混迷の先に見据えた“新たな一歩”――北広島中央リトルシニア、新チーム結成の決断

混迷の先に見据えた“新たな一歩”――北広島中央リトルシニア、新チーム結成の決断

平坦ではなかった道のり――それでも前を向いた新チームの覚悟

 北広島中央リトルシニアの歩みは、決して平坦なものではなかった。前身チームに所属していた時期、指導体制や運営方針を巡り、内部で様々な意見の違いが生じたのは事実だ。しかし、それはどのチームにも起こり得る出来事であり、決して特別なものではない。

 前川代表は当時を振り返り、「子どもたちにとって何が最善なのかを考え続けた結果だった」と語る。関係者それぞれに想いがある中で、簡単に答えが出る問題ではなかった。それでも最終的に選んだのは、“前を向く”という決断だった。

 「誰が正しい、誰が間違っているという話ではなく、これからどうするかが大事だと思っています」

 その言葉通り、チームは新たな環境でのスタートを切った。選手・保護者・指導者が一体となり、「もう一度、野球を純粋に楽しめる場所をつくろう」と動き出したのである。

 しかし、新チーム結成の道のりは決して容易ではない。チーム設立に伴う手続きや環境整備、さらには公式戦出場に関する課題など、乗り越えるべき壁は多かった。現実として、今季の春季大会出場は叶わなかったという。

 それでも前川代表は言葉を濁さない。

 「一番悔しいのは子どもたち。でも、その悔しさも含めて成長につなげていきたい。こういう状況だからこそ、チームの結束は強くなっていると感じています」

 困難な状況の中で芽生えたのは、“当たり前に野球ができること”への感謝だった。

 北広島中央リトルシニアは、まだスタートラインに立ったばかりだ。だが、その一歩には確かな意味がある。過去ではなく未来へ――。子どもたちのために選んだ道を、これからも歩み続けていく。

実践練習にも力を注ぐ北広島中央ナイン
実戦練習に力を注ぐ北広島中央ナイン
打撃練習にも力を入れる北広島中央ナイン
打撃練習にも力を入れる北広島中央ナイン

若き指揮官・巻大地監督が描くチーム像――“楽しさ”と“成長”の両立へ

 新たなスタートを切った北広島中央リトルシニア。その現場を率いるのは、今季就任した26歳の巻大地監督だ。指導者としてはスタートラインに立ったばかりながら、選手たちと真正面から向き合い、着実にチームの土台づくりを進めている。

 巻監督が抱いたチームの第一印象は、「明るく、一人ひとりが伸び伸びとプレーしている」というものだった。ただし、その“伸び伸び”という言葉の裏には、単なる自由さではなく、個々の可能性を引き出せる余地が大きいという前向きな評価が込められている。

 「まだ全員を深く理解できている段階ではないからこそ、まずはコミュニケーションを大切にしたい。一人ひとりに合った関わり方を見つけていきたいと思っています」

 選手理解を第一歩とし、対話を通じて信頼関係を築いていく――。それが巻監督のチーム作りの出発点だ。

 また、現段階で重視していくポイントとして挙げたのが「野球にどう向き合っているか」。単に“楽しんでいるか”だけではなく、主体的に取り組めているか、前向きに挑戦できているかといった姿勢面も含めて見ていく考えだ。

 チームとして築いていきたい土台は、「一人ひとりが持っている力をすべて出し切れる集団」。個々の力を最大限に発揮するためには、技術の向上はもちろん、日々の取り組みや意識の積み重ねが不可欠となる。

 「まずは野球を楽しむことは大前提。その中で、自分から進んで取り組める選手になってほしい」

 “楽しむ”という言葉を軸に据えながらも、その本質は決して甘さではない。主体性を持ち、自ら課題に向き合う姿勢こそが、結果的にチーム力の底上げにつながるという考えだ。

