「奪還」への強い思いを胸に、全力で戦い抜いた2日間
44名の中から選ばれた精鋭18名――。
「奪還」を合言葉に臨んだ北海道スノーホワイトは、西日本の強豪がひしめく舞台で、意地と執念を見せた。初戦のマドンナジュニア愛媛(愛媛県)戦では一挙5得点のビッグイニングで勝利を掴み、続く兵庫西宮BELLS Jr.(兵庫県)戦では土壇場六回に同点に追いつく執念の野球を展開。最後は抽選で涙を飲んだが、選手たちが見せた戦いは、まさに“王座奪還”の名にふさわしい輝きを放った。
1回戦・マドンナジュニア愛媛(愛媛県)
五回の“攻め”を呼んだ代打・斎藤春歩の四球──井田成美の好投が流れを呼び込む完封リレー
三回、0-0の均衡を破ったのは北海道スノーホワイトだった。相手の失策を逃さず先制点を奪うと、試合の流れがゆっくりと北海道側へ傾き始めた。
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そして勝負を決定づけたのは五回。
一死から7番・佐々木明衣(羽幌フェニックス/6年)が四球で出塁し、果敢な二盗でチャンスを拡大。続く8番・白崎七海(岩見沢ファイターズ/6年)もライト前へ運び、すぐさま二盗を決めて二、三塁と攻めの姿勢を貫いた。
ここで大きな役割を果たしたのが、一死から代打で送られた斎藤春歩(摩周ジャガーズ/6年)。
大坂 聡監督はその意図をこう語る。
「五回のビッグイニングは、ワンナウトからの代打・斎藤春歩が“初めての四球”をもぎ取ったのが本当に大きかったです。あの一打席が流れを呼び込みました」
続く9番・大西悠暖(豊浦シーガルス/6年)の内野ゴロがフィルダースチョイスを誘い、三塁走者が生還。
1点が入った直後、大坂監督は相手の変化を感じ取っていた。
「一点入ったあとは、相手の動揺がはっきりと伝わってきました」
勢いを完全につかんだスノーホワイトは、2番・石田鈴乃(遠軽西ファイターズ/6年)の内野安打なども加え、この回一挙5点。勝敗を大きく左右するビッグイニングとなった。
投手陣もその流れに呼応した。
先発の井田成美(レッドアスレチックス/6年)は四回まで2安打1四球無失点と、試合の主導権を握る好投を披露。大坂監督はその存在の大きさを強調する。
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「正直、4回終わって1-0は意外な展開でした。もう少し早く井田からの継投も考えていましたが、あそこまでの好投がすべての土台だったと思います」
五回からマウンドを託された木田碧(永山中央野球少年団/6年)も、得点圏に走者を背負いながらも落ち着いて後続を断ち切る。
「後を受けた木田碧も、落ち着いた投球でした」
井田から木田へとつなぐ完封リレーが成立し、スノーホワイトは6-0で初戦を力強く突破。
代打・斎藤の四球を起点とした五回の攻撃、そして井田・木田の継投が噛み合った見事な白星となった。
◆1回戦(27日、玉の森多目的広場B)
北海道スノーホワイト(北海道)6-0マドンナジュニア愛媛(愛媛県)
北海道スノーホワイト
00105=6
00000=0
マドンナジュニア愛媛
(北)井田、木田ー白崎
(愛)德永、眞鍋ー松岡
▽二塁打:古田(北)、德永(愛)

