11月3日、札幌市清田区真栄のグラウンドで冬季練習に励む北広島リトルシニアをチーム訪問した。新チームは秋季全道大会リーグDブロックを5戦全勝で突破し、決勝T初戦は8―2で快勝。準々決勝では強豪・恵庭シニアにタイブレークの末1―2で惜敗したが、その悔しさを力に変え「全道一バットを振る」を合言葉に前進中だ。清水川貴智監督、井部太雅主将(2年/青葉シャークス出身)らに話を聞いた。
秋季全道大会を終えて――清水川貴智監督に聞く
大会総括
「“てっぺんを目指そう”と挑み、リーグは5戦全勝。決勝トーナメント・1回戦は岩見沢さんに8―2で勝ち、準々決勝は恵庭さんに1―2でタイブレーク負け。初回に先制した後にゼロを重ね、七回裏に追いつかれ、最後はサヨナラ。選手はのびのび戦ってくれましたが、決勝トーナメントの壁はまだ厚い――そう実感しました。」
けが人の影響
「恵庭戦前、投手も務める内野手が1回戦後に違和感を訴え、病院でリトルリーグショルダーと診断。守備は遊撃、打線では2番の中核だっただけに痛手でした。」

.jpg)
②.jpg)
成長の象徴――佐賀井杏詞(2年/厚別ファイターズ出身)
「この秋、一気に伸びました。以前は波があったけれど、リーグ戦では4試合を任せられる投手へと成長し加えて安定感も感じる。右のスリークォーターからのストレートは若干動き、変化球も良く、インコースも突けるようになってきた。努力で掴んだ成長で、今後が本当に楽しみです。」
.jpg)
中心メンバーとチームの強み
投手は河嶋幸寛(2年/平岡カウボーイズ)、佐賀井など4枚に加え、1年生からも台頭が見える。投手陣は外部指導を2か月に1度取り入れ「出力アップ」と「制球力向上」に取り組む。
「強みは“野球IQ”の高さ。捕手・山本唯月(2年/北野リトルメッツ)が全体を見て状況判断、内野は清野琉哉(2年/金山ファイターズ)が中心となってリード。外野は橋本恭介(2年/大曲ファイターズ)、外山凱士(2年/厚別ファイターズ)が連携良く引っ張っています。」
(投手陣)



打力と走塁の底上げ
「“道内一バットを振ろう”を合言葉に、室内でも量を確保。近距離フリーや置きティのコース分けなどで徹底して振っています。走塁も強化ポイントとして時間を割いて練習しました。」

指導の交流と学び
今年の3年生は福島大会にも参加し、指導者同士の交流・意見交換で指導の質も向上。リーグを越えて旭川大雪ボーイズとも練習試合を行い、相互に刺激を受けつつ成長している。
冬から春へ――仕上げの青写真
「いまの土台から“もう2段階”レベルを上げたい。自主性と自制心が育つチームです。投手中心の野球は大前提ですが、打でカバーして勝つ発想も持っている。ミスはつきもの、その分を“攻め”で取り返す。」清水川監督の理想とする野球は池田高校のやまびこ打線だ。
蔦監督の「やまびこ打線」とは
池田高校(徳島)を率いた蔦文也監督が全国に知らしめた、徹底的に振ってつないで一気に試合をひっくり返す超攻撃型のスタイルを指す呼び名。「やまびこ」という名前には、“誰か1人の一発ではなく、打線全体が呼応していく(=声が響き合う)ように攻撃する”というイメージが重なっているとも言われる。
1980年代前半の池田高校は、強く振ることを前提に初球からどんどんスイングし、長打も単打も区別なくつなげて大量得点につなげる野球で一気に全国区になった。相手投手の失投を見逃さず、打てる球は迷わず叩き込む。その結果、回の途中から一気に3点、4点と試合を決めてしまう爆発力を武器とした。
当時の高校野球は「守り勝つ」「失点を最小限に抑える」というスタイルが主流だった時代。その中で池田は、得点力そのものをチームのアイデンティティにした。打線全員が“自分が決める”のではなく“自分がつなぐことで次につなげる”と考えており、1番から9番までが攻撃の主役だった点も特徴的だ。
清水川貴智監督が北広島リトルシニアに思い描く「打ち勝つ野球」には、この発想が重なっている。ミスそのものをゼロにすることだけを理想に置くのではなく、「4点取られたら5点取ればいい」という考え方で、全員が強く振り、全員で点を奪いにいく。単なる豪快さではなく、“攻め続けて流れを引き寄せる”という意味での「やまびこ打線」の精神だ。

