“負けない野球”で挑む15年ぶり全国選抜

“負けない野球”で挑む15年ぶり全国選抜

選抜優勝から逆算するチームづくりと「やり抜く力」

「負けない野球」がようやく形になってきた

秋季全道大会を戦い終えた手応えを問うと、森監督はまずこう切り出した。

「うちがずっと取り組んできた“負けない野球”が、なんとなく形になってきたと感じています。新人戦ではKOKAJI CUPで優勝、3年生は北ガス杯で準優勝、秋季全道大会新人戦でも準優勝。この流れが、チームとしての形につながってきたのかなと思います」

一方で、秋季全道大会の決勝戦については悔しさを隠さない。

「決勝は本当に何もできなかった。初回からミスが続いて、全くうちらしい野球ができなかった。ランナーもなかなか出せず、持ち味の走塁による機動力も出せないまま終わってしまった。冬季間は守備、打撃、フィジカルをもう一度“1から積み上げ直す”つもりです」

バッティングに関しても、フォームより「身体の使い方」を重視している。

「打ち方やフォームより、まず体の使い方から指導しています。大会では打てていなかったので、終盤はバットを短く持たせました。冬も短く持って徹底していきます」

KOKAJI CUP優勝――主力不在の中で試された投手陣

第1回KOKAJI CUP全道大会優勝を、森監督は「新人戦を見据えた位置づけ」と語る。

エース格の栩内巧太(士幌ファイターズ出身/2年)は、ジャンパー膝の影響でほとんど練習ができない状態。両足に痛みを抱え、チームの中心となるはずの投手が不在の中で、大会に臨まざるを得なかった。

「栩内がいない状況で、2年生投手3枚をどう回すかがテーマでした。計算できるのは山田岳(柳町イーグルス出身/2年)。ただ、秋季全道大会を見据えて、山田朔太郎(新得町野球少年団出身/2年)、浦城尚(ウエストマリナーズ出身/2年)にも先発を任せ、経験を積ませる場にしました。結果として、経験をさせながら成長させていく戦い方が、KOKAJI CUP優勝につながったと思っています」

“負けない野球”の土台は、こうした投手陣の総合力から築かれていった。

バッティング練習に励むとかち帯広ナイン
バッティング練習に励むとかち帯広ナイン

秋季全道大会で見えた「強み」と「足りない部分」

秋季全道大会ではDブロックで4勝1敗の2位となり、決勝トーナメントへ。ここで栩内投手が復帰し、山田岳との“双柱”が揃ったのは大きかった。

決勝トーナメントでは

  • 1回戦:札幌栄に2–1
  • 2回戦:札幌大谷に2–0
  • 準決勝:恵庭に6–4

とすべて僅差の戦いをものにして決勝へ進出した。

「本当に打てない大会でした」と苦笑しつつも、失点の少なさこそがとかち帯広の野球だと森監督は強調する。

エース山田岳と復帰した栩内の安定感は抜群。
山田朔太郎については「球威は一番。ただ制球と追い込んでからの痛打が課題」。
浦城は「この冬で投手としてのレベルアップが求められる」と期待を込める。

さらに1年生からは、小瀬朔(Nexus BBC出身/1年)、眞野優(稲田タイガース出身/1年)、中村倖音(ウエストマリナーズ出身/1年)の3人が今秋は一桁背番号をつかみ、投手経験と球速で頭角を現している。

「3人とも球は速いですが、投手としての考え方はまだこれから。伸びしろしかないですね」

投手(とかち帯広)
投手(とかち帯広)

冬のテーマは「投手10パターン」と走塁の徹底

投手陣について、森監督はこの冬のテーマをこう語る。

「全員が“10種類の同じパターン”をできるようにして、それを共通言語としてキャッチャーがサインで選ぶ形にしたいんです。どのピッチャーが投げても同じように組み立てができるようにする。“下手くその集まり”だからこそ、共通の型が必要なんです」

