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札幌市手稲区に拠点を構える「星置レッドソックス」は、今や全国大会でも上位進出を果たす強豪チーム。その礎を築いたのが、現監督・渡辺敦さんの熱い情熱と信念だった。父としての一歩から始まり、指導歴12年目を迎える今もなお、子どもたちの可能性を広げ続けている。今回は、星置レッドソックスの軌跡と伝統、そしてキャプテン・池内颯太の姿を通じて、その強さの本質に迫る。
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父としての参加が、人生を変える監督就任のきっかけに
星置レッドソックスの現監督・渡辺敦さんがチームと出会ったのは2012年。自身の長男が小学2年生で入団したことがすべての始まりだった。当時はただの保護者。チームの練習を見守る一人だった。
だが翌2013年、状況は一変する。指導者不足という課題を抱えていたチームから「コーチをお願いできませんか?」という申し出があった。最初は“父母コーチ”としてグラウンドに立つだけのつもりだったが、そのシーズンオフ、さらに衝撃の依頼が舞い込む。
「監督をお願いできないか?」
突然の打診に、渡辺さんは深く悩んだ。家庭、仕事、野球経験。すべてを天秤にかけた末に導き出した答えは「やるからには、しっかりやる」だった。
その瞬間から、星置レッドソックスの新たな物語が動き出した。
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冬の改革。野球は“楽しむ”ために“頑張る”必要がある
当時の星置は、週末だけの活動で、平日の練習は一切なし。冬季間も月に1度、小学校の体育館で体を動かす程度。渡辺監督はまずそこに手を入れた。
「冬に練習しなきゃ、春には勝てない」
その思いで月形の多目的アリーナ、三笠ドーム、北村ドリームといった地方の屋内施設を借り、移動をいとわず本格的な冬練習を始めた。だが、環境は整えても、実力が伴っていなければ意味がない。まずは“知る”ことが大切だった。
そこで渡辺監督がとった行動は、日刊スポーツ旗の大会プログラムに載っている監督の連絡先に、片っ端から電話をかけるというものだった。
「練習試合をお願いできませんか?」
返ってきたのは「忙しい」「予定がある」といった建前もあれば、「おたくとやっても意味がない」と、心ない言葉を投げかけられることもあった。
それでも諦めなかった。なんとか室内練習場を確保して、半ば“招待”という形で練習試合を実現していった。
結果は――惨敗の連続だった。アウト3つが取れない。チェンジにならない。小学生同士とは思えないほどの実力差に、愕然とした。
「子どもが楽しめればそれでいい、という声もあります。でも、楽しむには“頑張る時間”が必要なんです」
保護者にそう訴えかけた。これが、星置レッドソックスの真の改革のスタートだった。
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手応えをつかんだ2014年春。守備力がチームを変えた
その冬、子どもたちは必死に食らいついた。合宿を行い、守備練習に汗を流した。「まずアウトを3つ取れるようになろう」。目標はそれだけだった。
迎えた2014年の春季大会。予選を勝ち進み、なんと準優勝を果たす。続くつくし旗では見事に初優勝。守れるようになったことで、試合に勝てるようになり、子どもたちの表情にも自信が満ち始めた。
「ようやく子どもたちが、野球を“楽しい”と感じてくれた」
渡辺監督はその瞬間を、今も鮮明に覚えているという。
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“札幌の雄”へと飛躍。全国で通じる強豪へ
この成功体験が、星置レッドソックスのさらなる挑戦への原動力となった。道内チームの強豪チームとの対戦を積極的に重ね、子どもたちは実戦を通じて確かな経験値を積み上げていった。北海道チャンピオンシップ協会への加盟もこの時期であり、協会所属チームとの交流は、チーム全体のレベルアップに大きく寄与した。
現在では「星置レッドソックスと言えば札幌の雄」と称される存在となったが、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。渡辺監督が大きな改革に舵を切った当初は、従来のやり方との違いに戸惑いや摩擦もあり、厳しい時期も経験した。しかし、地道に一歩ずつ歩みを進める中で、チームは確かな成長を遂げ、今では多くの人に認められる強豪チームへと成長を遂げた。
全国大会でも着実に成果を上げている。
2024年:高知県・坂本龍馬旗 全国大会 3位。
2023年:徳島県・阿南全国大会 3位。
ポップアスリートカップ:2019年・2021年・2022年 ベスト8進出
既にご承知御とおり札幌市内でも高い実績を誇り、2022、2025年と札幌選抜大会で優勝。2024年の春、秋そして2025年春の札幌市スポーツ少年団大会(通称・スポ少)で3季連続優勝を達成し、今春の優勝でスタルヒン杯全道大会への出場権も獲得している。また8月には千葉県で開催される千葉市長杯へ北海道代表として出場することも決まっている。
