札幌支部予選準優勝へ導いた「心の成長」と「自立」 選手を一人の野球人として尊重し、高校野球で花開く土台を築く 2027年度新入団員を募集
2024年12月、わずか3人の選手で産声を上げた中学軟式野球チーム「蝦夷ベースボールクラブ(EZOBBC)」。発足から約2年、選手数は38人に増え、2026年には全日本少年軟式野球大会札幌支部予選で準優勝を果たすなど、着実に成長を遂げている。その中心にいるのが、理学療法士の資格を持つ多田学監督だ。多田監督が大切にするのは、技術を教え込むことだけではない。選手自身が考え、判断し、自分の脚でグラウンドに立つこと。そして、野球を通じて一人の人間として成長することだ。「説明できない練習は絶対にさせない」。その言葉には、選手を一人の野球人として尊重する指導哲学が込められている。北海道の高校野球を盛り上げる人材を育てたい――。そんな大きな志を胸に、札幌を拠点に活動する若いチームの現在地と、未来への思いを紹介する。
わずか3人からの出発 北海道の高校野球を盛り上げたい
「蝦夷」というチーム名には、北海道の野球界に対する強い思いが込められている。
北海道を代表する中学野球チームとなり、北海道の高校野球を盛り上げたい。
中学生という、高校野球へ向かう大切な時期に、北海道の選手たちが地元で力をつけ、やがて甲子園の舞台で活躍する。そんな選手を育てる土台となることが、蝦夷ベースボールクラブの目指す姿だ。
チームが発足したのは2024年12月。
当初の選手は、わずか3人だった。
そこから2025年には23人、2026年10月現在では38人にまで増加。中学3年生5人、2年生10人、1年生23人という構成になった。
札幌市内の白石区、豊平区、中央区、南区、清田区、東区、北区など、幅広い地域から選手が集まっている。
まだ創部2年目の若いチームだが、その歩みは決して小さくない。
2025年には北海道中学軟式野球連盟U14北海道大会でベスト4。翌2026年には、春の大会で準優勝を経験し、全日本少年軟式野球大会札幌支部予選でも決勝へ進出した。
しかし、多田監督が見つめているのは、目先の勝敗だけではない。
選手たちが何を学び、どのように変わり、次のステージへ進んでいくのか。
その成長の過程こそが、チームづくりの根幹にある。

「説明できない練習は絶対にさせない」 多田監督が貫く指導哲学
多田監督の指導方針を象徴する言葉がある。
「私の中では、説明できない練習は絶対にさせません」
練習には、必ず目的がある。
何のために行うのか。どのような技術を身につけるためなのか。そして、その練習が選手の将来にどうつながるのか。
指導者自身が、その意味を選手に説明できなければならないという考えだ。
多田監督は、硬式野球と軟式野球の両方を指導してきた経験を持つ。それぞれの特徴やメリット、デメリットを理解したうえで、選手たちの将来を見据えた指導を心掛けている。
現在のチームの選手たちは、全員が次のステップで硬式野球へ進むことを想定しているという。
そのため、中学軟式野球で勝つためだけの技術ではなく、高校野球でも生きる基本を大切にしている。
さらに印象的なのは、選手との向き合い方だ。
「私の肩書は監督ですが、その前に一人の野球選手です」
多田監督は、選手たちを単に子どもとして見るのではなく、同じ野球に取り組む一人の選手として接している。
だからこそ、指導する側にも責任がある。
「きちんと説明できない練習をさせることは、同じ土俵で野球をしている選手たちに対して、すごく失礼なことだと考えているからです」
監督だから従わせるのではない。
選手自身が練習の意味を理解し、納得して取り組む。
その積み重ねが、考える力を育て、やがて自分で判断できる野球選手へとつながっていく。


理学療法士の資格を持つ監督 身体づくりにも専門的な視点
多田監督は、理学療法士の資格を持つ指導者でもある。
成長期の中学生にとって、野球技術の習得とともに重要になるのが身体づくりだ。
中学生は、身長や体重、筋力などの発達に個人差が大きく表れる時期でもある。将来に向けて競技力を高めるためには、技術面だけでなく、身体の成長を踏まえた指導も重要となる。
多田監督が持つ身体に関する専門知識は、チームの育成環境を考えるうえでも注目される点だ。
一方で、多田監督が強調するのは、身体能力だけを高めれば野球がうまくなるわけではないということ。
心の成長、基本の徹底、練習への取り組み方。
そうした要素が重なり合うことで、初めて競技力の向上につながっていくと考えている。
実際に、2026年春の大会で準優勝を果たした際にも、オフシーズンに取り組んできた心とフィジカルの成長、そして基本の徹底が成果として表れたと振り返る。
技術と身体、そして心。
そのいずれも置き去りにしないことが、蝦夷ベースボールクラブの育成を支える重要な考え方となっている。