全国選抜までの調整は、基本的に室内練習が中心となるが、3月からは外での実戦機会も用意している。

  • 3月14〜15日:日高遠征(宿泊)
  • 3月21日:洞爺湖とオープン戦
  • 3月22日:全国大会に向け北海道を発つ
  • 3月23〜24日:大阪のチームと練習試合・練習(雨天時は室内練習場も確保)
  • 3月25日:開会式

「この時期は実戦感覚が一番心配。でも、できる範囲でしっかり準備は整えたいですね」

冬季練習で特に時間をかけているのが走塁だ。
さまざまなケースでの打球判断やシャッフル、秒数計測を行い、午前中は徹底して走塁練習。午後は投手を立て、打者が実際に打った中での状況判断を繰り返す。

ホームグラウンドは芽室西中学校。シーズン中の平日は、暗くなるまでグラウンドで練習し、その後は全員で走って室内練習場へ移動し、練習を再開する――そんなハードな日常が続く。

全国大会へ向けた個々の目安としては、「現在の球速+5キロ」を設定している。

「球速がすべてではありませんが、今の最速から5キロアップを目標にしています。全国で戦うには、そのくらいのレベルには揃えたいなと」

捕手(とかち帯広)
捕手(とかち帯広)

「選抜で優勝するために」から逆算するチームづくり

森監督の指導哲学の中で、特に印象的なのが“逆算思考”だ。

「普通は新人戦や春季全道大会なら『まず予選リーグを突破するぞ』『1回戦に勝つぞ』という話になりがちですよね。でも自分は、“選抜で優勝するためにどうするか”をずっと言い続けています」

目先の1勝だけを追いかけると、どうしても「出ている9人だけを使う」「成長より勝利を優先する」形になりがちだという。

「中学生は成長させなきゃいけない年代。勝ちながら成長させるのがベストですが、“優勝を目指すための1回戦・2回戦”と逆算して考えることで、誰に経験を積ませるべきかが見えてくる。選抜優勝というゴールからロジックを組み立てていくことで、選手たちの意識も『ちまちました1勝』ではなく、もっと先を見るようになると信じています」

内野手(とかち帯広)
内野手(とかち帯広)

合言葉は「GRIT」――やり抜く力を育てる

森監督が最近、選手たちに繰り返し伝えている言葉がある。それが「GRIT(グリット)」だ。

「GRITって“やり抜く力”のことなんです。例えば『今日100本ダッシュをやるぞ』と言ったときに、“耐える”100本ではなく、“やり抜く”100本にしてほしい。『ただしんどい練習を終えた』ではなく、『やり抜いた』という実感が残るかどうかで、同じメニューでも意味がまったく違ってくると思うんです」

森監督は、自身が読んだ書籍を紹介しながら「やり抜く」という言葉を繰り返し、選手たちの意識改革を図っている。

「去年の冬は“耐えた”トレーニングだったかもしれない。でも今年は“全国をイメージしながら、それをやり抜く冬”にしたい。頭の中の吹き出しに全国の景色が浮かびながら、『そのために今これをやり抜くんだ』と思ってほしいんです」

外野手(とかち帯広)
外野手(とかち帯広)

自燃人・可燃人・不燃人――選手たちの“温度”を上げる

選手たちの意識を語る際、森監督は独特の「3つのタイプ」を紹介する。

  • 自然に燃える「自燃人」
  • 火をつけられたら燃える「可燃人」
  • 何を言っても燃えない「不燃人」

「不燃人にいくら言っても響かない。だから、自燃人と可燃人を中心にチームの温度を上げていく。そうすると、不燃人も『そっちの方が楽しそうだな』と、いつの間にか動き出すんです」

もちろん指揮官としては“不燃人”にも声をかけ続けるが、選手たちには「お前たちはまず可燃人から自燃人になれ」と伝えているという。

「誰も『自分は不燃人です』なんて言いませんけどね(笑)。でも、自分の中で言い訳をつくっているうちは、まだまだ可燃にもなりきれていない。そこをどう一歩踏み出させるかが指導者の仕事だと思っています」

