で甲子園出場
「焦らず1点ずつ」――村田晴紀主将が示した冷静さ
初回に2点を失った時、チームを落ち着かせたのが主将の村田晴紀だった。
「焦ったら自分たちの野球ができなくなってしまうので、ここは冷静に1点ずつ取っていこうと声をかけていました」
三回には先頭打者として右前打を放ち、反撃のきっかけをつくった。
村田は、この秋を通じて打線のつながりが良くなったと感じている。
「投手はなるべく球数を少なく抑えること。攻撃では打線のつながりを意識してきました。今日はそれができたと思います」
主将として胸に刻んでいるのは、先輩たちが味わった悔しさだ。
「3年生は選手権の決勝で、自分たちの力を出し切れずに負けてしまいました。だから自分たちは、持っている力を最大限に出し切れるチームにしたいと思っています」
春の全国大会へ向けて、冬場は体力面の強化にも取り組む。
「他の地域は冬でも外で練習できるところがあります。でも、僕たちは室内でしかできないことをしっかりやりたい。スタミナを高めて、冬の練習を春の自信につなげたいです」
5連覇を達成したとはいえ、目指す場所はまだ先にある。
主将の言葉には、勝利の喜び以上に、これからの戦いに向けた責任感がにじんでいた。
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プロフィール
村田 晴紀
旭川大雪ボーイズ/2年/主将
右投げ・右打ち
約173センチ、69キロ
家族は両親、妹の4人。
野球歴:小学2年生ごろに野球を始め、一度離れたものの、小学4年生ごろに再開。当麻野球少年団出身。
札幌手稲、9年ぶりの決勝進出 初回の先制攻撃に見えた成長
敗れた札幌手稲ボーイズにも、確かな収穫があった。
初回、旭川大雪の先発・鈴木旬を捉え、2点を先制。
越中築監督にとっても、立ち上がりの攻撃は予想以上だったという。
「いい意味で想定外でした。鈴木君の力があるので、終盤勝負になるかなと思っていましたが、立ち上がりをうまく捉えられたことは収穫です」
新チームとして迎えた秋のリーグ戦では、守備の乱れから試合のリズムをつくれない場面があった。
しかし、今大会ではその課題に改善が見られた。
「リーグ戦では守備が崩れて、なかなかリズムをつくれませんでした。でも、この選手権では目立つようなエラーが少なくなった。そこを修正できたことは立派だと思います」
選手たちの修正力を評価する一方、優勝に届かなかった現実も受け止めている。
「やろうとしていることをきっちりできる子たちが多い。ただ、優勝できなかったので、まだまだ足りない部分があります」
札幌手稲にとって、秋の決勝進出は9年ぶり。
越中監督自身も、監督就任後初めての秋の決勝だった。
「せっかくのチャンスでしたけど、壁は大きかったですね」
それでも、決勝まで勝ち上がった経験は、来夏に向けた大きな財産になる。


「笑顔をなくさず戦えた」――能登優羽主将が見つけた成長
札幌手稲の能登優羽主将(篠路ビックファイヤーズ出身/2年)は、決勝を振り返り、悔しさの中にも成長を感じていた。
「自分たちの力をすべて出し切れたわけではありません。弱いところが決勝で出てしまい、それが負けにつながったと思います」
それでも、初回の2得点には手応えがあった。
「これまでは先制点を取ることがなかなかできませんでした。でも今日は旭川大雪を相手に初回から先制できた。そこは自分たちのレベルアップにつながる部分だと思います」
秋のリーグ戦では、チームの雰囲気づくりにも苦労した。
思うように点が取れず、守備にも影響する。
そんな悪循環を断ち切るため、選手たちが意識したのは「笑顔」だった。
「みんなで笑顔を大切にしようという目標でやってきました。今日の試合も、最後まで笑顔をなくさずにできたので、そこは成長できたと思います」
相手の強さについて問われると、能登主将は旭川大雪の勝負強さを挙げた。
「チャンスをつくったら、その一球で仕留める。一本が欲しい場面で、しっかり一本が出るチームだと思いました」
自分たちとの差を認めたうえで、来季への目標を明確にした。
「夏の選手権の決勝でもう一度旭川大雪と戦って、そこでリベンジを果たして大阪に行きたいです」
個人としても、悔しさを抱えている。
決勝では先発メンバーに入れず、出場機会は終盤の代走に限られた。
「来年の夏までには絶対にスタメンで出て、フィールドの中でチームを引っ張っていけるようにしたいです」
主将でありながら、決勝の舞台で思うようにプレーできなかった。
その悔しさを、冬の成長につなげる覚悟だ。
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プロフィール
能登 優羽
札幌手稲ボーイズ/2年/主将
右投げ・右打ち
160センチ、52キロ
家族は両親、兄の4人。
野球を始めたきっかけ:父と兄の影響で、小学1年生から。学童野球は篠路ビックファイヤーズ。
5連覇は通過点――春の全国、そして夏の頂点へ
5年連続10度目の優勝。
旭川大雪ボーイズは、今年も北海道の頂点に立った。
だが、西大條監督にとって、この優勝はゴールではない。
春の全国大会で強豪と戦い、勝ち上がる。
そして来夏、ジャイアンツカップというさらに大きな舞台へ挑む。
一方、決勝で敗れた札幌手稲ボーイズも、9年ぶりの決勝進出という成果を手に、来夏の雪辱を誓った。
北海道に、長い冬がやってくる。
雪に閉ざされたグラウンドを離れ、室内で自らを鍛える日々。
その先に待つ春の全国大会、そして夏の大舞台。
勝った旭川大雪にも、敗れた札幌手稲にも、次の戦いはすでに始まっている。

協力:公益財団法人 日本少年野球連盟北海道支部