 現時点では、明確なチーム像や目標設定はこれから形にしていく段階にある。しかし、巻監督が目指す方向性ははっきりしている。選手一人ひとりが責任を持ってプレーし、持てる力を発揮できる集団へ――。その積み重ねが、やがて勝利にもつながっていくはずだ。

 就任間もない中での難しさはあるものの、「これからチームが形になっていく過程に関われることにやりがいを感じている」と前を向く。新チームだからこそ味わえる成長の過程。その一歩一歩を大切にしながら、北広島中央リトルシニアは歩みを進めていく。

〇巻 大地(まき だいち)
26歳/大阪府出身
 親の影響で野球を始め、17年間にわたり競技を継続。学童野球は山田スワローズ(3年)でキャリアをスタートし、西山田中学校、上宮高校、関西大学と進学。社会人ではJR北海道硬式野球クラブに所属し、4年間プレーした。
 指導者としては今季がスタートの年となるが、「野球を楽しむこと」を信念に掲げ、新たなチーム作りに挑んでいる。趣味はアウトドア。座右の銘は「耐雪梅花麗(たいせつばいかうるわし)」――厳しい環境を乗り越えた先にこそ、美しさがあるという意味を持つ言葉だ。

チーム戦力の現在地――清水川総監督の視点

 清水川総監督が語る現在のチームは、投打において“層の厚さ”が際立つ。

 投手陣は、佐賀井杏詞(厚別ファイターズ出身/3年)、河嶋幸寛(平岡カウボーイズ出身/3年)、主将の井部太雅(青葉シャークス出身/3年)、清野琉哉(金山ファイターズ出身/3年)の4人が先発として試合をつくれる軸となる。加えて、左腕の中須悠生人(真栄ボーイズ出身/3年)、女子投手・對馬寧峰(中の島ビッグタイガース出身/3年)も控え、状況に応じた起用が可能な“6枚体制”を形成している。

エースの佐賀井投手(北広島中央)
力強い投球を見せていたエース佐賀井投手(北広島中央)

 「誰か一人に頼るのではなく、全員で試合をつくれるのが強み」と清水川総監督。役割が明確な投手陣は、試合展開に応じた柔軟な継投を可能にしている。

 守備の要となる捕手には山本唯月(北野リトルメッツ出身/3年)。本来は内野手としての起用も考えられていたが、チーム事情からマスクを被ることとなった。それでも「声でチームを引っ張ってくれる存在」と信頼は厚い。

 センターラインも安定感が光る。遊撃・清野、二塁・井部、中堅・外山凱士(厚別ファイターズ出身/3年)と、守備の軸がしっかりと構築されており、試合のリズムを生み出す。

打撃練習にも力を注ぐ北広島中央ナイン
バットを振る力も確実についてきている北広島中央ナイン

 一方、攻撃面については「振る力は確実についてきている」と手応えを口にする。冬場から積み重ねてきた打撃練習により、3年生を中心にスイングの強さが増してきた。

 現在は週1回、木曜日に屋内施設を活用し、マシン打撃と多目的スペースを併用した効率的な打ち込みを実施。限られた時間の中でも、工夫を凝らしながら打撃力の底上げを図っている。

 「球数はしっかり確保できている。質も量も意識してやっています」

 さらに攻撃では、外山や橋本を起点とした機動力も武器の一つ。足を絡めた攻撃で相手に揺さぶりをかけ、多彩な得点パターンを描く。

 投打ともに“全員で戦う”意識が浸透しつつある現在地。困難を乗り越えたチームだからこそ、その結束力は確かな強みに変わりつつある。

清水川総監督(北広島中央)
清水川総監督(北広島中央)

主将・井部太雅が語る“前を向く力”

