日高選抜の旅は、九州・佐賀から始まったわけではない。
そのストーリーの起点は、苫小牧で行われた都市対抗戦、そして代表決定戦となった留萌選抜とのあの“雨中決戦”だった。
雨で濡れたグラウンド、足元が取られる中での全力疾走。投手は思うようにストライクが入らない。そんな状況の中、互いに一歩も譲らず、緊張が張り詰めた一進一退の攻防。
最後はタイブレークにもつれ込み、日高選抜が意地と覚悟でつかみ取った勝利。
「全国へ行く」という願いが形になった瞬間だった。
あの雨中決戦を越えた日高選抜が、どれほどの覚悟を胸に佐賀の地へ乗り込んだか。
彼らの背中には、留萌選抜への思い、敗れ去った仲間への思い、地域の思い、保護者の思い、そして学童野球最後の瞬間に懸ける自身の思いが乗っていた。
そして迎えた青山杯。
初出場ながら堂々と戦い、
第1試合は9–1、
第2試合は7–1の快勝。
文句なしの2連勝だった。
だが野球は、ときに残酷だ。
リーグ戦の勝敗ではなく“得失点差”。
わずか1点──
たった1点だけ届かず、日高選抜の挑戦は幕を閉じた。
藤井監督はこう語ってくれた。
「二連勝して決勝トーナメントに出れなかったのが本当に悔しい。
もう2、3点取らせてあげたかった」
この言葉には、悔しさだけでなく、
選手たちへの深い愛情、指導者としての責任感、そして「この子たちをもっと見せたかった」という誇りがにじんでいた。
発行人も、はっきりと言いたい。
日高選抜は立派だった。
胸を張ってほしい。
なぜなら、この2試合の内容こそが彼らの本当の価値だからだ。
澤崎のランニング本塁打、小田の長打、白川の劇的な代打弾。
石居の出塁、海馬澤のつなぎ、互野の粘り。
岩間・長崎・竹内・松田の投手陣は、全国の舞台でも落ち着いた投球を見せた。
この力強さは偶然ではない。
雨の中で勝ち取ったあの代表権が、すでにこのチームを成長させていた。

そして忘れてはならないのが、
保護者の皆さんの存在。
九州まで駆けつけ、遠く離れた地で全力の拍手と声援を送り続けた。
最終戦を迎える子どもたちを、最後の瞬間まで支えたその姿には、静かな感動を感じる。
悔しさはある。
涙もあった。
しかし、それらは決して無駄ではない。
むしろ、
1点差で敗れたこの経験こそ、子どもたちを次のステージへ押し上げる最大の財産となる。
学童野球の最後に全国の舞台で2勝——これは胸を張っていい立派な成果です。
堂々と、次のステージに進んでほしい。
日高選抜の皆さん。
北海道から遠く離れた九州の地で、皆さんは確かに歴史を刻みました。

発行人・大川祐市(STRIKE)
