藤井監督「絶対勝てない相手だと思っていた」――佐々木、白石の継投と外野陣の好守が勝利を呼ぶ 札幌選抜は終盤2点差まで迫るも届かず
北海道の学童野球に、新たな歴史が刻まれた。
10月25日、苫小牧市のとましんスタジアムで行われた「2026北海道学童軟式野球都市対抗戦」の決勝は、初の決勝進出を果たした日高選抜が、大会4連覇を目指した強豪・札幌選抜を5-3で破り、悲願の初優勝に輝いた。
日高選抜は二回、二死から相手守備の乱れを突いて先制すると、後藤太助(新冠野球スポーツ少年団/6年)の2点適時二塁打、山道琉生(みゆきフェニックス/6年)の2点ランニング本塁打で一挙5得点。投げては佐々木翼(日高西部JBC/6年)と白石瑛太郎(日高西部JBC/6年)が継投し、強打の札幌選抜を8安打3失点に抑えた。
一方、札幌選抜も四回に上居怜(藻岩ライオンズ/6年)のランニング本塁打などで2点を返すと、最終六回には佐々木遥真(星置レッドソックス/6年)の適時打で2点差まで迫った。しかし、日高選抜が最後までリードを守り抜いた。
試合後、藤井孝介監督は「絶対勝てない相手だと思っていた。嬉しいの一言しかない」と喜びをかみしめた。
初優勝の日高選抜は、2027年2月に兵庫県・淡路島で開催される「全国選抜軟式少年野球兵庫県大会」へ北海道代表として出場する。準優勝の札幌選抜も、岡山県で開催される「西日本選抜学童軟式野球倉敷大会」への出場権を獲得した。
イニングスコア
◆決 勝(10月25日)
(A-7) 日高選抜5-3札幌選抜
日高選抜
050000=5
000201=3
札幌選抜
(日)佐々木、白石、佐々木ー白石、田代
(札)黒瀬、羽賀、中野ー中野、関野
▽本塁打:山道RH(日)、上居RH(札)
▽三塁打:白木(札)
▽二塁打:山道(日)
二死から一挙5得点! 日高選抜が強豪・札幌をのみ込んだ二回の猛攻
両チーム無得点で迎えた二回。
日高選抜の攻撃は、4番・齋藤颯祐(みゆきフェニックス/6年)の左前打から始まった。
続く5番・阿部楓(日高西部JBC/6年)が確実に犠打を決め、一死二塁。ここで6番・田代塁徠(えりも新栄野球スポーツ少年団/6年)が中前打を放ち、一、三塁と好機を広げた。
さらに田代が二盗を決め、二、三塁。
しかし、次打者が倒れて二死となった。
札幌選抜としては、あと一つアウトを奪えば無失点で切り抜けられる場面だった。
ここで打席に入った8番・工藤有利(みゆきフェニックス/6年)の内野ゴロが相手守備の失策を誘い、三走・齋藤が生還。日高選抜が待望の先制点を奪った。
そして、この一つのプレーをきっかけに試合が大きく動いた。
続く9番・後藤太助が左翼手の頭上を越える2点適時二塁打を放ち、3-0。
なおも走者を置いて打席に立った1番・山道琉生が、左翼手の頭上を越える大飛球を放った。
打球は外野を転々とする間に山道自身も一気に本塁へ。
値千金の2点ランニング本塁打。
日高選抜はこの回、一挙5点を奪った。
大会3連覇中の札幌選抜を相手に、序盤で築いた5点のリード。
誰もが予想しなかった展開に、日高選抜の選手たちは勢いづいた。
試合後、藤井監督もこの大量得点について、驚きを隠さなかった。
「なんとか2点、3点取れればという気持ちだったんですけど、5点取れるとは思っていなかった」
強豪相手に一つでも多く得点を奪いたい。その思いで臨んだ攻撃が、初優勝への大きな一歩となった。

