北が先制2点打、主将・石田は最終回二死から執念の内野安打 林監督「負けた後にどうするのか」
兵庫県淡路市で開催された「MIZUNO BASEBALL DREAM CUP Jr. Tournament 2026」に北海道代表として初出場した屯田ベアーズ(札幌市)は8月9日、1回戦で福岡県代表・城少レッドスターズと対戦し、2-7で敗れた。初回、北真裟斗(6年)の2点タイムリー二塁打で鮮やかに先制。全国初勝利へ最高のスタートを切った。しかし、その裏に追いつかれると、三回以降は四死球や失策も絡んで失点。一方の攻撃は二、三、六回と得点圏まで走者を進めながら、あと一本が出なかった。それでも最終回二死、主将・石田旭(6年)が全力疾走と一塁へのヘッドスライディングで内野安打をもぎ取った。最後の最後まで貫いたのは、チームが何より大切にしてきた「全力疾走」。勝利には届かなかったが、自分たちの力でつかんだ初の全国舞台には、これからの屯田ベアーズにつながる確かな一歩が刻まれた。
イニングスコア
◆1回戦(8月9日、多目的グラウンド3面)
屯田ベアーズ(北海道)2-7城少レッドスターズ(福岡県)
屯田ベアーズ
200000=2
20221x=7
城少レッドスターズ
(屯)羽賀、桒重、羽賀、桒重ー石田
(城)本多、西嶋ー當間
▽二塁打:北(屯)、堀(城)
「これは行ける」――初回、全国の舞台でつかんだ2点
初めて立つ全国の舞台。
林政樹監督が試合前、最も気に掛けていたのは北海道とは違う淡路島の猛暑だった。しかし、球場入りしてみると、想定していたほどの厳しさは感じなかったという。
むしろ大きなポイントと考えていたのは「試合の入り」だった。
その初回、屯田は堂々と全国の舞台へ踏み出した。
先頭の1番・大巻颯太(6年)が四球を選ぶと、すかさず二盗。二死後、4番・石田も四球を選び、バッテリーミスもあって二、三塁と好機を広げた。
ここで打席には5番・北真裟斗(6年)。
北が捉えた打球は右中間を破り二者が生還する2点タイムリー二塁打。屯田ベアーズが2-0と先手を取った。
偶然生まれた2点ではない。
相手投手の立ち上がりを見ながら、ベンチでは「ボール球には絶対に手を出さない」「狙う高さはベルトライン」「真ん中から内寄りを積極的に強く振る」と狙いを再確認していた。
選手たちは、それをグラウンドで実行した。
林監督は振り返る。
「初回に良い形で先制する事が出来て、想定外の良いスタートを切る事が出来ました。チーム全体に『これは行けるぞ』というムードがありました」
全国でも戦える。
そんな手応えが、ベンチに広がった瞬間だった。
が右中間へ2点タイムリー二塁打。.jpg)
直後の同点 流れを引き戻した城少の「一球への執着」
だが、全国大会の一勝は簡単には手に入らない。
その裏、城少レッドスターズは先頭打者の長打をきっかけに反撃。3安打を集め、小技も絡めながら2点を奪い、瞬く間に2-2と振り出しに戻した。
林監督にとって、ここが最初の大きな分岐点だった。
「その裏すぐに先頭打者に長打を浴び、その後に小技を絡められ、ミスが重なり同点に追いつかれ、少し冷静さを失ってしまいました」
さらに、自らに矢印を向けた。
「その時の私の動揺が子供達に伝わってしまった気がします。そこで子供達を落ち着かせる言葉を、しっかりとはっきりとかけられていればと今は後悔しています。全ては私の準備不足と経験不足が招いた結果だと思います」
選手だけではない。
監督自身もまた、初めての全国舞台で戦っていた。

三回の攻防が分けた明暗 屯田にあって、城少にもあった好機
二回、屯田は再び走者を得点圏へ進めたが、勝ち越しには至らない。
そして林監督が「勝敗を分けたポイント」と挙げたのが三回だった。
屯田は先頭打者が相手の失策をきっかけに出塁。勝ち越しの走者を出し、得点圏まで進めた。
しかし、ホームが遠い。
好機を生かせず、無得点に終わった。
すると、その裏だった。
城少は死球で出した走者を足と小技で動かし、得点へと結び付ける。屯田がつかみ切れなかった「1点」を、城少は確実にものにした。
林監督はそこに、スコアだけでは表せない全国の強さを感じ取った。
「力量的には、スコアほどの差はなかったと感じています」
その一方で、
「相手の一球とワンプレーに対する集中力と執着心、徹底力の差が明暗を分けたと思います」
と語った。
四回にも2点、五回にも1点を加えられ、スコアは2-7。
四死球や失策が絡んだところを、城少は逃さなかった。
一つの四死球。一つのミス。一つの進塁。
全国では、その一つが得点となって返ってくる。
屯田にとって、それを肌で知る試合となった。

二、三、六回――あと一本が遠かった
一方の屯田にも、追加点のチャンスはあった。
二回、三回、そして最終六回。
走者を得点圏まで進めながら、あと一本が出ない。
初回には四球を見極め、狙い球を仕留めて2点を奪った。その攻撃を、二回以降は得点という形につなげ切れなかった。
林監督は「挑戦者として、積極的に攻める勇気と姿勢が足りなかった」と振り返る。
好機でどう畳み掛けるのか。
苦しい場面でどう声を掛け、流れを食い止めるのか。
「好機での盛り上げ方、ピンチでの声掛けなど、やれた事はたくさんあったと思います」
初めて経験した全国大会だからこそ、勝敗の向こう側にいくつもの課題が見えた。

