〜広域から集う41人、新シーズンへ歩みを進める冬〜
1月12日、中学硬式野球チーム「札幌豊平東リトルシニア」を訪問した。グラウンド環境の変化という大きな転機を迎えながらも、チームは着実に前へ進んでいる。秋の新人戦で見せた確かな手応え、投手陣を軸とした戦いぶり、そして広域から集まる団員たち。新シーズン開幕へ向けた現在地を追った。
※取材当日は杉山哲也監督が不在のため、仁木裕一コーチに話を聞いた。
団員構成と広域からの集結
現在の団員数は41人(1月12日現在)。
内訳は、2年生8人、1年生19人、新入団予定の6年生17人。なお、今春卒団した3年生は14人だった。
選手の居住地域は、清田区、厚別区、白石区、そして北広島市が多い。グラウンドが恵庭市にある関係で、その周辺エリアからの入団が目立つ一方、比較的広い地域から選手が集まっているのが特徴だ。札幌市内のみならず近郊都市まで含めた“広域型チーム”といえる。

グラウンド問題と新たな拠点探し
これまで北海道所有地を借用していたが、年末に土地が売却。4月以降は栗沢や江別市のグラウンドを借りながら活動する予定だという。現在は新たな拠点を模索中であり、環境面では過渡期にある。
それでも活動は止まらない。チームとしての平日練習は行っていないが、室内練習場を開放し、学年別に自主練習を実施。新3年生、新2年生、そして今後は新1年生もそれぞれ利用する。保護者が付き添い、安全管理を徹底している。
土日祝日は全体活動日。3月末には江差町への遠征を予定し、函館港西リトルシニアとの交流試合を行う。これは毎年続く恒例行事だ。4月からは練習試合を重ね、4月29日のリーグ開幕を迎える。

指導体制とチームづくり
指導者は杉山哲也監督を中心に8人体制。学年やポジションごとに完全分業する形ではなく、気づいた点をその都度指導するスタイルだ。
練習は基本的に全体練習。状況に応じて学年別に分かれるが、チームとしての一体感を大切にしている。

秋の新人戦「思ったより良かった」2勝2敗1分
Eブロックで2勝2敗1分。仁木コーチは「思ったより良かった」と振り返る。
初戦は札幌北戦。1対3で敗れたが、相手は最終的に優勝。大差も予想された中、エース狩野美希(2年・豊平カージナルス出身)が6回を一人で投げ抜いた。
狩野はもともと野手。夏から本格的に投手練習を始めたが、秋のリーグ戦では全試合先発し、防御率1.5を記録。発展途上ながらチームの柱となった。女子選手がエースを務める存在感も大きい。
もう一人は舘田蒼志(1年・青葉シャークス出身)。球数制限の中で先発からつなぐ形を担った。ただし、2番手以降の投手層は今後の課題だ。
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勝因は投手力、課題は打線の厚み
勝利した試合の共通点は「投手がゲームをつくったこと」。
一方、攻撃では上位打線が機能した時に得点できている。
1番・古山悠人(もみじ台ベアーズ出身/1年)、2番・小野内倖士(白菊ファイターズ出身/2年)が出塁し、3番・舘田、4番・佐々木然(青葉シャークス出身/1年)で返す形。上位は下級生が中心で、将来性は十分だ。
しかし下位打線に得点力の課題がある。「出る・送る・返す」の循環を下位まで広げられるかが成長の鍵だ。

露呈した課題と冬のテーマ
敗戦や引き分けから浮かんだのは投手層の薄さ。2番手、3番手の育成は急務だ。
終盤同点の試合での判断や継投のタイミングなど、ベンチワークの反省もあるという。失点が重なると修正できず崩れる場面もあった。2番手以降、フォアボールや連打が連鎖する悪循環を断ち切れるチームへ——それが次の段階だ。
冬の強化テーマは明確だ。
「とにかく振ること」。打撃量の確保。そしてバントの徹底反復。本番のプレッシャー下で成功できる精度を求めている。

卒団生が残した足跡
印象に残る試合として挙げたのは、当時2年生主体で臨んだ秋季全道大会・北空知深川戦。
追いつき、離され、最終回に2点を奪い同点に追いついた。
「チームが一つになった瞬間だった」
引き分けながらも、大きな成長を感じた一戦だったという。
令和6年9月1日、深川市民球場
札幌豊平東3-3北空知深川
札幌豊平東
0010002=3
0001110=3
北空知深川
(豊)岡田、町谷-櫻谷
(深)菊池、柴田、立川、柴田-桧森
▽二塁打:原田(深)
卒団した14人の3年生は、札幌日大、札幌光星、とわの森、文教台付、北星大高などへ進学。それぞれ次の舞台へ歩み出す。
卒団した3年生に対し、仁木コーチは「多くの選手が進路を決めています。それぞれ次のステージで頑張ってほしいです。」と述べた。

