空知ファイヤーズ中等部始動 籏手勉監督が示す育成の軸

空知ファイヤーズ中等部始動 籏手勉監督が示す育成の軸

空知から広がる新たな挑戦――指導の在り方とこれまでの歩み

現場復帰の背景――家族と歩んだ8年間を経て

 籏出監督が本格的に現場へ戻ったのは2025年秋。きっかけは小学生の都市対抗選抜へ出場した2025空知選抜チームとの関わりだった。

 4年前に地元へ戻るまでの約8年間は、野球から距離を置き、娘と息子のアイスホッケーを支える日々を送っていた。小学校・中学校・クラブチームと複数の送迎を担いながら、バスケットボールやアイスホッケーの指導にも携わるなど、家庭と教育の両立に全力を注いできた。

 「娘が大学を卒業するタイミングで一区切り。もう一度、野球に向き合おうと決めました」

 そう語る表情には、長年の経験を経て再び現場に立つ覚悟がにじむ。

籏手監督(空知ファイヤーズ中等部)
籏手監督(空知ファイヤーズ中等部)

指導の根幹――“つなぎの3年間”で人を育てる

 37年間の教員生活を通じて見てきた成長曲線。その中で籏出監督が最も重視するのが、中学3年間の位置づけだ。

 「小学校6年生から高校1年生まで。この3年間で体は30センチ伸びることもあるし、心も子どもから大人へ一気に変わる」

 だからこそ、この期間は単なる“通過点”ではない。

 「まずは人としての成長。そして技術はその上に積み重なるもの」

 指導の中心はパワーや結果ではなく、野球の細部――状況判断や連携、1点をどう取り、どう防ぐかという本質にある。

 「野球は9人でやるスポーツ。その“つなぎ”を大事にしたい」

籏手監督の話を聞く空知ファイヤーズ中等部ナイン
籏手監督の話を聞く空知ファイヤーズ中等部ナイン

軟式野球の価値と本質

 籏出監督は、これまでの経験から軟式野球の価値にも強いこだわりを持つ。

 「軟式は簡単だと思われがちだけど、実は難しい。ボールが遅い分、判断も技術も求められる」

 地方では選択肢が限られる中で、与えられた環境でどう成長するかが重要だと説く。

 「硬式野球がすべてではない。軟式でもしっかりやれば高校で活躍できる」

 形式や所属にとらわれず、“本物の野球”を伝えること。それが指導者としての使命だという。

トスバッティングする空知ファイヤーズナイン
トスバッティングする空知ファイヤーズナイン

“教える責任”と向き合う

 近年の育成環境についても、率直な思いを口にする。

 「野球界には多くの団体や進路が存在するからこそ、選手にとっては見えにくい“ブラックボックス”も多い。だからこそ、正しいことを伝える責任がある」

 短期的な結果ではなく、その先につながる指導を――。その姿勢は一貫している。

トスバッティングする空知ファイヤーズナイン
トスバッティングする空知ファイヤーズナイン

新チーム始動――“変わらない野球”で勝負

 新チームは徐々に選手が集まり始め、苫小牧など遠方からも参加するなど広がりを見せている。

 この日の練習は、体験会を兼ねた実戦形式。カラーボールを使った打撃練習やバント、ランナーを絡めたゲーム形式など、試合を意識した内容が並んだ。

 「やる野球は変わらない。1点をどう取るか、どう守るか」

 キャプテンはまだ未定ながら、候補選手の名前も挙がり、チームは着実に形になりつつある。

冬季練習に励む空知ファイヤーズ中等部ナイン
冬季練習に励む空知ファイヤーズ中等部ナイン

未来へ――野球を通じて“本物”を伝える

 「野球はそんなに進化していない」

 そう語る籏出監督の言葉には、変わらない本質への信念が込められている。

 技術も戦術も進化する中で、最後に問われるのは人としての在り方。

 「この3年間で何を学ぶか。それがすべてにつながる」

 現場に戻ってきた指導者が掲げるのは、勝利だけではない“成長の野球”。

 その歩みが、これからどんなチームをつくり上げていくのか――注目が集まる。

広い施設で中継プレーの練習を行った空知ファイヤーズ中等部ナイン
広い施設で中継プレーの練習を行った空知ファイヤーズ中等部ナイン

【名将の肖像】空知ファイヤーズ・籏手 勉監督

〜「情熱の伝染」で子どもたちを全国の舞台へ〜

輝かしい球歴と指導実績

籏手監督自身、札幌中央リトルリーグでの全国選抜大会準優勝を皮切りに、札幌北リトルシニア、札幌新川高校、国士舘大学と、硬式野球の第一線でプレーしてきました。

指導者に転身後は、釧路市立大楽毛中学校や青陵中学校などで手腕を発揮。特に特筆すべきは、全日本少年軟式野球北海道大会での4度の優勝、そして中体連北海道大会での優勝など、計6度の全道制覇を成し遂げている点です。

  • 主な戦績:
    • 全日本少年軟式野球北海道大会:優勝4回(横浜スタジアム出場)
    • 中体連北海道大会:優勝(沖縄県開催全国大会出場)
    • 全日本少年春季北海道大会:優勝(静岡県開催全国大会出場)

「情熱の伝染」を座右の銘に

 籏手監督の指導の根底にあるのは「情熱の伝染」という言葉です。大学まで硬式野球一筋だったからこそ、軟式野球特有の難しさや戦略性を深く追求し、それを選手たちに熱意を持って伝えてきました。

「野球が好きな子どもたちを全国の舞台に立たせる」という強い責任感を持ち、単に勝つことだけではなく、目標達成に向けた具体的なプロセス(技術・戦術・精神面)を論理的に指導しています。

脈々と受け継がれる指導の結晶

籏手監督の教え子たちは、現在も球界の各方面で活躍しています。

  • 今田 祐一 氏(北海道大学硬式野球部監督)
  • 宮脇 弘一氏(WEED白老)
  • 高橋 柚多 氏(小樽協会) など、監督の教えは次世代のリーダーたちへと確実に引き継がれています。

空知ファイヤーズでの新たな挑戦

現在は空知ファイヤーズの監督として、「感謝」の気持ちを大切にしながら、「全日本少年軟式野球北海道大会優勝、そして横浜スタジアムへ」という明確な目標を掲げています。

「有言実行」を信条とし、緻密な戦略と熱い指導で、子どもたちの夢を現実にするための挑戦を続けています。

フォトグラフ

守備練習を行う空知ファイヤーズ中等部ナイン
守備練習を行う空知ファイヤーズ中等部ナイン
投手(空知ファイヤーズ中等部)
投手(空知ファイヤーズ中等部)
捕手(空知ファイヤーズ中等部)
捕手(空知ファイヤーズ中等部)
内野手(空知ファイヤーズ中等部)
内野手(空知ファイヤーズ中等部)
外野手(空知ファイヤーズ中等部)
外野手(空知ファイヤーズ中等部)
空知ファイヤーズ中等部
空知ファイヤーズ中等部

協力:空知ファイヤーズ中等部

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