
中学硬式野球のボーイズリーグ北海道支部主催「第13回日本少年野球秋季北海道選手権大会(全国大会2次予選)」は10月13日、札幌市・モエレ沼公園野球場で決勝と3位決定戦が行われた。決勝では旭川大雪ボーイズが苫小牧ボーイズを11-1(四回コールド)で下し、4年連続9度目の優勝を飾った。圧倒的な攻撃力と堅実な守備で頂点を掴み、来春3月に東京都などで開催される「第56回日本少年野球春季全国大会」への出場権を獲得した。
イニングスコア
◆決 勝(13日、モエレ)
旭川大雪ボーイズ11-1苫小牧ボーイズ
苫小牧ボーイズ
0100=1
344x=11
旭川大雪ボーイズ
(四回コールドゲーム)
(苫)中岡、山田ー太田
(旭)二瓶ー茂木
▽二塁打:二瓶(旭)
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初回から主導権を握る圧巻の攻撃
旭川大雪は初回からバットが火を噴いた。一死から2番・福田愛人(東川大雪野球少年団出身/2年)がセンター前ヒットで出塁すると、3番・二瓶結登(同)がライト線を破る先制のタイムリー二塁打。続く4番・茂木唯登(紋別オホーツクイーグルス出身/2年)のレフト前タイムリーで追加点、さらに7番・上野昴(美瑛野球少年団出身/2年)の適時打でこの回3点を奪い、早くも主導権を握った。
二回には相手投手の制球難を突き、一死満塁から4番・茂木が再び2点タイムリー。5番・神元朔(東五条トリデーズ出身/2年)の犠牲フライなどで4点を加え、序盤で大量リードを築いた。勢いは止まらず、三回にも6番・小林謙心(東川大雪野球少年団出身/2年)のタイムリーなどで4点を追加。全員打線の集中力とつなぐ意識が光った。
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投打が噛み合い、隙のない戦いぶり
投げては先発の二瓶が安定感抜群のピッチングを披露。三回に四球から3連打を浴び1点を失ったものの、落ち着いた投球で最少失点にとどめた。テンポの良い投球とバックの堅守がかみ合い、試合の流れを一度も渡さなかった。
一方の苫小牧ボーイズは、先発・中岡颯(沼ノ端スポーツ少年団出身/2年)、2番手・山田正兼(飛翔スワローズ出身/2年)の左腕リレーで挑んだが、序盤の制球に苦しんだ。それでも中岡のボールには力があり、来春に向けての成長が大いに期待されるボールだった。攻撃では三回、一死からの四球をきっかけに3番・太田怜臣(北光ファイターズ出身/2年)がライト前に適時打を放ち意地の1点を奪った。
MVP小林、チームの原動力に
今大会の最優秀選手賞には、抜群の勝負強さで存在感を放った小林謙心(旭川大雪ボーイズ)が選出。優秀選手賞には上野昴(旭川大雪ボーイズ)と太田怜臣(苫小牧ボーイズ)がそれぞれ受賞した。旭川大雪ボーイズは2年前の春季全国大会でベスト8入りを果たしており、再び全国舞台での飛躍が期待される。

「野球の本質を、次の世代へ」──旭川大雪ボーイズ・西大條監督が語る“勝利の裏側”と“育成の哲学”
旭川大雪ボーイズが4年連続9度目の優勝を飾った。春の全国大会への切符を手にしたチームを率いるのは、名将・西大條敏志監督。名門を再び頂点へ導いた采配の背景には、“勝つための仕組み”と“育てるための信念”があった。
「先発の順番には特別な理由はありません。夏ごろからのローテーションをそのまま貫いてきました」と西大條監督。徹底したチームマネジメントの中にも、選手たちの経験と自立を尊重する姿勢が見える。主将の二瓶結登(東川大雪野球少年団出身/2年)についても、「まだ精神的には2年生らしい幼さもあるが、チームのために野球をやろうという姿勢が素晴らしい。人のために動ける選手は、いずれ大きな選手になる」と温かく語る。
ジャイアンツカップ準優勝を経て挑んだ今大会では、技術よりも“意識の高さ”に手応えを感じたという。
「全国準優勝という結果のあと、気持ちが緩むことなく、もう一度締め直して挑んでくれた。試合を重ねるごとに“何を目指すか”を自分たちで考え始めている。そういう意識の変化が何よりの成長です」と話す。
また、チームの“伝統”が確かに継承されていることにも目を細めた。
「前の世代から受け継いだ“塁上の意識”、走塁へのこだわりがしっかり根付いている。そういう積み重ねが、チーム全体の野球を支えていると思う」と語り、選手たちへの信頼をにじませた。
「野球らしい野球が少なくなってきている中で、うちは“次にどうつなぐか”を常に考える野球を続けていきたい。春の全国でも、強く、そして美しい野球を見せたい」。
勝利に慢心することなく、育成と探究を続ける西大條監督の言葉には、北海道の強豪を支える“哲学”があった。


