目の色が変わった朝――全国屈指撃破の歓喜と、届かなかったベスト4への悔しさ

目の色が変わった朝――全国屈指撃破の歓喜と、届かなかったベスト4への悔しさ

新家スターズを破る価値ある白星 笹谷監督「長曽根と戦いたかった。その悔しさが今も一番残っています」

イニングスコア

◆3回戦(7月27日)

新家スターズ
000003=3
04010x=5
東16丁目フリッパーズ
(新)長尾ー西村
(東)高野ー中本
▽三塁打:小野寺(東)
▽二塁打:井谷、井上(東)

◆準々決勝(7月27日)

渡会BAST
012100=4
000001=1
東16丁目フリッパーズ
(渡)中川兼、玉串ー中川瑛
(東)市橋、小野寺、中本ー中本、小野寺
▽二塁打:中川兼(渡)、中本(東)

「目の色が変わった」 監督が感じた子どもたちの覚悟

 2回戦で快勝したにもかかわらず、笹谷武志監督は選手たちを決して褒めなかった。

 試合後に伝えたのは「全国制覇を本気で目指すなら、責任と本気の覚悟を持って来い」という厳しいメッセージだった。

 その言葉は、選手たちにしっかり届いていた。

 3回戦当日、グラウンドに集まった子どもたちを見た瞬間、笹谷監督は違いを感じたという。

 「本当に目の色が変わっていました。この試合に懸ける気持ちが表情から伝わってきました」

 そして、その変化はプレーにも表れた。

 課題としていた守備では、外野陣が長打性の打球を、序盤だけでも流れを引き寄せる好守を連発。内野も好守を見せ落ち着いてアウトを積み重ね、全国トップレベルの相手に一歩も引かなかった。

好投を続けた高野投手(東16丁目)
先発し、新家打線を抑えゲームを作った高野投手(東16丁目)
最終回のピンチを投げ切った市橋投手(東16丁目)
最終回のピンチを救った市橋投手(東16丁目)

守備で流れをつくり、攻撃で一気に勝負を決めた

 相手は全国屈指の強豪・新家スターズ。

 走塁でも全国トップクラスのけん制技術を誇る相手に対し、東16丁目フリッパーズは思い切った戦略を選んだ。

 「リードはほとんど取らないと決めました。相手の一番の武器でアウトになるくらいなら、そこは思い切って捨てようと」

 リスクを排除し、その分だけ攻撃へ集中する。

 狙いは的中した。

 二回、小野寺佑亮(6年)、原夢輝太(6年)、池田成(6年)らの適時打で一挙4得点。四回にも小野寺の三塁打を足掛かりに高塚大輝(6年)の適時打で追加点を奪った。

 投げては高野恭佑(6年)、池田、市橋桔平(6年)の継投。六回に3点を返されたものの、最後までリードを守り切り5-3で勝利した。

 「全国トップレベルの相手に勝てたことで、『自分たちも全国で戦える』『やればできる』という自信を子どもたちは持てたと思います。本当に価値のある試合でした」

 一方で、笹谷監督は最後まで新家スターズへの敬意も忘れなかった。

 「何点差あっても安心できない。本当に気持ちの強いチームでした。最後の3点を返してきた粘りは、さすがだと思いました」

二回、センター前を放ちチャンスを広げた山内(東16丁目)
二回、センター前を放ちチャンスを広げた山内(東16丁目)
四回、三塁打で口火を切った小野寺(東16丁目)
四回、三塁打で口火を切った小野寺(東16丁目)

ダブルヘッダーの壁 渡会BEASTの左腕が立ちはだかる

 その勢いのまま迎えた準々決勝。

 しかし、東16丁目フリッパーズには大きな試練が待っていた。

 ダブルヘッダーにより、エース・高野は球数制限で登板できない。

 継投で臨むことは最初から分かっていた。

 それでも笹谷監督は敗戦を言い訳にはしなかった。

 「条件は条件です。それでも勝たなければいけなかった」

 相手・渡会BEASTの先発は5年生左腕・中川兼助。

 想像以上だったという。

 「5年生なので、どこかで崩れるかなとも思っていました。でも最後まで崩れませんでした」

 「制球も素晴らしかったし、ボールの切れも本当に良かった。スリーボールまでいっても、最後はきっちりストライクを取ってくる。明らかなボール球がほとんどありませんでした」

 打者は差し込まれ、東16丁目最大の武器だった攻撃力を最後まで発揮できなかった。

 唯一の得点は六回、中本の二塁打から1点を返したのみ。

 スコア以上に相手左腕の完成度の高さを痛感した一戦だった。

小野寺主将より千羽鶴が渡会BASTへ
試合後、小野寺主将は渡会BEASTへ千羽鶴を手渡し、「僕たちの分まで勝ち進んでほしい」という思いを託した。
渡会BASTさんと交流を図った東16丁目ナイン
渡会BASTさんと交流を図った東16丁目ナイン

「長曽根ストロングスと戦いたかった」

 大会を振り返っても、笹谷監督の胸に残っているのは、新家スターズ戦の勝利より準々決勝の敗戦だった。

 「渡会BEASTさんに勝って、準決勝で長曽根ストロングスと戦いたかった」

 その言葉に迷いはなかった。

 「そこにたどり着きたかったんです。本当に悔しいですね」

 全日本学童出場を逃しながらも全国トップレベルの実力を持つ渡会BEAST。

 そして、その先に待っていた長曽根ストロングス。

 全国制覇を目指していた東16丁目フリッパーズにとって、その舞台へ届かなかった悔しさは何よりも大きかった。

笹谷監督の話に耳を傾ける東16丁目ナイン
笹谷監督の話に耳を傾ける東16丁目ナイン

高野山で得た財産 いよいよ全国最高峰の舞台へ

  それでも、この夏の高野山での挑戦は決して色あせるものではない。

 全日本学童大阪府代表・新家スターズを堂々と破り、全国屈指の強豪と真っ向から渡り合った経験は、選手たちにとって何ものにも代えがたい財産となった。守備を磨き、戦い方を見直し、自分たちの強みを信じ抜いた高野山での戦い。その積み重ねが、チームを確実に一段階成長させた。

 笹谷監督が2回戦後に選手たちへ投げ掛けた「気持ちが変われば、プレーも変わる」という言葉は、3回戦・新家スターズ戦で見事に証明された。そして、その成功体験こそが次なる戦いへの大きな武器になる。

 高野山で悲願の全国制覇は果たせなかった。しかし、東16丁目フリッパーズの本当の勝負はここからだ。

 8月7日、愛媛県・坊っちゃんスタジアムをメーン会場に開幕する「高円宮賜杯第46回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」。南北海道代表として、全国最高峰の舞台へ挑む。

 目指すのは、2017年以来9年ぶり2度目の日本一。

 高野山で味わった歓喜も悔しさも、すべてを力に変えて――。

 次に挑むのは、日本一という、もっとも高い山。東16丁目フリッパーズの本気の挑戦が、いよいよ始まる。

高野山で得た経験を胸に、次なる頂を目指す東16丁目ナイン
高野山で得た経験を胸に、次なる頂を目指す東16丁目ナイン

協力:東16丁目フリッパーズ

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