痛みを我慢する野球から、身体と向き合う野球へ

痛みを我慢する野球から、身体と向き合う野球へ

繰り返す痛みを乗り越えるため、投球フォームを一から見直す 仲間と家族の支えを力に、再びマウンドへ

プロフィール
野中祥吾(のなか・しょうご)
ニュースターズ・6年、右投げ・右打ち
主なポジション:投手、捕手、外野手ほか
家族構成:両親、兄・妹の5人
野球を始めたきっかけ:小学校に入る前の年長の頃、兄の練習を見学した際に、兄の友人の弟と親しくなり、一緒に入団
好きなポジション:投手
目標:球速をさらに伸ばすこと、チームで大会を勝ち上がること、将来の甲子園出場

野中祥吾(ニュースターズ)
野中祥吾君

痛みが消えれば、また投げた

 最初に肘の痛みを感じたのは、昨年の冬季練習だった。

 キャッチボールの最中に違和感を覚えたものの、その時は深く考えずに練習を続けた。ところが時間がたつにつれ、痛みは徐々に強くなっていった。

 「最初は大丈夫だと思っていました。でも、だんだん痛くなってきました」

 痛みを感じてからも、しばらくは練習を続けた。休めば一時的に症状は落ち着く。しかし、キャッチボールを再開すると、また痛みが戻ってきた。

 その後、たきうち整形外科スポーツクリニックで治療を受け、症状は改善。一度は通常のプレーに復帰した。

 だが、今シーズンに入り、肘は再び悲鳴を上げた。

 投手の人数が限られる中、試合で中継ぎを務めた後、別の試合では多くの球数を投げた。登板後に肘が痛くなったが、冷やして数日間休むと痛みは消えた。

 「5日ぐらいたつと痛くなくなったので、大丈夫かなと思いました」

 痛みがなくなれば、また投げる。そして再び痛くなる。

 そのサイクルを何度も繰り返した。本人によると、今年の5月ごろから7月にかけて、肘の状態が良くなったり悪くなったりする状況が続いたという。

 野球ができなくなる恐怖よりも、当時は「休めばまた投げられる」という思いの方が強かった。チームに投手が少なく、自分がマウンドに立たなければならないという責任感もあった。

 しかし、痛みを抱えたまま投げ続けても、根本的な解決にはならない。

 以前の治療で症状が改善した経験もあり、7月下旬、再びたきうち整形外科スポーツクリニックを訪れることを決めた。

フォームを直し、身体の使い方を知る

 今回のリハビリで重視されたのは、痛みを抑えることだけではない。

 投球フォームを撮影し、身体の使い方を確認。肘に負担が集中しないよう、一つひとつ動きを見直していった。

 治療開始当初は、悪化を防ぐために肘へテーピングを施し、その状態で練習や試合に臨んだ。同時に、自宅でも取り組めるトレーニングを教わった。

 朝のランニング前には、ゴムチューブを使った肘周辺のトレーニングやシャドーピッチングを実施。クリニックで教わった動きを、日々の習慣に加えた。

 「言われたトレーニングを家でもやっています。投げ方も少しずつ良くなってきました」

 治療開始から約2週間。この日は、肘を守っていたテーピングを外すことができた。

 投球フォームも以前より身体になじみ、状態が上向いている実感がある。

 すでに試合では投手として登板しているが、焦りは禁物だ。痛みが消えたから元に戻ったのではなく、再発を防ぐための身体の使い方を身につけている途中にある。

 今回のケガを通じて学んだのは、ただ練習量を増やせばうまくなるわけではないということだった。

 小学4年生のころ、同級生とのレギュラー争いに敗れた経験がある。当時は自分の方が上だという思いもあったが、その悔しさをきっかけに、仲間とほぼ毎日のように自主練習へ取り組んだ。

 その際、仲間の父親から掛けられた言葉が今も心に残る。

 「何分練習するかを決めるだけではなく、今日のテーマを決めてやりなさい」

 ただ投げる。ただ走る。ただ数をこなす。

 それではなく、何を良くしたいのかを考え、目的を持って練習する。ケガのリハビリにも、その考え方はつながっている。

仲間に支えられ、もう一度強くなる

 ケガと向き合う時間は、一人だけの戦いではなかった。

 父はチームのコーチを務め、練習やキャッチボールにも付き合ってくれた。母をはじめとする家族も、治療や野球への挑戦を支え続けている。

 チーム内で特に心強い存在となったのが、キャプテンの櫻井達大君だった。

 櫻井君自身も肘を痛めた経験があり、練習中には野中君の体の状態を気に掛け、自らの経験をもとに助言を送ってくれたという。責任感が強く、チームの中心として周囲を引っ張る存在でもある。

