2試合27得点、ランニング本塁打5本の強打爆発 根差部、大宮を連破し準決勝で強豪・オール江戸川へ
千葉県千葉市で行われている「第24回千葉市長杯争奪学童野球選手権大会」で、北海道代表として初出場の上磯有川野球スポーツ少年団が29日、全国の強豪を相手に鮮烈な2連勝を飾り、ベスト4進出を決めた。1回戦では根差部ベースナイン(沖縄県豊見城市)に13-5の五回コールド勝ち。続く2回戦でも大宮クラブ(埼玉県さいたま市)を14-7で退けた。2試合で計27得点、ランニング本塁打は実に5本。全国初挑戦にも臆することなく、自慢の強打と積極的な走塁で主導権を握った。その根底にあるのは、佐藤学監督が掲げる「結果の責任は指導者にある」という“有川野球”。失敗を恐れず振り抜く選手たちが、北海道から乗り込んだ全国舞台で旋風を巻き起こしている。30日の準決勝では、決勝進出を懸けて強豪・オール江戸川(東京都江戸川区)に挑む。
イニングスコア
◆1回戦(8月29日、中田スポーツセンター野球場)
上磯有川野球スポーツ少年団(北海道)13-5根差部ベースナイン(沖縄県豊見城市)
上磯有川野球スポーツ少年団
001⑩2=13
01004=5
根差部ベースナイン
(五回コールドゲーム)
(上)奈良、神、沓澤、神ー三浦
(根)金城千、仲村、金城愛ー金城愛、山城
▽本塁打:三浦(RH)、青山(RH)、奈良(RH)(上)
▽三塁打:青山、三浦、古谷(上)、山城2(根)
▽二塁打:佐藤(上)、狩俣(根)
◆2回戦(8月29日、中田スポーツセンター野球場)
上磯有川野球スポーツ少年団(北海道)14-7大宮クラブ(埼玉県さいたま市)
上磯有川野球スポーツ少年団
31046=14
01015=7
大宮クラブ
(上)神、沓澤ー三浦
(大)豊田、青柳、皆川―今井
▽本塁打:三浦RH、佐藤RH(上)、豊田(大)
▽三塁打:古谷(上)、水本(大)
全国初陣――先制許すも、佐藤の一打ですぐ追いつく
北海道から千葉へ乗り込んだ上磯有川にとって、すべてが初めてとなる全国舞台。
1回戦の相手は根差部ベースナイン。試合は序盤、互いに譲らない展開となった。
一回は両チーム無得点。二回裏、根差部に1点を先制される。
それでも上磯有川に慌てた様子はなかった。
三回表、3番・佐藤銀志(6年)がセンターオーバーのタイムリー二塁打。主将の一振りですぐさま1-1の同点に追いついた。
全国大会初戦という独特の緊張感。その中でも、先に点を奪われたことで下を向かなかった。
佐藤監督は、試合後にこう振り返った。
「ホッとしています。選手には全国の舞台で有川野球がどこまで通用するか証明しようと話しました」
勝つか、負けるか。それだけではない。
自分たちが北海道で積み重ねてきた野球が、全国を相手にどこまで通じるのか――。
その答えを示すような猛攻が、次のイニングに待っていた。


青山が火をつけた四回――打者13人、9安打10得点

1-1で迎えた四回表だった。
均衡を破ったのは6番・青山一平(6年)。先頭打者として放った一打から一塁、二塁、三塁、そして本塁へ。最後まで走り切り、ランニング本塁打で勝ち越した。
この一打で打線に火がついた。
上磯有川の攻撃は止まらない。
4番・三浦遙斗(6年)は一死二、三塁からセンターを越すランニング3点本塁打。さらに8番・奈良陽斗(6年)も左中間を破る2点ランニング本塁打を放った。

この回だけで打者13人。2四球を絡めて9安打を集中し、一挙10得点。
1-1だったスコアは、瞬く間に11-1へと変わった。
単打を重ねるだけではない。外野の間を破れば迷わず次の塁を狙う。打球と走塁を組み合わせ、一気に相手をのみ込んだ。
五回にも攻撃の手を緩めない。
4番・三浦遙斗(6年)、5番・古谷賢志(5年)の連続三塁打でさらに2点を追加し、13-1。最終回に根差部の反撃を受けたものの、先発・奈良から神朝陽(5年)、沓澤結月(5年)、再び神へとつなぐ継投で13-5。五回コールドで全国初勝利をつかんだ。
「10点取られるし、取らないと負ける」――全国を見据えてきた準備
13得点という数字は、偶然生まれたものではなかった。
佐藤監督はこれまで、レベルが上がれば簡単な試合にはならないと選手たちに伝え続けてきた。
「今までの経験上、ハイレベルになると選手には10点ゲームになるよ、10点取られるし、取らないと負けるよと言い聞かせてきたので、気持ちが切れなかったのが要因かと思います」
点を取られても終わりではない。
取られたなら、取り返せばいい。
大量リードしても、もう一点を奪いにいく。
初めて立つ全国の舞台でも、その考え方が選手たちの迷いを消していた。
そして数時間後、その言葉をもう一度証明する試合が始まった。