バッティング練習に励むとかち帯広ナイン
バッティング練習に励むとかち帯広ナイン

「出る・送る・返す」――役割の徹底が“負けない野球”を支える

攻撃面で、森監督が徹底しているのが「役割」の明確化だ。

「バッターの役割は3つ。『出る』『送る』『返す』。今自分が打席に立って、どの役割を求められているのか。それを考えながら打席に立てば、意味のない大振りや、状況無視のフライは減っていきます」

例えば、三塁に走者がいる場面での“返す打席”、バントで“送る打席”、まず出塁することが最優先の“出る打席”。場面ごとの役割を整理して伝えることで、「ただ強く振る」から「チームのために打つ」へと意識を変えていく。

「当たり前のことなんですけど、ロジックをつけて説明すると、選手たちは『たしかにそうだな』と感じてくれる。うちの“負けない野球”というのは、そうした役割の徹底の積み重ねでもあると思っています」

バント練習を行っているとかち帯広ナイン
バント練習を行う、とかち帯広ナイン

指導者としてのゴール――「酒が飲める大人」になってからも続く野球

話題はやがて、森監督自身の「指導者としてのゴール」に及んだ。

「最終的なゴールは、うちを卒団した選手たちが大人になって、酒を飲みながら笑い合える関係になること。その子どもたちがまたどこかで野球をやっていて、教えていたり、一緒にボールを追いかけていたり……。一周回って、また野球でつながっていけたら最高ですね」

そのためにも「生涯野球」でいてほしいと願う。

「じいちゃんになっても草野球や還暦野球を楽しんでいてほしい。そのためには、野球の細かさや奥深さを知っている方が絶対に面白い。だから、ただ打って走るだけじゃない、細かい野球を徹底して教えたいんです」

15年ぶりの全国選抜へ――“負けない野球”の真価が問われる春

投手陣は「共通パターン10種類」と「球速+5キロ」をテーマに、一冬かけて土台を固める。野手陣は走塁と状況判断、そして「出る・送る・返す」という役割の徹底に磨きをかける。

森徹監督が描くのは、目先の1勝ではなく、「選抜で優勝するための一戦一戦」。

“負けない野球”を掲げて歩み続けてきたとかち帯広リトルシニアが、15年ぶりに挑む全国選抜の舞台で、どんな野球を見せてくれるのか。
選手たちがこの冬、「GRIT=やり抜く力」とともにどこまで自分たちを高められるか――。
その答えが、春のグラウンドに表れる。

“機動力”を武器に全国の頂点へ/菊池春馬

負けない野球の進化と、菊池主将としての決意

 秋季全道大会を準優勝で終え、新チームとして確かな手応えと課題が見えたとかち帯広リトルシニア。中心に立ちチームを牽引するのが、主将で4番を務める菊池春馬だ。走塁を武器とする「負けない野球」を追求し続けてきた2年間。その成果と、全国制覇へ向けた強い覚悟を語ってくれた。

札幌北との決勝で痛感した“差”

成長へのきっかけとなった敗戦

菊池主将がこの秋、最も印象に残った試合として挙げたのは、決勝戦・札幌北リトルシニアとの一戦だ。

「KOKAJI CUPでは勝てた相手だったのに、毎回のように失点し、力の差を感じました。
数ヶ月でここまでレベルが変わるのかと痛感し、自分たちはまだまだだと感じた試合でした。」

互いに手の内を知る相手だけに、その差が大きな気づきとなった。
“負けない野球”を掲げてきたチームにとって、この敗戦は悔しさと同時に、大きな成長のきっかけとなった。