昨年なら負けていた試合を逆転 準優勝に表れた心の成長
2026年、蝦夷ベースボールクラブは第43回全日本少年軟式野球大会札幌支部予選で準優勝を果たした。
発足から約1年半。
チームとしての経験が決して豊富ではない中でつかんだ結果だった。
多田監督は、ここまでの選手たちの歩みを振り返る。
「野球の『や』の字も分からない選手たちの集まりでしたが、選手たちは約1年半、真摯に野球に取り組み、我慢し、耐え、自分の機嫌を出さずに、本当によく頑張りました」
その言葉からは、決勝進出という結果以上に、選手たちが積み重ねてきた努力への思いが伝わってくる。
苦しい試合も数多く経験した。
思うようにプレーできない場面もあった。
それでも、以前とは違った。
「昨年であれば、そのまま負けていたと思うような試合も、逆転して準優勝という結果につなげることができました」
苦しい展開になっても、簡単には崩れない。
自分たちで考え、仲間とともに状況を打開しようとする。
その姿に、多田監督は確かな成長を感じていた。
背景には、先輩たちが残してくれたものがある。
大会や練習試合を通じて積み重ねてきた経験もある。
そして何より、日々の練習を通じて培われてきた心の成長があった。
多田監督が最も評価するのは、選手たちが自ら考えてプレーできるようになったことだ。
「何より、自分の脚でグラウンドに立ち、自ら考えてプレーできるようになったこと(自立)が、一番の成長であると考えます」
勝敗はもちろん大切だ。
しかし、指導者に言われたことだけを実行するのではなく、自分の意思で判断し、行動できるようになったこと。
それこそが、準優勝という結果以上に価値のある成長なのかもしれない。

野球がうまくなるために、野球以外のことも大切にする
蝦夷ベースボールクラブが大切にしている約束事は、決して特別なものではない。
「挨拶」「全力疾走」「大きな声」「整理整頓」「感謝」
そして、もう一つ。
「我慢をする」「耐える」「自分の機嫌で野球をしない」
これらを日々の活動の中で重視している。
多田監督は、選手たちが野球をうまくなりたい、試合で活躍したい、勝ちたいと思うことは当然だと考えている。
ただし、その目標を達成するためには、野球の技術だけを磨いていても十分ではないという。
「その部分が成長するからこそ、野球もうまくなる。ロボットではなく、人間が野球をするのですから、心の鍛錬がすごく大事だと考えています」
調子が悪いときに、どのような態度を取るのか。
失敗したときに、どう気持ちを切り替えるのか。
仲間がミスをしたときに、どんな行動ができるのか。
そうした一つひとつの振る舞いも、野球選手としての成長につながっていく。
チームが掲げる「野球を通じて」という言葉には、競技力の向上にとどまらず、これからの人生を豊かに過ごしてほしいという願いが込められている。

自主性は「自分の脚で行動すること」 選手を考える野球人へ
近年、少年野球の指導現場では「自主性」や「主体性」という言葉がよく使われる。
しかし、多田監督は、そうした言葉の意味を指導者自身が理解することが大切だと考えている。
多田監督が捉える自主性とは、やるべきことが決まっている中で、誰かに言われる前に自ら率先して行動することだ。
練習メニューや、その目的、進むべき方向性は指導者が示す。
そのうえで、実際に取り組むのは選手自身。
心で考え、頭で理解し、身体で表現する。
それが、蝦夷ベースボールクラブの目指す選手の姿だ。
もちろん、創部2年目のチームには、まだまだ課題もある。
多田監督自身も、チームの成熟度については発展途上だと認識している。
日々、前進することもあれば、後退することもある。ときには停滞することもあるという。
それでも、選手たちの心の成長に伴い、練習の量や質にも変化が見られるようになった。
基本が身につき、試合での判断やプレーにも成長が表れてきた。
指導者が答えを与え続けるのではなく、選手自身が答えを探す。
その積み重ねが、チームの未来をつくっている。


2026年は札幌支部準優勝 北海道選抜にも選手を輩出
蝦夷ベースボールクラブは、チームとしての歴史こそ浅いものの、公式戦でも着実に結果を残している。
2025年には、全日本少年春季大会札幌支部予選でベスト16。北海道中学軟式野球連盟U14北海道大会ではベスト4に進出した。
2026年には、ドリスポ杯SpringCupで準優勝。
さらに、第43回全日本少年軟式野球大会札幌支部予選でも準優勝を果たした。
全日本少年春季大会札幌支部予選ではベスト8に進出している。
個人でも選手たちの活躍が広がっている。
北海道チャンピオンシップU15札幌選抜に4人、U14北海道選抜に2人が選出された。
チームとしての結果だけでなく、選手個々の成長も形になり始めている。

