空知から広がる新たな挑戦――指導の在り方とこれまでの歩み
2025年に始動した空知ファイヤーズ中等部を、3月1日に訪問した。指揮を執る籏手勉監督に、これからの指導の在り方や選手との向き合い方について話を聞いた。空知管内を中心に選手も集まり始め、今シーズンは多くの大会でその姿を見る機会が増えそうだ。これまでの指導実績とともに、新たなチームづくりに迫る。
現場復帰の背景――家族と歩んだ8年間を経て
籏出監督が本格的に現場へ戻ったのは2025年秋。きっかけは小学生の都市対抗選抜へ出場した2025空知選抜チームとの関わりだった。
4年前に地元へ戻るまでの約8年間は、野球から距離を置き、娘と息子のアイスホッケーを支える日々を送っていた。小学校・中学校・クラブチームと複数の送迎を担いながら、バスケットボールやアイスホッケーの指導にも携わるなど、家庭と教育の両立に全力を注いできた。
「娘が大学を卒業するタイミングで一区切り。もう一度、野球に向き合おうと決めました」
そう語る表情には、長年の経験を経て再び現場に立つ覚悟がにじむ。
.jpg)
指導の根幹――“つなぎの3年間”で人を育てる
37年間の教員生活を通じて見てきた成長曲線。その中で籏出監督が最も重視するのが、中学3年間の位置づけだ。
「小学校6年生から高校1年生まで。この3年間で体は30センチ伸びることもあるし、心も子どもから大人へ一気に変わる」
だからこそ、この期間は単なる“通過点”ではない。
「まずは人としての成長。そして技術はその上に積み重なるもの」
指導の中心はパワーや結果ではなく、野球の細部――状況判断や連携、1点をどう取り、どう防ぐかという本質にある。
「野球は9人でやるスポーツ。その“つなぎ”を大事にしたい」

軟式野球の価値と本質
籏出監督は、これまでの経験から軟式野球の価値にも強いこだわりを持つ。
「軟式は簡単だと思われがちだけど、実は難しい。ボールが遅い分、判断も技術も求められる」
地方では選択肢が限られる中で、与えられた環境でどう成長するかが重要だと説く。
「硬式野球がすべてではない。軟式でもしっかりやれば高校で活躍できる」
形式や所属にとらわれず、“本物の野球”を伝えること。それが指導者としての使命だという。

“教える責任”と向き合う
近年の育成環境についても、率直な思いを口にする。
「野球界には多くの団体や進路が存在するからこそ、選手にとっては見えにくい“ブラックボックス”も多い。だからこそ、正しいことを伝える責任がある」
短期的な結果ではなく、その先につながる指導を――。その姿勢は一貫している。

新チーム始動――“変わらない野球”で勝負
新チームは徐々に選手が集まり始め、苫小牧など遠方からも参加するなど広がりを見せている。
この日の練習は、体験会を兼ねた実戦形式。カラーボールを使った打撃練習やバント、ランナーを絡めたゲーム形式など、試合を意識した内容が並んだ。
「やる野球は変わらない。1点をどう取るか、どう守るか」
キャプテンはまだ未定ながら、候補選手の名前も挙がり、チームは着実に形になりつつある。

未来へ――野球を通じて“本物”を伝える
「野球はそんなに進化していない」
そう語る籏出監督の言葉には、変わらない本質への信念が込められている。
技術も戦術も進化する中で、最後に問われるのは人としての在り方。
「この3年間で何を学ぶか。それがすべてにつながる」
現場に戻ってきた指導者が掲げるのは、勝利だけではない“成長の野球”。
その歩みが、これからどんなチームをつくり上げていくのか――注目が集まる。

【名将の肖像】空知ファイヤーズ・籏手 勉監督
〜「情熱の伝染」で子どもたちを全国の舞台へ〜
空知ファイヤーズ中等部で指揮を執る籏手勉監督は、長年にわたり北海道の中学軟式野球界を牽引してきた情熱あふれる指導者です。教職生活37年の中で培われた確かな指導力と、選手一人ひとりの可能性を信じる姿勢で、数多くの輝かしい実績を築き上げてきました。
輝かしい球歴と指導実績
籏手監督自身、札幌中央リトルリーグでの全国選抜大会準優勝を皮切りに、札幌北リトルシニア、札幌新川高校、国士舘大学と、硬式野球の第一線でプレーしてきました。
指導者に転身後は、釧路市立大楽毛中学校や青陵中学校などで手腕を発揮。特に特筆すべきは、全日本少年軟式野球北海道大会での4度の優勝、そして中体連北海道大会での優勝など、計6度の全道制覇を成し遂げている点です。
- 主な戦績:
- 全日本少年軟式野球北海道大会:優勝4回(横浜スタジアム出場)
- 中体連北海道大会:優勝(沖縄県開催全国大会出場)
- 全日本少年春季北海道大会:優勝(静岡県開催全国大会出場)
「情熱の伝染」を座右の銘に
籏手監督の指導の根底にあるのは「情熱の伝染」という言葉です。大学まで硬式野球一筋だったからこそ、軟式野球特有の難しさや戦略性を深く追求し、それを選手たちに熱意を持って伝えてきました。
「野球が好きな子どもたちを全国の舞台に立たせる」という強い責任感を持ち、単に勝つことだけではなく、目標達成に向けた具体的なプロセス(技術・戦術・精神面)を論理的に指導しています。
脈々と受け継がれる指導の結晶
籏手監督の教え子たちは、現在も球界の各方面で活躍しています。
- 今田 祐一 氏(北海道大学硬式野球部監督)
- 宮脇 弘一氏(WEED白老)
- 高橋 柚多 氏(小樽協会) など、監督の教えは次世代のリーダーたちへと確実に引き継がれています。
空知ファイヤーズでの新たな挑戦
現在は空知ファイヤーズの監督として、「感謝」の気持ちを大切にしながら、「全日本少年軟式野球北海道大会優勝、そして横浜スタジアムへ」という明確な目標を掲げています。
「有言実行」を信条とし、緻密な戦略と熱い指導で、子どもたちの夢を現実にするための挑戦を続けています。
フォトグラフ

.jpg)
.jpg)
.jpg)
.jpg)

協力:空知ファイヤーズ中等部