二死から主将・石田が見せた「屯田ベアーズ」
そして迎えた六回。
5点差。
二死。
敗戦が目前まで迫っていた。
それでも、屯田の野球は終わっていなかった。
打席に立った4番で主将の石田旭が内野へ打球を転がす。
石田は一塁へ全力で駆けた。
そして最後は、ヘッドスライディング。
内野安打をもぎ取った。
得点には結び付かなかった。それでも林監督にとって、そのプレーには大きな意味があった。
「チームとして何よりも大切にしている全力疾走は最後までやり切りました。最終回二死から、主将の石田旭が全力疾走からの一塁ヘッドスライディングでもぎ取った内野安打は、最後の一球まで諦めずにやり切る屯田ベアーズを象徴する場面だったと思います」
2-7。
全国初勝利には届かなかった。
だが、点差が開いても、二死になっても、最後まで走る。
全国の舞台でも「屯田ベアーズであること」をやめなかった。
その一打は、スコアには「1本の内野安打」としか残らない。
だが、チームにとっては、それ以上の意味を持つ一本だった。

「スコアほどの差はなかった」だからこそ残った悔しさ
試合後、林監督の言葉には、相手への敬意と自らへの厳しさが入り交じった。
「城少レッドスターズさんは、しっかりと細かい部分まで鍛え上げられた素晴らしいチームでした。見習うべき部分が多く、それをチームとして今後に活かさせていただきたいと思います」
そして、敗因を選手たちだけに求めることはしなかった。
「采配力の差が全てかと思います」
初回に先制した直後、同点にされた場面でどう落ち着かせるべきだったのか。
チャンスでどう選手たちを乗せるべきだったのか。
ピンチで、どんな言葉を届けるべきだったのか。
初めて全国を経験したのは、選手たちだけではない。
林監督自身も、この一敗を真正面から受け止めていた。
だからこそ、この2-7は単なる「全国初戦敗退」では終わらない。
何が通用し、何が足りなかったのか。
その答えを持って北海道へ帰ることができる。
それもまた、全国へ行った者だけが手にできる財産だ。

選手を全国へ送り出した、たくさんの支え
屯田ベアーズの全国挑戦は、グラウンドに立った選手と指導者だけで実現したものではなかった。
全国大会出場決定後、保護者は選手たちが最高の状態でプレーできるよう、熱中症対策をはじめさまざまな準備を進めた。
当日も炎天下の中、声を枯らして応援を続けた。
地域、OB、関係者からも数多くの支援と応援メッセージが寄せられたという。
林監督は、その一つ一つが選手たちを成長させたと感じている。
「皆様方の応援が子供達の背中を押していただいて、その一つ一つが子供達に伝統ある屯田ベアーズの一員であるという事の責任と誇りを持たせてくれました」
さらに全国へ向かうにあたり、札幌南JBC・成田総監督、星置レッドソックス・渡辺監督から、全国大会への心構えや熱中症対策などについて助言を受けたことにも感謝を示した。
一つのチームが全国へ行く。
その背景には、ユニホームを着ていない多くの人たちの力があった。
「必ず全国大会へ!」自分たちで変わり、自分たちでつかんだ舞台
そして林監督が最後に言葉を向けたのは、6年生だった。
彼らが掲げてきた目標は、
「必ず全国大会へ!」
そのために、それまでの取り組みを見つめ直した。
全員で考え、変化を加え、新しいことにも挑戦し、それを継続した。
そして、本当に全国大会への切符をつかんだ。
「本気になれば必ず出来るという事を間近で見させてもらい、大舞台に後輩達も連れて行ってくれました。ありがとうございました」
だが、全国へ行ったことがゴールではない。
林監督は6年生へ、もう一度問い掛ける。
野球だけできればいいのか。
試合に勝てば、それだけでいいのか。
屯田ベアーズで学んできたものは、それだけではないはずだ。
「今回の全国大会では残念ながら負けました。負けた後にどうするのか? 自ら考え行動し、更に成長してくれる事を期待します」
そして続けた。
「君たちが卒団を迎える時にどの様な姿になっているのか? そこが一番大切です」
全国大会は終わった。
しかし、6年生の屯田ベアーズでの野球は、まだ終わっていない。

全国で知った「一勝の重さ」――ここから、もう一度全力疾走
北海道では経験することのできない環境。
初めて対戦する全国の強豪。
一球、一つの走塁、一つの守備、一つの声掛けが勝敗を左右する緊張感。
屯田ベアーズは淡路島で、そのすべてを体験した。
初回に2点を奪い、「全国でもやれる」という手応えを得た。
同時に、追いつかれた後の立て直し、好機での一本、ピンチでの一球、勝負どころでの徹底力――全国で勝つために必要なものも突きつけられた。
だから、この敗戦には続きがある。
6年生には、まだ屯田ベアーズで過ごす時間が残されている。
そして後輩たちは、先輩たちが連れて行ってくれた全国の景色を知った。
新しい目標も生まれただろう。
林監督は6年生へのメッセージを、こんな言葉で結んだ。
「その姿を想像すると楽しみでもあり、猛烈に寂しくもあり…。少しでも多くの時間を共有したいです。残りの時間も全力疾走でやり切ろう!」
全国で知った、一勝の重さ。
全国で確かめた、自分たちの野球。
最後の一球まで走り抜いた屯田ベアーズの全国初挑戦は、2-7というスコアだけでは語れない。
夢舞台で刻んだ悔しさも、手応えも、感謝も。
そのすべてを次の一歩に変えて――。
屯田ベアーズは、ここからもう一度、全力疾走する。
協力:屯田ベアーズ