変化の中で問われる“地力”
拠点問題という逆風。
投手中心という明確な強み。
若い上位打線の伸びしろ。
札幌豊平東リトルシニアは、決して完成形ではない。しかし、秋に得た確かな手応えは強みとなる。
環境が変わっても、野球は変わらない。
投げ、打ち、守り、走る。その積み重ねが4月29日の開幕につながる。
冬を越えたとき、このチームはどんな姿になっているのか。
新シーズンは、すでに始まっている。

主将・小野内が語る「声」と覚悟――接戦を勝ち切るチームへ
チームを束ねる主将として、小野内倖士(白菊ファイターズ出身/2年)が最も大切にしているのは「声を切らさないこと」だ。ピンチでも、劣勢でも、下を向かない。接戦で見えた課題と向き合いながら、開幕へ向けて個と組織の完成度を高めていく。その言葉には、勝敗を分ける“あと1点”への強い執念がにじんでいた。
「声を切らさない」――主将としての責任
大会を通じてチームをまとめるうえで意識していることは何か。小野内は迷わず「声」と答えた。
練習中も試合中も、とにかく声を出し続けること。ベンチもグラウンドも一体となる空気をつくるのは、キャプテンの役割だと考えている。
しかし、理想と現実の間にはまだ差がある。
「ピンチになると、どうしても声が途切れてしまうことがあった」。その自己分析は率直だ。苦しい場面ほど主将の存在感が問われる。だからこそ、どんな状況でも声を絶やさない――それが今後の大きなテーマだ。
さらに大事にしているのは、仲間を下向きにさせないこと。
ミスをした選手に「ドンマイ」と声をかける。失敗を責めるのではなく、次のプレーへ気持ちを向けさせる。主将の一言が、チームの雰囲気を左右することを知っているからだ。
守備ではセカンドを守る。内野の要として、ピンチの場面ではタイムを取り、マウンドへ向かう。投手に声をかけ、落ち着きを取り戻させる。
言葉と行動、その両方でチームを支えるのが小野内のスタイルだ。
接戦で浮き彫りになった「あと1点」の重み
これまでの試合で見えた課題は明確だ。
「確実にアウトにしなければいけない場面で取り切れなかった」。守備の一瞬の甘さが失点につながる。接戦だからこそ、その1プレーの重みは大きい。
攻撃面でも課題は残る。
残塁の多さ。あと一本が出ないもどかしさ。
「1点を防げなかったり、1点を奪えなかったりした」。その言葉には悔しさが滲む。
勝敗を分けるのは派手な一打ではなく、当たり前のプレーを積み重ねられるかどうか。アウトを確実に取ること、好機で一本を出すこと。その精度を高めることが、接戦を勝ち切る条件だと捉えている。
開幕へ――個の覚悟と走塁革命
個人としての課題もはっきりしている。
秋の大会ではヒットが思うように出なかった。上位打線を任される以上、チャンスで打てる存在にならなければならない。
「秋の悔しさを忘れず、出塁率を上げたい」。
安打だけでなく、四球や進塁打も含めた“つなぐ意識”。勝利に直結する打席を増やすことが目標だ。
チームとして今、最も力を入れているのは走塁。
ヒットが多くなくても、次の塁、その先の塁を狙う。単打でも三塁まで進める意識を徹底する。
「走塁で一個先を奪えるチームになりたい」。
それは単なるスピードの話ではない。状況判断、準備、勇気。すべてが問われるプレーだ。
声で流れをつくり、守備で1点を防ぎ、走塁で1点をもぎ取る。
小野内主将の目指す野球は、派手さよりも粘り強さを武器にした、勝負強いスタイルだ。
開幕のグラウンドで、その完成度がどこまで高まっているのか。
主将の声が響く限り、チームは前を向き続ける。
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小野内 倖士(おのうち こうし)
札幌豊平東リトルシニア/2年
右投げ、左打ち
167センチ、55キロ
野球を始めたのは父の影響で、小学2年生から白菊ファイターズで競技をスタートした。
家族は両親と妹の4人。
女子エース・狩野美希の挑戦――流れを取り戻す右腕へ
中学生の中で女子選手としてレギュラーを張ること自体が難しい中、チームのエースとして存在感を示す狩野美希投手(豊平カージナルス出身/2年)。チームのマウンドを任される右腕は、秋の全道大会で悔しさと手応えの両方を味わった。満塁の重圧、フォームの迷い、そして流れを渡してしまった試合展開――。そのすべてを糧に、彼女はいま“エース”への階段を上ろうとしている。
満塁のマウンドで知った重圧
昨年の秋季全道大会。
