遠征先での規律違反から始まった3年生の成長 東日本準優勝へつながった意識改革 冨田監督が貫く人間性重視の指導と小西主将が誓う新たな挑戦
2026年の東日本選抜野球大会で準優勝を果たした大空リトルシニア。その躍進の裏には、選手たちの意識を大きく変える出来事があった。2年生だった昨年6月、初めて下級生中心で臨んだ遠征先でのこと。試合に出場するはずだった多くの選手が、監督の指示によってスタンドから仲間の試合を見つめることになった。あの日、選手たちは何を学んだのか。そして、なぜチームは大きく成長できたのか。冨田大介監督が大切にする「人間性重視」の指導と、2027年シーズンに向けて再出発した新チームの現在を追った。
試合に出られなかった2年生 遠征先で起きた出来事
冨田大介監督が、今年の3年生の成長を振り返るとき、忘れられない出来事がある。
2025年6月、KOKAJI CUPに出場したときのことだった。
当時、大空リトルシニアでは大会遠征に3年生を中心とした20人前後を帯同させることが多かった。
しかし、この大会は2年生と1年生にとって初めての遠征となった。
選手たちは金曜日の授業を終えてから球団バスで移動。
宿舎への到着は午後9時ごろだった。
翌日は早朝から試合が予定され、勝ち進めば同じ日にもう1試合を戦う厳しい日程だった。
午前5時には起床し、球場へ向かわなければならない。
冨田監督は選手たちに、午後10時には消灯して十分に身体を休めるよう指示した。
ところが、その夜。
日付が変わった午前0時過ぎ、トイレに起きた冨田監督が宿舎の廊下を歩いていると、選手たちの部屋から明かりが漏れていた。
耳を澄ますと、ひそひそと話す声や笑い声が聞こえてくる。
消灯時間を過ぎても、多くの選手が起きていたのだ。
監督は各部屋の前で、翌日にこの問題を取り上げることを告げ、その場を離れた。
そして迎えた翌朝。
球場には、初めての遠征を楽しみにしていた2年生の保護者たちが集まっていた。
わが子の試合を心待ちにし、球団バスの到着を迎えた保護者たち。
しかし、バスから降りてきた選手たちの表情は暗かった。
冨田監督は保護者を集め、前夜の出来事を説明した。
規律を守れなかった選手は、2年生17人のうち13~14人に上ったという。
監督が下した判断は厳しいものだった。
該当する2年生をベンチから外し、スタンドで自分の保護者の隣に座らせたのだ。
試合は1年生中心のメンバーで臨み、初戦敗退となった。

勝つことより大切だったもの
冨田監督は、あの日の出来事を振り返ってこう話す。
「そこからです。今の3年生の考え方や意識が成長したのは」
選手たちは、なぜ大空リトルシニアに入団したのか。
何を目標に、毎週末の練習に取り組んでいるのか。
そして、自分たちの野球を支える家族が、どのような思いで遠征に送り出してくれているのか。
冨田監督が伝えたかったのは、試合に勝つこと以前に、守らなければならない約束や責任があるということだった。
スタンドには、涙を流す母親の姿もあったという。
選手たちにとって、目の前の試合に出られなかった悔しさだけでなく、自分たちの行動が周囲の人たちに与える影響を考える機会になった。
冨田監督は、この出来事がチームの転機になったと感じている。
その後、選手たちは練習への取り組み方や野球に向き合う姿勢を変えていった。
2025年秋季全道大会新人戦でベスト4。
2026年春季全道大会でもベスト4に進出。
そして東日本選抜野球大会では準優勝を果たした。
もちろん、あの日の出来事だけで結果が生まれたわけではない。
しかし、冨田監督にとって、選手たちが自分の行動を見つめ直し、成長するきっかけになったことは間違いなかった。

「野球が上手いだけでは駄目」11年間で変わった指導
2015年の創部から11年。
冨田監督自身の指導にも変化があった。
「怒ることがほとんどなくなりました(笑)」
創部当初は、まず大会で初戦を突破することが目標だった。
目の前の結果を求め、監督自身も必死だったという。
しかし、経験を重ねる中で、選手たちに求めるものも変わっていった。
現在は、選手自身が考え、理解し、自分の行動に責任を持つことを重視している。
練習にどれだけ真剣に取り組むか。
試合に出るために、日頃からどのような準備をするか。
それらを選手自身が考えることが重要だという。
「高校に進学して、監督が試合で使いたいと思う選手になるためには、どうしたらいいのかを知ることが大切です」
技術が高いだけでは、次のステージで活躍できるとは限らない。
周囲から信頼される行動、チームのために何ができるかを考える姿勢、苦しい場面でも自分の役割を果たす責任感。
冨田監督が教え子たちに伝え続けているのは、野球を通じて社会でも生きる力を身に付けることだ。

