新陽スターズ、挑戦の連鎖で育む「人づくりの野球」

新陽スターズ、挑戦の連鎖で育む「人づくりの野球」

札幌・新川中央小学校で息づく、心と技の成長ストーリー

チーム理念 ― 野球を通じて「人を育てる」

井上監督が掲げるチームの指導方針は明快だ。
「技術の前にまず、人としての土台を築くこと。自主性・協調性・誠実さ、そして感謝の気持ちを育てることを何より大切にしています」。

 練習では礼儀やあいさつを徹底し、仲間を思いやる姿勢を重視する。
単に技術を磨くだけでなく、「野球が上手くなること」と「心が育つこと」を両輪としてチームを運営している。
井上監督は続ける。
「勝ち負けの前に、人間的な成長を感じられるチームでありたい。努力や感謝の気持ちを忘れず、野球を通じて人生を豊かにしてほしい」。

 その言葉どおり、グラウンドには「ありがとう」「ナイスプレー」といった声が自然と響く。
指導者が“人”を育てる姿勢を貫くことで、選手たちもまた仲間の成長を支え合う関係を築いていた。

キャッチボールする新陽スターズナイン
キャッチボールする新陽スターズナイン

新チームの特徴 ― 挑戦の連鎖が生む一体感

現5年生以下で構成される新チームは、仲間思いで素直な選手が多い。
「うまくなりたい」「勝ちたい」という前向きな気持ちが強く、失敗を恐れず挑戦できる雰囲気が魅力だ。

 練習ではミスを責める声よりも、励ましの言葉が飛び交う。
チーム全体が互いを支え合い、一人の挑戦が次の挑戦を生む“挑戦の連鎖”が生まれている。
井上監督は「結果よりもプロセスを大切に。あきらめず挑戦し続ける力と感謝の心を育てたい」と語り、その理念は選手たちのプレーにもしっかりと息づいていた。

キャッチボールする新陽スターズナイン
キャッチボールする新陽スターズナイン
ノックを受ける新陽スターズナイン
ノックを受ける新陽スターズナイン

学年別の展望 ― 次代を担う5年生、そして挑戦する4年生

 来年2月に控える全国大会「オールジャパン」は、新陽スターズにとってシーズン最大の挑戦だ。
監督は「これまで積み上げてきた努力を試す舞台。結果以上に、挑戦し続けた自分たちを誇れる大会にしてほしい」と期待を寄せる。

 現在の5年生たちは、練習への意識が高く、チーム全体を引っ張る力を持っている。
上級生にも引けを取らない実力とリーダーシップを備え、攻守両面でチームを支える存在だ。
この学年は「仲間を大切にしながら、自分を超えたいという強い意志を持つ選手が多い」と監督は評する。
全国の舞台に向けて、技術だけでなく「チームをまとめる力」や「勝負どころで自分を信じる強さ」を磨きながら、最高のチームづくりに励んでいる。

守備練習に励んでいた新陽スターズナイン
守備練習に励んでいた新陽スターズナイン
新陽スターズ・5年生
新陽スターズ・5年生

 一方、4年生以下の選手たちは、全道規模の大会「尚記杯」に向けて練習を重ねていた。
彼らにとってこの大会は、大きな経験の場であり、チームの未来を担う第一歩となる。
「自分たちで考えて動く」ことをテーマに、守備の連携や打撃の積極性を高めるなど、次のステップを意識した練習が続く。

 上級生が背中で示し、下級生がそれを追いかける。
世代を超えて刺激し合うその姿こそ、新陽スターズが掲げる“人づくりの循環”の象徴といえるだろう。

新陽スターズ・4年生
新陽スターズ・4年生
新陽スターズ・3年生
新陽スターズ・2、3年生

キャプテン・松井應汰― 3年連続でチームを牽引

 3年生時に「グリーンカップ」でキャプテンに就任して以来、4年生、5年生とこの学年をけん引してきたのが松井應汰主将だ。
「攻撃には迫力があって、守備を特に鍛えているチームです」と新チームの印象を語る。
愛知県名古屋市で行われる全国大会を前に、チーム全体が「優勝するぞ」という強い意識でまとまっているという。

 「これまでの大会で優勝できた一番の要因は、チーム全体で盛り上がれたこと」。
そう語る松井主将は、キャプテンとして声かけを欠かさず、状況を見ながら守備を統率する。
「カウントや状況を意識して声を出すようにしています」。

