“人生の勝利者になれ”――旭川明成女子野球部、1期生が挑む「最後の夏」

“人生の勝利者になれ”――旭川明成女子野球部、1期生が挑む「最後の夏」
(写真・旭川明成高校提供)
(写真・旭川明成高校提供)

旭川明成、創部最高3位でHOKKAIDOリーグ終了 全国へ弾みつける夏へ

旭川明成高校女子硬式野球部が、5月10日から行われていた「HOKKAIDOリーグ2024」を6勝4敗の成績で終え、創部以来最高となる3位に輝いた。7月6日に全日程を終了。大会中は思うような結果が出ず壁にぶつかる場面もあったが、選手たちは粘り強く戦い抜いた。課題と成長を胸に刻み、いよいよ迎える全国大会へ――。創部3年目の今夏、北海道最北の挑戦者たちは、これまでの歩みと手ごたえを力に変え、さらなる飛躍を誓っている。

(写真・旭川明成高校提供)
(写真・旭川明成高校提供)

「人生のスコアボードはまだ2回裏」――創部3年目、旭川明成女子が挑む“最後の夏”

2023年春、旭川明成高校に女子硬式野球部が産声を上げた。北海道で4校目、日本最北の地から始まったその挑戦は、わずか3年で全国に名を響かせるまでに成長した。

その原動力が、創部とともに入部した21人の1期生たちだ。

2025年春、チームはついに春の全国大会初勝利を手にした。続く2回戦で立ちはだかったのは全国の絶対王者・神戸弘陵。敗れはしたが、選手たちの胸には「悔しさ」という言葉では語り切れない、何か熱く強い感情が芽生えていた。

――その感情を、今夏すべてぶつける。

「集大成」と言われることに、プレッシャーを感じないわけではない。けれど、3年間、自分たちの手で築いてきた歴史と絆が、選手たちの背中を押す。

チームを率いるのは、大場優監督。選手にかける言葉は厳しくも温かい。

「人生のスコアボードはまだ2回裏。自分の力で得点を重ね、人生の勝利者になってほしい」

その言葉の背景には、自身が若き指導者時代に受けた数々の“壁”がある。神奈川・相洋高校での日々、厳しくも愛情あふれる高橋監督との記憶。グラウンドで泣きながらノックを打ち続けた日々。悔しさの先にある本気の成長。だからこそ、大場監督は言う。

「本気にならないと見えない世界がある。だからこそ、今この瞬間に気づいてほしい」

21人の3年生。ベンチに入れない選手もいるだろう。それでも、大場監督は彼女たち全員に“注目してほしい選手”として光を当てる。

「彼女たちが“最後の夏”という壁を越えた時、このチームはとてつもない力を発揮する」

7月17日、旭川明成ナインは北海道を発ち兵庫入り。18日・19日には関西で最終調整を行い、そして迎える7月20日、初戦のプレイボールが鳴るその瞬間まで、大場監督は「親心」をもって彼女たちを見守り続ける。

人生というスコアボードに、次はどんな得点を刻むのか――。

“ONEチーム”で、旭川明成高校女子硬式野球部が、全国の舞台に挑む。

(写真・旭川明成高校提供)
(写真・旭川明成高校提供)

女子高校球児たちの夢舞台――全国高等学校女子硬式野球選手権大会、史上最多67チームが出場へ

全国の女子高校球児たちが夏の頂点をかけて競い合う「全国高等学校女子硬式野球選手権大会」が、今年も熱い戦いの火蓋を切る。1997年に第1回大会が幕を開けたこの大会は、2025年で29回目の開催を迎える。女子にとって硬式野球の全国舞台となる本大会は、今や全国の女子野球選手の憧れであり、まさに“女子高校野球の甲子園”と呼ぶにふさわしい存在だ。

今年は、過去最多となる67チーム(連合チームを含む)が参加を予定しており、その注目度は年々高まっている。会場は、女子高校野球の聖地とされる兵庫県丹波市と淡路市の4球場。7月19日から27日までの期間に予選から準決勝までが行われ、決勝戦は8月2日、阪神甲子園球場で開催される予定だ(雨天順延あり)。男子大会と同じ甲子園球場で決勝が行われるという点は、選手たちにとっても大きなモチベーションとなっている。

