最弱の自覚か、それとも覚悟か――とかち帯広、全国で問われる“本質”

最弱の自覚か、それとも覚悟か――とかち帯広、全国で問われる“本質”

冬の十勝が育てたもの――技術以上に積み上げた土台

 森徹監督は「とかち帯広が掲げる“負けない野球”が、秋季全道大会で何となく形になったかな」と、確かな手ごたえを口にする。KOKAJI CUP第1回大会での初優勝、北ガス杯準優勝、そして秋季全道大会準優勝――結果だけを見ても、その歩みは着実に前進している。

 KOKAJI CUPと秋季全道大会はいずれも新チームで臨んだ大会だった。さらに北ガス杯では、3年生の出場が約3人程の中、2年生以下の選手たちが主体となり、上級生を相手に互角以上の戦いを演じた。この経験が、チーム全体の底上げにつながっている。

 だが、とかち帯広の強さは、こうした戦績や数値だけでは語りきれない。

 十勝の冬は長く、そして厳しい。
 屋外での実戦機会がほとんど得られない環境の中で、選手たちは“できないこと”を嘆くのではなく、“できること”に向き合い続けてきた。

 限られた空間、限られた時間。
 その中で彼らが選んだのは、基礎の徹底だった。

 日高遠征で久しぶりに踏んだ土の感触。
 そこで行われた練習試合は、単なる解放感を味わう場ではなかった。
 冬の間に積み重ねてきたものが、どこまで通用するのか――その“答え合わせ”の時間でもあった。

 森徹監督は静かに振り返る。

 「秋に見えた課題から逃げなかった」

 その言葉の裏には、明確な変化への覚悟があった。

 打撃ではフォームを一から見直し、抜本的な改造に着手。
 単なるスイング強化ではなく、体の使い方から再構築し、再現性と強さを追い求めた。

 フィジカル面でも、この冬は徹底的に鍛え上げた。
 走る、鍛える、積み上げる――地道なトレーニングの繰り返しが、試合終盤でも崩れない土台を作り上げていった。

 守備では、派手さを排し、基本の反復に特化。
 一つ一つのプレーの精度を高め、“ミスをしない野球”を徹底的に追求した。

 トレーニング、アップ、日々の準備。
 すべてを見直し、細部にまでこだわり抜いた。

 彼らが目指したのは、“勝つための変化”ではない。
 “負けないための土台”を築くことだった。

 この発想の違いこそが、チームの本質を形づくっている。

 派手なスターはいない。
 しかし、誰一人として欠けてはならない存在として機能する集団。

 冬の十勝で積み上げたものは、技術だけではない。
 耐え、考え、やり抜く力――そのすべてが、今のとかち帯広を支えている。

(写真・とかち帯広リトルシニア提供)
(写真・とかち帯広リトルシニア提供)

行動が変われば、意識が変わる――竹腰瞬の覚醒

今大会のキーマンに挙がるのが、竹腰瞬(新3年・ウエストマリナーズ出身)だ。

 秋は目立たなかった。
 だが冬を越え、確実に変わった。

 「ウチは意識よりも行動」

 森監督が繰り返すこの言葉は、チーム全体に浸透している。

 考える前に動く。
 やるべきことをやり切る。

 その積み重ねが、竹腰の中に“変化”を生んだ。

 声、姿勢、プレー。
 すべてにおいて、チームを引っ張る兆しが見えている。

 成長とは、技術だけではない。
 人としての変化が、チームの空気を変える。

(写真・とかち帯広リトルシニア提供)
(写真・とかち帯広リトルシニア提供)

最弱の中にある強さ――とかち帯広の現在地

 「出場チームで最弱だと思います」

 森監督は迷いなく言い切った。

 だが、その言葉の裏にあるのは悲観ではない。

 現実を正しく認識する力。
 そして、その上で戦う覚悟。

初戦は3月26日、GOSANDO南港野球場で行われ、関東連盟の千葉西リトルシニア(千葉県)と対戦する。
勝利すれば、翌27日の2回戦で関西連盟の守山リトルシニア(滋賀県)と対戦する。

 全国の強豪と比べれば、実績も経験も劣るかもしれない。
 だが、“負けない野球”を積み上げてきたチームには、簡単には崩れない芯がある。

 派手さはない。
 だが、崩れない。

 それこそが、このチームの本質だ。

(写真・とかち帯広リトルシニア提供)
(写真・とかち帯広リトルシニア提供)

問いは一つ――通用するかではない、証明できるかだ

 全国大会は、比較の場ではない。

 証明の場だ。

 どこまで通用するか――ではない。
 何を残せるか。

 18人の挑戦は、まだ始まっていない。
 だが、このチームにはすでに一つの答えがある。

 逃げなかった冬。
 変えた行動。
 積み上げた土台。

 それらすべてを持って、彼らはグラウンドに立つ。

 そして最後に、森監督はこう言った。

 「優勝したい」

 最弱を自覚したチームが、頂点を口にする。

 そこにあるのは矛盾ではない。
 本気の証明である。

(写真・とかち帯広リトルシニア提供)
(写真・とかち帯広リトルシニア提供)

指導者・選手

指導者

▽監督
㉚森 徹

▽コーチ
㊵藤原 潤

㊿大崎 勝也

選手

①山田 朔太郎
新3年・若葉野球少年団出身

②菊池 春馬
新3年・柳町イーグルス出身

③竹腰 瞬
新3年・ウエストマリナーズ出身

④中村 倖音
新2年・ウエストマリナーズ出身

⑤杉本 朔弥
新3年・新得町野球少年団出身

⑥山田 岳
新3年・柳町イーグルス出身

⑦眞野 優
新2年・豊成ファイターズ出身

⑧浦城 尚
新3年・ウエストマリナーズ出身

⑨栩内 巧太
新3年・士幌ファイターズ出身

⑩小瀬 朔
新2年・Nexus BBC出身

⑪藤山 将吾
新2年・豊成ファイターズ出身

⑫堂山 瑚虎
新3年・大空ジャイアンツ出身

⑬甲山 大雅
新2年・ウエストマリナーズ出身

⑭髙松 伶丞
新3年・明和ブルーサンダース出身

⑮中村 柚葵
新2年・Nexus BBC出身

⑯清水 琉碧
新2年・士幌ファイターズ出身

⑰田中 慶都
新3年・上士幌アローズ出身

⑱新岡 陽希
新2年・幕別野球少年団出身

(写真・とかち帯広リトルシニア提供)
(写真・とかち帯広リトルシニア提供)

全国大会までの足跡

決勝トーナメント・秋季全道大会

◆決 勝(10月12日)
● 2-6 札幌北

◆準決勝(10月11日)
〇 6-4 恵庭

◆2回戦(10月5日)
〇 2-0 札幌大谷

◆1回戦(10月4日)
〇 2-1 札幌栄

予選リーグ・秋季全道大会

〇 2-0 札幌東

● 2-7 北広島

〇 13-10 苫小牧

〇 8-0 苫小牧西

〇 7-2 千歳

5戦4勝1敗の予選2位通過で決勝トーナメント進出を果たした。

全国大会・トーナメント表

全国選抜大会・とかち帯広
全国選抜野球大会

フォトグラフ

(写真・とかち帯広リトルシニア提供)
(写真・とかち帯広リトルシニア提供)
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(写真・とかち帯広リトルシニア提供)
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協力:とかち帯広リトルシニア

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