木本伸次監督が描く育成の本質と未来像――「応援される人間」を育てるチームづくり
中学硬式野球チーム「とかちインディーズ」を4月4日、北海道河西郡更別村ふるさと館で取材した。2年目を迎えた同チームは、新入団選手の増加により一気に若返り、現在は“育成”と“組織づくり”の重要な過渡期にある。木本伸次監督と主将・中村陸人の言葉から見えてきたのは、単なる勝利を追い求めるのではなく、人間としての成長を軸に据えたチームの姿だった。若返るチーム、問われるリーダーシップ
とかちインディーズは2年目の今季、新3年生3人、新2年生2人、新1年生12人と大幅に若返った。上級生がわずか6人という構成の中、チームはまだ発展途上にある。
木本監督は現状について「まだリーダーシップに欠ける部分がある」と率直に語る。特に新入団の1年生については「将来性はあるが、まだ小学生気分が抜けきらない」とし、声の出し方や取り組む姿勢など、人としての基礎づくりが課題だと指摘する。
「技術以前に、人間性の成長を促していきたい」。その言葉には、チームづくりの明確な軸が感じられた。
「やらせる」ではなく「引き出す」指導
育成と勝利――相反しがちなテーマに対し、木本監督は明確な考えを持つ。
「負けていいとは思っていない。ただ、やらせるのではなく、自分たちから“こうなりたい”という欲を引き出したい」
冬期間はミーティングや座学を重ね、「人から応援される人間になる」というチームテーマのもと、マンダラチャートを活用した目標設定にも取り組んだ。
指導者が答えを与えるのではなく、「どう思う?」「これはどうだろう?」と問いかけながら選手自身に考えさせる。その積み重ねが、自発性を育てる。
「それは野球だけでなく、社会に出た時にも通じる力になると思っています」

目指すは“自走する集団”
今後3年、5年を見据えたチーム像について、木本監督は「自分たちで考え、提案できる集団」と語る。
現在は「次は何をやりますか?」と指示待ちの場面が多いが、将来的には「この課題に対して、この練習をしたい」と自ら動ける選手の育成を目指す。
また、組織としても継続的な成長を見据える。
「将来的には安定して2チーム編成できる体制をつくりたい。出場機会を増やしながら、技術的な成長も促していきたい」
“強さ”だけでなく、“機会の平等”も重視する姿勢が印象的だった。

十勝におけるクラブチームの役割
十勝地区には現在、硬式クラブチームが複数存在し、競争と共存の時代に入っている。
木本監督は「淘汰ではなく共存」をキーワードに挙げる。
「選択肢が増えることはいいこと。お互いに良い方向へ進める関係でありたい」
実際に、他チームとの交流やオープン戦も積極的に行い、選手にとっての学びの機会を広げている。

活動環境と地域の支え
活動拠点は中札内村の河川敷球場。冬期間は更別村ふるさと館や中札内の屋内施設を活用し、効率的な練習を行ってきた。
週末の練習は3時間から3時間半に集約し、「勉強との両立」も重視。遠くは士幌町から通う選手もおり、地域全体で支えるチームの姿がある。
さらに、2025年1月からはこころ整骨院の小川進氏がメディカルスタッフとして加入。故障予防の面でもサポート体制が強化された。

進路に広がる可能性
卒団生は帯広南商高校、帯広工業高校、帯広緑陽高校、立命館慶祥高校などへ進学。中にはアイスホッケーで慶應義塾高校へ進む選手もいる。
二刀流を認める柔軟な方針も、同チームの特徴の一つだ。