ミスを責めない 仲間を生かす声掛け
大空リトルシニアが掲げる育成方針の中心にあるのが、人間性の成長だ。
冨田監督は、日々の練習で選手同士の声掛けを大切にしている。
「野球は助け合いです。ミスは誰でもします。大切なのは、ミスをした選手を孤立させないことです」
例えば、投手が制球を乱したとき。
野手が打球を処理できなかったとき。
その失敗を責めるような声を掛けるのではなく、次のプレーにつながる前向きな言葉を掛ける。
「ナイスボール!」
「いい投球! いい打球!」
冨田監督は、良いプレーをきちんと認め、仲間同士で褒め合うことを選手たちに伝えている。
「気持ちが乗ると、どんどん良いプレーが出ますからね」
指導者に言われたから声を出すのではない。
仲間を思いやる気持ちから自然に声が出る。
挨拶や礼儀も、形だけを整えるのではなく、その意味を理解して行動できることが大切だという。
「やらされるのではなく、自然体で礼儀や挨拶、笑顔や仲間を思いやる声が出ることが、人の育成です」
勝利を目指す厳しさと、仲間を尊重する姿勢。
その両方を大切にしている。

3年生17人へ 監督からの言葉
2026年シーズンを終えた3年生は17人。
冨田監督によると、物静かな選手が多い学年だったという。
「野球は観ている人に感動を与えるスポーツです。全力で挑み、最後まで諦めずに戦う姿に、観ている人は胸が熱くなる」
そして、こんな言葉を続けた。
「野球選手は表現者です」
自分の気持ちをプレーで表現する。
仲間を鼓舞し、苦しい場面でも前を向く。
冨田監督は、選手たちにそうした表現力が身に付けば、さらに魅力的な選手になると期待している。
また、3年間を支えた保護者への感謝も忘れない。
広い地域から集まった選手たち。
毎週末の送迎や弁当作りなど、家族の協力なしには活動を続けられなかった。
「広域から集まった3年生の親子には、本当にありがとう、お疲れさまでしたと伝えたいです」
挫けそうになる息子を励まし、チームを信じて背中を押し続けた保護者たち。
その支えがあったからこそ、選手たちは3年間を戦い抜くことができた。
そして、卒団する選手たちに贈る言葉は明確だった。
「愛される人間になってほしい。ただそれだけです」
野球の世界で結果を残し続けられるのは、ほんの一握り。
夢や目標に向かって努力することは大切だが、それ以上に、社会に出たときに周囲から信頼され、多くの人に支えられる人間になってほしい。
冨田監督の願いは、そこにある。

新チームは秋季大会で予選敗退 9季続いた記録が途切れる
一方、3年生が引退し、1、2年生による新チームが始動した。
2026年秋季全道大会新人戦。
大空リトルシニアは、春と秋を合わせて9季連続で決勝トーナメントに進出していたが、今回は予選敗退となった。
冨田監督は、現状を冷静に受け止めている。
「エースの小西は比較的安定した投球ができると思います。攻撃面でも力強いスイングを武器に、得点力は高いと思います」
一方で、課題も明確になった。
特に目立ったのが、試合終盤で逆転を許す展開だった。
先発投手の後を受ける投手陣の強化が必要となる。
守備面でも、球際の強さや送球の正確性に課題が残った。
走者を背負った場面でのミスも目立ったという。
「ピンチの場面で自信を持ってプレーすること。心の強さも育てたいと思います」
さらに冨田監督は、2年生だけでなく1年生の成長にも期待している。
「強いチームをつくるには、後輩たちの成長によるチームの底上げが必要です」
下級生が力を付け、上級生にプレッシャーをかける。
その競争が、チーム全体のレベルを引き上げると考えている。

小西明由叶主将「野球だけでなく、人としても成長できると思った」
新チームを率いるのは、小西明由叶(網走JBCユナイト出身/2年)主将だ。
大空リトルシニアへの入団を決めた理由は、野球の技術だけでなく、人間性も磨きたいという思いからだった。
「大空に入ったら野球が上手くなると思ったのと、人としても成長すると思ったので入団しました」
実際に入団して印象に残ったのも、技術指導にとどまらないチームの指導方針だった。
「野球の指導以外にも、人間性の指導がすごくされていて驚きました」
日々の練習では、守備力の向上に取り組むとともに、投手として変化球の握り方や投げ方、牽制技術などを学んできた。
東京農業大学北海道オホーツクの大学生による指導も、自身の成長につながる貴重な機会となっている。
野球の技術を磨くだけでなく、一人の人間として成長すること。その思いを胸に、小西主将は仲間たちを引っ張っている。

