ケガと向き合う櫻庭聖哉 止まった時間が教えてくれた「野球ができる幸せ」

ケガと向き合う櫻庭聖哉 止まった時間が教えてくれた「野球ができる幸せ」

右肩手術を乗り越え、今度は右肘の故障――それでも前へ 「何か行動しないと何も変わらない」

櫻庭(たきうち)
櫻庭聖哉さん・札幌大学硬式野球部

プロフィール
櫻庭 聖哉(さくらば・せいや)
札幌大学硬式野球部/捕手(20)
右投げ、右打ち
177センチ、61キロ
家族は両親と兄・姉の5人。
野球歴:大麻バッファロー、野幌ファイターズー大麻中学校ー小樽双葉高等学校―札幌大学
小学1年から野球を始め、大麻中学校で捕手へ転向。高校、大学でも捕手としてプレーを続ける。高校時代に右肩の故障、手術を経験。現在は右肘の故障からの復帰を目指し、保存療法によるリハビリ、トレーニングに取り組んでいる。

兄を追いかけ、始まった野球人生

櫻庭が野球を始めたのは小学1年生のころ。

きっかけは、先に少年野球を始めていた兄だった。

「兄が少年団に入っていて、それで自分も入れてもらった感じです」

幼いころの記憶は、それほど鮮明ではないという。

「環境的に、もう野球をやっていたという感じの方が強いですね」

兄が野球をして、家族がその活動を支える。週末になれば家族でグラウンドへ向かう。

そんな日常の中に、自然と野球があった。

小学生時代はサード、ショートなど内野を経験。大麻中学校へ進学すると、チーム事情もあり捕手へ転向した。

突然のポジション変更だったが、戸惑いはなかった。

むしろ「キャッチャーをやりたかった」と振り返る。

そこから櫻庭の野球人生に「捕手」という一本の太い軸ができた。

捕手として磨いた「見る力」

中学から高校、そして大学へ。

捕手として経験を積み重ねる中で、櫻庭が磨いてきた武器の一つがスローイングだ。

捕球から送球までの速さ、二塁への送球精度には自信を持つ。

さらに、エンドランなど相手の動きを読みながら、ベンチから出された意図を理解し、グラウンド上でプレーへつなげていくことも捕手として大切にしてきた。

ただボールを受けるだけではない。

投手を見る。打者を見る。走者を見る。そして試合全体を見る。

長くマスクをかぶってきた経験が、櫻庭の野球観を育てていった。

一方で、打撃にも忘れられない瞬間がある。

高校3年春。

公式戦で放った本塁打だ。

打った瞬間、自分でも手応えがあった。

捕手として守備を支えるだけでなく、打席でもチームに貢献する。その一打は高校野球生活の中でも強く記憶に残る場面となった。

しかし、その高校時代には、もう一つ忘れることのできない経験があった。

ケガだった。

高校時代に経験した右肩の手術

高校時代、櫻庭は右肩を痛めた。

一度は大会への出場を優先し、その後に手術を受けた。

投げられない。

仲間が練習している横で、自分だけが同じメニューをこなせない。

野球選手にとって、それは想像以上にもどかしい時間だった。

「周りはみんなやっているのに、自分はできない。最初はそういう気持ちになりました」

だが、そこで腐ることはなかった。

できないことを数えるのではなく、今できることを探した。

トレーニングに取り組む。

仲間をサポートする。

グラウンドに立てなくても、自分にできることはある。

「何か行動しないと何も変わらないと思ったんです。トレーニングもそうですし、選手をサポートしたり。そういうことをやっていると、自分はやっぱり野球が大好きなんだなと思いました」

