
都市対抗戦へ、地域一丸で臨む18人の精鋭
10月25日に苫小牧市で開幕する北海道学童軟式野球都市対抗戦。地元・苫小牧選抜は5年ぶり3度目の優勝を目指し、8月31日に市内・緑葉公園で精力的に練習に励んでいた。選抜メンバー18人は、厳しいセレクションと日々の鍛錬を経て、地元開催の大舞台に臨む。
セレクションと育成への取り組み
苫小牧選抜は、6月7・8日に行われた一次セレクションに52人が参加し、31人が合格。さらに6月15日の二次セレクションで18人が最終的に選抜された。7月13日に初練習を行い、以降は計画的な強化を進めている。8月17日には十勝の音更選抜との練習試合を行うなど、実戦経験を積み重ねてきた。
また、大会前には北広島大会(ノースジャンボ主催)などの対外試合に積極的に参加し、チームの完成度を高めていく予定だ。さらに、スポーツ科学フィジカル検診施設によるトップアスリート向けの五大基礎体力測定を実施し、各選手の能力を検査・分析・評価する取り組みも行っている。科学的データを活用することで、個々の成長課題を可視化し、将来を見据えた育成につなげている点も特徴だ。

一芸を生かす戦略と勝利への決意
山村監督は、今年のチームにおいても「一芸に秀でた選手」に注目している。守備に課題があっても打撃力があればDHや代打で起用し、足の速さを武器にする選手は代走要員として登用。逆に打撃に課題があっても守備力が優れていれば守備固めとして試合に出場する機会を与える。監督は「今年も18人全員を使い切れるよう大会に臨みます」と語り、戦力を最大限に引き出す方針を示している。
地域の期待を背負う苫小牧選抜。5年ぶり3度目の栄冠を目指す戦いは、単なる勝利だけでなく、選手たちが次のステージへと羽ばたくための大切な経験の場となる。10月25日、地元苫小牧から新たなドラマが始まる。

苫小牧選抜チームを支える地域の連携と理解
苫小牧選抜チームの結成と運営は、地域全体の少年団の協力と理解の上に成り立っている。以下の3つの柱が、その基盤を支えている。
各少年団の協力体制
各少年団は、選抜に選ばれたかどうかに関わらず、必ずグラウンド当番を担当し、会場運営を全体で支えている。地域全体で協力し合う仕組みが整えられており、苫小牧選抜チームの活動を下支えしている。
指導者の理解と承諾
結成当初から、苫小牧選抜チームは各所属チームの指導者の理解を得たうえで活動を続けてきた。自チームの活動を優先しながらも、選抜に選手を送り出す体制が整えられ、年々その協力の輪は広がっている。
「選抜」への理解の浸透
一方で、発足当初は「選抜」という仕組みに対し、平等性の観点から懸念の声もあった。しかし「子どもたちにとって大きな経験の場になる」という考え方が徐々に浸透し、活動を重ねるなかで理解が深まっていった。
さらに、大会の開催地がほぼ毎回苫小牧であることも地域の盛り上がりにつながり、活動の意義を共有する後押しとなっている。こうした経緯を経て、苫小牧選抜チームの活動は地域全体に定着しつつある。




子供ファーストのチーム作りと育成哲学
苫小牧選抜チームでは、チーム作りや選手選考において「子供ファースト」の方針が徹底されている。選手一人ひとりの成長を重視し、技術力だけでなく多様な能力やリーダーシップ、そして平等な競争機会を大切にする姿勢が貫かれている。
まず、限られたメンバー構成の中では、必ずしも技術の優劣だけでレギュラーが決まるわけではない。主力としてプレーする選手以外にも、代走や代打といった場面で力を発揮できる「一芸」を持つ選手を積極的に起用し、チーム全体としての戦力を高めている。
また、性別を問わず選手の能力とリーダーシップを評価する姿勢も特徴的だ。実際に女子選手がキャプテンを務めた実績もあり、多様性を尊重した運営が実現されている。
さらに、全ての選手にレギュラー争いの機会を与えることで、公平な競争環境を整備している。同じ条件で競い合うことで選手たちは切磋琢磨し、野球技術だけでなく精神的な成長にもつながっている。

次のステージへのステップアップを見据えた育成
苫小牧選抜チームの活動は、選手たちが中学以降のステージで活躍できるように経験を積むことを最大の目的としている。選抜という高いレベルの環境で競争を経験することで、全国大会やその後の成長につながる自信を養うことができる。
個々の選手の成長にも重点が置かれており、チームとしての勝利だけでなく、将来を見据えたスキルや意識の向上を重視している。また、フィジカルデータを活用して選手ごとの課題を可視化し、不足している部分を補うためのトレーニングを取り入れるなど、科学的なアプローチも導入されている。