一方で、準決勝を含む今大会ではチームの粘り強さが光った。

「恵庭戦では負けている展開でも雰囲気を落とさず、逆転できました。
負けていても巻き返せる力がついてきていると感じます。」

チーム全体のメンタル面と一体感は、確実に強化されている。

打撃練習に励む菊池春馬主将
打撃練習に励む菊池春馬主将

“走塁で勝つ野球”の確立

2年間で磨いた武器と明確になった課題

とかち帯広リトルシニアが追求してきたスタイル、それは “走塁で勝つ野球” だ。

「この2年間で走塁について様々なことを学び、試合で実践してきました。
今年ようやく感覚がつかめてきて、走塁で得点できるチームになってきたと思います。」

守備でリズムをつくり、攻撃では積極的に足を絡めて相手を揺さぶる――
これこそが彼らの“負けない野球”の根幹である。

ただし、成長の中で浮かび上がった課題も明確だ。

「足りないところは打撃です。
他のチームは打撃力が高いと感じています。
自分たちも高い意識を持って打撃向上に取り組んでいきたいです。」

走塁に自信を持つチームが、打撃まで磨き上げたとき、その総合力は一気に全国レベルへと近づくだろう。

全国優勝への覚悟

主将として背負う責任と4番としての使命

菊池主将の目標は揺るがない。

「全国に向けては“優勝”です。
日本一を取ることが最大の目標で、北海道予選を通過してようやくスタートラインに立てました。」

そのために、今やるべきことも明確だ。

「一戦一戦の緊張の中でも自分たちのプレーができるように、
普段の練習から意識して取り組んでいます。
持ち味である走塁で得点を重ねたいです。」

個人としても、大きな責任を背負う。

「キャプテンで4番を任されているので、責任感のあるポジションだと思います。
打撃のレベルアップと、キャプテンとしてもっとチームを良くできるよう努力したいです。」

全国の舞台での最大目標は“優勝”。
北海道から、日本一へ――
菊池春馬が引っ張るとかち帯広リトルシニアの挑戦は、ここからさらに加速する。

〇菊池 春馬(きくち はるま)
とかち帯広リトルシニア/2年
右投げ、右打ち
170センチ、61キロ
野球を始めたのは小学1年生。きっかけは、地元の少年団・柳町イーグルスの選手たちに誘われたことだった。6年生時には北海道日本ハムファイターズジュニアに選出されるなど、攻守に秀でた存在として注目。
家族は両親と兄、弟、妹の6人。

菊池春馬主将(とかち帯広)
菊池春馬主将(とかち帯広)

「うまい選手から全部盗む」/山田 岳

選抜合宿で感じた刺激と、全国へ向けた覚悟

 北海道選抜の一員として招集され、初めての合同練習に参加した山田 岳(柳町イーグルス出身/2年)。
各チームから選び抜かれたトップレベルの選手たちと同じ環境で汗を流し、
その中で芽生えた刺激と決意は強く、そしてまっすぐだ。
冬を越え、3月の全国大会へ――山田岳が今考えていること、目指す姿に迫った。

選抜初練習で感じたレベルの高さと、成長への貪欲な姿勢

選抜メンバーとして参加した初回の練習。
山田岳は、まず“周囲のレベルの高さ”に圧倒されたという。

「周りは各チームから選ばれた選手ばかりで、とにかくレベルが高いです。
全員うまいので、合宿で一緒に泊まったり、練習したりする中で、
うまい選手の良いところを盗まないと試合にも出られないと思いました。」

刺激は大きいが、それを楽しみに変えている。

「楽しいです。レベルが高いからこそ、学べることがたくさんあるので。」

アピールポイントはコントロール

タイミングを外す投球術と“ライバル”の存在

次回は新旧対決となる練習試合(11月23日、苫小牧市で開催)。
そこへ向け、自分の持ち味をこう語る。

「アピールポイントはコントロールです。
変化球を使いながらバッターのタイミングを外して、
打ちにくいピッチャーになることを意識しています。」

コントロールを生命線とし、“嫌がられる投手”を目指す。

「コントロールには自信があります。そこで勝負していくつもりです。」

そして、意識しているライバルについても語った。

「大空リトルシニアの土門琉人君(佐呂間ライオンズ出身/2年)です。
小学校の頃から知り合いで、中学に入ってから一緒に北海道選抜を目指してきました。
前回もすごいピッチングをしていて刺激を受けました。」

