中学硬式野球の札幌ボーイズを1月12日、冬季練習に励む選手たちをチーム訪問した。環境が整備された室内施設には、白球を追う音と選手たちの声が響く。新チーム発足直後から優勝・準優勝を重ねる安定感。その背景には、編成の工夫、守備力の向上、そして投手陣の競争があった。田頭監督の言葉を軸に、新チームの現在地と伸びしろを追う。
編成の妙が生んだ「試合勘」と安定感
昨年10〜11月に整備された新たな室内施設は、卒団生保護者の協力による本格的な内装で、冬場の練習環境を一段と豊かにしている。この恵まれた環境の中でスタートした新チーム。好調の最大の要因について、田頭監督は 「当初のチーム分け」 を挙げる。
昨年は3年生と2年生を分けて編成し、その中に1年生を振り分けた。結果として、2年生同士が主力として出場する機会が増え、試合経験を積み重ねることができた。
「小さなミスが本当に減りました」
秋の段階で守備位置の輪郭が固まり、内外野の連携も向上。多少のミスがあっても大量失点につながらない。勝ち切れた試合では「追いつける」という空気がチーム全体を包み込む。一方、惜敗には入りの緩さや流れを断ち切れない場面という共通点もあった。
それでも現在は「当たり前のアウト」を確実に積み上げられる段階まで到達している。次のテーマは、その一歩先。届かなかった打球をアウトにする“もう一つ”の積み重ねだ。

センターラインの成熟と、三本柱の投手陣
守備の軸は明確だ。扇の要を担うのは西村優晴主将(ポルテ札幌東出身/2年)。冷静なゲームコントロールと統率力でチームを支える。
二塁手は赤坂航希(札幌白石リトルリーグ出身/2年)。堅実なグラブさばきが持ち味だ。
遊撃は吉永知矢(ポルテ札幌東出身/2年)と大川原煌士(元栄フェニックス出身/2年)が競う構図。安定感の吉永、守備範囲と躍動感の大川原。それぞれの強みがチームの層を厚くしている。
さらに三塁には、昨年まで一塁を守っていた澤江瞭輔(蒲町スポーツ少年団野球部出身/2年)のコンバート案。打撃で成長を見せる西村琉壱(野幌ファイターズ出身/2年)も一塁の有力候補だ。
投手陣は三本柱。
- 篠原 圭(札幌南JBC出身/2年)
- 大川原煌士
- 吉永知矢
「ローテーションで回せるレベル」と指揮官は評価する。
篠原はスタミナ強化が鍵。大川原は球速向上とともに制球の精度を磨きたい。吉永は安定感を土台に球種の幅を広げたい。誰がエースになるのかは、連盟登録の日まで分からない。競争がそのままチーム力を押し上げている。
球数制限の中で澤江、西村琉壱の台頭もあり、総合力は確実に増している。

「2番と4番最強構想」と、未来への課題
攻撃面でのキーワードは「2番と4番」。
7イニング制では打席配分が偏る可能性がある。そこで上位に確実に得点力を置く構想だ。
- 2番:澤江瞭輔
- 4番:西村優晴
この2人が機能すれば、打線は一気に破壊力を増す。1番・3番には、足と出塁率、そして長打力を兼ね備えた選手を置きたい考えだ。
一方で、今後の鍵を握るのは1年生の突き上げ。2年生に比べてややおとなしい印象があるという。
「レギュラーを奪うという目の色の変化がほしい」
一人、二人と突き抜ける存在が現れれば、チームの熱量はさらに上がるだろう。
新チームになってから敗れたのは、旭川大雪と苫小牧のみ。その2チームへのリベンジが明確な目標だ。
田頭監督は就任3年目。チームはポニーリーグ時代の札幌ロイヤルズから数えて41年目の歴史を持つ。伝統は重い。しかし今、確実に進化の途上にある。
守備で崩れず、投手で試合をつくり、上位で仕留める。
新世代は、着実に“勝ち切るチーム”へと歩みを進めている。

「個」をひとつに――西村優晴キャプテンが目指す“守備で勝つ”チーム
ドリスポカップ優勝、全国一次予選準優勝、全国二次予選第3位。
結果だけを見ると順調に成長しているように見える。しかし、その裏には大敗の悔しさや、自分たちの甘さに気づいた瞬間があった。
新チームを率いる西村優晴キャプテン(ポルテ札幌東出身/2年)は、その経験をどう受け止め、春に向けて何を目指しているのか。中学生らしいまっすぐな言葉で語ってくれた。
強い「個」をどうまとめるか
「一人ひとりの個性や力が強いチームです」
西村キャプテンがまず話してくれたのは、チームの強みだった。
だからこそ大事なのは、それぞれがバラバラにならないこと。
「それをひとつにまとめることを意識しています」
試合中の声かけやベンチの雰囲気づくり。
うまくいっているときも、うまくいかないときも、全員が同じ方向を向けるようにすることがキャプテンの役目だという。
個人の力だけでは勝てない。
チームとして戦えるかどうかが大事だと感じている。
勢いと悔しさから学んだこと
