中学硬式野球のとかち帯広リトルシニアが、3月25日開幕の「JA共済杯第32回全国選抜野球大会」(大阪シティ信用金庫スタジアム)へ北海道代表として挑む。
十勝の地で鍛えられてきた18人。
彼らが向かうのは、単なる全国大会ではない。
“自分たちの現在地”が、容赦なく突きつけられる場所だ。
冬の十勝が育てたもの――技術以上に積み上げた土台
森徹監督は「とかち帯広が掲げる“負けない野球”が、秋季全道大会で何となく形になったかな」と、確かな手ごたえを口にする。KOKAJI CUP第1回大会での初優勝、北ガス杯準優勝、そして秋季全道大会準優勝――結果だけを見ても、その歩みは着実に前進している。
KOKAJI CUPと秋季全道大会はいずれも新チームで臨んだ大会だった。さらに北ガス杯では、3年生の出場が約3人程の中、2年生以下の選手たちが主体となり、上級生を相手に互角以上の戦いを演じた。この経験が、チーム全体の底上げにつながっている。
だが、とかち帯広の強さは、こうした戦績や数値だけでは語りきれない。
十勝の冬は長く、そして厳しい。
屋外での実戦機会がほとんど得られない環境の中で、選手たちは“できないこと”を嘆くのではなく、“できること”に向き合い続けてきた。
限られた空間、限られた時間。
その中で彼らが選んだのは、基礎の徹底だった。
日高遠征で久しぶりに踏んだ土の感触。
そこで行われた練習試合は、単なる解放感を味わう場ではなかった。
冬の間に積み重ねてきたものが、どこまで通用するのか――その“答え合わせ”の時間でもあった。
森徹監督は静かに振り返る。
「秋に見えた課題から逃げなかった」
その言葉の裏には、明確な変化への覚悟があった。
打撃ではフォームを一から見直し、抜本的な改造に着手。
単なるスイング強化ではなく、体の使い方から再構築し、再現性と強さを追い求めた。
フィジカル面でも、この冬は徹底的に鍛え上げた。
走る、鍛える、積み上げる――地道なトレーニングの繰り返しが、試合終盤でも崩れない土台を作り上げていった。
守備では、派手さを排し、基本の反復に特化。
一つ一つのプレーの精度を高め、“ミスをしない野球”を徹底的に追求した。
トレーニング、アップ、日々の準備。
すべてを見直し、細部にまでこだわり抜いた。
彼らが目指したのは、“勝つための変化”ではない。
“負けないための土台”を築くことだった。
この発想の違いこそが、チームの本質を形づくっている。
派手なスターはいない。
しかし、誰一人として欠けてはならない存在として機能する集団。
冬の十勝で積み上げたものは、技術だけではない。
耐え、考え、やり抜く力――そのすべてが、今のとかち帯広を支えている。

行動が変われば、意識が変わる――竹腰瞬の覚醒
今大会のキーマンに挙がるのが、竹腰瞬(新3年・ウエストマリナーズ出身)だ。
秋は目立たなかった。
だが冬を越え、確実に変わった。
「ウチは意識よりも行動」
森監督が繰り返すこの言葉は、チーム全体に浸透している。
考える前に動く。
やるべきことをやり切る。
その積み重ねが、竹腰の中に“変化”を生んだ。
声、姿勢、プレー。
すべてにおいて、チームを引っ張る兆しが見えている。
成長とは、技術だけではない。
人としての変化が、チームの空気を変える。

最弱の中にある強さ――とかち帯広の現在地
「出場チームで最弱だと思います」
森監督は迷いなく言い切った。
だが、その言葉の裏にあるのは悲観ではない。
現実を正しく認識する力。
そして、その上で戦う覚悟。
初戦は3月26日、GOSANDO南港野球場で行われ、関東連盟の千葉西リトルシニア(千葉県)と対戦する。
勝利すれば、翌27日の2回戦で関西連盟の守山リトルシニア(滋賀県)と対戦する。
全国の強豪と比べれば、実績も経験も劣るかもしれない。
だが、“負けない野球”を積み上げてきたチームには、簡単には崩れない芯がある。
派手さはない。
だが、崩れない。
それこそが、このチームの本質だ。

問いは一つ――通用するかではない、証明できるかだ
全国大会は、比較の場ではない。
証明の場だ。
どこまで通用するか――ではない。
何を残せるか。
18人の挑戦は、まだ始まっていない。
だが、このチームにはすでに一つの答えがある。
逃げなかった冬。
変えた行動。
積み上げた土台。
それらすべてを持って、彼らはグラウンドに立つ。
そして最後に、森監督はこう言った。
「優勝したい」
最弱を自覚したチームが、頂点を口にする。
そこにあるのは矛盾ではない。
本気の証明である。

指導者・選手
指導者
▽監督
㉚森 徹
▽コーチ
㊵藤原 潤
㊿大崎 勝也
選手
①山田 朔太郎
新3年・若葉野球少年団出身
②菊池 春馬
新3年・柳町イーグルス出身
③竹腰 瞬
新3年・ウエストマリナーズ出身
④中村 倖音
新2年・ウエストマリナーズ出身
⑤杉本 朔弥
新3年・新得町野球少年団出身
⑥山田 岳
新3年・柳町イーグルス出身
⑦眞野 優
新2年・豊成ファイターズ出身
⑧浦城 尚
新3年・ウエストマリナーズ出身
⑨栩内 巧太
新3年・士幌ファイターズ出身
⑩小瀬 朔
新2年・Nexus BBC出身
⑪藤山 将吾
新2年・豊成ファイターズ出身
⑫堂山 瑚虎
新3年・大空ジャイアンツ出身
⑬甲山 大雅
新2年・ウエストマリナーズ出身
⑭髙松 伶丞
新3年・明和ブルーサンダース出身
⑮中村 柚葵
新2年・Nexus BBC出身
⑯清水 琉碧
新2年・士幌ファイターズ出身
⑰田中 慶都
新3年・上士幌アローズ出身
⑱新岡 陽希
新2年・幕別野球少年団出身

全国大会までの足跡
決勝トーナメント・秋季全道大会
◆決 勝(10月12日)
● 2-6 札幌北
◆準決勝(10月11日)
〇 6-4 恵庭
◆2回戦(10月5日)
〇 2-0 札幌大谷
◆1回戦(10月4日)
〇 2-1 札幌栄
予選リーグ・秋季全道大会
〇 2-0 札幌東
● 2-7 北広島
〇 13-10 苫小牧
〇 8-0 苫小牧西
〇 7-2 千歳
5戦4勝1敗の予選2位通過で決勝トーナメント進出を果たした。
全国大会・トーナメント表


フォトグラフ







協力:とかち帯広リトルシニア