全国制覇へ──旭川大雪ボーイズ・二瓶主将が語る「一体感」と「成長の秋」
第13回日本少年野球秋季北海道選手権大会(全国大会2次予選)で優勝を果たし、春の全国大会出場を決めた旭川大雪ボーイズ。チームをまとめるのは、東川大雪野球少年団出身の主将・二瓶結登(2年)だ。夏から秋にかけての成長、チームの一体感、そして全国に向けた思いを語った。
「この大会を通じて“報われたな”という気持ちが強いです。夏から秋にかけて、チームとして一番成長したのは“連携”の部分。お互いの動きを感じ取りながらプレーできるようになったのが大きいです」と二瓶主将。新チーム結成後は、打撃練習を多く取り入れ、実戦感覚を重ねてきたという。
「チーム全体で打撃を磨いてきた成果が出たと思います。コミュニケーションを取りながら、練習でもミーティングでも前向きに意見を出し合ってきました」と振り返る。
課題として挙げたのは投手力の強化だ。
「どうしても投手陣に頼る場面が多くなるので、そこを全員で支えられるようにしたい。ピッチャーも“打たれにくい球”を意識して、自分たちの強みを伸ばしていきたい」と、冬に向けての具体的な目標を語る。
またキャプテンとしての心構えについては、「一体感を大切にしていきたい」と力を込めた。
「練習期間が短くても、技術と気持ちの両方を高めていく。冬場はグラウンドが使えない分、室内練習で基礎体力や打撃力をしっかり鍛えたい。北海道の環境を言い訳にせず、やれることを全力でやるだけです」と語る姿は、すでに全国を見据えている。
最後に、全国大会への意気込みを尋ねると、二瓶主将の目は真っすぐ前を見据えていた。
「できるだけ多くの練習を積んで、自分たちの力をもう一段上げたい。チーム全員で全国制覇を目標に、もう一度チームを作り直して春に挑みます」。
チームの中心として、プレーでも言葉でも仲間を引っ張る二瓶主将。旭川大雪ボーイズの“春の戦い”は、すでに始まっている。
〇二瓶 結登
2年・東川大雪野球少年団出身
右投げ、右投げ
177センチ、63キロ
家族は両親と姉の4人。
打線では3番を任され、攻守両面でチームをけん引する存在だ。
投手としては長身を生かした角度のあるストレートが持ち味で、最速125キロを記録するなど、まさに成長途上のピッチャーである。
今年の春先には身長が約171センチだったが、そこからさらに伸び始め、現在も著しい成長期の真っただ中。成長痛に悩まされながらも大会を完走した。
身体の成長とともに技術面・精神面も確実にレベルアップしており、今後の飛躍が大いに期待される。
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勝負強さが自分の持ち味
旭川大雪ボーイズ・MVP小林謙心、一打に懸けた信念
旭川大雪ボーイズが4年連続9度目の優勝を達成。その中で見事MVPに輝いたのが、一塁手の小林謙心(2年)だ。チームの勝利を決定づける一打を放った勝負強さの背景には、冷静な自己分析と確かな成長があった。
「まさか自分がMVPに選ばれるとは思っていなかったので、正直びっくりしています。でも、嬉しいです」と笑顔で話す小林。プレッシャーのかかる場面でも結果を出せる秘訣を問うと、即座に「勝負強さ」と答えた。
「ここで一本ほしいという場面で、自然と“自分が打てる”と思える。追い込まれてからでも逆方向に強い打球を意識していて、狙って打てたときは“よし”って思えるんです」と語る。
バッティングの成長についても自覚があるという。
「以前はポテンヒットが多かったんですが、今は低くて強い打球を打てるようになってきました。監督からも“逆方向に強い打球を打て”と言われていて、それを意識して練習してきた成果だと思います」。
現在の身長は165センチ前後、体重は約64キロ。恵まれた体格から繰り出すスイングには力強さが宿る。だが本人は驕らず、冷静に次のステージを見据えている。
「まだまだ課題も多いです。もっと打球の質を上げて、チームの勝利に貢献できるように頑張りたいです」。
勝負どころで光る一打と冷静な判断力──小林謙心の存在が、旭川大雪ボーイズの強さを支えている。
〇小林 謙心
2年・東川大雪野球少年団出身
右投げ、右投げ
165センチ、64キロ
野球は父の影響で小学1年生から始める。
決勝でも二死、一、三塁の場面で2ストライクと追い込まれてからライトに低いライナー性のあたりでタイムリーヒットを勝負強く打っていた。
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苫小牧ボーイズ・髙橋監督「この敗戦を糧に春へ」
決勝で痛感した全国レベルとの差
第13回日本少年野球秋季北海道選手権大会(全国大会2次予選)の決勝で、苫小牧ボーイズは旭川大雪ボーイズの前に1―11で敗れ、春の全国大会出場を逃した。打撃力と試合運びの完成度で一歩及ばなかったが、髙橋輝昭監督は選手たちの健闘を称えつつ、冬へ向けた課題と成長への決意を語った。
「ここ最近、3点取られる展開が続いていたんですが、今日はそれ以上に力の差を感じました。打撃の技術力、捉える力、ミート力──どれを取っても旭川大雪さんは素晴らしかったです。打たれている中で、投げている本人たちも“こんなに当ててくるのか”と驚いていたと思います」と髙橋監督。試合中、相手の打撃技術に圧倒されながらも、選手たちは最後まで気持ちを切らさず戦い抜いた。
「1、2回戦では流れをつくれていたが、今日は決勝という舞台で、その差が明確に出た。ここをどう埋めていくかが冬の取り組みのテーマになる」と振り返る。
また、選手たちには「ミスは起きて当然。決勝という舞台をまずは楽しもう」と声をかけて臨んだという。結果は厳しいものとなったが、監督は選手たちの姿勢を高く評価した。
「彼らにとって、この負けはおそらく初めて味わう大きなショックだと思います。だからこそ、この現実をしっかり受け止めて、春に向けてどう成長できるかが大事。ゼロで終わらなかったことに、少し光は見えました」と前を向いた。
悔しさをバネに、冬の鍛錬期間を経て再び挑戦の舞台へ──苫小牧ボーイズの“春”への戦いは、すでに始まっている。

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協力:公益財団法人 日本少年野球連盟 北海道支部