山田岳投手(とかち帯広)
山田岳投手(とかち帯広)

15年ぶりの全国大会へ

ひと冬で一気にレベルアップし“全国で戦える投手”へ

3月には、チームとして15年ぶりの全国大会が控えている。

「自分が経験したことのない全国の他地区の上位チームと戦えるので楽しみです。
冬にしっかりトレーニングして、『一気にレベルアップしたね』と言われるくらい頑張って大阪に臨みたいです。」

具体的な強化ポイントも明確だ。

「体を大きくしたいです。家でもチームでも食事量を増やして、お米をしっかり食べています。」

経験、刺激、そして全国への期待。
その全てが山田岳を強く、たくましく成長させている。

冬を越えて迎える全国舞台で、
「大きく変わった山田岳」が見られる日を楽しみにしたい。

山田 岳(やまだ がく)
とかち帯広リトルシニア/2年
右投げ・右打ち
身長164センチ、体重55キロ
野球を始めたのは小学1年生で、柳町イーグルスに所属。6年時には日本ハムジュニアに選出された。
家族構成は、両親と弟の4人。

山田 岳投手(とかち帯広)
山田 岳投手(とかち帯広)

本格派左腕が挑む台湾と全国/栩内巧太

“頭で考える野球”で勝負する左腕の覚悟

 身長172センチ・体重61キロ。小学2年生で野球を始め、幼少期の友人とのキャッチボールから自然と野球の道へ進んだ栩内巧太投手(士幌ファイターズ出身/2年)。
今年の北海道選抜では、大柄な選手が少ない中で“頭を使う野球”を軸に戦うチームの一員として期待されている。
台湾遠征、全国大会へ――彼の視線はすでに次のステージをしっかりと見据えていた。

野球を始めた原点と選抜で感じた刺激

仲間に学び、自分を磨く時間に

野球を始めたのは小学2年生。
きっかけは、当時一緒に遊んでいた友達の存在だった。

「幼稚園から小1まで仲良くしていた友達が野球をしていて、
ずっと一緒にキャッチボールをしていたので、自然と野球を続けました。」

家族構成は、両親と兄の4人家族。

今年の北海道選抜についての印象はこう語る。

「去年は大柄でパワーのある選手が多かったけど、
今年は大きな選手は少なくて、どちらかと言えば守備の上手い選手が多い感じです。
そこで学べることを少しでも持ち帰りたいです。」

台湾遠征へ向けては期待が大きい。

「選抜は上手い人ばかり。練習で教わったことを自分のものにしたいです。」

台湾・全国で勝つために

“頭で考える投球”と冬に挑む課題、全国への覚悟

台湾での役割について、栩内投手はこう語る。

「監督さんから台湾ではノーサイン野球でいくと言われています。
ピッチャーでは誰よりも良い成績を残したいです。」

自分の持ち味も明確だ。

「タイミングをずらす投げ方、間の使い方。
真っすぐと同じ腕の振りで変化球を投げること。
カーブは縦に大きく割れるので自信があります。」

冬に向けた課題は“増量”と“基礎作り”。

「体が細いと言われるので、この冬は増量が課題です。
体を大きくすれば球威も安定感も上がると思います。」

「ぼくは野球が下手なのでキャッチボールを丁寧に、取り方など基礎を1からやりたいです。」

そして、3月の全国大会を前にした心構えは力強い。

「全国の強いチームと戦えるのが楽しみです。
5日間連続の試合でどう戦うかが大事。
球数を使いすぎると他の試合が投げられないので意識しています。」

「日本選手権につながる戦いをしたいです。」

全国の強豪との戦いの中で、栩内投手がどれだけ成長を見せるか――
この冬の取り組みが、その答えをつくる。

栩内 巧太(とちない こうた)
とかち帯広リトルシニア/2年
左投げ・左打ち
身長172センチ、体重61キロ
野球を始めたのは小学2年生で、士幌ファイターズに所属していた。
家族構成は、両親と兄の4人。