2回戦・兵庫西宮BELLS Jr.(兵庫県)
“絶対に諦めない”——六回、ツーアウトから生まれた魂の同点劇
難しい初戦を快勝で乗り越えた北海道スノーホワイト。しかし2回戦の兵庫西宮BELLS Jr.戦は、序盤から我慢の展開となった。初回、先頭打者にセンター前へ運ばれ、その後のバッテリーミスも絡んで1点を失う。だがこの1点以外は許さなかった。
大坂 聡監督が「初回のミスによる一点だけで好投していた」と語るように、先発・石田鈴乃(遠軽西ファイターズ/6年)は二回から五回まで二塁を踏ませない立ち直りを見せ、味方の反撃を待った。
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一方、攻撃陣は毎回三塁まで走者を進めながらもあと一本が出ず、重たい空気のまま六回を迎える。
最終回の攻撃前、大坂監督は選手たちにこう声をかけていた。
「最後まで絶対諦めるな」
その言葉を背に受けた選手たちが、ついに流れを変える。
二者連続三振で二死・走者なし。この回も無得点で終わるかに見えた場面で、5番・坂本稀苺(深川一已バトルス/6年)が四球をもぎとる。監督はこう振り返る。
「ツーアウトから四球をもぎどった坂本」
続いて代走として高橋が送られ、確実に二盗を成功させた。
「代走で出て、最後まで走ってホームを踏んだ高橋」
その後、6番・紺谷まこ(富良野東ドングリーズ/6年)の放った打球は内野ゴロ。しかし紺谷は全力で走り抜き、相手の失策を誘う。
「内野ゴロを諦めずに走って相手のミスを誘った紺谷」
そしてついに、高橋が本塁に生還。1-1の同点に追いついた。
この瞬間、大坂監督はベンチのみならず、スタンドの空気まで変わったと口にする。
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「そしてそれを必死に声を出して応援した選手と保護者応援団。
同点に追いついた時は全員が涙していました。あの瞬間、チームが本当に一つになっているのが伝わってきました。」
六回裏を狩野桃音(遠軽西ファイターズ/6年)が粘りの投球で無失点に抑えると、勝負は大会規定により七回からタイブレークへ突入。
スノーホワイトは石黒夏帆(双葉スピリッツ/6年)の犠打で一死二、三塁とすると、バッテリーミスの間に三走・白崎七海(岩見沢ファイターズ/6年)が生還し勝ち越し。さらに石田がレフト前適時打を放ち、この回2点を奪った。
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しかし七回裏で2点を献上し3-3の同点に。大会規定により抽選となり、結果は4-5。わずか1点差で敗れ、王座奪還はならなかった。
それでも、スノーホワイトが示した粘りは本物だった。
石田は初回以降の5イニングを完璧に立て直し、狩野も難しい状況を任されながら最後までマウンドを守った。
そして六回の同点劇——あの一連の攻防は、「最後まで諦めない」というチームの象徴そのものだった。
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涙とともにたぐり寄せた1点は、北海道スノーホワイトというチームの強さを確かに示した瞬間だった。
◆2回戦(27日、玉島の森多目的広場B面)
北海道スノーホワイト(北海道)3-3兵庫西宮BELLS Jr.(兵庫県)
※抽選の結果、4−5で北海道スノーホワイトが涙。
北海道スノーホワイト
0000012=3
1000002=3
兵庫西宮BELLS Jr.
(七回タイブレークの末、抽選)
(北)石田、狩野ー白崎
(兵)栫井、久世ー上田
▽二塁打:大西(北)、德永(兵)


“心が震えた二試合”
選手が掴んだ成長と未来への手応え
タイブレークで勝ち越しながらも、最終的には抽選で決着した2回戦。北海道スノーホワイトの戦いは、数字以上のドラマに満ちていた。
大坂 聡監督は、この二試合を振り返り、胸の内にある深い思いを語ってくれた。
「あれほどの緊張感、あれほどの感動はなかなか味わえないでしょう。
自分もスノーホワイト12年間の中でも1、2の試合でした。」
初戦の完封勝利、そして2回戦の土壇場同点劇とタイブレークでの勝ち越し。結果こそ抽選での敗戦となったが、その内容は、指導歴においても特別な2試合となった。

監督は、この2試合が 選手たちの“野球観を変えた” と強調する。
「選手にとっても、ずっと心に残る試合になると思いますし、
彼女たちの野球観を大きく変える1試合になったと思います。」
その背景には、彼女たちが試合の中で感じた“プレーの重さ”がある。
「ひとつのプレーの重さや怖さ、
チームプレーや仲間を助けたいという気持ち、
そして自分たちが必死にプレーする姿が人に感動を与えること——
それが分かったのではないかと思います。」
勝ち越した瞬間の歓喜、同点に追いついた瞬間の涙、そして最後に待っていた抽選。
喜びと苦しさが入り混じる経験は、野球選手としてだけでなく、ひとりの人間としての成長にもつながったと監督は語る。
「人としても大きく成長したと思いますし、
この二ヶ月弱の活動の一番の収穫だったと思っています。」
大会は終わった。しかし、スノーホワイトの選手たちが得たものは、記録以上に価値のある“未来への財産”だ。
「これを糧に、今後の彼女たちの活躍を期待します!」
緊張と感動に満ちた二試合は、北海道スノーホワイトの選手たちに確かな成長を刻み、次のステージへ向かう大きな一歩となった。

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協力:2025北海道スノーホワイト