 「一番気に掛けてくれました。櫻井君もケガをしたことがあるので、いろいろアドバイスをしてくれました」

 仲間からの支えを受ける中で、野中君の考え方にも変化が表れた。

 以前は、うまくいかないと弱気になることもあった。今は、できないことがあっても「また練習すればいい」と考えられるようになったという。

 一番好きなポジションは投手だ。

 打者を抑えた時の喜びはもちろん、打たれた後に課題を見つけ、練習によって克服していく過程にも面白さを感じている。

 打撃では4割から5割ほどを記録する時期もあり、足の速さも武器の一つ。投手、捕手、外野を中心に、チーム事情によってはさまざまな守備位置を任される。

 今後の個人的な目標は、球速をさらに伸ばすことだ。

 春には85キロ前後だった球速が、トレーニングとフォーム改善によって90キロ台前半まで上がってきたという。シーズン終了までに、さらに速いボールを投げることを目指している。

 チームとしては、8月末に控える大会や札幌市内の大会で勝ち上がることが目標だ。次戦では先発を任される可能性もあり、無失点に抑えたいという思いを口にした。

 将来の夢は、甲子園出場。

 憧れの選手は、横浜ベイスターズなどで活躍した多村仁志さんだ。

 「ケガを経験しながらも結果を残していて、バッティングフォームがきれいです。バットの軌道もすごくきれいだと思います」

 自身も投手だけにこだわらず、打撃や走塁、守備でも力を発揮できる選手を目指している。

 ケガを経験した選手に伝えたいことを尋ねると、少し考えてから、こう答えた。

 「プライドを捨てて、周りの人の話をしっかり聞くこと。言われたトレーニングを、きちんとやることです」

 痛くても投げられる。

 チームのために我慢できる。

 以前は、それが強さだと思っていたのかもしれない。

 しかし、本当に必要なのは、痛みを隠して投げ続けることではない。自分の身体の状態を認め、専門家や家族、仲間の言葉を受け入れることだった。

 支えてくれた人たちへ、今は感謝の気持ちがある。

 その感謝を伝える一番の方法は、元気な姿でグラウンドに立つことだ。

 肘を守っていたテーピングは外れた。

 だが、ケガとの向き合いが終わったわけではない。正しいフォームを身につけ、自分の身体を理解しながら投げ続ける。その先に、目標とする大会、球速、そして甲子園への道がある。

 痛みを我慢して投げていた少年は今、自分の身体と向き合いながら、再びマウンドで輝きを放とうとしている。

札幌都心部で評判の「たきうち整形外科スポーツクリニック

たきうち整形外科スポーツクリニックは札幌都心部(札幌市中央区南1西6、北辰ビル2階)に位置する利便性と、専門性の高い診断、治療を行うスポーツクリニックとして全道的に名が知られている評判の整形外科病院。

瀧内院長は、プロ野球帯同ドクターや高校野球全道大会の担当医師などを務める、スポーツ障害治療の第一人者で活躍している。

また、リハビリ担当の理学療法士らも豊富な知識と経験を持ち、迅速かつ確実な治療で患者の日常生活への早期復帰をサポートしている。

当サイト・ストライクで連載した瀧内院長の「ドクターのフォームチェック」は野球少年・少女ら選手・監督やコーチにも人気となった。

♦問い合わせ♦

たきうち整形外科スポーツクリニックへの問い合わせはメール、info@takispo.jp

011-241-8405へ。携帯電話から受付対応する「シマフクロウ・コール」が便利。

☆受付・診療時間☆

昼の部=午前11時~午後3時(水曜日除く)

※第1、3土曜日診療は昼の部のみとなります。

夜の部=午後4時30分~午後8時(水曜日は夜のみ診療)

休診日=日曜・祝日、第2、4、5土曜日

取材協力:たきうち整形外科スポーツクリニック

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