ドリスポカップで優勝したときは、チームに勢いがあった。
「このままいこう、という雰囲気でした」
自信もあり、前向きな空気に包まれていた。
しかし、全国一次予選のリーグ戦で旭川大雪ボーイズに0―8で敗戦。大きな衝撃だった。
「負けて、もう一度一から考え直しました」
その後も勝ちはしたが、どこかに気持ちの緩みがあったと振り返る。
優勝するために必要なことは何か――。
「守備力の強化が課題です。特に状況判断に弱さがあります。内野も外野も、一球一球の準備が足りない」
さらに、西村キャプテンはこう続ける。
「試合前の雰囲気や、一人ひとりが心の底から“勝ちたい”と思えるかどうかも大事です」
勝敗の差は、技術だけではない。
本気で勝とうとする気持ちが揃っているかどうか。
その大切さを、敗戦から学んだ。
春へ向けて――守備から流れをつくる
春の開幕は4月。
目標はもちろん優勝だ。
「もっとレベルを上げないと勝てないと思います」
チームの一番の課題は守備。
西村キャプテンは守備をこう考えている。
最高のプレー。
最悪のプレー。
そして最低限のプレー。
「まずは最低限のプレーを確実にやることが大事」
一球ごとに何が起きるかを考えて準備する。
それができれば失点は減り、勝利に近づく。
チーム全員も課題は理解しているという。
「あとは実行するだけです」
個人としては打率5割を目指す。
しかし、それ以上に大事なのはチームの勝利。
守備から流れをつくり、最後まで気持ちが切れないチームになること。
秋の悔しさを胸に、「個」を「チーム」へ。
西村優晴キャプテンとともに、春への挑戦が続いている。
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西村 優晴(にしむら ゆうせい)
札幌ボーイズ/2年
右投げ、右打ち
165センチ、64キロ
野球を始めたきっかけはプロ野球観戦。小学2年生から野球を始め、ポルテ札幌東出身。
主将として精神的支柱となりチームをけん引。4番・捕手として攻守両面でチームを支えている。
初回で試合を決める――攻撃の起点・澤江が担う2番の責任
打線の中心でありながら、任されているのは2番。強打だけではなく、流れを生み出す役割を背負う澤江選手は、初回の一打席目から試合を動かす意識を徹底している。ドスポカップ優勝の裏にもあったのは、その“初回へのこだわり”だった。開幕を目前に控えた今、攻撃の起点としての責任と進化への現在地を聞いた。
可能性を消さない――初回に回る打者の覚悟
「今は2番を任せてもらっています。初回に必ず回ってくる打順なので、三振など可能性が広がらない打撃は避けることを意識しています」
澤江選手が最も重視するのは、“流れを止めない”こと。四球でも安打でもいい。まず出塁する。最低限、次の打者へ可能性をつなぐ。その意識が、攻撃のリズムを生み出す。
2番は単なるつなぎ役ではない。初回の攻撃を設計する存在だ。相手投手の立ち上がりを見極め、ボールの質や制球を感じ取りながら、チームに情報と流れをもたらす。その一打席が、試合全体のトーンを決めると知っている。
優勝を引き寄せた“初回の攻め”
ドリスポカップの準決勝、決勝ともに、チームは初回から得点圏へ走者を進め、主導権を握った。
「相手投手のボールを見極めながら出塁し、走者を進めて得点できたことが大きかったと思います。逆に負けている試合は、初回で抑え込まれて流れをつくれないことが多い。初回の入りは本当に大事だと感じました」
ベンチでは投手の球質や配球傾向を素早く共有。打席の感覚を次の打者へ伝え、打線全体で攻略する。個の結果だけでなく、線として攻める。その積み重ねが優勝へとつながった。
初回を制する者が試合を支配する――。その実感が、澤江選手の中で確信へと変わっている。
フェンスの向こうへ――信頼を背負う存在へ
開幕まで残りわずか。個人としての課題は明確だ。
「パワーアップが必要だと思っています。まだ柵越えが打てていないので、来年はフェンスオーバーを目標にしています」
だが、目指すのは長打だけではない。
「打席に立ったときに“この選手なら大丈夫”とチームの仲間から思ってもらえる存在になりたい。投手に威圧感を与えられるよう、結果を残していきたいです」
チーム全体でも「右方向に強い打撃」をテーマに掲げる。インサイドアウトでバットを出し、引っかけた内野ゴロや内野フライを減らす。低く強い打球を右方向へ運び、攻撃を連動させる。
それぞれが役割を理解し、さらに一段上を目指す。その中心で、澤江選手は初回から責任を背負う。
試合を決めるのは、終盤とは限らない。始まりの一打席が、勝敗の行方を左右する。攻撃の起点としての覚悟は、すでに整っている。