札幌選抜も意地の反撃 上居のランニング本塁打から追い上げ開始
5点を追う札幌選抜も、黙ってはいなかった。
四回、先頭の3番・上居怜が右翼線を破る鋭い打球を放つ。
打球が外野を転々とする間に上居は一気に本塁へ生還。ランニング本塁打で反撃ののろしを上げた。
さらに4番・鍵谷瑛太(西岡スターズ/6年)に代わって代打・野村怜央(豊平カージナルス/6年)が内野安打で出塁すると、5番・関野湊太(札幌ポルテ/6年)が左翼手の頭上を越える一打でつないだ。
ここで6番・白木晴琉(手稲山口メッツ/6年)が中前適時打を放ち、この回2点を奪った。
5-2。
札幌選抜が持ち前の攻撃力を見せ始めた。
しかし、ここから日高選抜の守備陣が踏ん張った。
札幌選抜は強い打球を外野へ飛ばし、反撃の機会をうかがったが、日高選抜の中堅手・阿部楓(日高西部JBC/6年)、右翼手・五十嵐崇翔(えりも新栄野球スポーツ少年団/6年)が好守を見せ、追加点を許さなかった。
特に中堅手のダイビングキャッチは、試合の流れを左右する大きなプレーとなった。
抜けていれば大量失点につながりかねない打球を、体を投げ出して捕球。
札幌選抜に傾きかけた流れを、守備の力で食い止めた。

最終回、札幌選抜が2点差に迫る 最後まで続いた攻防
試合は5-2のまま最終六回へ。
3点を追う札幌選抜は、先頭の6番・白木晴琉が中堅手の頭上を越える三塁打を放ち、無死三塁の好機をつくった。
続く7番・佐々木遥真が勝負強く中前適時打を放ち、三走・白木が生還。
5-3。
ついに2点差まで迫った。
一打が試合の流れを変えかねない場面。
しかし、日高選抜の投手陣と守備陣は最後まで集中力を切らさなかった。
佐々木、白石、そして再び佐々木へとつないだ継投。
8安打を浴びながらも、要所で踏ん張った。
札幌選抜の後続を断ち、最後のアウトを奪った瞬間、日高選抜の初優勝が決まった。
強打の札幌選抜を相手に、5点のリードを守り抜いた日高選抜。
二回の集中打、投手陣の粘り、そして外野陣の好守。
攻守がかみ合った末につかんだ、価値ある初優勝だった。

藤井監督「絶対勝てない相手だと思っていた」 選手たちが見せた予想以上の力
試合終了後、日高選抜の藤井孝介監督は、喜びを隠しきれない様子で取材に応じた。
初優勝を果たした率直な気持ちを尋ねると、真っ先に返ってきたのは選手たちへの感謝だった。
「嬉しい気持ちでいっぱいですね。絶対勝てない相手だと思っていたんで、うちがこんなにやるとは思っていなかったですね。嬉しいの一言しかないですね」
大会4連覇を狙う札幌選抜。
その実力を認めていたからこそ、勝利の喜びも大きかった。
「こういうのはいつ取れるかわからないですから。今年が恵まれていたんですね。頑張ってくれた選手のおかげです」
決勝戦の勝因について尋ねると、藤井監督は攻撃以上に守備のプレーを挙げた。
「やっぱり、あのセンターのダイビングキャッチですかね」
札幌選抜が反撃に転じた場面で飛び出した、中堅手の好捕。
あの打球が抜けていれば、試合の展開は大きく変わっていたかもしれない。
「本当にあそこを抜けていたら、もう勢いが増していましたからね」
さらに、右翼手の守備についても言及した。
「ライトも今日、結構踏ん張って捕ってくれたんで。ライトとセンターのおかげで、やっぱりちょっと変わったのかなと思います」
強打の札幌選抜に対し、無安打に抑えることは難しい。
それでも、打たれた後のプレーで失点を最小限に食い止めた。
「打たれるのは覚悟していたんで。本当にコース、コースでなんとかつなぎ止めてね。守備でなんとか勝ったって感じで良かったです」
藤井監督の言葉からは、打撃だけではなく、投手と野手が一体となって勝利をつかんだという実感が伝わってきた。


藤井監督が選んだ大会のMVPは主将・白石瑛太郎

この日、決勝を含めて3試合を戦った日高選抜。
藤井監督に、この日最も印象に残った選手を尋ねると、迷わず主将の名前を挙げた。
「やっぱり一番はキャプテン。あの準々決勝・岩見沢選抜戦で見せた満塁ホームランがなかったら、ここ(決勝)はなかったんで」
決勝戦では投手としてもチームを支えた白石瑛太郎主将。
藤井監督が振り返ったのは、決勝進出につながった一打だった。
「あれがなかったら決勝もなかったんで、全国も行けなかったんで。本当にあれが一番ですね。今日のMVPですね。キャプテンですね」
勝負どころで放った満塁本塁打。
そして決勝では投手としてマウンドに立ち、仲間とともに札幌選抜の反撃を食い止めた。
白石主将の存在は、日高選抜にとって大きな支えとなっていた。
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白石 瑛太郎(しらいし・えいたろう)
日高選抜/6年/主将
所属少年団:日高西部JBC
149センチ、42キロ
野球歴:姉やいとこが野球をしていた影響で、小学1年生ごろから野球を始めた。
家族は両親と姉の4人。
佐々木翼「コースを突いて、スローボールも投げられた」 小さな体で強打線に立ち向かう