 チームの中心に立つ主将・井部太雅。新たなユニフォームに袖を通し、再出発を切った現在のチームについて、落ち着いた口調でこう語る。

 「いろいろなことはありましたけど、チームの雰囲気は変わらずいい状態でやれていると思います。みんなで前を向いて進めている感じです」

 今季は春季大会への出場が叶わず、悔しさを抱えてのスタートとなった。それでも視線はすでに次へ向いている。

 「春に出られないのは悔しいですけど、その分、夏にかける思いは強くなりました」

 主将としての在り方もまた、このチームらしさを映し出す。

 「自分は強く引っ張るタイプではないので、気づいたことを伝える役割です。声で引っ張る部分は仲間に任せて、役割分担ができています」

 それぞれの個性を活かしながら、一つのチームをつくる――。その姿勢が、今の北広島中央リトルシニアの強みとなっている。

 チームの特徴については「バッティング」と即答。冬場から徹底して振り込んできた成果に手応えを感じている。

 「しっかり振れるようになって、点も自分たちのバッティングで取れる場面が増えてきました」

 目標は明確だ。

 「チームとしては、日本選手権で優勝して全国大会に出ること。自分自身も、攻守でチームを引っ張れる選手になりたいです」

 その言葉の裏には、支えてくれた人たちへの強い感謝がある。

 「ここまで支えてくれた方々に、野球でしか恩返しはできない。だからこそ、夏は意地でも勝ちたいです」

 多くの想いを背負いながらも、井部の視線は前を向いている。チームの再出発を象徴する主将の言葉は、確かな決意に満ちていた。

井部主将(北広島中央)
井部主将(北広島中央)

〇井部 太雅(いべ・たいが)
3年・青葉シャークス出身
右投げ・右打ち
身長165センチ、体重55キロ
主将/二塁手兼投手/打順9番

攻守の要・山本唯月が描く勝利への設計図

 攻守の中心を担うのが、5番・捕手の山本唯月だ。打線では中軸、守備では扇の要としてチームを支える存在である。

 小学1年生で競技をスタート。兄の影響で野球に触れ、幼少期から自然とバットを握ってきた。その経験が、現在の視野の広さと状況判断力につながっている。

 打撃で意識しているのは「率を残し、チャンスを広げること」。単なる長打ではなく、状況に応じた打撃で得点機を演出することに重きを置く。
 「相手がされて嫌なことを考えながらプレーしています」
 その視点は捕手としてのリードにも生かされている。

 現在の投手陣は、先発を任せられる複数の投手に加え、状況に応じて起用できる選手を含めた層の厚さが特徴。それぞれの持ち味を理解し、最適な配球で引き出すことが山本の役割だ。
 「一番はピッチャーの良さを引き出すことを考えています」

 試合を通じて感じている課題にも目を向ける。
 「先頭打者への入り方や初球の精度。球数が多くなる部分は改善したいです」
 冷静な分析が、チーム全体の底上げへとつながっていく。

 攻撃面では、上位打線の機能性に手応えを感じている。
 「1番から5番までがしっかりつながるのが強みです」

 自身が描く打線は、1番・橋本、2番・清野、3番・外山、4番・河嶋、5番・山本という並び。6番以降は試合ごとに変化するものの、どこからでも得点機を生み出せる厚みがある。

 春季大会に出場できない悔しさを抱えながらも、視線はすでにその先へ。
 「本当に一発勝負になるので、全日本に向けて全員で準備しています」

 個人としては「どこに投げても打たれると思われる打者」に。
 チームとしては「日本選手権優勝、そして全国へ」。

 静かに、しかし力強く――。山本唯月はチームを勝利へ導くための準備を着実に進めている。

山本捕手(北広島中央)
守備の要と評された山本捕手(北広島中央)

〇山本 唯月(やまもと・いつき)
3年・北野リトルメッツ出身
右投げ・右打ち
身長170cm/体重70kg
捕手/5番打者

中軸を担う河嶋幸寛の覚悟――“夏にすべてを懸ける”

 投打の柱としてチームを支える河嶋幸寛。年少期から野球に親しみ、小学1年時に旭川の東光サンボーイズで競技をスタート。その後、札幌へ転居し平岡カウボーイズで力を磨いてきた。