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澤江 瞭輔(さわえ りょうすけ)
札幌ボーイズ/2年
右投げ、右打ち
171センチ、64キロ
野球を始めたのは小学4年生の頃。テレビでプロ野球を観戦し、特に 吉田正尚選手のプレーに憧れ、「かっこいい」と思ったことがきっかけだった。
当時は宮城県仙台市に在住。蒲町スポーツ少年団野球部で競技をスタートさせた。
小学校卒業後、中学校入学のタイミングで父親の仕事の都合により札幌市へ転居。進学と同時に 札幌ボーイズ を選び、現在に至る。
一球で流れを変える――守備の要・吉永選手が描く「信頼される遊撃手」への道
ドリスポカップ準決勝、旭川大雪ボーイズ戦。初回二死満塁――いきなり訪れた最大のピンチで、三遊間を破ろうとする強烈な打球に飛びついたのは、ショートを守る吉永選手だった。あの一歩、あの一瞬の判断が、試合の空気を引き寄せた。守備の要として、そしてチームの安心感の象徴として。吉永選手の言葉から、「守り勝つ野球」の現在地と、その先を探る。
流れを引き寄せた“一歩”――準決勝の三遊間
「ドリスポカップの準決勝、旭川大雪ボーイズ戦です。初回裏、ツーアウト満塁の場面でショートを守っていました。三遊間への強い打球に飛びついてアウトにできたことで、ピンチを切り抜けることができました。そのプレーで自分自身も自信がつきました。」
試合の流れは、時に一球で決まる。ましてや初回二死満塁。もし打球が抜けていれば、複数失点も覚悟しなければならない場面だった。
三遊間へ放たれた鋭い打球。反応、スタート、捕球、送球――そのすべてが噛み合わなければ成立しないプレーを、吉永選手はやり切った。
守備の名場面は、記録には「アウト」としか残らない。だが、その一球がベンチの空気を変え、投手の表情を和らげ、チーム全体に「いける」という感覚をもたらす。
吉永選手にとっても、あのアウトは“自信の源”となった。守備で流れを引き寄せる遊撃手――その自覚が芽生えた瞬間でもあった。
失点を防ぐのは技術か、声か――守備全体を束ねる意識
「内野同士の連携はもちろん、内外野を含めた守備全体での声かけを意識しています。どうしても連携ミスからもったいない失点につながることがあるので、声を出して細かく確認し合うことで、そうしたミスを最小限に抑えたいと考えています。」
守備の要とは、単に打球を処理する選手ではない。
ポジショニングの確認、カバーリングの徹底、送球先の指示――その中心に立つのが遊撃手だ。
エラーは、技術不足だけが原因ではない。
「お見合い」「ベースカバーの遅れ」「送球判断の迷い」――多くは“共有不足”から生まれる。だからこそ吉永選手は、声を出す。状況を言語化し、仲間と確認し合う。
守備は連帯のスポーツである。
一人の好守より、九人の連携。
吉永選手の視線は、自分のグラブの中だけでなく、グラウンド全体へと向けられている。
「吉永に飛べばアウト」――信頼で築く春への土台
個人として
「チームメイトから“吉永に打球が飛べばアウト”と思ってもらえるような、信頼される選手になりたいです
チームとして
「これまで目標にしてきた“ノーエラー”を継続すること。そして、まだ足りていない部分である声の連携をさらに高めていきたいです。守備力をもう一段階引き上げて、春を迎えたいと思っています。」
“ノーエラー”という言葉には、単なる数字以上の意味がある。
それは集中力の象徴であり、準備の証であり、互いを信じ合うチームの成熟度を示す指標でもある。
吉永選手が目指すのは、派手さではない。
打球が飛べば安心できる存在。ピンチで背中を預けられる存在。
信頼とは、日々の積み重ねの総和だ。
守備は華やかな打撃の陰に隠れがちだが、勝敗を分けるのは往々にして一つのアウトである。
あの三遊間の一歩から始まった自信は、やがてチーム全体の確信へと変わっていくはずだ。
春の開幕。そのときグラウンドに立つ吉永選手は、もう一段階高い守備力とともに、こう証明しようとしている。
「守り勝つ野球」は、偶然ではなく、準備と信頼の上に成り立つのだと。
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吉永 知矢(よしなが ともや)
札幌ボーイズ/2年
右投げ、両打ち
170センチ、54キロ
野球を始めたのは、父の影響を受けた小学1年生のとき。競技を本格的にスタートさせたのはポルテ札幌東だ。
守備の要として名前が挙がり、遊撃手として存在感を示す一方で、投手としての一面ものぞかせる。攻守両面でチームに欠かせない存在である。
フォトグラフ






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協力:札幌ボーイズ
