
「北海道なのに北広島?」。そう疑問を持つ人も少なくないだろう。実は、この地名には明治時代の開拓史に基づく深い背景がある。現在の北広島市は、1884年(明治17年)に広島県からの集団移住によって開かれた町であり、その名も移住元の広島県に由来している。
1884年、広島県から25戸103人が現在の北広島市の地に入植。厳しい自然環境の中での開拓が始まった。当初、入植者のリーダーである和田郁次郎の名前を取って「和田村」とする案もあったが、和田自身が「皆で開拓したのだから」と固辞したことにより、全員の故郷である「広島」にちなみ「広島村」と命名された。
その後、町制施行、市制施行を経て、全国的に有名な広島県広島市との混同を避けるため、地理的に北海道にあることを示す「北」を冠して「北広島市」と改称された。これにより、北海道の広島というルーツを大切にしつつ、地域の独自性も保たれることとなった。
つまり、北広島市という地名は、広島県からの移住者たちによる集団開拓の歴史を色濃く反映したものであり、北海道開拓の一端を担った人々の足跡が刻まれている。今なお、広島県とのつながりを象徴する自治体名として、多くの人々に親しまれている。