
学童野球の最高峰「高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会 第45回マクドナルド・トーナメント」南・北海道大会の決勝が、6月30日に新ひだか町で開催された。札幌支部代表・東16丁目フリッパーズが、苫小牧支部代表・拓勇ファイターズを9-3で下し、3年ぶり7度目の優勝を飾った。これにより、8月に新潟県で開催される全国大会への出場権を獲得した。
ミスを恐れず挑み、仲間の声でつないだ勝利。8年ぶりの全国制覇を目指す夏が、ここから始まる。
一方、準優勝の拓勇ファイターズは、7月25日に和歌山県高野町で開幕する「高野山旗全国学童軟式野球大会」に、北海道代表として出場する。
この夏、全国の舞台で躍動する“どさん子”たちの活躍に、大いに期待したい。
イニングスコア
◆決 勝(6月30日、三石緑ヶ丘公園球場)
東16丁目フリッパーズ(札幌支部)9-3拓勇ファイターズ(苫小牧支)
拓勇ファイターズ
00012=3
2016x=9
東16丁目フリッパーズ
(五回時間切れ)
(拓)松崎、須藤ー佐藤
(東)西山、徳田ー徳田、丹場
▽本塁打:丹場(東)
▽二塁打:清水(拓)、徳田、佐藤2、丹場、西山(東)
「絶対に勝つぞ!」
キャプテン・丹場泰生(6年)の気迫が、東16丁目フリッパーズに火をつけた。
南北海道大会決勝の舞台。相手は苫小牧支部の強豪・拓勇ファイターズ。初回から丹場が出塁すると、打線がしっかり応えた。4番・徳田隆之介(6年)がセンターオーバーのタイムリー二塁打で先制点を叩き出すと、6番・佐藤秀哉(6年)も同じくセンターへタイムリー。わずか数打席で2点をもぎ取った。
その後もフリッパーズは攻めの手を緩めない。3回には佐藤のスクイズで追加点。そして試合の流れを決定づけたのは、4回の丹場の一振りだった。
二死一塁、カウントは1ボール1ストライク。高めに浮いた球を振り抜くと、打球は一直線にライト柵を越える特大2ラン。「この1点、取り返す!」。直前の守備で送球が逸れ失点に繋がったことを悔やみながら、丹場は気持ちを切り替えて打席に立った。その想いが詰まった10号アーチは、チームの士気を一気に高めた。
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その後も打線は集中力を保ち、四球とヒットを絡め一挙6得点。結果として、この回の得点が勝負を決めた。
投げては先発・西山宗汰郎(6年)が粘りのピッチング。10安打を許しながらも、四球は0。守備陣の堅守に支えられながら、5回途中まで3失点に抑える内容でゲームを作った。
終盤は捕手の徳田がマウンドへ。「打たせて取る」意識でテンポよく投げ込むと、佐藤の好捕からの二塁送球でダブルプレー。守備陣の連係が光った。
試合終了は東16丁目の攻撃中。大会規定による時間制限で「Xゲーム」扱いとなったが、スコアは9-3。3年ぶりの栄冠に、歓喜の輪が広がった。
試合後、丹場主将は振り返る。
「1点差でもいいから絶対に勝つって思ってました。ミスがあっても、それを助けるプレーがたくさん出た試合だったと思います。ホームランは“この1点を取り返すんだ!”という気持ちで振り抜きました」
一方、3安打の大活躍だった徳田は、「マウンドではコントロール重視。バッティングは絶好調です。全国ではバントを決めるところは決めて、打つところはしっかり打って、MVPを取りたい!」と意欲を燃やした。
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「不安に打ち克つ勇気」――東16丁目が示した、勝ち切る力
試合後の笹谷武志監督の第一声は「3年間、長かったぁ」だった。
選手たちに伝えたのは、勝負の本質だった。
「不安や恐怖感があると力は出せない。程よい緊張感の中で、超プラス思考で臨もう。お前たちはもう強い、だから絶対勝てる!」
モチベーションを毎試合丁寧に調整し、戦う姿勢を根付かせてきた。その成果が、今大会での全4試合初回無失点という集中力にもつながっている。
「この大会を通じて、精神的な強さが育ってきた。よく頑張ったと思います。立ち上がりは1〜2点取られてもいい。でも、取られたら獲り返すんだ」
指導者と選手が同じ目線で、共に成長してきたフリッパーズ。
その戦いは、まだ終わらない。



「敗れても得た宝物」打ち負けず、全国切符をつかんだ拓勇ファイターズ
決勝の舞台でも拓勇ファイターズは自慢の打撃で次々と出塁した。しかし、東16丁目フリッパーズの堅守に阻まれ、なかなかホームが遠かった。
初回、一死一・二塁のチャンスは6-4-3のダブルプレー。続く二回も無死一塁から5-4-3と、いずれも鮮やかな併殺で流れを断ち切られた。
10安打を放ちながらも得点にはつながらず、もどかしい展開が続いた。
それでも、四回にようやく得点。二死二塁からの内野ゴロで相手の失策を誘い、二走が一気に生還し1点を返した。五回には、1番・清水亮聖(6年)がレフトオーバーの二塁打でチャンスを作ると、2番・尾関 新(6年)のセンター前タイムリー、3番・荒井瑛人(6年)のライト前で続き、無死一・三塁から内野ゴロの間に尾関が生還し、ついに3点目を挙げた。
しかし反撃はここまで。後続が倒れ、試合はその裏、東16丁目の攻撃中に大会規定の時間となり終了となった。
試合後、山村寛文監督(61)は「決勝は敗れてしまったが、目標にしていた全国大会出場を決めることができてうれしいです」と笑顔を見せた。
試合を通して、拓勇は10安打、東16丁目は9安打と、打撃では上回った。だが、大一番での“あと1本”が遠く、ダブルプレー3つが試合の流れを大きく左右した。
「東16丁目のような打者の伸びてくる打球は、苫小牧では中々いない。全国に向けて、コーチが打つ打球でその感覚を克服していきたい」「守備の面でももっとレベルアップを図ります」
敗戦の悔しさを糧に、持ち味の打撃にもさらなる磨きをかけ、全国の舞台へ挑む。
拓勇ファイターズはこのあと、苫小牧で開催される民報杯、エコアハウス杯を経て、7月25日に和歌山へ旅立ち、「高野山旗全国学童軟式野球大会」へ出場する。
試合後、3打数3安打と気を吐いた尾関 新選手(6年)は、
「敗れはしたが全国大会出場が決まり嬉しい。自分自身でも3打数3安打が打てて良かった」と率直に喜びを語る。
「打席ではランナーがいる場面では、併殺やフライを避けることを常に意識していた。センター方向を狙って打つようにしている」と、冷静な打撃意識を明かした。
全国の舞台では「塁に出て、たくさん盗塁を決めたい」と意気込む尾関選手。今大会に向けては、チーム練習以外でも毎日素振り100本を課し、センター中心の打球をイメージしながら準備を重ねてきたという。
同じく3打数3安打の活躍を見せた荒井瑛人選手(6年)は、
「自分も調子は良かったけど、何よりチームが全国大会に出られて良かったです」と喜びをかみしめた。
「今日も試合前に穴あきボールでバッティング練習をして、その成果が出ました」と振り返る荒井選手は、日頃からお母さんに穴あきボールを投げてもらいながら、自分が納得できるまで打ち込む努力を続けてきた。
そうした日々の積み重ねが、決勝という大舞台でも自信に変わり、力として発揮されたのだろう。