蝦夷ベースボールクラブ・主な大会実績
〈2025年〉
- 全日本少年春季大会札幌支部予選 ベスト16
- 北海道中学軟式野球連盟U14北海道大会 ベスト4
〈2026年〉
- ドリスポ杯SpringCup 準優勝
- 第43回全日本少年軟式野球大会札幌支部予選 準優勝
- 全日本少年春季大会札幌支部予選 ベスト8
- 北海道チャンピオンシップU15札幌選抜 4人選出
- 北海道チャンピオンシップU14北海道選抜 2人選出

中学野球は通過点 高校でさらに成長できる選手を育てる
多田監督が見据えるのは、中学3年間の結果だけではない。
その先にある高校野球だ。
「中学野球はあくまで通過点であり、高校以降が大事になります」
この言葉に、チームの育成方針が凝縮されている。
中学時代に勝つことだけを目的とするのではなく、高校へ進んだときに、さらに成長できる選手を育てる。
そして、選手自身が振り返ったときに、蝦夷ベースボールクラブで取り組んできたことは間違っていなかったと思えるような3年間にしたいという。
多田監督は今後のチームづくりについて、次のように語る。
「まだ2年目で、課題はたくさんあります。ただ、焦らず、背伸びせず、みんなで一つずつクリアしていきたいと考えています」
急いで結果を求めるのではなく、一歩ずつ積み重ねていく。
その先に、北海道の高校野球で活躍する選手たちの姿を描いている。
わずか3人から始まったチームは、今や38人の仲間が集う場所となった。
しかし、蝦夷ベースボールクラブの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
このチームで学んだ選手たちが、高校野球という次の舞台でどのような姿を見せてくれるのか。
その未来に期待が膨らむ。
2027年度新入団員を募集! 蝦夷ベースボールクラブで次のステージへの準備を
蝦夷ベースボールクラブ(EZOBBC)では、2027年度の新入団選手を募集している。
チームでは、指導方針や育成環境を大切にするため、新入団員の募集人数を概ね15人程度としている。
現在、入団希望者は2人で、引き続き新たな仲間を募集中だ。
中学軟式野球を通じて技術を磨きたい選手はもちろん、高校野球を見据えて基本を身につけたい選手、自ら考えてプレーする力を育てたい選手にも、練習体験への参加を呼び掛けている。
指導を担当するのは、多田学監督をはじめとするスタッフ陣。
練習では、野球技術の向上だけでなく、心身の鍛錬やスポーツ精神の育成にも取り組んでいる。

【チーム概要】
- チーム名: 蝦夷ベースボールクラブ(EZOBBC)
- 種別: 中学軟式野球
- 発足: 2024年12月
- 活動拠点: 札幌市
- 選手数: 38人(2026年10月現在)
- 監督: 多田 学
- ヘッドコーチ: 工藤 和博
- コーチ: 馬場 至、土合 竜太郎、古谷 雅之
【主な活動場所】
屋外練習
札幌市南区・白石区のグラウンド
冬季室内練習
札幌市南区の室内練習場
夏季活動期間
3月中旬~11月中旬(グラウンド)
冬季活動期間
11月中旬~3月中旬(室内練習場)
【2027年度新入団選手・練習体験のご案内】
募集人数:概ね15人程度
練習体験は、通常練習に合わせて受け付けている。
| 曜日 | 練習体験時間 |
|---|---|
| 毎週火曜日 | 18:00~21:00 |
| 毎週木曜日 | 18:00~21:00 |
| 毎週土曜日 | 9:00~16:00 |
| 毎週日曜日 | 9:00~16:00 |
| 祝日 | 9:00~16:00 |
※練習時間や会場は変更になる場合があるため、事前の問い合わせが必要。
※練習体験の受け入れは1日概ね10人程度。
※初めて練習体験に参加する選手を優先している。
【お問い合わせ・練習体験のお申し込み】
蝦夷ベースボールクラブ
担当:理事 木村
電話:090-7059-0637
メール:ezo.baseball.club@gmail.com
※電話に出られない場合があるため、メールでの問い合わせを推奨している。
中学野球は、ゴールではない。
その先の高校野球で、さらに成長するための大切な準備期間でもある。
「野球がうまくなりたい」「もっと成長したい」「高校でも活躍できる選手になりたい」
そんな思いを持つ小学6年生にとって、蝦夷ベースボールクラブの練習体験は、中学進学後の野球環境を考える機会となりそうだ。
まずは実際にグラウンドを訪れ、チームの雰囲気や指導方針に触れてみてはいかがだろうか。
北海道の高校野球を盛り上げる――。
その未来を担う、新たな仲間を待っている。

協力:蝦夷ベースボールクラブ