厳しさと明るさの共存するチーム雰囲気
チーム運営においては、厳しい指導と明るい雰囲気が両立している。自チームでは許されることも、選抜チームでは上のレベルにつながる指導として厳しく徹底される。その一方で、選手一人ひとりの個性を尊重し、全体として明るく前向きな雰囲気が保たれていることも特徴だ。
突出した一部の選手に依存するのではなく、平均的にレベルの高い選手が集まり、全体で競い合う環境が形成されている。

キャプテン・須藤進太主将インタビュー
声でチームを引っ張り、全国優勝を誓う
苫小牧選抜を率いるのは、須藤進太主将。憧れの舞台に立つ喜びと責任感を胸に、大会への決意を語ってくれた。
憧れから責任へ
「憧れの選抜チームで野球ができるのが嬉しかった」――セレクション合格の瞬間、須藤主将の胸にまず湧いたのは喜びだった。だが、次に訪れたのは驚きだったという。
「キャプテンに選ばれた時は『え!?俺?』って思いました。選抜は上手い子が多いので、まとめていくのは大変だなと思いました。」
その戸惑いを乗り越えるために、彼が大事にしているのは“声”。
「常に声を出すことです。自分が一番声を出して引っ張っていけるように意識しています。」
チームの魅力と注目選手
選抜での日々について「チーム以上に、プレーの一つひとつに拘った指導をしてもらっています」と充実した表情を見せる須藤主将。
チームについて尋ねると「みんな明るくて、全員が声を出すチームです。上手くて、足も速くて、良いところしかないです」と自信をのぞかせた。
また、注目選手には神嘉人君(ときわ澄川ライオンズ)の名を挙げる。
「守備が上手くて、足も速くて、肩も強い選手です」と頼もしさを語った。
全国を目指して
最後に大会への意気込みを聞くと、その声には力強さが宿った。
「優勝して全国に行きます!」
声で仲間を鼓舞し続けるキャプテン・須藤進太。彼のリーダーシップが、苫小牧選抜を勝利へと導く原動力になるに違いない。
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指導者・選手
<指導者>
▽代 表
向井 拡充(飛翔スワローズ・監督)
▽監 督
㉚山村 寛文(拓勇ファイターズ・監督)
▽コーチ
㉙伊藤 充(新生台イーグルス・監督)
㉘熊原 陵太(沼ノ端スポーツ少年団・監督)
桑村 直樹(泉野イーグルス・監督)
長谷川 慎(北光ファイターズ・監督)
奥村 大(鵡川ジュニアファイターズ・監督)
三浦 哲也(沼ノ端スポーツ少年団・コーチ)
▽マネージャー
山村 純人(拓勇ファイターズ・コーチ)
<選手>
(背番号、氏名、ふりがな、所属チーム、投打、身長・体重)
★主将
須藤 進太
⑩須藤 進太(すどう しんた)
拓勇ファイターズ
右投げ、右打ち
137センチ、33キロ
⓪熊原 成凪(くまはら せな)
沼ノ端スポーツ少年団
右投げ、右打ち
148センチ、48キロ
①清水 亮聖(しみず りょうせい)
拓勇ファイターズ
右投げ、右打ち
160センチ、48キロ
②神 嘉人(じん ひろと)
ときわ澄川ライオンズ
右投げ、右打ち
154センチ、40キロ
③本多 琉生(ほんだ りょうき)
泉野イーグルス
左投げ、左打ち
155センチ、38キロ
④嵯城 大貴(さじょう だいき)
泉野イーグルス
右投げ、右打ち
148センチ、34キロ
⑤橘 皇佑(たちばな こうすけ)
拓勇ファイターズ
右投げ、右打ち
153センチ、45キロ
⑥長谷川 真聖(はせがわ まなと)
北光ファイターズ
右投げ、左打ち
145センチ、37キロ
⑦上田 壱太(うえだ いちた)
ときわ澄川ライオンズ
右投げ、右打ち
157センチ、45キロ
⑧斎藤 翔(さいとう しょう)
泉野イーグルス
右投げ、右打ち
152センチ、39キロ
⑨尾関 新(おぜき あらた)
拓勇ファイターズ
右投げ、左打ち
154センチ、40キロ
⑪佐々木 和馬(ささき かずま)
北光ファイターズ
左投げ、左打ち
156センチ、62キロ
⑫萩原 迅 (はぎわら じん)
鵡川ジュニアファイターズ
右投げ、右打ち
152センチ、45キロ
⑬青木 英心(あおき えいしん)
沼ノ端スポーツ少年団
右投げ、左打ち
160センチ、43キロ
⑮榎本 緋色(えのもと ひいと)
新生台イーグルス
右投げ、右打ち
151センチ、40キロ
⑯上野 遥大(うえの はるた)
新生台イーグルス
右投げ、右打ち
155センチ、46キロ
⑰澤向 晴翔(さわむかい はると)
拓勇ファイターズ
右投げ、右打ち
145センチ、40キロ
⑱西村 統吾(にしむら とうご)
大成フェニックス
右投げ、右打ち
160センチ、48キロ

協力:2025苫小牧選抜チーム