ケガは櫻庭からプレーする時間を奪った。

しかし同時に、野球との向き合い方を変える時間にもなった。

今年5月、今度は右肘に異変

大学でも野球を続けた櫻庭。

右肩の状態が上向き、思うように投げられる感覚が戻ってきた矢先だった。

今年5月下旬。

ゴールデンウイークから試合や練習が続き、投球量も増えていた。

その中で右肘に違和感が出た。

遠くへ強く投げようとするとフォームが崩れる。それでも当初は、大きな故障だとは考えていなかった。

「治るだろうと思っていました」

痛みを抱えながらプレーを続けた。

だが、2週間ほど経っても症状は消えない。

「ずっと痛かったので、これはまずいなと思いました」

6月下旬、病院を受診した。

そして診察を受け、右肘の靱帯部分に損傷があることを告げられた。

「ちょっと炎症したくらいかなと思っていたので、靱帯までいっているのか、と。びっくりしました」

それまで肩の大きな故障を経験していたからこそ、「靱帯」という言葉の重さも分かった。

「やべえな、と思いました。野球を続けられるのかなって。ちょっとショックでしたね」

再び、野球人生にブレーキがかかった。

医療スタッフと選んだ「保存療法」

診察では手術という選択肢についても説明を受けた。

しかし、まず選んだのは手術を行わず回復を目指す保存療法だった。

周囲の筋力や身体の使い方を整えながら、患部への負担を軽減し、復帰を目指していく。

捕手は投手と同じように、試合や練習の中で数多くボールを投げるポジションでもある。

だからこそ、単純に「痛みがなくなれば終わり」ではない。

再び強く、正確に投げ続けるための身体をつくらなければならない。

櫻庭はリハビリとトレーニングを続けている。

その中で大きな存在となっているのが、高校時代の右肩の故障から身体を見てもらってきた医療スタッフだった。

長い付き合いだからこそ、小さな不安も相談できる。

「高校2年生のころから見てもらっています。何かあっても聞けば返してくれるし、『大丈夫だよ』と言ってもらえる。そこは大きいですね」

選手と医療スタッフ。

そこには数年間をかけて築いてきた信頼関係がある。

仲間が進む中、自分だけが止まっている

ケガをした選手にとって苦しいのは、痛みだけではない。

昨日まで一緒に練習していた仲間が、今日もグラウンドで汗を流している。

自分だけが同じスピードで進めない。

「怪我をしていない時は前しか向いていない。でも怪我をすると、止まっているような感じになる」

周囲は走っている。

自分だけが、ゆっくりと歩いている。

そんな感覚になることもあった。

だが、櫻庭には高校時代の経験がある。

右肩を痛め、思うように野球ができなかった時間。

そこで学んだことが、今回も自分を支えている。

「何かしていないと何も変わらない」

投げられないなら、投げること以外をやればいい。

身体を鍛える。

仲間を支える。

野球を見る。

自分の身体を知る。

一見、遠回りに見える時間も、野球選手として前へ進むための時間に変えていく。

「健康な体で野球ができる。それが一番幸せ」

ケガを経験する前は、野球ができることを当たり前だと思っていた。

練習へ行く。

ボールを投げる。

バットを振る。

試合に出る。

だが、それができなくなって初めて、その一つひとつが決して当たり前ではなかったことに気付いた。

「健康な体で野球ができることが、一番幸せなんだと思いました」

さらに、ケガを通して強く感じるようになったものがある。

周囲への感謝だ。

少年野球のころから支えてくれた両親。

一緒に戦ってきた仲間。

そして、長年身体を見続けてくれている医療スタッフ。

自分一人で野球を続けてきたわけではない。

プレーできない時間があったからこそ、その存在の大きさが以前よりはっきり見えるようになった。

「親にもずっと支えてもらっていますし、先生にも何年も見てもらっています。本当に感謝しています」

まずはベンチ入りへ

現在の目標は明確だ。

復帰し、チームのベンチメンバーに入ること。

先輩たちとの競争もある。

それでも、捕手として守備だけでなく、打撃でもチームに貢献できる選手を目指す。

さらにその先には、野球と関わり続ける将来も思い描いている。

約15年間続けてきた野球。

順風満帆だったわけではない。

肩を痛めた。

手術もした。

そして今、肘の故障と向き合っている。

それでも櫻庭は野球から離れようとはしなかった。

むしろ、離れざるを得ない時間を経験するたびに、野球への思いは深くなった。

痛みを隠している選手へ

最後に、同じようにケガに悩む選手への言葉を求めた。

櫻庭は、自らの経験を重ねるように答えた。

「黙っていても痛いものはずっと痛い。黙って動かないと何も始まらない。周りの意見も大事ですけど、自分の意見をちゃんと言って、やってみることが大切だと思います」

自分自身も最初は「そのうち治る」と考え、痛みを抱えたままプレーを続けた。

だからこそ伝えられる言葉だ。

身体が発するサインに耳を傾ける。

誰かに伝える。

専門家に相談する。

そして、治すための一歩を踏み出す。

それもまた、長く野球を続けるために必要な「プレー」の一つなのかもしれない。

止まったように見える時間にも、選手は成長できる。

投げられない日々にも意味がある。

そして再びマスクをかぶり、二塁へ力強いボールを投げるその日のために――。

櫻庭聖哉は今、自分の身体と向き合いながら、一歩ずつグラウンドへの距離を縮めている。

札幌都心部で評判の「たきうち整形外科スポーツクリニック

たきうち整形外科スポーツクリニックは札幌都心部(札幌市中央区南1西6、北辰ビル2階)に位置する利便性と、専門性の高い診断、治療を行うスポーツクリニックとして全道的に名が知られている評判の整形外科病院。

瀧内院長は、プロ野球帯同ドクターや高校野球全道大会の担当医師などを務める、スポーツ障害治療の第一人者で活躍している。

また、リハビリ担当の理学療法士らも豊富な知識と経験を持ち、迅速かつ確実な治療で患者の日常生活への早期復帰をサポートしている。

当サイト・ストライクで連載した瀧内院長の「ドクターのフォームチェック」は野球少年・少女ら選手・監督やコーチにも人気となった。

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取材協力:たきうち整形外科スポーツクリニック

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