数々の困難を乗り越え、実績を積み重ねてきた星置レッドソックス。その歩みは、単なる勝利の記録にとどまらず、地域の子どもたちの未来を切り拓く物語でもある。今夏、全国の舞台で再びその名を轟かせる準備は、すでに整っている。
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「凡事徹底」の信念と“ボールを使わない”練習の意味
星置レッドソックスのスローガンは「凡事徹底」。特別なことではなく、当たり前のことを徹底的に行う――それが渡辺監督の指導の根幹にある。
たとえば、ランニングひとつをとっても「走り方」に強いこだわりを持つ。単に100本走ることはできないが、ジャンプやステッピング、姿勢、股関節の動きなどを組み合わせることで、同等以上の効果を生み出し、より高い身体操作性を身につけさせている。
「整列や立ち姿からも、選手の“カラダの質”が見えるんです。だからこそ、そこを妥協しない」
球を使った方が楽だし、子どもも喜ぶ。それでも、ケガを予防し、長く野球を楽しめる身体を作ることこそが、本当に子どもたちのためになる。そう信じているからこそ、この指導方針を貫いている。
星置レッドソックスは「とにかく勝ちたいチーム」というイメージが強いかもしれませんが、根底にあるのは、子どもたちを守り、野球を心から楽しませたいという思いです。そのため、日々の活動では試合結果以上に、身体操作の基礎づくりや将来の伸びしろを広げる練習に、膨大な時間を費やしていることが見て取れます。
身体をより良くするために自分自身と向き合うことで、自然と心も育まれていく。そうして成長を実感することで、誰かに褒められなくても、自ら進んで努力できるようになる――星置レッドソックスは、そんな好循環を目指しているのです。
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中学でも活躍できる土台を。地域少年団の役割として
子どもたちは皆、育ち方が違う。体格も、生活環境も、生まれ月も違う。だからこそ、成長の“土台”となる身体をつくり、差を埋めてあげるのが、地域の少年団の使命だと渡辺監督は語る。
「せっかく野球を選んでくれたのだから、誰もが楽しめるように、誰もが可能性を持てるように」
技術だけでなく、人として、アスリートとして、正しく育てる環境を目指す。
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未来へ続く、星置レッドソックスの歩み
星置レッドソックスは、グラウンドでのプレーだけで勝っているチームではない。整列、走り方、道具の置き方、練習への取り組み方――すべてに意味があり、その積み重ねが“強さ”につながっている。
指導歴12年目を迎える渡辺監督が語るのは、「野球を教えているようで、自分自身が学ばせてもらっている」という感謝の思い。
選手31名、保護者、指導者。地域がひとつになって子どもたちを育てる星置レッドソックスの挑戦は、これからも続いていく。
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「伝統を体現するキャプテン」――池内颯太が牽引する星置レッドソックス
星置レッドソックスの主将・池内颯太(6年)は、まさに「伝統的な星置のキャプテン」の姿を体現する存在だ。
右投げ右打ちで138センチ、34キロと小柄ながら、全ポジションをこなせるユーティリティープレイヤー。打順では1番を任され、リードオフマンとしてチームの攻撃の起点を担う。走攻守すべてにおいて安定感を見せるだけでなく、状況判断力と観察眼にも優れており、プレーの一つひとつに高い“野球脳”が光る。
普段の練習からチームメートに声をかけ、後輩の見本となるプレーを黙々とこなす姿勢も印象的だ。指導者が多くを語らずとも、背中でチームを引っ張る。池内の存在が、星置レッドソックスの「教え合う文化」を自然と機能させているといっても過言ではない。
6年生としての集大成に向け、池内颯太の背中に、チームメートたちは大きな信頼を寄せている。
〇池内 颯太(いけうち はやた)
6年・右投げ、右打ち
138センチ、34キロ

小学生とは思えぬ立ち振る舞い――星置レッドソックスの「教え合う伝統」
「子ども同士で教え合う。上級生が下級生に伝える。それが星置レッドソックスの伝統です」と語るのは、同チームを率いる渡辺敦監督。
指導の中心にいるのは、決して大人ではない。選手一人ひとりが“先生”となり、時に仲間の動きを見てアドバイスを送り、自分自身の姿勢や言動も律していく。星置レッドソックスの選手たちが備えているのは、技術や体力だけでなく、周囲を観察し、的確に伝える「認知力の高さ」だ。
この姿勢は、毎年石狩の屋内施設「フェニックスフィールド」で開催されるストライク練習会でも強く感じられる。講師として渡辺監督が登場する際、サポートに駆けつけるのが星置レッドソックスの選手たち。彼らは参加者の前で模範的な動きを披露するだけでなく、講師の説明に応じて的確にアドバイスを送り、自ら見本を示し、時に「やってみて」と実演を促す。
その一連の流れが、あまりに自然で、あまりに的確。まさに「小学生とは思えない立ち振る舞い」である。
子ども達の中に根づく“教え合い”の文化――それは単なる野球の強さだけでなく、人としての成長をも育んでいる証なのかもしれない。

