東16丁目フリッパーズ、全国初戦で涙 「これが本当の全国大会」

東16丁目フリッパーズ、全国初戦で涙 「これが本当の全国大会」

4安打完封負け、二つの併殺に阻まれる 笹谷監督「その涙を忘れないでほしい」

イニングスコア

◆1回戦(8月8日、八幡浜・大洲地区運動公園野球場)

玉村ジュニアベースボールクラブ
000200=2
000000=0
東16丁目フリッパーズ
(玉)竹之内−小湊
(東)高野、市橋−中本
▽本塁打:宮沢(玉)

整列する東16丁目フリッパーズ
写真・東16丁目フリッパーズ提供

打てそうで、打てない――相手の術中にはまった6イニング

 「打てそうで打てない」

 試合後、笹谷監督が開口一番に口にした言葉が、この一戦を物語っていた。

 玉村ジュニアベースボールクラブの先発・竹之内は5年生。ストレートは90キロ台ながら、数字だけでは測れない投球術があった。

 「5年生投手で90キロ台のストレート。しかし、この投手で勝ち上がってくるということは、それらを補う技術があるということ」

 東16丁目打線は相手右腕を捉え切れなかった。

 スコアブックに刻まれた安打は4本。それでも打線としてつながらず、得点圏に走者を進めることができたのは二回だけだった。

 さらに痛かったのが二つのダブルプレー。出塁しても次の塁を奪わせてもらえない。攻撃の流れをつくりかけるたび、鍛え上げられた玉村の守備が立ちはだかった。

 「試合前から情報はあったが、良いチームでした。うちとは真逆で、よく鍛え上げられた切れ目のない守備をするチームでした。ダブルプレーも2個取られました」

 派手さではなく、一つひとつのプレーを確実にアウトへ結びつける。全国大会を勝ち上がってきた相手の完成度が、東16丁目自慢の攻撃力を最後まで封じ込めた。

チーム初安打を放った中本選手(東16丁目フリッパーズ)
チーム初安打を放った中本選手(東16丁目フリッパーズ)

わずかな甘さを逃さない――四回、痛恨の一発

 一方、東16丁目も簡単には崩れなかった。

 先発・高野を中心に三回まで無失点。互いにホームを踏めないまま、0-0で迎えた四回だった。

 均衡を破ったのは玉村・宮沢の一発だった。

 本来ならストライクゾーンから大きく外すはずだったボール。しかし、わずかに甘く入った。

 笹谷監督はその一球を振り返る。

 「一つ外すボールを、ストライクゾーンから二つほど上のボール球にするはずが、ふわっとストライクの甘いコースへ入ってしまった。その甘いボールを見逃さず、柵越え本塁打を打たれた」

 失投を見逃さない。

 その一球が2点となった。

 東16丁目にとってはあまりにも重い2点だったが、同時に全国大会の厳しさを象徴する場面でもあった。

 その後は市橋へつなぎ、追加点を許さず反撃を待った。しかし、最後まで玉村の堅守を崩すことはできない。

 0-2。

 わずか一振りによって生まれた得点差が、そのまま最後までスコアボードに残った。

好投したエース高野投手(東16丁目フリッパーズ)
好投したエース高野投手(東16丁目フリッパーズ)
最終回、代打起用の伊藤(東16丁目フリッパーズ)
最終回、代打起用の伊藤(東16丁目フリッパーズ)
笹谷監督の話に耳を傾ける東16丁目ナイン
笹谷監督の話に耳を傾ける東16丁目ナイン

