代打弾が呼び込んだ勝利の風──札幌オールブラックス、9-0の快勝発進

代打弾が呼び込んだ勝利の風──札幌オールブラックス、9-0の快勝発進

◆1回戦

札幌オールブラックス9-0レッドアスレチック

レッドアスレチックス
0000=0
207x=9
札幌オールブラックス
(4回コールドゲーム)
(レ)井田、増田、黒崎ー中野
(オ)今田、畠山、阿部ー川村
▽本塁打 米田(オ)
▽三塁打 宮坂(オ)
▽二塁打 奥山(オ)

モエレ沼に響いた快音、札幌オールブラックスが初戦快勝

高円宮賜杯第45回札幌支部予選の開幕戦が、札幌市東区・モエレ沼公園野球場で行われた。札幌オールブラックスがレッドアスレチックスを相手に9-0で快勝し、2回戦進出を決めた。試合は四回コールドで終了したが、その中身は選手たちの成長と躍動が凝縮された内容だった。

初回、札幌オールブラックスは二死二・三塁のチャンスで、5番・太田海翔(6年)がセンターオーバーの2点タイムリー二塁打を放ち、試合の流れを引き寄せた。

決勝打となる先制タイムリーを放った太田(札幌オールブラックス)
決勝打となる先制タイムリーを放った太田(札幌オールブラックス)
柵越え本塁打を放ち三塁ベースを回る米田(札幌オールブラックス)
柵越え本塁打を放ち三塁ベースを回る米田(札幌オールブラックス)

さらに試合を決定づけたのは三回の攻撃。二死二・三塁の場面で代打として登場した米田稟之輔(6年)が、豪快なレフト柵越えの3ランホームランを放ち、この回に一挙7点を奪う猛攻があった。

「代打だったので結果を出したかった。追い込まれていたけど、食らいついて打てた。入った瞬間にホームランだと分かった。本当にうれしかった」と、試合後に汗をぬぐいながら米田は喜びを語った。

小学4年の冬に野球を始めた米田は、同学年より遅いスタートに引け目を感じることもあったという。それでも、自らの武器であるパワーを磨き、169cm・76kgという恵まれた体格を生かし、着実に存在感を示す選手へと成長してきた。

投げては、先発・今田善(6年)が丁寧な投球で相手打線を封じ、安打を許さぬ快投を披露。四回には畠山とく(6年)、阿部隼斗(6年)へとつなぐ完封リレーで勝利を締めくくった。

エース今田投手(札幌オールブラックス)
エース今田投手(札幌オールブラックス)

試合後、生野勇輝監督(45)は「初戦ということで多少の堅さはあったが、今田が安定して投げてくれた。太田の先制打も大きかったし、米田もよく結果を出してくれた」と選手たちを称えた。

また、キャプテンの奥山夕生(6年)も「モエレで楽しくプレーできた。米田の一発で完全に流れをつかめた。次戦はもっと声を出して、盛り上げて勝ちにいきたい」と、次戦への意気込みを語った。

札幌オールブラックスは、今年7月に徳島県阿南市で開催される全国規模の学童野球大会「野球のまち阿南少年野球全国大会」へ、北海道代表として出場する。

7月の全国大会に向けて日々鍛錬を続ける札幌オールブラックス。成長著しい選手たちの今後から目が離せない。

米田の本塁打で湧き上がる札幌オールブラックス
米田の本塁打で湧き上がる札幌オールブラックス

レッドアスレチックス、全力で駆け抜けた開幕戦

一方、敗れたレッドアスレチックスも最後まで懸命なプレーを貫いた。大差での敗戦となったが、スコアには表れないチームの誇りと気迫が、ベンチにもフィールドにも満ちていた。

開幕戦の先発マウンドを託されたのは、エースであり4番、そしてキャプテンを務める井田成美(6年)さん。ひとたびマウンドに立てば、静かな覚悟と堂々たる姿勢がにじみ出ていた。力強い直球と緩急を織り交ぜた投球で粘りを見せたが、強打の札幌オールブラックス打線に甘く入った球を痛打され、悔し涙を流す結果となった。

それでも、井田さんの投げる一球一球には、仲間を信じる気持ちと勝利を願う想いが込められていた。その背中を見て、チームは最後まで声を張り上げ、決してあきらめることなく戦い抜いた。

試合後、井田さんは「二回までは自分たちらしい野球ができた。三回からリズムを崩し、大きな失点に繋がってしまった」と悔しさをにじませた。

続けて「目標は全市大会出場です」と力強く語ったその眼差しには、すでに次を見据える覚悟が宿っていた。

先発した井田投手(レッドアスレチックス)
先発した井田投手(レッドアスレチックス)

野手陣にも光るプレーがあった。外野手は初動がよく、紙一重の打球に対しても果敢にチャレンジを続けた。なかでも、二塁を守った小柄な佐川翔太(4年)は、一塁後方に流れるフライに果敢に挑み、ピンチの芽を摘む好守で躍動した。

点差こそ開いたものの、点差ほど大きな隔たりは感じられなかった。むしろ、チームがひとつになって挑んだ姿勢に、観る者の心は強く打たれた。悔しさが胸に残るのは、全力を出し尽くした証でもある。

この敗戦を糧に、レッドアスレチックスはまた新たな山を登り始める。頂は一つではない。選手一人ひとりの目には、すでに次なる挑戦が映っていた。

グラウンドに響いた声援と悔し涙──それは、勝者だけが得るものではない。敗れてなお、胸を張れる戦いがここにあった。

どのチームにも、どの選手にも、それぞれの「物語」がある。その物語が重なり合い、モエレ沼の開幕戦に、またひとつ、忘れられないシーンが刻まれた。

初戦に挑んだレッドアスレチックス
初戦に挑んだレッドアスレチックス

協力:札幌軟式野球連盟

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