“挑戦者”として頂点奪還――札幌新琴似、2年ぶり17度目V

“挑戦者”として頂点奪還――札幌新琴似、2年ぶり17度目V

昨秋の悔しさを糧に積み上げた冬 加藤完投、打線爆発で全国選抜出場のとかち帯広を撃破

二回、一挙5得点 札幌新琴似打線が真骨頂

試合が動いたのは二回だった。

 一死から7番・津田篤人(幌西フェニックス出身/3年)がライトオーバーの二塁打で出塁。ボークで三進すると、8番・三原慎一朗(北発寒ファイヤーズ出身/3年)がセンター前へ先制タイムリーを放った。

 さらに二死後、1番・加藤孝明(札幌オールブラックス出身/3年)がライトオーバーのタイムリーを放ち2点目。続く2番・菰田隼風(八軒東和グッピーズ出身/3年)、3番・萩原大芽(小野幌ライオンズ出身/3年)が連続四球で満塁とすると、4番・北川遼(岩見沢学童野球クラブ出身/2年)の打球は、一塁後方のライト線へ切れていく難しいフライとなった。

 これを内野手が捕球できず、二死だったことも重なって走者一掃の3点タイムリーとなり、この回一挙5得点。札幌新琴似が試合の主導権を握った。

 さらに四回には、3番手・山田朔太郎(若葉野球少年団出身/3年)から加藤がレフトオーバーのタイムリーを放ち6点目。全国選抜出場を経験したとかち帯広投手陣を相手に、“打ち勝つ野球”で押し切った。

2年ぶりの優勝を飾る札幌新琴似リトルシニア
2年ぶり17度目の優勝を飾る札幌新琴似リトルシニア

生嶋監督「弱いチームなんだから挑戦者でいけ」

優勝直後、生嶋宏冶監督は笑みを浮かべながらこう切り出した。

 「まぐれが、良く続いたな」

 だが、その言葉の裏には、冬を乗り越えた選手たちへの確かな信頼があった。

 「一番大きかったのは、やっぱり加藤の成長ですね。素晴らしいピッチングでした」

 大会期間中、選手たちへ掛け続けてきた言葉もある。

 「弱いチームなんだから、相手は絶対強い。だったら負けてもいいから、男らしく諦めないで戦え――。ずっと“挑戦者”の気持ちでやってきました」

 昨秋、秋季全道大会リーグ戦は3勝3敗の4位。ワイルドカードで決勝トーナメントへ進出したものの、初戦で後に全国選抜準優勝となる札幌北に2‐3で敗れた。

 その後、チームはあえて道内との練習試合を行わず、練習に時間を割いた。

 「このチームは、道外遠征は別にして練習試合を一度もしていない。練習に次ぐ練習を重ねた。力のない選手が、いきなり試合をしても無理。日頃の練習の成果を試すのが試合なんです」

 積み上げた冬が、春の頂点へつながった。

七回完投の見事なピッチングを披露した加藤投手(札幌新琴似)
七回完投の見事なピッチングを披露した加藤投手(札幌新琴似)

加藤孝明、89球完投 「絶対にリベンジしたかった」

 投げては先発・加藤が七回3安打1死球1失点の完投勝利。力強いストレートを軸に、カーブ、チェンジアップを織り交ぜながら、粘り強いとかち帯広打線を封じ込めた。

 試合後、加藤は素直な喜びを口にした。

 「優勝できてとてもうれしいです」

 その上で、昨年敗れた相手への思いも明かした。

 「とかち帯広は去年負けたチームなので、絶対にリベンジしたいという気持ちで臨みました」

 相手打線については「変化球にあまり手を出してこなかった」と振り返りながら、「四球を与えないよう心掛けて、ストレートを押していくピッチングを意識した」と語った。

 七回を投げ、与えた四死球は死球による一人のみ。最後までストライク先行の投球を貫き、試合を作り続けた。

 二回の決勝タイムリーについては、「ストレートを狙っていて、甘いコースに来たので一球で仕留めることができて良かったです」と振り返った。

 日本選手権北海道大会へ向けては、「もっと変化球の精度を上げて、変化球でも三振を取れるようにしたい」とさらなる成長を見据えた。

加藤投手(札幌新琴似)
加藤投手(札幌新琴似)

