猛打、継投、そして全員野球――愛知で5連勝 高梨監督「北海道のチームでも全国優勝できると結果で証明できた」
中学軟式クラブチームの北海道代表・TTBCが、ついに全国の頂点に立った。愛知県で8月21日から24日まで開催された「オールジャパンベースボールリーグ中等部2026全国大会」で、北海道代表のTTBCが5試合を勝ち抜き、初優勝を飾った。8月24日に城山公園野球場で行われた決勝では、地元・知立ノースクラブ(愛知県知立市)を6-2で下し、北海道勢として初となる全国制覇の偉業を達成。初戦の1点差勝利から始まり、打ち合い、逆転劇、接戦と異なる展開を乗り越えた4日間。そこにあったのは、一部の主力だけに頼らず、投手を短いイニングでつなぎ、野手も複数ポジションを守るTTBCの「総合力」だった。高梨利洋監督は「北海道のチームでも全国優勝出来るんだと結果で証明したことは誇らしく思います」と胸を張った。
イニングスコア
◆決 勝(8月24日、城山公園野球場)
TTBC(北海道)6-2知立ノースクラブ(愛知県知立市)
TTBC
05001=6
10001=2
知立ノースクラブ
(五回時間切れ)
(T)杉本、玉置ー坂井、若松
(知)加藤、下田ー時田、岩月
▽二塁打:若松(T)、高松(知)
◆準決勝(8月24日、城山公園野球場)
TTBC(北海道)4-2Baseball clubTOMOBE U-1 15(茨城県)
Baseball clubTOMOBE U-1 15
00020=2
3001x=4
TTBC
(B)久保、柴田ー宮野、久保
(T)渡邊、杉本ー若松
▽三塁打:三舩(T)
▽二塁打:森(B)、若松(T)
◆3回戦(8月23日、森林公園第一野球場)
TTBC(北海道)10-8秩父ドリームズ(埼玉県)
秩父ドリームズ
1034=8
118x=10
TTBC
(四回時間切れ)
(秩)新井、藤原、今井、新井ー五十嵐
(T)根岸、西藤、杉本、大本、渡邊、大瀧、杉本ー若松、坂井
▽三塁打:清野2、藤原(秩)、坂井、宮崎(T)
▽二塁打:玉置、西藤(T)
◆2回戦(8月22日、熱田球場)
TTBC(北海道)12-5オールKJBL(神奈川県)
オールKJBL
0023=5
4323=12
TTBC
(四回コールドゲーム)
(K)湯川、大澤ー上羽坪
(T)若松、中田、玉置ー坂井
▽本塁打:渡邊(T)
▽三塁打:関口(K)、杉本、坂井(T)
▽二塁打:星子、川嶋(K)
◆1回戦(8月21日、朝宮公園野球場)
TTBC(北海道)5-4名古屋ゴールデンファイヤーズ(愛知県)
名古屋ゴールデンファイヤーズ
10021=4
5000x=5
TTBC
(五回時間切れ)
(名)馬場ー高杉
(T)杉本、渡邊、玉置、古田ー若松、坂井、土井
▽三塁打:小林、宮道(名)

全国33チームの頂点へ
全国大会には各都道府県・ブロック予選を勝ち抜いた33チームが出場。8月21日から24日までの4日間、トーナメント方式で頂点を争った。
TTBCは6~7月に行われた「オールジャパンベースボールリーグ兼第5回CBS中学軟式野球夏季全国大会北海道予選」を勝ち抜き、北海道代表として全国の舞台へ乗り込んだ。
待っていたのは強豪だけではない。北海道とは比較にならない愛知の暑さも、大きな敵だった。
高梨監督は大会を振り返り、「初戦から相手も強く厳しい戦いになるのは直ぐに分かりました。更に、北海道では考えられない暑さが選手を苦しめることも考えて試合に臨みました」と明かす。
だからこそ、最初から決めていた。
「暑さが厳しいのでメンバー全員が試合に出て、1試合ずつ勝ち抜こうと伝えていました」
その言葉通りの全国大会となった。

