旭川北稜球団、再構築の途上で
1月10日、比布町のいちごアリーナ。
中学硬式野球・旭川北稜球団は、雪深い冬の北海道で黙々と冬季練習に取り組んでいた。響くのはミット音と選手たちの足音。そこに、浮ついた空気や手応えを誇るような雰囲気はない。ただ、自分たちの現在地と正面から向き合おうとする姿勢があった。
東日本大会で得た経験、しかし立ち止まらない
卒団した3年生は、今夏に長野県松本市などで行われた第14回日本リトルシニア東日本選抜野球大会へ出場。
1回戦では群馬ダイヤモンドペガサスリトルシニアを7―4で破り、全国の舞台で1勝を挙げた。続く2回戦では地元・岡谷リトルシニアに敗れたものの、東日本大会という高いレベルの中で貴重な経験を積み、次なる高校野球の世界へと歩みを進めている。
ただし、その成果がそのまま新チームに引き継がれているかと言えば、答えは簡単ではない。
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新体制のスタート、まずは現実を受け止める
今シーズンから指揮を執るのは今野哲也監督。
砂川北高校、北海道東海大学、航空自衛隊での社会人野球を経験し、少年野球では豊岡・東旭川で指導歴を重ねてきた。旭川北稜球団とは、現在中学1年生の二卵性双子の兄弟が在籍した縁から、秋季全道大会終了後の11月頃よりチームに関わり、監督就任に至った。
現在のチーム構成は中学2年生6人、1年生16人、6年生6人。
人数、経験、すべてにおいて発展途上の段階にある。


秋季全道大会1勝4敗――「結果以上」とは言えない現状
新チーム(2年生以下)で臨んだ秋季全道大会は1勝4敗。
接戦もあったが、今野監督はそこに「結果以上の手応え」を見出してはいない。
「正直に言えば、投手陣が弱いと感じた。ここをまずは作り直さなければならない」
左投手2人、右投手6人が在籍しているが、試合で安定して使える完成度にはまだ届いていない。
「もう少し完成度があれば、結果は違ったかもしれない。ただ、それは“今は足りていない”ということ」
技術面だけでなく、メンタル面の未熟さも含め、課題は明確だ。

見えてきた素材、しかし「計算できる」段階ではない
現時点で投手として名前が挙がるのは、2年生の大下大晴(豊岡ガッツボーイズ出身/2年)、加藤遙(東五条トリデーズ出身/2年)、藤原壱登(上川大雪クラブ出身/2年)、三品空楽(東旭川フェニックス出身/2年)の4人。
さらに1年生にも複数の投手候補がいる。
「可能性はある。ただ、まだ“回せる”とか“任せられる”という段階ではない」
だからこそ、冬は基礎に立ち返る。ブルペンでの反復、フォームの確認、体力強化。派手さよりも積み重ねを優先する。

冬は厳しく、逃げ場は作らない
課題として今野監督が挙げるのは、強豪チームと対峙した際の“名前負け”。
「相手を見て、気持ちが引いてしまう部分がある。だから冬は、あえてきつめにしている」
インターバル走、追い込みのメニューを重ね、簡単には音を上げられない環境を作る。
冬季練習は、いちごアリーナをはじめ、旭川明成高校、旭川東高校、旭川実業高校、旭川北高校、秩父別屋内練習場などを活用。限られた環境の中でも、やれることを最大限に積み上げている。
捕手は1年生2人が担う。学年に関係なく役割を与えることで、責任感を育てている最中だ。

前を向く理由は「まだ何も得ていない」から
3月末には帯広遠征、4月上旬には苫小牧遠征を予定。
実戦の中で、現実を突きつけられる場面もあるだろう。
それでも、今野監督は前を向く。
手応えがないからこそ、修正点がはっきりしている。
評価できる段階ではないからこそ、やるべきことが明確だ。
冬の旭川北稜球団は、まだ途中にいる。
自分たちを過大評価せず、逃げず、立ち止まらず。
その姿勢こそが、次の一歩につながろうとしている。
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声で流れを変える――主将・藤原壱登が見据える現在地
「まだ、結果以上の手応えはない」。そう率直に語る主将がいる。
中学硬式野球の旭川北稜球団で主将を務める藤原壱登は、秋の敗戦から目を背けない。流れを変えられなかった現実、言い切れなかった言葉、機能し切らなかった役割。すべてを受け止めた先に、彼が描くのは「声で相手を押す」チーム像だ。冬の積み重ねは、春の突破口につながるのか――主将の言葉から、その現在地を探る。
流れを変えられなかった秋と向き合う
小学校時代は上川大雪クラブでプレーした藤原壱登主将。キャプテン経験はなかった。だからこそ、新人戦や秋季大会で感じたのは、試合の流れを変えられないもどかしさだった。
「負けそうな場面で、突破口を開く雰囲気がなかった」。一度傾いた流れを引き戻せないまま、最後まで引きずってしまう試合が続いたという。
ヒットでつながること、投手がリズムを作ること。それぞれの役割が機能し始めて初めて、チームは自分たちの野球に近づく――秋の敗戦は、その現実を突きつけた。

