2025年1月に誕生した新チーム・函館本通JBCが、12月6日に宮城県名取市民球場で開幕する「目指せ!松山・スポ少2026 2days in MIYAGI」に北海道代表として出場する。
少子化が進む中、“子どもたちが野球を続けられる環境づくり”を目的に3チームが統合して誕生した新チームは、この一年で道内トップクラスの戦績を築き上げた。
北海道代表として、東北・北海道の強豪16チームが集う大舞台で、自らの現在地を試す。
北海道代表として「2days in MIYAGI」へ挑む
今年から初開催となる「目指せ!松山・スポ少2026 2days in MIYAGI」(北海道チャンピオンシップ協会主催)。
宮城県名取市民球場などを中心に、東北5県と北海道から全16チームが集結し、北海道・東北の頂点を争う。
出場チームには、全日本学童マクドナルドトーナメント出場経験を持つ
・大崎ジュニアドラゴン(宮城県)
・小名浜野球教室(福島県)
をはじめ東北各県の強豪が揃い、まさに“ビッグ大会”となった。
《北海道代表》
①函館本通JBC(函館市)
②昭和ブルーホークス(釧路市)
誕生1年目でこの北海道代表の座をつかんだのが、函館本通JBCである。

統合の背景——「未来の子どもたちのために」
函館本通JBCは、2025年1月に
・本通クラブ(2004年創部)
・鍛神ベースボールクラブ(2005年創部)
・東山エンジェルス(2008年創部)
の3チームが統合して誕生した。
背景には、少子化による学童野球人口の急減がある。
チーム数が減少し、選手の流出によってさらに弱体化が進む——その“負の連鎖”を断ち切り、子どもたちが野球を楽しめる環境を守るため、監督陣と創設者が数年前より協議を重ねてきた。
「歴史を残したい気持ちは当然ありました。ただ、それ以上に“子どもたちが野球を続けられる環境”が大事だと考えました」
—相場尚人監督
チーム名は、本通地区を中心に活動してきた3チームの地名に由来している。将来的には、中学校部活動の拠点校方式も見据え、小学生から中学生へとつながる連続的な育成体制の構築を視野に入れている。現在の団員数は48名で、そのうち5年生以下が35名を占める。

6年生が牽引した夏、そして5年生以下の急成長
統合初年度は、6年生の所属バランスから
・函館本通JBC(本通クラブ+東山エンジェルス中心)
・函館本通JBC・TS(鍛神BBC中心)
の2チーム体制で活動した。
6年生(今夏)の主な戦績
【函館本通JBC】
・スタルヒン杯全道大会:ベスト4
・ホクレン旗全道大会:2回戦進出
【函館本通BBC・TS】
・ホクレン旗全道大会(渡島支部第2代表):ベスト8
5年生以下の成長——全道優勝から“覚醒”まで
来季の軸となる5年生以下は、2チーム合計で7〜8名がレギュラーとして道内上位レベルの試合経験を積んだ。
当初は決め事やサインの理解に時間がかかったものの、試合を重ねるごとに一体感は急速に高まった。

9月・エネサンス杯全道大会
決勝で恵庭・柏ホエールズを5-2で下し、 全道初優勝。
2026年11月開催の北日本大会(東北)へ、北海道代表としての出場が決まった。

全道秋の選抜大会
・1回戦:平岡カウボーイズに8-1
・2回戦:余市強い子に16-8
・3回戦:星置レッドソックスに4-3
・準々決勝:新陽スターズに3-2
→ 堂々の4強入り(準決勝はスケジュールの都合により辞退)
転換点となった“星置レッドソックス戦”
失われた“ギラつき”を取り戻した六回裏の奇跡
エネサンス杯で全道優勝を果たした後、子どもたちは大きな達成感とともに、どこか燃え尽きたような雰囲気をまとっていた。
以前のような「一球への執念」や「勝負に向かう鋭い目」が薄れ、指導陣もその変化を感じていた。
その空気を一変させたのが、全道秋の選抜大会・3回戦/星置レッドソックス戦だった。

六回裏(最終回)、1点ビハインドの中で始まった反撃
スコアは 2-3。
一打同点・逆転も狙える場面とはいえ、相手は強豪。簡単にはチャンスを作らせてもらえない雰囲気が流れていた。
しかし、この回の先頭、4番・倉部倖多(5年) が試合の流れを変える。
サード強襲の当たりは三塁手のグラブを弾き、そのままレフト前へ抜ける意地のヒット。
チームに明るい空気が戻り始めた。
続く 5番・渡辺嵩叶(5年) は、難しい場面にもかかわらず“勝負のセーフティバント”を選択。
これが三塁線へ絶妙に転がり、一塁はもちろん、倉部も二塁へ進む好プレー。
ここで一気に流れは函館本通へ傾く。
さらに 6番・松田龍乃輔(5年) が犠打を確実に決め、一死二・三塁。
サイン通りのプレーが次々と決まり、ベンチの空気も完全に変わっていった。
続く 7番・松澤 周(5年) は冷静に四球を選び、満塁。
相手は守りの配置を調整しながらも、明らかに動揺が見える場面だった。