大会はトーナメント方式で進行し、上位4チームには全日本女子硬式野球選手権大会への出場権が与えられる。この大会を通じて、各校の実力が全国規模で試されると同時に、女子硬式野球のレベルの高さと将来性が改めて浮き彫りになる。

主催は全日本女子野球連盟。共催に丹波市、淡路市などが名を連ね、地域全体で大会を支える体制が整っている。2008年に主会場を丹波市へ移して以降、地元との連携が強化され、地域に根ざしたスポーツイベントとしても発展を遂げている。

これまでの大会では、神戸弘陵学園(兵庫)、横浜隼人(神奈川)、埼玉栄(埼玉)など、全国に名を轟かす強豪校が栄冠を手にしてきた。今年もこれらの常連校に加え、新興勢力の台頭にも注目が集まる。

“女子にも硬式野球をやらせたい”という思いから始まったこの大会。今では全国各地から有望な選手が集まり、その熱戦は多くの野球ファンを魅了している。未来の女子プロ野球選手や日本代表候補がここから羽ばたいていく可能性も高く、今後の女子野球の発展を語る上で欠かせない大会である。

真夏の兵庫で繰り広げられる、女子高校球児たちの熱き9日間。夢の甲子園を目指し、一球にかける情熱が球場を包む――。

(写真・旭川明成高校提供)
(写真・旭川明成高校提供)

日本最北の挑戦者、旭川明成高校女子硬式野球部――創部3年目、北海道から全国へ

北海道旭川市に拠点を構える旭川明成高校女子硬式野球部は、2023年4月に創部された日本最北の女子硬式野球部。北海道では4校目の誕生となるこのチームは、旧雨紛小中学校跡地の屋内施設「U・BOOM(ウ・ブン)」なども使用して日々活動を重ねている。

監督を務めるのは、大場優氏。「自主性以上の主体性」を指導の軸に据え、選手自身が考え、行動し、その結果を検証するサイクルを重視している。練習では「言葉に本気を乗せた指導」を徹底し、指導者一人ひとりが明確な役割を持ってチームを支える体制を構築。「エンジョイ・ベースボール」の理念のもと、勝利と成長の両立を目指している。

活動は平日・週末を問わず充実しており、平日は全体練習に加えて主体練習、木曜日は班ごとのフィットネスジムでのトレーニングも行う。土日は午前に全体練習、午後からは自主性を生かした主体練習を実施。また、地域の中学硬式チームとの交流試合にも積極的で、地域とのつながりを大切にする姿勢もこのチームの魅力だ。

創部から3年目を迎える2025年、チームは着実に進化を遂げている。打線はクリーンナップを中心に得点力を発揮し、機動力を活かした積極的な走塁も光る。守備では内外野ともに完成度が高く、堅実さとカバーリングの速さで試合のリズムを作っている。投手陣については、既存投手の底上げと新戦力の育成に取り組んでおり、トヨタ自動車硬式野球部からのアドバイスを取り入れるほか、メンタルトレーニングやデータ分析も導入。戦略面の強化に力を注いでいる。

創部当初から、女子硬式野球部には野球経験者だけでなく、他競技出身の選手も在籍している。すでに北海道選抜に5人が選出されるなど、個々の実力は全国レベルでも高く評価されており、全国大会での経験を通じて、短期間で目覚ましい成長を遂げている。

「ONEチーム」のスローガンのもと、北海道の野球少女に夢と希望を届ける存在として、旭川明成高校女子硬式野球部は、今日も力強く前進を続けている。

(写真・旭川明成高校提供)
(写真・旭川明成高校提供)

指導者・選手

<指導者>

▽監督
㉚大場 優

▽部長
㉛平岡 秀哉

▽コーチ
㊿鏡 遼大

<選手>

(背番号、氏名、ふりがな、学年、投打、出身中学・出身クラブチーム)

