多様な選手を受け入れ、“楽しむ野球”から未来へつなぐ育成
中学硬式野球チーム「札幌白石ポニーリーグ」を3月1日と4月5日に訪問し、室内練習場およびグラウンドで開幕に向けた準備を進める様子を取材した。
中学校の部活動が地域移行へと進む中、思うように野球に打ち込めない選手や、さまざまな理由で一度は野球から離れかけた中学生たちが、再びグラウンドに立つ――。札幌白石ポニーは、そうした選手たちの“受け皿”としての役割を担いながら、一人ひとりの想いに寄り添った育成を続けている。
競技志向だけにとらわれない“多様性”を受け入れるチームづくりの中で、選手たちは自分なりの野球と向き合い、それぞれの歩幅で次のステージへと歩みを進めている。
「戻ってこれる場所」としての存在価値
札幌白石ポニーの大きな特徴のひとつが、「野球を続けられなかった選手の受け入れ」だ。中学野球部での活動を終えた後、環境や事情により競技継続が難しくなった選手たちに対し、練習生として門戸を開いている。
同チームが関わる「リーガー・エルマーノス」では、軟式野球出身の中学3年生を対象に一般募集を実施。そこから参加した選手の中には、高校野球に向けた準備期間として再び野球に取り組む者もいる。
また、卒団生の中にも他チームで継続が難しかった選手が在籍。進路も多様で、私立高校へ進学する選手に加え、中には独立リーグでのプレーを志す選手もいるなど、それぞれが自分の道を模索している。


「楽しむ野球」を最優先に
指導において最も大切にしているのは、「野球を楽しむこと」だという。
「好きで来ている場所だからこそ、まずは思い切り楽しんでほしい」と語る指導者の言葉には、強い信念がにじむ。野球は必ずしも競技として頂点を目指すためだけのものではなく、「好き」という気持ちを大切にできる存在であっていい。
チーム内には、甲子園やプロを目指す選手もいれば、楽しみながら続ける選手もいる。その“温度差”を否定するのではなく、お互いに尊重し合う空間こそが、札幌白石ポニーの強みだ。
「どんなレベルでも、同じ“野球人”として接する」――そのスタンスが、選手たちの主体性と成長を支えている。
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広がるポニーリーグと未来への役割
近年、北海道のポニーリーグは着実に広がりを見せている。北斗に始まり、創部2年目を迎えるとかちインディーズは2チームでのエントリー。札幌白石ポニーもその一翼を担う存在として、競技の普及に力を注いでいる。
チームとしては大会にも全力で挑むが、指導者の視線はさらに先にある。「野球を通じて得たものを社会に持ち帰り、野球の価値を広めてほしい」――それが真の目的だ。
冬場は屋内施設を活用し、継続的な練習環境を確保。地域の理解と支援もあり、子どもたちが野球に触れ続けられる土台が整いつつある。
今後も「誰でも野球ができる場所」として、多様な選手を受け入れながら、野球界全体への貢献を目指していく。

「全員で勝つために」小田島颯大副主将が描く白石ポニーの現在地
試合経験を求め、自ら環境を変えた決断――。昨年9月に札幌白石ポニーへ加入した小田島颯大副主将は、「成長するためには試合に出ることが必要」と言い切る。その言葉の裏には、確かな自己分析とチームを見つめる冷静な視点があった。仲の良さを武器にしながらも、課題と真摯に向き合う副主将が、開幕へ向けたチームの現在地と未来像を語った。
「試合に出る」ための決断
小田島が野球を始めたのは、さまざまなスポーツを体験できるスクールで、同級生に誘われたことがきっかけだった。小学生時代はポルテに所属し、基礎を積み上げると、中学では憧れの先輩を追って軟式クラブチーム「オックス」へ進んだ。
しかし、さらなる成長を求め、昨年9月に札幌白石ポニーへ移籍する。
「自分のレベルアップには試合経験が一番大事だと思いました。試合に出られる環境でプレーすることが、将来につながると考えました」
高校、大学、その先の野球人生を見据えた選択。環境を変える決断には、迷いよりも明確な目的意識があった。
仲の良さと課題の共存
副主将として見つめるチームの強みは、「学年の壁がないこと」だ。