最も難しいと感じた場面として挙げたのは、洞爺湖リトルシニア戦の満塁の場面だった。
「マウンドに立っていてボールが続いたときです。四球が重なり、ピンチだと感じました。」
先発した狩野は三回まで投げ1失点。粘り強く腕を振ったが、その後チームは失点を重ね、試合は3―6で敗れた。
満塁の場面で募る焦り。ストライクを取りにいこうとするほど微妙なズレが生まれる。エースを任される責任の重さを、身をもって知った瞬間だった。
フォームの迷いと再出発
秋の大会で浮き彫りになった課題は、投球フォームだった。
「もともと野手をやっていて、野手投げのように腕が下がってしまい、角度のあるボールが投げられませんでした。」
腕の位置が下がることで球筋は平たくなり、ボールが先行。結果として球数が増え、自ら苦しい展開を招いてしまった。
技術的なズレが、試合の流れにも影響する。投手というポジションの繊細さを痛感した。
現在はコーチとともにフォームを徹底的に見直している。
「ピッチャーらしいフォームに改善するところからやっています。」
基礎に立ち返る作業は地道だが、その積み重ねこそが真のエースへの道だ。
目標は明確だ。
「チームの主軸として、チームを支えられるエースになりたい。」
言葉には、自覚と覚悟が宿る。
流れを渡さないチームへ――打席での存在感
狩野は打席でも主軸を担う。クリーンアップとして、好機で打席が回ってくることが多い。
「ランナーがたまった場面では、長打やヒットを打つことを意識しています。」
旭川北陵リトルシニア戦では、満塁の場面でセンター前ヒットを放ち、1点をもぎ取った。
投手としての重圧を背負いながら、打者としても結果を出す。その二刀流の働きがチームを支える。
チームの課題については、冷静に分析する。
「序盤は良い流れでも、途中から相手に流れを持っていかれて負けてしまう試合がありました。同点や逆転されたあとの攻撃で点を取れないことが多かったです。」
流れは目に見えない。しかし確かに存在する。
だからこそ、「流れを渡さない、取り返せるチームになりたい」と語る。
次の攻撃で点を取り返す――。
それは投手としての粘りと、打者としての勝負強さの両方を意味する。
女子選手でありながらエースを任される狩野美希。
その挑戦は、特別な存在としてではなく、“チームを勝たせる投手”になるための挑戦だ。
満塁のマウンドで感じた重圧は、もう逃げない。
次に同じ場面が訪れたとき、彼女はきっと、迷いなく腕を振る。
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狩野 美希(かりの みき)
札幌豊平東リトルシニア/2年
右投げ、右打ち
167センチ
家族は両親と兄2人の5人
野球を始めたのは、兄が野球をしている姿がかっこよく映ったことがきっかけで、小学1年時に豊平カージナルスで競技をスタートしました。
打線の核・千坂央翔が描く進化論――“確実性”で春をつかむ
攻撃の要として名前が挙がる千坂央翔選手(島松ジュニアイーグルス出身/2年)。長打力を武器に打線をけん引してきたが、秋を経て見つめ直したのは「確実性」というテーマだった。塁に出る責任、流れを断ち切らない精神力、そして春に向けた打撃の再構築。主軸としての自覚が、その言葉の端々ににじむ。
打線の中心としての責任と役割
ランナーがいない場面では出塁を最優先に。
得点圏では長打で走者を返す――。
千坂選手の役割は明確だ。状況に応じて打撃の目的を変えること。それが打線の中心を任される打者の責任だと理解している。
特に目立ったのは左中間への鋭い打球。強く振り抜いた打球が外野の間を破る場面は、チームに勢いをもたらしてきた。
だが同時に、ただ強く振るだけでは安定した結果は残せないという現実にも向き合っている。
「まず塁に出る」という言葉は、長打力を持つ打者だからこそ重みがある。打線はつながってこそ機能する。主軸であっても、自己完結型の打撃ではなく、流れの一部になる意識が芽生えている。
攻撃が機能した試合と、崩れた試合の差
旭川北稜戦では打線が機能した。
その背景にあったのは、技術的な修正だった。
「バットを少し短く持ち、コンパクトに振ることを意識しました。トップを早く出して、しっかり振ることを心がけました。」
これまではあと一歩でヒットにならない打球が多かったと振り返る。だがその試合では打球の質が明らかに変わった。芯で捉えた強い打球が生まれたのは、力任せではなく、準備と再現性を意識したからだ。
一方で、得点が伸びなかった試合には共通点がある。