栩内巧太投手(とかち帯広)
栩内巧太投手(とかち帯広)

“小柄でも勝利に貢献する”/杉本朔弥

守備と走塁で魅せる1番打者のこだわり

身長160cm・体重54kg。決して大柄ではないが、その分、存在感は誰よりも大きい。
秋の大会では準決勝・決勝で1番打者を任され、守備では内野手の経験を生かしながら投手との連携を支え、攻撃ではチームの流れをつくる役割を果たした。
杉本朔弥は、自身の強みと成長、そしてこれからのチームへの貢献について静かに語ってくれた。

内野経験を生かした守備

回転を見る“目”と、投手を支える声掛け

杉本はもともとセカンドやショートを守っていた選手。その経験は、現在の三塁手の守備にも確実に生きている。

「ピッチャーとの声掛けは特に意識しています。
内野の経験があるので、1個下がった時の動きやカバーリング、
あとはボールの回転を見ながら動くよう心がけています。」

打球の回転を読む意識は、彼の守備力を押し上げる大きな武器だ。

そして、この秋で成長を実感した部分をこう語る。

「ピッチャーへの声掛けがしっかりできるようになってきました。
自分が取りに行かない場面でも、ベースに入ったりカバーに回ったり、
連携がうまくいくようになったと思います。」

小柄ながら広い守備範囲と気配りを武器に、投手とチームの守備力を底から支える存在となっている。

1番打者としての役割

“まず出ること”と、つなぎの意識

秋の大会では準決勝・決勝で1番打者として起用された杉本。
その打席での考えはシンプルで明確だ。

「まずは出ること。それが一番です。」

しかし試合が進むにつれ、1番としての役割は出塁だけでは終わらない。

「下位打線がチャンスをつくってくれた時は、
その流れを切らずに、しっかりつなぐことを意識します。
うちの2番はバントも打撃もできて打率も高いので、
とにかく後ろにつなぐ気持ちを大事にしています。」

チーム全体の流れを見ながら役割を変えられる柔軟さは、
1番打者としての大きな武器だ。

印象に残った試合について尋ねると、迷わずこう答えた。

「3つ三塁まで行けた場面があって、
走塁を武器にする自分たちの野球が出せたと思います。」

走塁への意識は、チームの決めごととして浸透している。

「次の塁を必ず狙うという決めごとがあるので、
それが実戦で出たことが嬉しかったです。」

“小柄だからこそ”できる野球で勝利に貢献したい

最後に、これからの抱負を聞くと、杉本は少し照れたように、しかし力強くこう語った。

「自分は小柄で、派手なプレーはできないかもしれないけど、
チームのために進塁したり、勝ちにこだわったプレーを
しっかりやっていきたいです。」

体格ではなく“姿勢と意識”で勝負する選手。
それが杉本朔弥というプレーヤーだ。

チームを勝利へ導く1番打者として、
これからさらに存在感を増していくことだろう。

〇杉本 朔弥(すぎもと さくや)
とかち帯広リトルシニア/2年
今秋は下位打線を担っていたが、決勝トーナメントの準決勝・決勝では1番打者として三塁手を務めた。
右投げ、右打ち
160センチ、54キロ
学童時代は鹿追清水新得少年団に在籍。

杉本朔弥(とかち帯広)
杉本朔弥選手(とかち帯広)

外野の要としてチームを引っ張る/浦城 尚

一歩目の質”と“右足で回る打撃”で全国へ挑む

身長169cm・体重57kg。小学1年生から野球を始め、現在は外野の中心としてチームを支える浦城 尚。
今季は守備力の向上に加えて、打撃面でも大きな手応えを掴み、準決勝・決勝での勝負強さが際立った。
3月に控える全国大会に向け、この冬に何を磨き、どんな姿で挑もうとしているのか。その思いを聞いた。