プロフィール
加藤 孝明(かとう こうめい)
札幌新琴似リトルシニア/3年
ポジション:投手
左投げ、左打ち
野球は札幌オールブラックスでプレーした。6年生時には北海道日本ハムファイターズジュニアに選出されるなど、投打に秀でた存在として注目。

主将・似鳥「目的意識を持ってやってきた」

 この日、主将の似鳥一真(札幌オールブラックス出身/3年)は、初の中堅手として先発出場。チームの変化と成長を、誰よりも感じていた一人だった。

 「秋季全道大会で勝てなかったので、この冬はしっかり目的意識を持って練習してきました。そこはすごく良かったと思います」

 次大会(日本選手権道予選)については、「次も自分たちが打って、自分たちの力で点を取れるようなバッティングをして、チームに貢献したい」と語り、打線のさらなる成長へ意欲を見せた。

 そして視線は、すでに次の舞台へ向いている。

 「この勢いのまま、しっかり日本選手権を勝ち上がって、全国でも良い成績を残したい」

主将の似鳥選手(札幌新琴似)
主将の似鳥選手(札幌新琴似)

プロフィール
似鳥 一真(にとり かずま)
札幌新琴似リトルシニア/3年
ポジション:外野手
右投げ、右打ち
179センチ、70キロ
学童野球は小学1年生の秋、父の影響で野球を始め、札幌オールブラックスでプレーした。
家族は両親と姉の4人。

とかち帯広、届かなかった春 それでも前へ

一方、敗れたとかち帯広も随所に力を見せた。

 先発・山田岳(柳町イーグルス出身/3年)は初回、一死二、三塁のピンチを切り抜ける粘投。しかし二回に崩れ、2番手・栩内巧太(士幌ファイターズ出身/3年)へ継投したものの、新琴似打線の勢いを止め切れなかった。

 攻撃では四回二死から、3番・眞野優(稲田タイガース出身/3年)の死球をきっかけに好機を作ると、5番・山田朔太郎が強烈なレフト前タイムリーを放ち1点を返した。

 六回には連打とダブルスチールで無死二、三塁としたが、あと一本が出ず。4番・小瀬朔(Nexus BBC出身/2年)のライナーで併殺となり、流れを引き寄せることができなかった。

 試合後、森徹監督は課題と向き合った。

 「野球を通じて成長していかなければいけない。自分自身も含めて、責任を感じています」

 走塁についても言及した。

 「うちは帰塁の練習をかなりやっています。戻る動き、次の塁への切り替え、ベースの蹴り方――。そういう細かい部分を繰り返している。だからこそ、試合で出せなかった悔しさはあります」

準優勝のとかち帯広リトルシニア
準優勝のとかち帯広リトルシニア

主将・菊池「また一から積み上げていくしかない」

主将の菊池春馬も、悔しさを隠さなかった。

 「なかなか自分たちの武器である走塁が使えなかったので、苦しい展開だった」

 全国制覇を目標に掲げてきたチームだからこそ、課題もはっきり見えた。

 「自分たちの目標である全国制覇に向けて挑んだが、足りないところも実感した。最大の目標である日本選手権に向けて、また一から積み上げていくしかない」

 さらに、「こういう試合でエラーしたら負ける。また攻撃力も上げていかなければならない」と前を向いた。

 個人としても「今大会はなかなかチームに貢献できなかった」と振り返りながら、「森監督が目指している野球を、自分たちができるようになりたい」と力を込めた。

 日本選手権へ向けては――。

 「まずは初戦を、自分たちの野球をやって勝てるように。そして決勝まで勝ち上がり、今度こそ優勝したい」

 春の頂点に立った札幌新琴似。あと一歩届かなかったとかち帯広。

 両者の視線は、すでに夏の大舞台へ向いている。

主将の菊池捕手(とかち帯広)
主将の菊池捕手(とかち帯広)

プロフィール
菊池 春馬(きくち はるま)
とかち帯広リトルシニア・3年
ポジション:捕手
右投げ、右打ち
170センチ、64キロ
野球を始めたのは小学1年生。きっかけは、地元の少年団・柳町イーグルスの選手たちに誘われたことだった。6年生時には北海道日本ハムファイターズジュニアに選出されるなど、攻守に秀でた存在として注目。
家族は両親と兄、弟、妹の6人。

協力:一般財団法人 日本リトルシニア中学硬式野球協会 北海道連盟

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