「このチームは本当に仲がいいです。学年関係なく思ったことを言い合えるので、すぐに意見を共有できます」
互いに遠慮なく言葉を交わせる関係性は、チームの大きな武器。一方で、小田島は冷静に課題にも目を向けている。
「練習の切り替えの時にダラダラしてしまう部分があります。そういうところをしっかり締めていかないと、試合でも気持ちの切り替えができないと思います」
プレー面では、下位打線のつなぎや、基本的な守備力の徹底を挙げた。
「上位打線はつながりますが、下位打線がどう上位につなぐかが課題です。あとは、当たり前のプレーを当たり前にできるようにしたいです」
開幕へ向けた理想の形
開幕が近づく中、小田島が描く理想のチーム像は明確だ。
「一人ひとりがしっかりミートできることと、守備では確実にアウトを取ること。その2つができれば勝ちに近づくと思います」
個々の技術向上と、チームとしての安定感。その積み重ねこそが勝利への道と捉えている。
目標は、あくまでその先にある。
「全国大会出場が目標です。他のポニーリーグのチームに負けないように、打撃も守備もピッチングも全部で一番を目指していきたいです」
冷静な分析力と、確かな向上心。小田島副主将のもと、札幌白石ポニーは“全員で勝つ野球”を体現しながら、開幕へと歩みを進めている。
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〇小田島颯大(おだじま そうた)
札幌白石ポニーリーグ/新3年
右投げ、右打ち
174センチ、90キロ
ポルテ出身-OXベースボールクラブ-札幌白石ポニー
札幌白石ポニー副主将
家族は両親と弟の4人。
“打者目線”を武器に――坂野隼汰、制球力で挑むラストシーズン
「一番はコントロール」――。そう言い切る左腕・坂野隼汰は、打者の視点に立った投球を追求するピッチャーだ。ストレートの球速だけでなく、体感速度やキレを意識し、丁寧に打者と向き合う。中学最後のシーズンを迎える今、チームの勝利と仲間との喜びを胸に、マウンドへと向かう。
野球の原点は父とのキャッチボール
坂野が野球を始めたのは小学3年生のとき。きっかけは、父とのキャッチボールだった。
「お父さんとキャッチボールをしていて、楽しいと思ったのが始まりです」
その後、岩見沢学童野球クラブに所属し、本格的に野球に取り組むようになった。基礎を積み重ねながら成長し、中学ではさらなるレベルアップを求めて札幌白石ポニーの門を叩いた。
「このチームが一番成長できると思ったので選びました」
“打者目線”で磨く投球術
左投げながら右打ち、さらに現在は左打ちにも挑戦するなど、柔軟な発想も持ち味のひとつ。そんな坂野がマウンドで大切にしているのは、“打者の目線”だ。
「コントロールを一番意識しています。あとは、打者から見た体感速度や球のキレも大事にしています」
その感覚を磨くために、自宅では体幹トレーニングを継続。試合ではストレート、カーブ、チェンジアップを軸に組み立てる。
「球速よりもコントロールが自分の強みです」
試合を重ねるごとに調子は上向き、球の質も徐々に向上しているという。
勝利と喜びを分かち合うために
チームとしての課題には「守備」を挙げる坂野。冬場の練習で積み重ねてきた成果を、シーズンで発揮することが鍵になる。
「秋の新人戦の頃よりは良くなっていると思います」
迎える中学最後のシーズン。個人としてもチームとしても、強い想いを胸に抱く。
「楽しむのはもちろんですが、やっぱり勝って、みんなで喜びを分かち合いたいです」
開幕を目前に控え、その表情には確かな手応えと静かな闘志が宿っている。
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〇坂野 隼汰(さかの しゅんた)
札幌白石ポニーリーグ/新3年
左投げ、両打ち(左打ちに挑戦中)
167センチ、53キロ
岩見沢学童野球クラブ出身
家族は両親と姉の4人。
「4番の責任」鎌田蓮、勝負強さで挑む飛躍のシーズン
チームの主軸として打線を引っ張る4番打者――。札幌白石ポニーの鎌田蓮は、「走者を返すこと」を何よりの使命として打席に立つ。プレッシャーのかかる場面でも前を向き、勝負を決めにいく。その裏には、日々の積み重ねと明確な目標があった。強豪校進学、そしてその先へ――飛躍を誓う中学最後のシーズンが始まる。