野球を始めたきっかけと外野手としての責任

一歩目へのこだわりが生んだ成長

野球を始めたのは小学1年生。
きっかけは近所に住む1つ上の仲のよい友達だった。

「その友達が野球をしていて、自分も一緒にやりたいと思って始めました。」

家族は両親と高校2年の兄、中学1年の妹の5人家族。
現在は外野の中心として守備面で大きな役割を担う。

「今季一番課題に感じたのは“一歩目”。
センターも任される立場なので、外野を引っ張る責任があります。
もっと速く、正確に動き出せるよう意識しています。」

責任感が成長を後押しし、守備の精度は確実に上がっている。

打撃では大きな手応えを掴んだ。

「コーチに“右足で回る”打撃を教わって、真っすぐにも変化球にも対応できるようになりました。
試合を重ねるうちに感覚がつかめて、準決勝や決勝でもそれが生きました。」

その結果が象徴的に表れたのが、KOKAJI CUP・札幌大谷戦(準決勝)だ。

「タイブレークで勝った試合で、一番印象に残っています。
ダブルヘッダーで5打数5安打4四死球で、出塁率は2試合通して10割でした。」

恵庭との戦いでもサヨナラ打を放ち、勝負強さが光った。

全国大会へ向けた覚悟

“徹底の徹底”でチーム力を磨き、どんな相手にも勝つ野球を

3月の全国大会を前に、浦城の表情には迷いがない。

「不安より楽しみのほうが大きいです。
この冬はシーズン中に徹底しきれなかった部分を徹底的にやります。」

監督の掲げる“徹底”というテーマを、チーム全員で追求する冬にする。

「全国大会までにチーム力をさらに高めて、
どんな相手が来てもチーム力で勝つ野球をやりたいです。」

外野の要として、攻守で存在感を増す浦城 尚。
冬で磨き上げた力を全国の舞台で発揮する日が、今から楽しみだ。

〇 浦城 尚(うらき なお)
とかち帯広リトルシニア/2年
右投げ・右打ち
身長169センチ、体重57キロ
今秋は中堅手として外野の要を担っている。
野球を始めたのは、1つ上の幼馴染の影響で、ウエストマリナーズに入団したことがきっかけ。
家族構成は、両親・兄・妹の5人。

浦城 尚(とかち帯広)
浦城 尚選手(とかち帯広)

後輩と弟へ伝えたい“逃げない力”/小瀬 遙

野球を始めたのは小学2年生。
きっかけは父の影響だった。

「小さい頃からボール遊びをしていて、面白いなと思って始めました。」

4人きょうだいの長男として、下には妹と弟が続く。
5歳の弟も野球を始めており、兄として声をかけることも多い。

「冬のトレーニングはきついし、逃げたくなると思うけど、
やって損はない。後悔しない3年間にするためにも、
きついことから逃げずにやった方がいいよ、と伝えています。」

後輩への言葉にも、3年間の重みがにじむ。

「2年生は来年が最後。監督の言うことをしっかり聞くこと。
指導者の方が考えていることは自分たちよりずっと上です。
1年生も3年間はあっという間。1回1回の練習を大事にしてほしいです。」

実際、小瀬自身も「3年間は一瞬だった」と振り返る。

「気づいたら春が来て、終わったらもう夏。思った以上に早かったです。」

〇小瀬 遙(こせ はる)
とかち帯広リトルシニア/3年
右投げ、右打ち
174センチ、70キロ
家族は両親と弟2人と妹の6人。
野球を始めたのは父の影響で小学2年生に下音更ガッツ野球スポーツ少年団で始める。6年時には日本ハムジュニアにも選出
中学2年時にはリトルシニアの北海道選抜にも選出され初優勝に貢献した。

小瀬 遙(とかち帯広)
小瀬 遙(とかち帯広)

協力:とかち帯広リトルシニア

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