 チームが大きな転機を迎えた今シーズン。新たな環境の中で迎えた春は、思い描いた形とはならなかった。それでも河嶋は、静かに前を見据える。
 「春季大会がなくなってショックはありましたけど、その分、夏にかける思いは強くなりました。みんなもそこに向かってやっているので、チームとして一つにまとまっていけると思います」

 一度は落ち込みかけた空気も、いまは前向きな力へと変わりつつある。
 「やるしかない、という気持ちで切り替えられています」

 冬場に積み重ねてきた打撃強化にも、確かな手応えを感じている。
 「速いボールにも押し負けなくなってきました。力負けすることは少なくなってきていると思います」
 振り込みの成果は、確実にチーム全体の底上げにつながっている。

 ただし、課題も明確だ。
 「状況に応じたバッティング。絶対に進めなきゃいけない場面でミスが出ることがあるので、そこは改善していきたいです」
 試合の流れを読む力、1球の重みを理解する力――。その精度を高めることが、次のステージへの鍵となる。

 河嶋のプレースタイルは、いわゆる長打型の4番とは一線を画す。
 「4番ですが、バントもしますし、つなぐことも意識しています。必要な場面で一本出して、次につなげるのが自分の役割です」

 勝利のために最善を選択する“野球脳の高さ”が、彼の真価だ。

 個人としては、投手として試合をつくり勝利に導くこと。
 そしてチームとしての目標は明確だ。
 「全国出場。そのために今ある課題にしっかり向き合っていきたいです」

 言葉の端々から伝わるのは、支えてくれた人たちへの強い感謝の気持ちだった。
 「厳しい状況の中でも、自分たちのためにチームをつくってくれた。その恩は、結果で返すしかないと思っています」

 すべてを背負い、すべてを力に変えて――。
 河嶋幸寛は、この夏にすべてを懸ける。

攻撃の要の河嶋(北広島中央)
攻撃の要の河嶋(北広島中央)

〇河嶋 幸寛(かわしま・ゆきひろ)
3年・平岡カウボーイズ出身(東光サンボーイズ出身)
右投げ・左打ち
身長164cm/体重64kg
投手兼三塁手/中軸打者

チームを支える新たな力――チームドクターの存在

 北広島中央リトルシニアの再出発において、選手たちを支える心強い存在が加わった。3年生・外山凱士の父である外山賢太郎氏が、チームドクターとして本格的に関わることとなった。

 外山氏は脳神経外科を専門とし、これまでスポーツ医療の分野にも携わってきた。整形外科医とのつながりをきっかけに、サッカー分野での脳震盪対応やスポーツ現場の医療サポートに関わり、研究会や現場経験を積み重ねてきた実績を持つ。現在はスポーツドクターとしての認定も受けており、その知見は多岐にわたる。

 「これまでは他競技で関わることが多かったのですが、子どもが野球をやっていることもあり、このタイミングでチームにしっかり関わっていこうと考えました」

 すでに昨年から練習や試合に足を運び、現場でのサポートも行ってきた外山氏。今年からはより正式な形でチームに帯同し、選手たちのコンディショニングやケガ予防、さらには緊急時の対応まで幅広く支えていく。

 近年、野球界においても熱中症対策や脳震盪への意識は高まっており、専門的な知識を持つドクターの存在は欠かせないものとなっている。実際に試合中の体調不良なども経験してきたチームにとって、外山氏の存在は大きな安心材料だ。

 「ケガを防ぐことはもちろん、安心してプレーできる環境づくりをサポートしていきたい」

 困難な状況の中で歩み出したチームにとって、“守り”の部分を支える存在の加入は大きな意味を持つ。選手・指導者・保護者、そして医療の視点が一体となり、北広島中央リトルシニアの新たな土台が着実に築かれている。

外山チームドクター(北広島中央)
外山チームドクター(北広島中央)
北広島中央リトルシニア
北広島中央リトルシニア

協力:北広島中央リトルシニア

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