勢いでは終わらない――2回戦も初回から3得点
ダブルヘッダーとなった2回戦。相手は大宮クラブ。
初戦で13点を奪った上磯有川のバットは、会場が変わっても冷えなかった。

初回から3点を先制。二回にも1点を加え、4-1とリードして迎えた四回、再び打線がつながった。
先頭の9番・木村純大(6年)がレフト前安打で出塁すると、1番・能登遙茉(5年)がレフトオーバーのタイムリー。まず1点を加える。
さらに走者をため、5番・古谷がレフトを越す2点タイムリー三塁打。続く青山もセンター前へタイムリーを運んだ。
下位打線から上位へ、そして中軸へ。
切れ目なく打線がつながり、この回4得点。
8-1とした。
結果的に、この8点目が大宮クラブを振り切る決勝点となった。
佐藤が走った――五回6得点、主将のランニング3ラン
しかし、上磯有川は8点で満足しなかった。
五回表、再び攻撃のギアを上げる。
1番・能登がライト前へ2点タイムリー。さらに3番・佐藤がライト方向へ大きな打球を放った。
佐藤は一気にダイヤモンドを駆け抜け、3点ランニング本塁打。
初戦では同点二塁打を放った主将が、今度は試合を大きく引き寄せる一打を見せた。

この回、一挙6得点。
スコアは14-2まで広がった。
その裏、大宮クラブも意地を見せ5点を奪ったが、先発・神から沓澤へつないで14-7。最後まで攻め続けた上磯有川が、全国初出場で2連勝を飾った。
1回戦13得点、2回戦14得点。
計27得点。
しかも1回戦では青山、三浦、奈良の3本、2回戦では三浦、佐藤の2本と、2試合で実に5本のランニング本塁打を記録した。
長打力と積極的な走塁。それに打線のつながりが重なり、全国の強豪を次々とのみ込んだ。
ミスの後に飛び交った「想定内」――佐藤監督が感じた成長
ただ、佐藤監督が2連勝以上に目を向けたのは、選手たちの内面だった。
全国大会。しかもダブルヘッダー。
当然、ミスも出る。
それでも選手たちは互いを責めるのではなく、ある言葉を掛け合っていたという。
「エラーもありましたが、選手が『想定内』と声を掛け合い、前向きに考え出した事が成長したなぁと感じます」
失敗を引きずらず、次のプレーへ切り替える。
初めて経験する全国の舞台で、それを選手同士でできるようになったことに指揮官は成長を感じていた。
だからこそ、打線も萎縮しない。

「結果の責任は指導者にある」――強打を支える“有川野球”
2試合27得点。
全国大会でこれだけ打線が振れている理由を問われた佐藤監督は、「有川野球」の根幹に触れた。
「打撃にわかりやすいルールを作り、選手が忠実に答えてくれます。結果の責任は指導者にある!と選手には責任を問わないのが有川野球の真髄で、いい方に結果が出てるだけです」
選手には、何を狙い、どう打つのかを分かりやすく示す。
その上で、結果だけを見て選手を責めない。
凡打を恐れて当てにいくのではなく、決められたことを信じて振り切る。
1回戦の10得点イニングも、2回戦の四回4得点、五回6得点も、その積み重ねの先にあった。
強打の裏側には、選手が思い切ってプレーできる土台がある。
全国初挑戦の舞台で「有川野球」が結果として表れ始めている。

次は「オール江戸川」――全国初挑戦の快進撃、いよいよ準決勝へ
全国初出場でベスト4。
次に待つのは、東京都江戸川区の選抜チーム・オール江戸川だ。
今夏の第21回東京都学童選抜野球大会を制して千葉入りした強豪で、千葉市長杯でも過去に2016、17年大会を連覇。2019年には準優勝、2024年には3位、さらに2025年大会では再び頂点に立つなど、この大会で長年にわたって上位進出を重ねてきた実績を持つ。
まさに優勝候補の一角。
だが、上磯有川もここまで全国の強豪を相手に、自分たちの野球を貫いてきた。
1試合目は1点を追う展開から13得点。
2試合目は初回から主導権を握って14得点。
2試合で27得点、ランニング本塁打5本。
そして何より、ミスが出ても「想定内」と声を掛け合える選手たちがいる。
「全国の舞台で有川野球がどこまで通用するか証明しよう」
初戦を前に掲げた、そのテーマ。
全国初挑戦の快進撃は、まだ終わっていない。
30日、決勝進出を懸けてオール江戸川に挑む。
協力:上磯有川野球スポーツ少年団