日高選抜の初優勝を語る上で、欠かせない存在が佐々木翼投手だ。
強打者が並ぶ札幌選抜を相手に先発を任され、堂々とした投球を披露。白石瑛太郎との継投で相手打線の反撃を食い止め、最後は再びマウンドに上がって勝利を呼び込んだ。
試合後、札幌選抜を破っての初優勝について尋ねると、佐々木は素直に喜びを口にした。
「札幌選抜に勝てて、優勝できたことが嬉しいです」
自身の投球を振り返ってもらうと、答えは実に冷静だった。
「うまくコースを突けて、スローボールも投げられたので良かったと思います」
佐々木の持ち味は、アウトコースを巧みに使った投球だ。
力任せに投げ込むのではなく、コースを丁寧に突き、緩急を織り交ぜながら打者と勝負する。強打の札幌選抜を相手に、自分らしい投球を貫いた。
来年2月の全国大会に向けて目標を尋ねると、打者としては「全打席ヒット」、投手としては「空振り三振に抑えることです」と力強く答えた。
北海道の頂点に立った右腕が、次に挑むのは全国の強打者たち。初優勝で得た自信を胸に、さらなる飛躍を目指す。

【プロフィール】
佐々木 翼(ささき・つばさ)
日高選抜/6年
所属少年団:日高西部JBC
右投げ、右打ち
145センチ、35キロ
野球歴:小学1年生から
野球を始めたきっかけ:野球をしていた父親の影響
家族は両親と姉の4人。
投球の持ち味:アウトコースを使った投球
全国大会での目標:打者として全打席安打、投手として空振り三振を奪うこと
札幌・渡辺監督「勝負どころの球際の強さ、思い切りの良い打撃。向こうが上だった」
一方、大会4連覇を目指した札幌選抜にとっては、悔しさの残る決勝となった。
試合後、渡辺敦監督は、日高選抜の勝利を率直に認めた。
「結局、勝負どころの球際の強さとか、思い切りの良い打撃とか、もう向こうが上で」
そして、自チームについては厳しい言葉を続けた。
「こっちが反対に、勝負どころ行けなかったり、守備のミスがあったり、球際で落としてしまったんで。本当にそれは力の差です」
渡辺監督が敗因の一つに挙げたのは、序盤に大量リードを許したことだった。
「やっぱり先制リードされるっていう経験が、練習試合とか含めてもないので。ちょっと浮き足立ったかなっていうところですかね」
札幌選抜は、これまで圧倒的な攻撃力と安定した試合運びで勝ち進んできた。
しかし、この日は日高選抜の勢いを止められなかった。

「3点で止められれば…」 悔やまれる二回の追加点
渡辺監督は、二回の5失点についても詳しく振り返った。
「僕も5点までの想定はしながら、2、3点はあるよってことで試合前に言って入っていたんですけど」
3点を失ったところで投手交代に踏み切った。
「3点取られた時にピッチャーを代えて、いいバッターに2人で一つアウトを取ろうって言った中で、ホームランを打たれちゃった」
山道琉生に浴びた2点ランニング本塁打。
渡辺監督は、その配球にも悔いを残した。
「高めですね。追い込んでからの高めですね。あれがやっぱりもったいないです。ちゃんとはっきりしなきゃいけなかったですね」
3点差で踏みとどまるのと、5点差まで広げられるのとでは、試合の進め方が大きく変わる。
「3-0でいければ、まだ良かったですけど、5-0っていうのはちょっと心が折れて、子どもが焦っちゃったかな」
それでも、選手たちは反撃を続けた。
四回に2点、最終六回にも1点。
最後まで勝利を諦めなかった。
しかし、渡辺監督は、追い上げの場面にも課題を感じていた。
「1点ずつ返せばっていう中で、走塁面で飛び出したりとか、そういうのがあったんで。そこの導き方が良くなかったかなという点も」
「チャンスで2点返した回もありましたけど、そこでもう少し一気に3、4点って取れていれば」
反撃の機会はあった。
それでも、あと一本が出なかった。
渡辺監督は、日高選抜の守備にも言及した。
「センターのダイビング。あれが抜けていたら、全然変わってくる」
さらに右翼手の好守も挙げ、相手の勝負強さを認めた。
「向こうがやっぱり勝てると思えば、また動きも変わってきますよね。伸び伸びやっていました」
試合を通じて、日高選抜の勢いと札幌選抜の焦り。
その対照的な姿が、勝敗を分けた一因だったのかもしれない。