初戦から試されたTTBCの底力
1回戦・名古屋ゴールデンファイヤーズ(愛知県)
初戦は21日、朝宮公園野球場で地元・名古屋ゴールデンファイヤーズ(愛知県)と対戦した。
初回に1点を先制されたTTBCだったが、その裏、すぐさま打線が反応した。
1番・三舩龍ノ介(札幌南JBC出身/3年)が左前打、2番・渡邊翔(真駒内ドリームス出身/3年)が右前打で続き、3番・坂井翔太(栄北ナインスターズ出身/3年)が四球を選んで無死満塁。
4番・西藤蓮(厚別信濃スターズ出身/3年)の中犠飛で同点とすると、なおも攻め立てる。
中でも大きかったのが8番・永嶋呂伊(江別中央タイガース出身/3年)の一打だ。左翼を越える走者一掃の3点タイムリー二塁打。一気に試合をひっくり返し、初回に5点を奪った。
だが、全国大会は簡単には勝たせてくれない。
名古屋ゴールデンファイヤーズも四回に2点、最終五回にも1点を返し、5-4。わずか1点差まで迫った。
TTBCは杉本佑哉(3年)、渡邊、玉置結粋(札幌南JBC出身/3年)、古田健翔(KAPPA’S出身/3年)と継投。最後までリードを守り抜いた。
全国制覇への第一歩は、派手な勝利ではなかった。
5-4。
この苦しい1点差をものにしたことが、後の快進撃につながっていく。
打線爆発、渡邊が柵越え3ラン
2回戦・オールKJBL(神奈川県)
22日の2回戦は熱田球場でオールKJBL(神奈川県)と対戦した。
初回から4点を奪ったTTBCは二回、四死球で走者をため、一死満塁から4番・坂井が中前へ2点タイムリー。さらに押し出し四球もあり、この回3点を追加した。
三回にも坂井のタイムリーなどで2点。
そして四回、全国の舞台で大きな一発が飛び出した。
8番・渡邊が左翼柵越えの3点本塁打。
12-5。
TTBCは四回コールドでオールKJBLを退けた。
投手陣も若松謙丞(札幌南JBC出身/3年)、中田遼(清田中央フレンズ出身/3年)、玉置とつなぎ、大量リードを守った。
2点差を一気に逆転 8得点の猛攻
3回戦・秩父ドリームズ(埼玉県)
23日の3回戦、森林公園第一野球場で対戦したのは秩父ドリームズ(埼玉県)。
ここでも簡単な試合にはならなかった。
TTBCは二回を終えて2-4。2点を追う三回、敵失、四球、安打で無死満塁の絶好機をつくる。
打席には9番・宮崎陵生(KAPPA’S出身/3年)。
振り抜いた打球は中堅を越えた。
走者一掃の3点タイムリー三塁打。
5-4。
一振りで試合をひっくり返すと、坂井、西藤らにもタイムリーが生まれ、この回一挙8得点。10-4とした。
しかし、秩父ドリームズも最終四回に4点を奪って猛追する。
10-8。
最後まで息の抜けない乱打戦となった。
マウンドでは根岸輝(栄北ナインスターズ出身/3年)、西藤、杉本、大本虹空(篠路ライオンズ出身/3年)、渡邊、大瀧結士(KAPPA’S出身/3年)、再び杉本と細かくつないだ。
一人に背負わせない。
まさに総力戦で全国ベスト4をつかみ取った。

三舩が口火、渡邊が好投 決勝への扉を開く
準決勝・Baseball clubTOMOBE U-15(茨城県)
迎えた24日。
準決勝と決勝を同じ日に戦う、全国制覇への最も厳しい一日だった。
準決勝の相手はBaseball clubTOMOBE U-15(茨城県)。
TTBCは初回、先頭の三舩が左中間を破る三塁打。一気に流れを引き寄せる。
続く根岸が右前へ先制タイムリー。坂井が四球で出塁し、二死一、二塁から6番・若松が左翼を越えるタイムリー二塁打を放ち、初回に3点を奪った。
先発・渡邊も応えた。
三回まで無安打に封じる好投。
二巡目に入った四回に2点を失い、3-2と1点差に迫られたが、その裏に四球とバッテリーミスから貴重な1点を追加した。
4-2で迎えた最終五回。
マウンドには杉本。
二死一、二塁。
あとアウト一つ。
杉本が後続を断ち、4-2。
TTBCはついに全国の頂点まで、あと一勝に迫った。
決勝、永嶋が逆転打 五回の歓喜へ
決勝・知立ノースクラブ(愛知県)
決勝の相手は地元・愛知県知立市の知立ノースクラブ。
TTBCは初回、四球などから1点を先制された。
だが、この全国大会を何度も逆境から勝ち上がってきた選手たちは動じなかった。
二回、先頭の4番・西藤が死球。5番・坂井が左前打で続き、6番・佐藤太亮(新光スワローズ出身/3年)の内野ゴロが敵失を誘う。
無死満塁。
ここで初戦でも勝負強さを見せた7番・永嶋が打席に入った。
左前へ運ぶ。
三走・西藤が生還。
続いて二走・坂井もホームへ。
2-1。
全国大会の決勝で、TTBCが逆転した。
さらに8番・中田が中前打。守備の乱れも重なり、二走・佐藤が一気に生還して3-1。この3点目が結果的に全国制覇を決める決勝点となった。
勢いは止まらない。
さらに2点を加え、二回だけで一挙5得点。
五回には途中出場の若松が左前タイムリーを放ち、6-1とリードを広げた。
先発・杉本は初回こそ1点を失ったものの、二回以降は立て直した。四回には得点圏へ走者を背負いながらも無失点。大一番で粘り抜いた。
大会規定による最終五回。
最後のマウンドを託されたのは玉置だった。
1点を失った。
それでも最後まで腕を振った。
そして――ゲームセット。
6-2。
北海道から愛知へ乗り込んだTTBCが、33チームの頂点に立った。
北海道勢初の全国優勝だった。