「チームとして戦う武器が少なすぎた」

 7月、高野山旗全国大会では強豪を相手に勝ち上がり、全国8強まで進出した。

 そして北海道へ戻ると、FBC U-12北海道大会を制覇。全国の舞台を経験するたびに力をつけ、チームとして大きく成長してきた。

 だからこそ、マクドナルド・トーナメントでの初戦敗退は重かった。

 笹谷監督は結果だけを見つめるのではなく、全国で勝ち抜くために何が足りなかったのかに目を向けた。

 「チームとしての戦う武器が少なすぎた」

 そして、こう続けた。

 「全国大会に出場できるだけで、本来であれば立派なこと。しかし、うちのチームはもっと上を目指したいチームですから、この初戦敗退はやはり重たい雰囲気になります。ちょっとした甘さは許してもらえない。全国はあらためて一筋縄ではいかない相手だと思います」

 高野山で勝ち進んだからこそ見えたものがある。

 一方で、マック全国の一発勝負で敗れたからこそ、突きつけられた現実もあった。

 笹谷監督は、ひと言に思いを込めた。

 「これが本当の全国大会ですわ」

ラストミーティング(東16丁目フリッパーズ)
ラストミーティング(東16丁目フリッパーズ)

「もうひと頑張り」を伝え切れなかった責任

 新チームがスタートしたのは昨年8月。

 そこから約1年間、選手たちは全国という目標を追い続けてきた。

 笹谷監督も、その歩みそのものを否定するつもりはない。

 「昨年の8月から新チームがスタートし、よくここまでやってくれたとも思います。それはひとえに子供たちの頑張りにほかなりません」

 ただ、指揮官だからこそ感じていたものもあった。

 「本音を言えば、もうひと頑張りしてほしかった。せっかくここまで来たら、毎日の積み重ねの中で、野球への向き合い方や日々の生活の中で、やはり甘さを感じるところがあった」

 全国の一発勝負では、その「少し」が勝敗を分ける。

 あと一歩。

 あと一球。

 あと一つの準備。

 笹谷監督は、その部分を選手たちへ浸透させ切れなかったことを自らの責任として受け止めた。

 「自分としては気づいていただけに、負けてからでは遅いのですが、『もうひと頑張りが足りない』ということを選手たちに植え付けられなかったことは、私の責任です」

 そして言葉を続けた。

 「強さはだいぶ身に付いたが……」

 その先にある「勝ち切る強さ」まで、あと一歩届かなかった。

試合前のシートノックでの東16丁目ナイン
試合前のシートノックでの東16丁目ナイン

嗚咽するほどの涙――「一生懸命やった証拠」

嗚咽するほどの涙――「一生懸命やった証拠」(東16丁目フリッパーズ)
嗚咽するほどの涙――「一生懸命やった証拠」(東16丁目フリッパーズ)

 試合終了後、選手たちは泣いた。

 ただ涙を流すという程度ではなかった。

 笹谷監督がこれまで見たことがないほど、嗚咽に近い声を上げ、泣きじゃくった。

 全国制覇を目指してきた。

 高野山旗を経験し、北海道大会を勝ち抜き、憧れのマクドナルド・トーナメントへたどり着いた。

 それでも、全国の舞台で勝利をつかむことはできなかった。

 だからこそ、流れた涙には、この1年間のすべてが詰まっていた。

 笹谷監督は選手たちへ伝えた。

 「一生懸命やった証拠。その涙を忘れないでほしい」

 そして最後に、野球だけではない大切なことを語りかけた。

 「高野山、マックといろいろな経験をさせてもらった。そこには自分たちの親が工面したお金が充てられ、この経験ができたことを忘れないでほしい」

 全国大会へ行くこと。

 仲間と遠征し、大きな舞台で野球ができること。

 それは決して当たり前ではない。

 「だいぶ先の話だけど、自分が親となったとき、その時は自分たちがしてもらったように、その子供たちにもしてあげてほしい」

 勝って終わることはできなかった。

 しかし、高野山、FBC、そしてマック全国――。仲間と本気で頂点を追い続けた経験と、最後に流したあの涙は、きっと消えない。

 0-2というスコア以上に大きなものを胸に刻み、東16丁目フリッパーズの夏の全国挑戦は幕を閉じた。

協力:東16丁目フリッパーズ

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