「OBの思いに応えられなかったのが一番きつい」 渡辺監督が語った4連覇への重圧
3年連続で北海道の頂点に立ってきた札幌選抜。
その歴史と誇りを背負い、大会4連覇を目指して臨んだ今年の都市対抗戦だった。
試合後の渡辺敦監督の言葉からは、単なる一敗では片付けられない悔しさが伝わってきた。
「ここ数年の優勝している代のみならず、その前のOBの方も顔を出してくれて」
かつて札幌選抜のユニフォームを着て戦った選手たちも、今年のチームに期待を寄せていたという。
「頑張って優勝してください、今年もって言われる。その思いに応えられないのが、僕の性格的には一番きついです」
勝ち続けることの難しさ。そして、勝ち続けてきたからこそ背負う期待と責任。
渡辺監督は、その重みを誰よりも感じていた。
4年前、連覇が始まる以前には、悔しい敗戦も経験している。そうした経験を積み重ねながら、選手たちとともに築き上げてきたのが、現在の札幌選抜だ。
大会4連覇こそ逃したものの、今年も北海道準優勝という結果を残し、全国大会への出場権を手にした。
悔しさは簡単には消えない。それでも、渡辺監督の視線はすでに次の戦いへと向けられていた。
「父母の応援も素晴らしかった」 札幌選抜を支えた一体感
渡辺監督が、もう一つ強調したのが父母の存在だった。
選抜チームは、各少年団から集まった選手たちで構成される。
活動期間は決して長くない。
それでも、選手だけでなく、父母も一つのチームとして大会に臨んできた。
「本当にしっかり支えてくれていますから」
渡辺監督は、選手だけでなく父母にも、北海道を代表するチームとしての振る舞いを求めてきたという。
「父母の方にも振る舞いとか厳しくお願いしている中で、非常に応援も素晴らしくやっていただきました」
その一体感は、他チームの関係者からも驚かれるほどだったという。
短い活動期間の中で、選手と父母が同じ目標に向かって歩んできた。
「北海道の代表という、そういう中では、しっかり父母の方は協力してくださっていますね」
結果は準優勝。
しかし、選手たちを支え続けた父母の姿勢に対する感謝は変わらなかった。
渡辺監督は、次の全国大会についても言葉を残した。
「倉敷は厳しい世界なんで、そこをしっかりちゃんとやっていかなきゃいけないので。切り替えてやっていきます」
北海道の頂点には届かなかった。
それでも、札幌選抜の挑戦が終わったわけではない。
この敗戦をどう受け止め、次の舞台でどのような姿を見せるのか。
渡辺監督と選手たちの新たな挑戦が始まる。

日高選抜、初の淡路島へ 藤井監督「もう一回仕上げていきたい」

初優勝を果たした日高選抜。
その先には、来年2月の全国大会が待っている。
藤井監督に全国大会への意気込みを尋ねると、喜びの中にも次の戦いを見据えた言葉が返ってきた。
「初の淡路島の全国大会に決まったんで、まずは初戦、どんなチームかわからないですけど、2月までは長いんで、もう一回仕上げていきたいと思います」
日高選抜は昨年に続き、2年連続で全国大会への出場権を獲得した。
そして今年は、初めて北海道の頂点に立って全国へ向かう。
札幌選抜の4連覇を阻んだ二回の集中打。
強打線を相手に最後まで踏ん張った投手陣。
そして、試合の流れを変えた外野陣の好守。
そのすべてがかみ合ってつかんだ初優勝だった。
「絶対勝てない相手だと思っていた」
試合後、藤井監督が語った言葉が印象に残る。
それほどまでに大きな相手を、日高選抜の子どもたちは乗り越えた。
北海道の頂点に立った日高選抜。
そして、悔しさを胸に全国へ向かう札幌選抜。
それぞれが苫小牧で得た経験を胸に、次なる舞台へ挑む。
北海道代表として戦う両チームのさらなる飛躍に期待したい。


協力:北海道チャンピオンシップ協会
