
—企業チームの伝統から地域に根づく野球文化へ—
かつて王子製紙苫小牧硬式野球部が活躍した街・苫小牧。企業チームとしての栄光を礎に、球場整備とクラブチームの台頭を経て、野球は市民の手に受け継がれてきた。オーロラ球場、市営清水球場、そして現代のとましんスタジアム——三つの拠点を軸に広がる苫小牧の野球フィールドは、今も北海道の野球文化を支える原動力となっている。
苫小牧の球史を彩った「王子製紙苫小牧硬式野球部」
苫小牧の野球史は、1950年に創部された「苫小牧製紙硬式野球部」から始まる。1952年の社名変更で「王子製紙苫小牧硬式野球部」となり、1959年には都市対抗野球大会へ初出場。1987年にはベスト8進出を果たすなど、全国の舞台でも存在感を示した。
しかし、1990年代の企業再編の波を受け、2000年の都市対抗出場を最後にチームは解散。その後、残された部員や地域の支援者により「オール苫小牧」が誕生し、地域クラブチームとして伝統は今も続いている。
歴史の証人「市営清水球場」
かつて王子製紙所有のグラウンドだった場所は、現在「苫小牧市営清水球場」として広く市民に開かれている。オーロラ球場(現在の市立病院敷地)閉鎖後、代替施設として苫小牧市が正式に借用し、2004年から市が管理するようになった。
両翼95m、中堅120m、収容人数1,000人を誇るこの球場は、硬式・軟式問わず多くの大会が開催され、今も地域野球の拠点として活躍を続けている。

現代の主役「とましんスタジアム」
市営清水球場と並ぶ苫小牧のもう一つの重要な舞台が「とましんスタジアム(苫小牧市営緑ヶ丘野球場)」だ。1986年に市の第2球場として誕生し、2015年から大規模なリニューアルを実施。2016年にはスコアボードの電光化や照明設備の導入など、現代的な施設として再出発を遂げた。
ネーミングライツによって「とましんスタジアム」と名付けられたこの球場は、今や苫小牧市内最大級の野球イベント会場となり、世代を問わず選手たちの夢舞台となっている。

終わりなき継承と進化
王子製紙が築いた礎を引き継ぐ形で、市営球場は今も苫小牧の野球文化を支えている。企業チームの時代から、クラブチーム、少年野球、学校野球へと広がるこの「野球のフィールド」は、苫小牧という街のスポーツ文化の象徴だ。
球場に響く打球音は、かつてのエリート実業団の記憶を今に伝え、次の世代の挑戦を見守っている。