チーム方針:体重管理
「中学生のうちは“身長-100”を目標に毎日チェック。」無闇に増減させず、競技に適した体づくりを徹底している。
チームが“ひとつ”になった秋――井部太雅主将インタビュー
団結が生まれた瞬間
「新チーム始動直後は個のプレーが中心でしたが、練習を重ねるほどに会話が増えて理解が深まり、足並みが揃いました。リーグ戦で対戦した「とかち帯広」戦ではまさに“ひとつ”になって、役割を全員が果たせた実感があります。KOKAJI CUPで優勝した相手に勝てたことは大きな自信になりました。」
課題――“1点”の重み
「恵庭戦で痛感しました。1点の扱い方に対する執着心をもっと高めたい。冬はそこを磨きます。」
スローガンと目標
「『準備・確認・行動(考動)』。技術だけでなく一体感を大切に、“全道一バットを振る”チームを。来春は“北海道一”と言われるチームになります。」
井部 太雅(いべ たいが)
2年/青葉シャークス出身/右投右打/161cm・54kg
秋季全道大会は9番・二塁手。
家族は両親と妹3人の6人。
.jpg)

「エースの座をつかむ」――佐賀井杏詞投手(2年/厚別ファイターズ)
課題克服から安定へ
KOKAJI CUPでは思うように投げられず、課題を痛感した佐賀井杏詞投手。
「体力不足で良い時と悪い時の波が出ていました」と振り返る。そこから走り込みを増やし、同時に“体重を落としすぎない”工夫も加えて基礎体力の強化に努めた。
ストレートはわずかにシュート気味で、変化球はカーブとスライダーを中心に組み立てる。現在は速いチェンジアップ系の“キックチェンジ”にも挑戦中で、緩急の幅が広がってきているという。
「いまは試合を通して冷静に投げられるようになりました。冬で信頼を勝ち取り、和歌山大会で“佐賀井がエースだ”と言われるようになりたいです」と力強く語った。
そして目標は明確だ。
「来シーズンは春季全道大会で優勝して、夏の日本選手権でも全国へ行きます。」
佐賀井 杏詞(さがい きょうじ)
2年/厚別ファイターズ出身/右投右打/175cm・59kg/家族:母・姉の3人。

北海道選抜に選出、台湾遠征へ――河嶋幸寛投手(2年/平岡カウボーイズ)
選抜入りの実感と目標
「驚きと嬉しさ。周囲のレベルが高く刺激的です。先発・中継ぎ・抑え、どの役割でも流れをつくる投球を。」
反省と強化ポイント
恵庭戦での悔しさから、精神面と変化球の精度を冬のテーマに。
「バッティングも好調。和歌山で“全国でどこまで通用するか”を試します。チームでは佐賀井たちと力を合わせ、総合力をもう一段上へ。」
河嶋 幸寛(かわしま ゆきひろ)
2年/平岡カウボーイズ出身/右投左打/163cm・66kg/家族:両親・兄2人の5人。※学童時代は札幌選抜で投手として活躍。

1年生大会「JAL CUP」北海道代表――鶴ケ﨑悠翔・学年主将インタビュー
代表決定の思いとチーム像
「この大会のためにやってきたので本当に嬉しい。明るく元気、点を取って一気に流れをつくれるのが持ち味。守備はミスを減らし、攻撃は大きい当たりより“つなぐ”意識で全員野球を貫きます。」
キャプテンとして
守備は全体をまとめ、打撃はバントやゴロで繋ぐ“流れの演出”を意識。「人数が多く土日中心の活動で雰囲気づくりは難しいけれど、いい勝ち方ができた時のやりがいは大きい。」
全国大会での目標
「まず自分たちの野球を出し、ひとつずつ勝って最後は優勝へ。」
鶴ケ﨑 悠翔(つるがさき ゆうと)
1年/小野幌ライオンズ出身/右投右打/162cm・54kg/家族:両親・姉・妹の5人。※1年生大会は7番・遊撃で出場。

卒団前、3年生の“未来へつなぐ言葉”
- 増井 瑛大(ますい えいだい)
「“もっと実戦を意識して練習しろ”。練習でできないことは試合でもできない。――後輩へ:もっと野球を楽しんで。」
北広島リトルシニア/3年
左投げ、左打ち
166センチ、68キロ - 小泉 慶太(こいずみ けいた)
「“体重はただ増やすな、筋肉に変えろ”。――後輩へ:増量はバランス重視で。」
北広島リトルシニア/3年
右投げ、右打ち
168センチ、73キロ - 松岡 俊汰(まつおか しゅんた)
「“バッティングをもっと強化”。1点差の敗戦が多かった。――後輩へ:マイナスではなくプラス思考で、結果はついてくる。」
北広島リトルシニア/3年
右投げ、右打ち
170センチ、75キロ - 小野寺 悠真(おのでら ゆうま)
「“勉強もしっかり”。――後輩へ:野球に全力、勉強も手を抜かずに。」
北広島リトルシニア/3年
右投げ、右打ち
176センチ、72キロ - 三幡 郁斗(みはた いくと)
「“ケガをしない体づくりを。痛みを感じたらすぐ病院へ”。シーズン中は痛み止めを飲みながら出場した経験から。――後輩へ:今から身体づくりを、我慢せず受診を。」
北広島リトルシニア/3年
右投げ、右打ち
170センチ、60キロ

今後の予定
- 11月8日:札幌栄リトルシニアと練習試合(苫小牧)
- 12月25日:JAL CUP 1年生大会 出場
- 1月10日:和歌山大会
- 3月下旬:オープン戦

協力:北広島リトルシニア