「背番号二桁のメンバーが本当に頑張ってくれた」
高梨監督が全国制覇を振り返って何度も口にしたのは、スター選手一人の活躍ではなかった。
「背番号二桁のメンバーが本当に頑張ってくれた大会でした。TTBCの指導理念、育成が実を結んだ大会になったと思います」
5試合を振り返れば、その言葉の意味が分かる。
杉本、渡邊、玉置、古田、若松、中田、根岸、西藤、大本、大瀧――。
投手を一人に託すのではなく、状況を見ながら次々とマウンドへ送った。
野手も一つのポジションに固定しない。
高梨監督は「投手は短いイニングしか投げさせず、野手は複数ポジションを守り、総合力で掴んだ全国優勝」と表現する。
猛打で勝った試合があった。
1点差を守り切った試合もあった。
逆転した試合もあれば、追い上げを振り切った試合もある。
異なる勝ち方を5試合続けられたこと自体が、TTBCの選手層と育成力を物語っていた。
母たちのケアも「優勝の力」
愛知の厳しい暑さの中、戦ったのはグラウンドに立つ選手だけではなかった。
「我がチームは、野球に対して真面目で父母も子供達に一生懸命なチームなので、そこが全国優勝という快挙に繋がったのは間違いないと感じています」
高梨監督はそう語る。
試合を終え、選手がベンチへ戻ってくる。
そこでは母親たちが体を冷やし、次のプレー、次の試合へ向かえるよう選手を支えた。
「このケアがなければ暑さで体調を崩す選手も多く出てしまったと思います。優勝は選手の頑張りは勿論ですが、父母の皆さんの力での優勝だと思っています」
準決勝と決勝を同日に戦った最終日。
選手、指導者、保護者。
そのすべてを含めた「TTBC」が、日本一になった。

全国優勝はゴールではない
2014(平成26)年創部のTTBC。
これまでも全日本少年軟式野球大会札幌支部優勝5回、北海道大会優勝1回、2018年の全国大会ベスト8。全日本少年春季軟式野球大会では札幌支部優勝7回、北海道大会優勝3回、全国大会へ4度出場してきた。
2017年には全国中学生軟式野球大会(IBA-boys)で全国優勝。そして2026年、オールジャパンベースボールリーグ中等部全国大会でも頂点に立った。
さらにOBからは2025年度プロ野球ドラフト会議で2選手が同時指名された。
工藤泰己(TTBC―北海高校―北海学園大学)が広島東洋カープから4位、高谷舟(TTBC―札幌日本大学高校―北海学園大学)がオリックス・バファローズから5位指名。
だが、高梨監督が見ているのは「中学野球で勝つこと」だけではない。
TTBCが選手たちに伝え続けている言葉がある。
「TTBCは高校野球への準備の三年間と常に話しています」
だからこそ、全国優勝を成し遂げた3年生にも、ここで終わってほしくない。
「三年生はこれからがスタートです。君達が本当に勝負するのは高校野球なので。まだまだコツをつかまないと高校野球では通用しないことを忘れずに頑張ること」
全国王者となった3年生は、これから硬式球を使った練習へ移っていく。
日本一の余韻に浸るだけの時間ではない。
次のステージへの準備が始まる。
「何かを感じる心」を持って高校野球へ
高梨監督の言葉は、技術論だけでは終わらない。
「野球が上手くなるヒントはどこにでも落ちています。今の子供達は、ヒントを探すのが下手だなと思っています」
では、そのヒントを見つけるために必要なものは何なのか。
「何かを感じる心、仲間への思いやり、親への感謝、グランドで敏感になり上手くなるヒントをどんどん探して高校野球で羽ばたいて欲しいです」
そして指導者自身にも問いを向ける。
「指導者は何のためにチームを預かり指導をしているのか。子供達の野球を通しての成長です」
北海道の少年野球、中学軟式、中学硬式、そして高校野球。
カテゴリーは違っても、その先には一本の道が続いている。
「北海道の野球がもっともっと発展して、高校野球で全国制覇を目指して頑張っている高校指導者へ素晴らしい選手を送れるように頑張りたいと思っています」
中学軟式の北海道代表が、全国33チームの頂点に立った2026年夏。
最後に高梨監督は選手たちへ、指導者として、そして3年間をともに歩んできた一人の大人として言葉を贈った。
「全国大会優勝おめでとう。君達の最高の笑顔を見れて幸せです」
初戦5-4。
2回戦12-5。
3回戦10-8。
準決勝4-2。
決勝6-2。
5試合、総得点37。
苦しい場面では誰かがつなぎ、誰かが打ち、誰かが投げ、そしてベンチと父母が支えた。
愛知でつかんだ全国制覇は、TTBCにとって一つの大きな到達点である。
しかし、高梨監督の言葉を借りれば――彼らの本当の勝負は、これからだ。
日本一になった夏を胸に、3年生たちは次の高校野球へ向かう。

協力:TTBC