①廣田 妃成乃(ひろた ひなの)
3年・右投げ、右打ち
Gratias wish BC出身

②細見 瑠夏(ほそみ るか)
3年・右投げ、右打ち
札幌シェールズ出身

★主将
④谷詰 実紀依(たにづめ みのり)
3年・右投げ、右打ち
札幌シェールズ出身

⑤平田 優希乃(ひらた ゆきの)
3年・右投げ、右打ち
札幌シェールズ出身

⑥飯泉 百華(いいずみ ももか)
3年・右投げ、右打ち
札幌シェールズ出身

⑦長沼 心音(ながぬま こと)
1年・右投げ、右打ち
旭川DIANA出身

⑧武田 椿 (たけだ つばき)
2年・左投げ、左打ち
空知ブルームス出身

⑩窪田 柚奈 (くぼた ゆずな)
1年・右投げ、右打ち
札幌ボーイズ出身

⑪前多 稜希 (まえだ いづき)
3年・右投げ、右打ち
旭川DIANA出身

⑬河村 恋 (かわむら れん)
3年・右投げ、右打ち
旭川啓北中ソフトテニス部出身

⑭林 陽依 (はやし ひより)
2年・右投げ、左打ち
JBC札幌出身

⑮角田 帆菜 (かくた はんな)
2年・右投げ、左打ち
函館BBC VENUS出

⑯相澤 菜桜 (あいざわ なお)
2年・右投げ、右打ち
JBC札幌札幌出身

⑰斉藤 陽 (さいとう ひなた)
3年・右投げ、右打ち
Gratias wish BC出身

⑱石田 乃々 (いしだ のの)
3年・右投げ、右打ち
旭川中ソフトテニス部出身

⑲今井 花音 (いまい かのん)
2年・右投げ、右打ち
JBC札幌出身

㉑吉田 音羽 (よしだ とわ)
1年・右投げ、右打ち
Gratias wish BC出身

㉒澤村 穂乃花 (さわむら ほのか)
1年・右投げ、右打ち
旭川DIANA出身

㉓佐藤 朱音(さとう あかね)
1年・右投げ、右打ち
日高BBC出身

㉕中川 結月(なかがわ ゆづき)
2年・右投げ、右打ち
JBC札幌

㉖野口 聖奈(のぐち せな)
3年・右投げ、右打ち
Gratias wish BC

㉗金谷 梓咲(かなや あづさ)
1年・右投げ、右打ち
旭川DIANA出身

㉘鈴木 羽(すずき つばさ)
3年・右投げ、右打ち
砂川中野球部出身

㉙稲木 詩加(いなき しいか)
3年・右投げ、左打ち
JBC札幌出身

㉞森田 凛音(もりた りおん)
1年・右投げ、右打ち
滝川開西中野球部出身

㉟粟木 仁奈(あわき にいな)
1年・右・左
オホーツクスマイリーズ出身

㊴高橋 明香璃(たかはし あかり)
3年・右投げ、右打ち
旭川DIANA出身

㊶横山 愛ノ音(よこやま あのん)
3年・左投げ、左打ち
Gratias wish BC出身

㊺福田 暖音(ふくだ のん)
2年・右投げ、右打ち
旭川DIANA出身

㊽元村 夏音(もとむら かおん)
2年・右投げ、右打ち
オホーツクスマイリーズ出身

㊿田仲 愛莉(たなか あいり)
1年・左投げ、左打ち
札幌豊平東シニア出身

51櫻井 妃愛(さくらい ひめ)
3年・右投げ、右打ち
札幌シェールズ出身

55河内 真央(かわうち まお)
3年・右投げ、左打ち
富良野西中陸上部出身

56鵜飼 凛(うかい りん)
3年・右投げ、右打ち
JBC札幌出身

67工藤 圭乃(くどう かの)
2年・右投げ、右打ち
札幌ブルーシェ出身

77栗田 穂乃花(くりた ほのか)
3年・右投げ、右打ち
旭川DIANA出身

79設楽 琉衣(したら るい)
3年・右投げ、右打ち
旭川DIANA出身

81山田 苺花(やまだ いちか)
3年・右投げ、右打ち
JBC札幌出身

91糠谷 香苗(ぬかや かなえ)
3年・左投げ、左打ち
JBC札幌出身

99請川 暖(うけがわ はる)
2年・右投げ、右打ち
札幌ブルーシェ出身

(写真・旭川明成高校提供)
(写真・旭川明成高校提供)
(写真・旭川明成高校提供)
(写真・旭川明成高校提供)

トーナメント表

全国大会・トーナメント表
全国大会・トーナメント表
トーナメント表
トーナメント表

協力:旭川明成高等学校・女子硬式野球部

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