大量失点のあと、守備のミスを引きずってしまい、思い切ったプレーができなかったことだ。
「気持ちの切り替えが課題だと思います。」
相手投手の力もある。しかし最大の敵は、自分たちの中に生まれる迷いだ。
千坂選手は、打線の中心として流れを変える一本を放てる存在を目指している。
春へ――“フルスイング一辺倒”からの脱却
これまでは長打を狙い、ほとんどの球をフルスイングしてきた。
それが持ち味であり、強みでもあった。
だが春に向けて掲げるテーマは明確だ。
「打率を残せる打者になること。」
ヒット性の当たりを増やし、確実性を高める。
フルスイングという武器を捨てるのではなく、状況に応じて使い分ける打者へ――それが千坂選手の描く進化の形だ。
チームには長打力のある選手がそろう。
だからこそ、上位打線が出塁し、流れをつくることが重要になる。
「上位でどんどん点を取り、流れをつくる攻撃をしていきたい。」
豪快さと確実性の両立。
千坂選手は春に向け、打線の中心としてさらなる完成度を追い求めている。
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千坂 央翔(ちさか ひろと)
札幌豊平東リトルシニア/2年
右投げ、右打ち
177センチ、68キロ
野球を始めたきっかけは父の影響で、幼稚園の頃から島松ジュニアイーグルスで競技をスタートしました。
主軸の覚悟――佐々木然が描く「4番」の責任
昨年の秋季全道大会で、1年生ながら打線の中軸・4番を任された佐々木然選手(青葉シャークス出身/2年)。主軸として打線をけん引する重圧の中、状況に応じた役割の変化や精神面の成長にも目を向けている。大量得点を生んだ試合の裏側、そして春に向けた進化の青写真を語った。
4番としての責任――「返す」か「出る」か
打線の軸として何を意識しているのか。問いに対する答えは明確だった。
「ランナーがいる場面では、しっかり返すこと。最低限の仕事をすることを意識しています。」
主軸に求められるのは結果だ。だが、佐々木選手は“最低限”という言葉を口にする。犠牲フライや進塁打も含め、得点につながる打撃を重視する姿勢がうかがえる。
一方で、走者がいない場面では役割が変わる。
「4番ですが、まずは塁に出てチャンスをつくることを意識しています。」
長打に固執せず、出塁から流れをつくる。その柔軟な思考が、打線の安定感を支えている。
打線がつながる理由――勢いを生む出塁
旭川北稜戦では打線が爆発。大量得点を挙げた。
その要因について、佐々木選手はチームの特性を挙げる。
「誰かが出塁すると一気に盛り上がるチームです。先頭が出たり、ノーアウトでチャンスをつくれると、どんどんつながります。」
勢いは偶然ではない。先頭打者の出塁が空気を変え、ベンチが活気づき、次の打者へと好循環が生まれる。
打線は点ではなく線。その線を太くするのが、主軸の存在だ。
佐々木選手は、自身が打つことだけでなく、打線全体のリズムを意識している。
課題と冬の決意――進化する4番へ
もちろん課題もある。
「力んでポップフライを上げてしまうことがあります。」
打ちたい気持ちが先行した結果だ。さらに、左打者でありながら左投手を苦手としている点も自覚している。
「右肩が開かないように我慢して、しっかり打てるようにしたい。」
技術とメンタルの両面での成長が求められる。
開幕へ向けて掲げるテーマは“振れる打線”。
「この冬にしっかり振り込んで、それぞれが自分のスイングを身につけたい。」
自身についても具体的だ。
「去年よりスイングスピードや打球の飛距離を伸ばしたい。」
完成された4番ではない。だからこそ伸びしろがある。
冬の積み重ねが、春の打席でどんな打球となって表れるのか。
佐々木然選手の挑戦は、静かに、しかし確実に続いている。
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佐々木 然(ささき ぜん)
札幌豊平東リトルシニア/1年
右投げ、左打ち
173センチ、63キロ
野球を始めたきっかけは、4つ上の兄の影響です。物心がつく頃からキャッチボールは日常的に行っていました。小学1年生から青葉シャークスで正式に競技をスタート。小学6年生時には日本ハムファイターズジュニアに選出されるなど、高い実力を示してきた。
フォトグラフ



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協力:札幌豊平東リトルシニア
