開幕前夜、ユニフォームの袖に夢をたたむ

開幕前夜、ユニフォームの袖に夢をたたむ

「その一歩に、春が宿る」開幕前夜、親と子が交わす静かな準備

風が柔らかくなり、グラウンドの土が冬の眠りから目を覚ます頃。
少年たちの背番号にも、日差しがふわりと降りてきます。

開幕戦。
それは、ひと冬かけて積み上げてきた自分自身と向き合う日。
前夜、背番号を撫でるその手に、きっと少し汗が滲んでいることでしょう。

「うまくやらなきゃ」なんて思わなくていい。
その言葉の重さより、君のバットには“続けてきた時間”が詰まっている。
大切なのは、明日も“野球が好き”でいられること。

晩ごはんは、からだに優しく、心にあたたかく。
白ごはんに味噌汁、少しの野菜。
母の手で握られたおにぎりが、実は最高のサプリメントなのかもしれません。

そして、眠りにつく前に、ユニフォームをそっと畳む。
袖に手を通したとき、背筋がしゃんと伸びるように。
夢を一枚、そこに仕舞っておくのです。

親御さんにとっての前夜もまた、特別な時間。
忘れ物チェックをしながら、あのときの小さなグローブ姿が頭をよぎるかもしれません。
「もう中学生かぁ」なんて、少し感慨深くなったりして。

でも、明日がどんな一日になっても、子どもに伝えたいのは一つだけ。
「思いきり、楽しんでおいで。」
たったその一言が、背中をふわりと押してくれます。

結果より、表情。
点数より、挑戦の数。
勝敗を越えたところにある“たしかな成長”を、親子で噛みしめてほしいと思います。

スタンドから声援を送る親御さんのまなざしも、またひとつのプレー。
グラウンドの外に立つ“もうひとりの背番号”なのです。

開幕は、単なる試合ではありません。
それは、季節が野球少年たちに与えた“物語の始まり”。
白球が空を舞うたび、日々がひとつずつ、未来へと紡がれていきます。

明日、朝日がユニフォームを照らすころ。
きっと君は、今日よりほんの少し、大人になっている。

だから今夜は、深呼吸をひとつ。
そして、おやすみをふたつ。

ペンネーム:三塁線の詩人・北見 慧

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