 サード、ショートを守る松井選手は、守備の要としての責任感と、攻撃的な打撃スタイルが魅力。
「本塁打も打てて守備も上手い、走攻守そろった選手になりたい」と笑顔を見せた。
将来の夢はプロ野球選手。
「マクドナルドトーナメントでもショートを守って、プロ選手のような活躍をしたい」と力強く語る姿に、チームを牽引する覚悟がにじんだ。

 最後に「好きな食べ物はチキンです!」と照れ笑い。
試合前には全員で円陣を組み、気持ちをひとつにしてグラウンドへ向かうという。
仲間を信じ、自ら声を出し、チームの中心で輝く姿が印象的だった。

〇松井 應汰(まつい おうた)
5年・右投げ、右打ち
142センチ、38キロ
家族は両親と弟2人の5人家族。
3番・遊撃手として攻守両面でチームを支え、精神的な柱としても存在感を発揮している。

松井主将(新陽スターズ)
新チームの松井主将(新陽スターズ)

6年生 ― “残りシーズン”に込めた思い

現在の6年生は9人。
それぞれがチームを支えながら、学童野球最後の大会へ向けて日々努力を重ねている。

 加賀谷啓斗(6年)は「これまでだいぶ頑張れたけど、まだやり残したことがある」と語り、FBC U-12大会・特別枠予選の準決勝で札幌オールブラックスに敗れた悔しさを糧に、最後までやりきる覚悟を見せた。
石川大悟(6年)は「後悔は少ないけど、打撃でもっと結果を残せたはず」と自己分析。
中山颯生(6年)は「小峰旗のブロック決勝で北光ファイターズ(苫小牧)に0―3で敗れた悔しさがある。残りの大会で充実した形で締めくくりたい」と力を込めた。

 「もし1年前の自分に声をかけるなら?」という質問には、
加賀谷選手が「今年は肘を少し痛めたので、“ちゃんと上から投げろ”と伝えたい」、
大塚晴敏(6年)は「試合でエラーをしたこともあったので、“キャッチボールをもっとしっかりやっておけよ”と言いたい」、
石川選手は「チームに貢献できるよう、もっと声を出していけ」、
中山選手は「もっとバッティング練習を真面目にやっておけ!チャンスで一本打てる力をつけておけ」と答えた。

 それぞれの言葉からは、経験を糧に成長を実感する姿が見て取れた。

 また、後輩たちへのメッセージでは、全員が口をそろえて「後悔のないように野球をやってほしい」と語った。
中山選手は特に「一つひとつのプレーを丁寧に」と後輩に思いを託す。
インタビューに答えてくれた4人に加え9人の6年生たちの背中が、新陽スターズの未来を照らしている。

新陽スターズ・6年生
新陽スターズ・6年生

支える環境 ― 地域・家庭・指導者の三位一体

新陽スターズは新琴似地区を拠点に活動。
平日は火曜・木曜の夕方に新川中央小学校などで練習を行い、土日祝日は試合や強化練習を実施している。
近隣の中学校グラウンドも活用し、午前は小学校、午後は中学校と使い分けながら、1日で最大4試合をこなす日もある。

 さらに、保護者がグラウンド整備や審判、練習補助などを積極的にサポート。
「監督・コーチが指導に専念できるように」という思いで、全面的なバックアップ体制が築かれている。
家庭・チーム・地域が三位一体となって、子どもたちの挑戦を支えているのだ。

練習終わりにベースランニングする新陽スターズナイン
練習終わりにベースランニングする新陽スターズナイン

“挑戦の連鎖”がつなぐ未来へ

「野球を通じて人を育てる」という理念のもとで、一人ひとりが考え、挑戦し、仲間と成長していく。
その姿は、まさに新陽スターズが目指す“人づくりの野球”そのものだ。

 5年生の力強いリーダーシップ、4年生の前向きな挑戦、6年生が残す熱い思い。
そして、それらを包み込む指導者と保護者の温かい支え。
チーム全体が“挑戦の連鎖”でつながり、未来へと歩みを進めている。

 この秋、そして来春の全国大会へ。
新陽スターズの物語は、札幌の夕暮れのグラウンドから、また新たな一歩を踏み出す。

グラウンド挨拶する新陽スターズナイン
グラウンド挨拶する新陽スターズナイン

協力:新陽スターズ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA