9月28日、鵡川町・田浦球場で「第23回全国中学生都道府県対抗野球大会in伊豆・北海道予選」の準決勝・決勝が行われた。決勝では西胆振選抜が渡島・函館BBCを相手に逆転サヨナラ勝ちを収め、2年ぶり3度目となる全国大会出場を決めた。
準決勝で宗谷BBCとの八回タイブレークを制した西胆振BBCは、その勢いのまま決勝に臨んだ。対戦相手は優勝候補筆頭と目された渡島・函館BBC。試合は投手戦の展開となったが、西胆振が粘り強く勝機をつかんだ。
渡島・函館に1点を先行された五回、西胆振は5番・甲野佑篤(伊達パンダース出身/3年)がライト前安打で出塁し、バッテリーミスで二塁へ進む。続く6番・松尾莉玖(豊浦シーガルス出身/3年)の犠打で一死三塁と好機を広げると、二死三塁から再びバッテリーミスを誘い甲野が生還。試合は1-1の同点に追いついた。
そして迎えた七回裏、再び甲野がチームを勢いづける。レフト前安打で出塁すると、松尾も内野安打で続き一、二塁。さらにバッテリーミスで二、三塁とチャンスを広げる。二死となり迎えた8番・三橋虎冴(長和ジュニアスワローズ出身/3年)の打球は三塁寄りへ。渡島・函館の左腕・西舘輝投手(東山エンジェルス出身/3年)が捕球して一塁へ送球するも、わずかにそれて一塁手がベースを離れたとの判定。これで三走・甲野がホームインし、劇的なサヨナラ勝ちを収めた。
西胆振BBCは、人口3万人の伊達市を拠点に虻田町、壮瞥町、豊浦町の選手を加えた17人で編成されたチーム。セレクションは行わず、「やってみたい」と集まった選手たちで構成される。その団結力と粘り強さが、強豪を下して全国切符をつかむ原動力となった。

西胆振BBC・田中直樹監督「信じてきた2か月、子どもたちの力を信じ抜いた」
苦境から這い上がった選手たち
「この選手たちと出会って2か月。このメンバーなら全国に行けると信じて、練習を重ねてきました」と田中直樹監督は語る。結成当初、練習試合ではほとんど勝てず、負けが続いた。子どもたちは悔しさを感じつつも、監督は「今は底の時期。必ず上がっていける。自分を信じろ」と声をかけ続けたという。
技術よりも「心」を育てる指導
特別な練習を加えたわけではない。監督が重視したのは「自分のためではなくチームのために頑張る」という心構えだった。選抜形式で集まった少人数のチームゆえに、一人ひとりの役割は大きい。「もともと技術は良いものを持っている子ばかり。だからこそ、勇気を持ってプレーしなさい」と、田中監督は繰り返し伝えてきた。選手に寄り添い、技術を伸ばすヒントを示しながら、メンタル面の成長を支えてきた。
決勝戦前にかけた言葉
準決勝を勝ち抜き、決勝戦に挑む前。監督は選手たちに「ここまで来たのはお前ら自身の力。最後まで楽しく精一杯やってごらん」と送り出した。勝っても負けても、子どもたちの努力を讃える姿勢は一貫している。結果として勝利を収め、優勝という最高の形で結実したが、その裏には「信じ抜く」指導哲学があった。
「勝ったのは子どもたちの力。私は彼らを信じ続けただけです」——田中監督の言葉には、チームを全国へ導いた確かな信念が込められていた。

長橋奏人「チームを勝たせる投球を」—決勝での快投と全国への決意
決勝の大舞台で堂々と腕を振り抜き、決勝の先発マウンドに立っていたのは長橋奏人(ながはし かなと)君。175センチの体から力強いストレートを武器に相手打線を封じ込め、見事な投球で勝利に貢献した。
「優勝が決まった瞬間は本当にうれしかったです。ここまで来られたのは、指導者の方々やお父さんお母さんや仲間のおかげです」と長橋君は笑顔で振り返る。これまでの試合では制球に苦しむ場面もあったが、この日の決勝ではストレートを軸に変化球を織り交ぜ、打たせて取る投球を徹底。「自分の持ち味はやっぱりストレートです」と胸を張った。
全国大会への意気込みを問われると、「チームを勝たせる投球ができるように、今日からまた頑張ります」と力強い言葉。優勝をつかんだ喜びを胸に、次は全国の舞台で再び腕を振るう。
〇長橋 奏人(ながはし かなと)
伊達光陵中学校所属・投手
3年・長和ジュニアスワローズ出身
右投げ、右打ち
175センチ、64キロ
家族構成は両親と弟2人の5人。
球種はストレート、カット、カーブ。ストレートと変化球のコンビネーションで打者を打ち取るピッチング。
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高橋優真主将「全国の舞台では皆さんの思いを背負って戦う」—優勝の喜びと次なる挑戦
決勝戦を制し、優勝の喜びに包まれた主将の高橋優真(壮瞥中・3年)君。試合後のインタビューでは、これまで積み重ねてきた努力と仲間への感謝、そして全国大会への強い決意を語った。
「優勝が決まった瞬間は、本当に頑張ってきた気持ちが一気にこみ上げてきました」と振り返る。印象に残った場面として、準決勝で甲野佑篤(伊達光陵中・3年)が2本のヒットを放ちチームを勢いづけたことを挙げ、「あのプレーで決勝に向けて波に乗れた」と話した。
一方で課題にも言及し、「チャンスをつぶしてしまう場面が少し目立ったので、一つひとつのチャンスをチーム全体でしっかりつかんでいきたい」と冷静に自己分析を見せた。
最後に全国大会への抱負を問われると、「代表になったからには皆さんの思いを背負って戦っていきたいと思います。全力で頑張ります」と力強く宣言。仲間とともに勝ち取った優勝の喜びを胸に、次は全国の舞台でさらなる飛躍を目指す。
〇高橋 優真(たかはし ゆうま)
壮瞥中学校所属・投手
3年・伊達パンダース出身
左投げ、左打ち
172センチ
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渡島・函館BBC工藤翔太監督「野球を通じて人として成長を」—決勝惜敗から次なるステージへ
渡島・函館ベースボールクラブ(BBC)は、「第23回全国中学生都道府県対抗野球大会in伊豆・北海道予選」の決勝で西胆振BBCと対戦。接戦の末、1対2で惜しくも敗れた。優勝には届かなかったものの、工藤翔太監督は選手たちの成長を感じ取り、次のステージでの飛躍を願う言葉を残した。
工藤監督は、毎年中体連終了後に実施するセレクションについて「だいたい1週間後に選手を募集し、人数を定めてセレクションを行っています。今年は7月2週目の土曜日に行いました」と説明する。チーム始動当初は、連携不足や練習機会の少なさに苦しんだが、「ZETT杯をきっかけに勝ち方や役割を理解し、3年生を中心にまとまりが出てきました」と振り返った。
特に守備面では、基本に立ち返ったキャッチボールの徹底が成果を生み出した。「最初は送球の握り方ひとつでボールが乱れることも多かったが、複数人でやり直す練習を重ねることで守備が整ってきました。さらに投手陣も揃い、役割を果たす意識が高まったのが強みでした」と工藤監督。故障者が出て苦しい投手起用を強いられながらも、決勝まで戦い抜いた。
惜しくも決勝で敗れたが、監督が最後に語ったのは未来を見据えたメッセージだ。
「私たち指導者として願うのは、野球を通じて人として成長してほしいということです。高校野球では、自分の力で道を切り開き、社会に出ても活躍できる人材になってほしい。投げる、打つだけでなく、役割や気配りを大切にし、自分の長所を生かして戦える選手になってほしいと思います」
1点差で涙をのんだ渡島・函館BBC。しかし工藤監督の言葉どおり、その経験は選手たちを次のステージへと押し上げる糧となるだろう。

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協力:日本中学生野球連盟北海道支部