悔しさを胸に2027年へ 目指すのは感動を与える野球
新チームの主将として臨んだ秋季全道大会。
小西主将の胸に残ったのは、思うような結果を残せなかった悔しさだった。
「自分たちはフォアボールやエラーが多く、失点して負ける試合が多かったことが悔しかったです」
課題として挙げたのは、投手力の向上と守備の正確性。失点につながるミスを減らすことが、来季に向けた大きなテーマとなる。
一方で、チームとして手応えを感じた部分もあった。
「試合の始まりから終わりまで、自分たちの全力を表現する力です」
試合展開に左右されず、最後まで全力でプレーする。
冨田監督が大切にしている姿勢は、新チームにも少しずつ浸透している。
2027年シーズンに向けて、小西主将が掲げる目標は明確だ。
「見ている人に感動を与えるような全力プレーのできるチームにしたいです」
まずは、秋季大会で果たせなかった決勝トーナメント進出。そして、勝てるチームへと成長することを目指す。
最後に、中学進学を控える小学6年生へ、大空リトルシニアの魅力を尋ねた。
「人間性や技術の向上は当然ですが、大きな夢に向かってみんなで頑張る、やる気に満ちあふれたチームです」
野球の技術だけでなく、人としても成長できる場所。
自らがその環境に魅力を感じて入団した小西主将は、今度はチームを率いる立場として、仲間とともに新たな目標へ向かっている。
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プロフィール
小西明由叶(こにし・あゆと)
大空リトルシニア/中学2年/主将
網走JBCユナイト出身
ポジション:投手 兼 外野手
左投げ、左打ち
172センチ、64キロ
野球を始めたきっかけ:野球をしていた兄の姿に憧れて小学1年生から競技を始めた。
学業との両立も重視 週2回の家庭学習をルール化
大空リトルシニアでは、野球だけでなく学業との両立も大切にしている。
練習日は土曜、日曜、祝日が基本。
平日の月曜日と水曜日には、学校から帰宅した後、自宅で1時間以上勉強することをチームの決まりとしている。
ドリルやワークなど、取り組んだ範囲と内容は写真に撮り、監督とのLINEグループで共有する。
野球に集中するだけでなく、自分で時間を管理し、継続して努力する習慣を身に付けることが狙いだ。
また、成長期の選手の身体にも配慮している。
投球数の制限に加え、整形外科でのエコー検査によるメディカルチェックなどを実施。
肩や肘への負担を考慮しながら、選手の成長段階に合わせた指導を心掛けている。

広域から通う選手を支える保護者の協力
大空リトルシニアには、網走、北見、美幌、大空、斜里、紋別、遠軽、弟子屈、中標津など、広い地域から選手が集まる。
遠方から通う家庭にとって、毎週末の送迎は決して小さな負担ではない。
そこで球団では、保護者同士が協力し、行き帰りの送迎を分担する体制を取っている。
燃料代の負担を軽減するとともに、共働きなどで毎回の送迎が難しい家庭にも配慮している。
また、保護者による練習当番は設けていない。
冨田監督は、野球を続けるうえで家庭の支えが欠かせないことを十分に理解している。
だからこそ、選手だけでなく、その家族も含めて支えていくことを大切にしている。

「新しい世界に飛び込む勇気」を応援したい
中学野球を控える小学6年生にとって、硬式野球への挑戦は大きな決断となる。
同じ少年団の仲間と別々の進路を選ぶこともある。
新しいチームになじめるだろうか。
練習についていけるだろうか。
勉強と野球を両立できるだろうか。
保護者にも、さまざまな不安がある。
冨田監督は、そうした気持ちを理解したうえで、子どもたちの将来を考えてほしいと話す。
「何でも新しい世界に飛び込むのは勇気がいることです」
そして、こう続けた。
「ずっと友達と一緒に歩むわけではありません。どこかで自分の道、家族の道を歩むことになります。どんな未来を思い描き、どんな人生を送ってほしいのか。そこが一番大切です」
冨田監督によると、これまで野球がつらいことを理由に退団した選手や、練習についていけずに辞めた選手はいないという。
「選手とその家族の思いをしっかり受け止めて、野球人生の最後までサポートします」
中学時代の3年間は、長い野球人生の一つの通過点。
だからこそ、目先の結果だけでなく、その先につながる経験を積ませたい。
「野球は勝つから楽しい」
冨田監督は、努力を積み重ねてつかんだ勝利の喜びを、選手たちに経験させたいと考えている。
その成功体験が、次の挑戦へ向かう力になるからだ。
創部11年目を迎えた大空リトルシニア。
東日本準優勝という実績を残した3年生から、新たな挑戦を始めた1、2年生へ。
オホーツクの大地で育まれてきた思いは、次の世代へと受け継がれていく。

【2027年度新入団選手・練習体験参加者募集】
大空リトルシニアでは、2027年度の新入団選手を募集している。
募集予定人数は10~15人。
現在は網走市、大空町、美幌町、北見市、斜里町、遠軽町、紋別市、弟子屈町、中標津町など、広い地域から選手が通っている。
練習体験会の日程
- 11月3日(火・祝)
上記日程以降も、通常練習日に個別で体験参加が可能。
活動・費用
- 活動日:土曜・日曜・祝日
- 入団費:10,000円(初回のみ)
- 月謝:10,000円
- 指定用具:チームジャージ、ジャンパー、野球シャツなど
- 保護者の練習当番:なし
球団バスを所有しており、遠征時の費用負担にも配慮している。
1泊2日の遠征費は、宿泊代や弁当代として7,000円前後が目安。
遠方から通う選手については、保護者同士が協力して送迎を行っている。
中学進学後の野球環境を検討している小学6年生と保護者の皆さんは、この機会に大空リトルシニアの練習を体験してみてはいかがだろうか。
お問い合わせ先
冨田監督 080-1235-1663

協力:大空リトルシニア