言いづらさを越えられなかったチームの現実
秋の段階では、役割が十分に機能していたとは言えない。
選手同士で話し合う場はあったものの、言いづらいことを真正面からぶつけ合うところまでは至らなかった。
「個々では思っていることがあっても、チーム全体としてぶつけ合うところまではいっていない」。主将としての自省が、言葉の端々ににじむ。
声で押す――開幕へ向けた現在地
それでも、変化の兆しは日常の中にある。
監督交代をきっかけに練習メニューは徐々にレベルアップし、目指す野球の輪郭が見え始めた。投手出身の今野監督による指導は、投手陣の成長にも直結している。
開幕までの目安として藤原が掲げるのは、「声で相手を圧倒する」こと。体が小さい選手が多い現実を受け止めたうえで、小さいなりにできることを徹底する。声と雰囲気で流れを引き寄せ、突破口を開く――そこからチームは動き出す。
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藤原 壱登(ふじわら いっと)
旭川北稜球団/2年
右投げ、右打ち
164センチ、60キロ
野球を始めたのは小学2年生のとき。兄と姉の影響で、上川大雪クラブに入団し、競技をスタートした。
「野球の楽しさを信じて──左腕・大下大晴の挑戦」
投手としての持ち味と、悔しさの中で得た自信
旭川北稜球団に所属する大下大晴(おおした・たいせい)は、左投げ右打ちのピッチャー。右足を高く上げて左腕から投げ込むフォームは、彼自身のスタイルを象徴している。
サッカーやバスケットなど様々なスポーツを経験した中で、野球を選んだのは「打ったときの爽快感」や「思い切り投げられる気持ちよさ」があったから。「野球ってやっぱり楽しい」と語る原点には、そんな純粋な喜びがある。
ピッチャーとしての武器はストレート、スライダー、チェンジアップのコンビネーション。中でもスライダーは、カウントボールとして信頼している。
「スライダーで追い込んでから勝負する形が自分の理想。ただ、『絶対に三振を取る!』という気持ちが強すぎて、逆にタイミングを外せないこともありました。そこは頭の切り替えが課題ですね」
今大会は1勝4敗という悔しい結果に終わったが、自信を得られた試合もあった。
「洞爺湖戦では、三回まで無失点で抑えて、四回に2点取られましたが、自分の中では大きな経験になりました。積極的に打ってくるチームだと思っていたのに、意外と打たれず、自信につながりました」
これまでで最も印象に残っているのも、その洞爺湖戦だという。負けた悔しさと同時に「もっと成長できる」と思えた経験でもあった。
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打撃への思いと、練習を超えた先の喜び
打撃でも3番〜5番を任されるなど信頼されており、バッターとしての活躍も見逃せない。
「打つのも好きです。自分の持ち味を出せた試合では、練習の成果が発揮できて、やってきてよかったと感じます」
練習は決して楽ではない。だが、その苦しさを乗り越えた先にあるのが試合の舞台。
「あの厳しい練習を超えて、試合で結果が出たときの喜び。それが、野球の一番の楽しさです」
今後の課題としては、「2ストライクに追い込んでからの勝負球の精度」と「球速の向上」。さらなる成長を目指して、日々取り組んでいる。
「勝負の場面では、緩急やコースを使いながら、打たせて取るイメージで投げています」
北稜球団との出会い、そして“野球ができる”今への感謝
大下が旭川北稜球団に入団したのは昨年7月。それまでは中学軟式野球部に所属していたが、チームは活動できない状況だったという。
「当時はキャッチャーも部員もいなくて、試合もできない状態でした。でも、同じ中学に北稜球団に通っている同級生や先輩・後輩もいて、もともと身近な存在でした。硬式にも興味があって、親に相談したら理解してくれて。今では応援してもらっています」
環境が整った今、努力と挑戦が実を結び始めている。
これからも、野球の楽しさを信じて、自分の力で一歩ずつ前へ進んでいく。
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大下 大晴(おおした たいせい)
旭川北稜球団/2年
左投げ、右打ち
171センチ、57キロ
野球を始めたのは小学2年生のころ、色々なスポーツを体験した中で一番楽しかったのが野球だった。同年、豊岡ガッツボーイズで競技をスタートした。
「声で流れを変えろ」――4番・三塁手として覚悟を背負う池山理喜の現在地
0-10の現実が教えてくれた「声」の意味
印象に残っている試合として挙げたのは、札幌北リトルシニア戦。
0-10のコールドゲームでの敗戦だった。
「力の差もありました。でも、失点が続くと声がどんどん少なくなって、チームの士気が下がっていったんです」
スコア以上に心に残ったのは、流れを止められなかった悔しさだった。
だからこそ池山理喜は考えた。
「こういう時こそ、声を出して士気を下げない。ミスしても連鎖させない」
攻撃面ではフライやゴロが多く、ライナー性の打球が少なかったことを課題に挙げる。
守備でもミスが続いてしまう場面があり、基礎練習の必要性を痛感したという。
敗戦を“終わり”にせず、“材料”に変えられるかどうか。
池山はその問いに、正面から向き合っている。
4番・三塁手として、チームの中心へ
池山の強みは「声」だ。
それは本人もはっきりと自覚している。
「声を出すことは自分の武器。自分から積極的に声をかけて、チームの雰囲気が下がらないようにしたい」
ミスを引きずらない。
空気を切り替える。
苦しい場面こそ前に出る。
それが、チームの中で“鍵を握る存在”になるために、池山が意識していることだ。
迎える春の開幕、そしてその先の大会へ。
目指す姿は明確だ。
「4番・三塁手として出場し、自分のバットでチームをけん引したい。
チームとしては、常に士気を下げずに戦い続けたいです」
声と覚悟を背負い、池山は次のシーズンへ踏み出す。
その一声が、試合の流れを変える瞬間は、きっとそう遠くない。
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池山 理喜(いけやま りき)
旭川北稜球団/1年
右投げ右打ち
165センチ、80キロ
野球を始めたのは小学4年時に現在、旭川大雪ボーイズでプレーする鶴羽蓮斗(1年)に声をかけられ、近文レッドライナーズで競技野球をスタート。そこから本格的な挑戦が始まった。
体格を生かした打撃を武器に、チームでは主に4番・三塁手を任されてきた。
フォトグラフ
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協力:旭川北稜球団