そして“決断の一球”
ここで打席に入った 8番・吉田伊吹(5年)。
最初のサインはスクイズ。しかしファウル。
相場監督はこの瞬間、迷わず方針を切り替える。
「打て」——勝負を託した。
カウント3ボール1ストライクからの5球目。
吉田の振り抜いた打球はライト前へ弾む強い当たり。
三走が生還し、さらに二走も続きサヨナラ。
鮮やかなサヨナラ勝ち、4-3。
この一戦で、選手たちの表情・姿勢・声——すべてが変わった。
エネサンス杯優勝から少し失われていた“ギラつき”が、完全に戻った瞬間だった。

新陽スターズ戦では投打が噛み合い逆転勝利
続く準々決勝の 新陽スターズ戦 は、星置戦とは対照的に“じわじわと巻き返す”試合となった。
スコアは 1-2 のまま中盤へ。
相手投手の粘りもあってなかなかチャンスをつくれず、緊迫した展開が続く。
五回裏、吉田が突破口を開く
流れを変えたのは、またしても 吉田伊吹(5年) だった。
レフト前へのクリーンヒットで出塁すると、その後の打席で 8番・松澤周(5年) の三塁線へのセーフティバントが生まれ、
無死二・三塁 の同点・逆転機が訪れる。
1死後、1番・赤井翔真(5年) の内野ゴロで三塁走者がホームへ突入。
送球は間一髪セーフ。同点、2-2。
ここで打席に入ったのは 2番・佐々木逞斗(5年)。
相場監督が託したサインは——スクイズ。
佐々木は迷いなく小技を決め、勝ち越しの3点目を奪った。


最終回のピンチも粘りで死守
投げては、
・先発:渡辺嵩叶(5年)
・継投:佐々木逞斗(5年)
のリレー。
六回表(二死)、相手5番にライトオーバーの三塁打を浴びる最大のピンチ。
ベンチも観客席も息を飲んだが、最後の打者を 三振 に仕留め、試合終了。
3-2で逆転勝利。
“勝ち切る”強さを、チーム全体が掴んだ一戦だった。


相場監督「来年のマックに向け、今の自分たちを試したい」
北海道代表として臨む今回の大会に向け、相場監督は強い意欲を示す。
「東北・北海道の強豪が集まる大会なので、自分たちが今どれほど戦えるのか確かめたい。来年のマクドナルド(全日本学童)に向けて、大切な経験になります。」
統合元年でありながら、全道トップクラスまで上り詰めた函館本通JBC。
次は“北海道代表”の覚悟を胸に、新たな大舞台へ挑む。
指導者・選手
指導者
▽団 長
大塚 運易
▽副団長
新谷 浩太
▽監 督
㉚相場 尚人
※相場監督は2023年、「本通クラブ」を率いて千葉市長杯争奪学童軟式野球選手権大会に出場した経験がある。
その実績は、今回の函館本通JBCの指導にも大きく生かされている。
▽コーチ
㉙赤井 博史
㉘佐々木洋也
中村 知典
黒澤 幹司
和田 公一
大塚 重幸
鳥塚健一郎
選手
主将:木村 勇翔
⑩木村 勇翔(きむら ゆうと)
5年・右投げ、左打ち
142cm、42kg
①佐々木逞斗(ささき たくと)
5年・右投げ、右打ち
149cm、35kg
②渡辺 嵩叶(わたなべ しゅうと)
5年・右投げ、右打ち
151cm、36kg
⑤松田龍乃輔(まつだりゅうのすけ)
5年・右投げ、左打ち
141cm、43kg
⑥赤井 翔真(あかい しょうま)
5年・右投げ、右打ち
140cm、34kg
⑧松澤 周(まつざわ しゅう)
5年・右投げ、右打ち
147cm、33kg
⑫倉部 倖多(くらべ こうた)
5年・左投げ、左打ち
146cm、43kg
⑬石岡 楓奏(いしおか かなで)
5年・右投げ、右打ち
140cm、33kg
⑭佐藤 夕朔(さとう ゆうさく)
5年・右投げ、右打ち
143cm、40kg
⑮吉田 伊吹(よしだ いぶき)
5年・右投げ、右打ち
144cm、37kg
㉗西村 優太(にしむら ゆうた)
5年・右投げ、右打ち
157cm、52kg
54萬谷 碧斗(よろずや あおと)
4年・右投げ、右打ち
137cm、31kg
⑪佐々木 柊月(ささき ひづき)
4年・右投げ、右打ち
131cm、26kg
⑨赤井 晟琉(あかい ひかる)
3年・右投げ、右打ち
130cm、23kg
⑲佐藤 剛輝(さとう ごうき)
3年・右投げ、右打ち
132cm、27kg
⑳松田虎乃輔(まつだとらのすけ)
3年・右投げ、右打ち
132cm、31kg
㉕渡辺 颯叶(わたなべ はやと)
2年・右投げ、左打ち
134cm、29kg

全国大会までの足跡
<全道秋の選抜大会>
《第3位》
◆準決勝
函館本通JBC(不戦敗)0-7柏ホエールズ
※他大会の絡みで棄権。
◆準々決勝
函館本通JBC3-2新陽スターズ
◆3回戦
函館本通JBC4-3星置レッドソックス
◆2回戦
函館本通JBC16-8余市強い子
◆1回戦
函館本通JBC8-1平岡カウボーイズ


全国大会・トーナメント表
※全国大会の組み合わせ表を入手次第、後日掲載させていただきます。
協力:函館本通JBC