「4番として走者を返す」明確な役割意識
鎌田はチームの4番を任される主軸打者。打席では常に“役割”を意識している。
「4番の役割は、得点圏にいるランナーを返すことだと思っています」
チャンスの場面では、打球の方向や狙う球種をしっかりとイメージしながら打席に入る。状況に応じて工夫を重ね、安打の確率を高めることを意識しているという。
強い相手になればなるほど、訪れるチャンスは限られる。ワンチャンスをものにできるかどうか――その重みを理解しているからこそ、4番としての責任はより大きい。
プレッシャーを力に変える心構え
ツーアウトや得点圏といったプレッシャーのかかる場面でも、鎌田は自分を見失わない。
「やっぱり緊張はしますが、深呼吸をして『打ってやろう』という気持ちで打席に立っています」
気持ちで負けないこと。それが勝負の分かれ目になると考えている。
その裏付けとなるのが、日々の積み重ねだ。チーム練習に加え、野球塾「ポラリス」に通い、学んだことを自宅で復習。中学2年生から継続して取り組み、着実に技術を高めてきた。
目指すは強豪校、そしてその先へ
小学時代は恵庭の柏ホエールズでプレー。基礎を築きながら成長し、現在はさらなる高みを見据えている。
「強い高校に進学したいです。そのために、この冬で技術を磨いて、夏に目立てる選手になりたいです」
中学最後のシーズンは、自身の評価を高める大事な一年。そのためにも、開幕までの準備に余念はない。
「練習でやってきたことを試合で出せるように、試合前のアップなどもしっかり意識して、万全の状態で臨みたいです」
4番としての責任、そして自らの未来を切り拓くために――鎌田は覚悟を持ってシーズンに挑む。
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〇鎌田 蓮(かまだ れん)
札幌白石ポニーリーグ/新3年
右投げ、右打ち
170センチ、68キロ
柏ホエールズ出身(恵庭)
家族は両親と姉の4人。
「周りを見て、結果にこだわる」後藤瑛介主将、チームを導く覚悟
チームを束ねるキャプテンとして、そして一人の選手として――。札幌白石ポニーの後藤瑛介主将は、「周りを見ること」と「結果にこだわること」の両立を掲げる。仲間を引っ張る責任と、自らのプレーで示す覚悟。その両輪を胸に、開幕へ向けた準備は着実に進んでいる。
兄の背中を追い、野球の道へ
後藤が野球を始めたのは小学1年生のとき。きっかけは、兄の存在だった。
「お兄ちゃんが野球をやっていて、それを見て始めました」
白石リトルで基礎を学びながら成長を重ね、現在は札幌白石ポニーのキャプテンとしてチームを牽引する立場となった。
函館遠征へ向けたチームづくり
取材当時、チームは3月後半に予定されている函館遠征に向けて調整を進めていた。
「遠征に向けて、みんなで頑張っています」
実戦を通じてチームの完成度を高める大事な機会。開幕前の重要なステップとして、チーム全体で準備を進めている段階だ。
「しっかり調整して臨みたいです」と述べた。
キャプテンとしての責任と覚悟
後藤が思い描く開幕の理想像は明確だ。
「みんなが万全の準備をした状態で試合に入れるようにしたいです」
その言葉には、チーム全体を見渡すキャプテンとしての視点が表れている。
一方で、自身のプレーに対しても強い意識を持つ。
「周りのこと、チームのことを見ながら、自分自身も結果にこだわってやっていきたいです」
チームを導く責任と、自らの結果。その両方を追い求めながら、後藤主将はシーズン開幕へと歩みを進めていく。
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〇後藤 瑛介(ごとう えいすけ)
札幌白石ポニーリーグ/新3年
右投げ、右打ち
160センチ、55キロ
札幌白石リトル出身
札幌白石ポニー主将
家族は両親と姉の4人。
フォトグラフ




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協力:札幌白石ポニーリーグ