“応援される人間”を目指して――中村陸人主将が描く、とかちインディーズの現在地
中学硬式野球クラブ「とかちインディーズ」で主将を務める中村陸人。右投げ左打ちのトップバッターは、守備力を武器にチームをけん引する存在だ。人数不足の時代を乗り越え、新たな仲間が加わった今、チームは大きな転換期を迎えている。今回はキャプテンとしての思いに加え、チーム戦力のキーマンについても率直に語ってもらった。
.jpg)
少人数からの再出発――“明るさ”を取り戻したチーム
中村が所属する「とかちインディーズ」は、これまで少人数での活動を余儀なくされてきた。自身の学年もわずか3人という状況の中で、チームとしての形を保つことに不安もあったという。
しかし今季は新入生が多数加入。「すごく明るくなりました」と中村。これまでとは一変した雰囲気の中で、チームには前向きな空気が広がっている。
「みんな負けず嫌いで、怖いもの知らずなところが強みです」。人数が増えたことで、ようやく“チームとして試合ができる”喜びを実感している。
武器は守備力 それでも求める“声”と“まとまり”
冬場の室内練習を通じて、「守備はみんな上手くなっている」と語る中村。「守備は意外といけると思います」と手応えも口にする。
一方で課題は明確だ。「声と、もう一段階の元気」。さらに「まだチームとしてまとまりきれていない」と冷静に現状を見つめる。
特に試合では、中学生相手の雰囲気に飲まれる可能性もある。「1年生は経験も少ないので、そこをどう戦うか」。主将としての責任も強く感じている。
戦力のカギを握る存在――主将が挙げたキーマン
戦力面についても、中村は率直に言及した。
まず攻撃の要として名前を挙げたのが、途中加入ながら存在感を示す谷口誼(釧路ゴールデンモンキーズBBC出身/新3年)。釧路から加わり、まだチーム歴は浅いものの、「勝負強さがある」と期待を寄せる存在だ。
さらに林 陽向(帯広光南緑ヶ丘アトムズ出身/新3年)についても言及。「小学生時代は3番を打っていたパワーヒッター」とし、現在は捕手としてチームを支える。攻守において軸となる存在だ。
そして“楽しみな存在”として挙げたのが後輩の中田幸岐(新2年)。「スイングスピードが速く、見ていて面白い選手」と評価し、「何かをやってくれそうな雰囲気がある」と将来性に太鼓判を押す。
「誰がエースかはまだ分からない」としながらも、「谷口がカギになると思う」と主将はチームの中心選手像を見据えている。
主将としての覚悟――「自分が流されない」
キャプテンとして中村が大切にしているのは、「自分が流されないこと」。
「まだまとまっていないチームだからこそ、自分がブレてはいけない」。仲間同士の気の緩みや無駄な会話にも流されず、まずは自分自身を律することを第一に掲げる。
仲間に厳しい言葉をかける場面もある。その覚悟の裏には、「チームを良くしたい」という強い責任感がある。
目指すは“応援される人間” その先にある未来
チームの目標は「人から応援される人間になること」。勝敗だけではない価値を、チーム全体で共有している。
個人としては「トップバッターとして試合に出ること」、そして「ノーエラーで守ること」を掲げる中村。守備からリズムをつくり、攻撃につなげる役割を担う。
将来については「応援される選手になりたい」と語りつつ、「高校では推薦で進めるような活躍をしたい」と目標を見据える。
人数不足という壁を乗り越え、新たなスタートを切ったとかちインディーズ。その中心に立つ中村陸人の挑戦は、これからが本番だ。
.jpg)
中村 陸人(なかむら りくと)
右投げ、左打ち。
170センチ、60キロ。
小学2年時に父親の影響で野球を始める。帯広農業高校でプレー経験を持つ父の背中を追い、緑ヶ丘キングファイターズで競技をスタート。その後、団員不足によりチーム合併し、帯広光南緑ヶ丘アトムズで学童野球を終える。現在は中学硬式野球クラブ「とかちインディーズ」の主将としてチームをけん引する。守備力に定評があり、トップバッターとしての役割も担う。家族は両親と姉の4人。
発行人コラム
とかちインディーズの取材を通して強く感じたのは、「勝つこと」をゴールにしていないチームであるという点だ。掲げるのは「人から応援される人間になる」というテーマ。これは野球の技術だけでは到底到達できない領域であり、日々の姿勢や考え方、人との関わり方すべてが問われる。だからこそ木本監督は「やらせる」のではなく、「引き出す」指導にこだわるのだろう。
現状はまだ若く、どこか静かで、頼りなさも残る。しかし、それは裏を返せば伸びしろの塊でもある。自ら考え、動き、発信できる集団へ――。その変化の過程こそ、このチームの最大の魅力だ。数年後、十勝からどんな存在へと成長しているのか。その答えを追い続けたい。
フォトグラフ







協力:とかちインディーズ
