「投げられることは当たり前じゃない」――左腕・佐々木啓太、肘の故障を乗り越え再びマウンドへ

「投げられることは当たり前じゃない」――左腕・佐々木啓太、肘の故障を乗り越え再びマウンドへ

痛みを抱えながら投げ続けた夏。手術の可能性に驚き、それでも諦めなかった野球への思い。札幌栄町中2年の左腕が目指す復活への道

佐々木啓太投手(札幌栄町中・2年)
佐々木啓太投手(札幌栄町中・2年)

プロフィール
佐々木 啓太(ささき・けいた)
札幌栄町中学校野球部2年。ポジションは投手。
札幌栄町中学校―栄北ナインスターズ出身。
左投げ、左打ち 171センチ、63キロ
家族は両親と兄の4人。
 野球との出会いは小学3年の冬。3歳年上の兄が野球をする姿に憧れ、栄北ナインスターズで競技を始める。小学4年から投手を務め、6年時にはエースとしてチームを支えた。小学5年秋に左肘を痛め、剥離骨折を経験。中学進学後は札幌栄町中学校野球部でプレーし、2年夏に左肘内側側副靭帯損傷と診断された。現在は札幌市中央区のたきうち整形外科スポーツクリニックで、手術を回避しながら年内の復帰を目指してリハビリに励む。目標は中学3年時の中体連で全道大会に出場し、自らの投球で勝利に貢献すること。高校でも投手として活躍することを目指す。

いつもとは違う張り――それでも投げ続けた夏

異変を感じたのは、今年8月下旬の大会だった。

先発投手としてマウンドに上がった佐々木は、試合中から左肘に普段とは違う感覚を覚えていた。

試合後には、いつもの登板後とは異なる張りが残った。しかし、当初は疲労によるものだと考え、そのまま過ごした。

実は、夏休み前にも肘に違和感があり、一度、たきうち整形外科スポーツクリニックを受診していた。レントゲン検査では明らかな異常は確認されず、痛みが強くなればMRI検査を行うという説明を受けていた。

その後、迎えた大会。

試合を重ねるにつれ、違和感は次第に痛みへと変わっていった。

白石中学校との試合では、ブルペンでの投球練習に入る前、キャッチボールの段階から痛みを感じていたという。

それでも、佐々木はマウンドに立ち続けた。

「勝ちたい」という気持ちが先に立ち、自分の肘の状態を指導者や家族に十分伝えることができなかった。

大会が終わっても、その後の新人戦でも、痛みを抱えながらプレーを続けた。

球速が明らかに落ちたわけではなかった。むしろ、自身の感覚では球速も調子も上向いていたという。

だからこそ、深刻な故障だとは思い切れなかったのかもしれない。

しかし、身体は確実に悲鳴を上げていた。

MRI検査で判明した靱帯損傷 手術の可能性に「びっくりした」

9月中旬から下旬にかけて、佐々木は再び同クリニックを受診した。

MRI検査の結果、診断されたのは左肘の内側側副靱帯損傷だった。

野球肘の診断も受け、損傷の状態によっては手術が必要になる可能性も説明された。

それまで、多少の張りや痛みはあっても、投げることができていた。

そんな佐々木にとって、診断結果は予想を超えるものだった。

「正直、びっくりした気持ちが大きかったです」

短い言葉の中に、当時の戸惑いがにじむ。

小学5年生の秋にも、試合中に肘の内側へ突然痛みが走り、同クリニックで剥離骨折と診断された経験がある。

その後は回復し、小学6年生から中学1年生、そして中学2年生の春までは大きな痛みもなくプレーできていた。

再び訪れた肘の故障。

しかも、今回は手術という選択肢まで示された。

それでも、佐々木は野球を諦めなかった。

医療スタッフと相談しながら、まずは手術を行わずに回復を目指す保存療法を選択。9月下旬ごろから本格的にリハビリを再開した。

佐々木啓太投手(札幌栄町中・2年)
佐々木啓太投手(札幌栄町中・2年)

肘だけではない フォーム改善と下半身強化で復帰を目指す

現在、佐々木が取り組んでいるのは、肘の周囲の筋力強化だけではない。

肘に過度な負担をかけない投球フォームの習得、下半身のトレーニング、身体の柔軟性を高めるストレッチなど、投球動作を支える身体全体の改善に取り組んでいる。

「肘の悪いところに負担がかからないように、周りの筋肉をつけて、しっかりといい投げ方ができるようにフォームを修正しています。あとは下半身のトレーニングもやっています」

一時は日常生活でも痛みがあったが、現在は徐々に軽減しているという。

投球についても、医療スタッフの指導のもと、近い距離から段階的に再開。約10メートルの壁当てでは、力を抑えた投球に取り組んでいる。

目標は年内の復帰。

ただし、焦って再び肘を痛めてしまっては意味がない。

今は目の前の課題を一つずつ克服し、再び思い切り腕を振れる日を待っている。

4週間ぶりに握ったボール 小さな一歩が大きな喜びに

故障によって投げられない時間は、佐々木にとって野球との向き合い方を見つめ直す機会にもなった。

特に印象に残っているのが、約4週間ぶりにキャッチボールを再開した瞬間だ。

短い距離で、力を抑えながらの投球。

以前なら何気なく繰り返していた動作だった。

しかし、その一球が何よりもうれしかった。

「久しぶりにボールを投げたとき、リハビリをやっていて良かったなと思いました」

投げられなかった時間があったからこそ感じられた喜び。

そして、故障を経験したことで気づいたことがある。

「改めて、ボールを投げることは当たり前じゃないって気づきました。普段からストレッチをやらないこともあったので、ちゃんとやっておけば良かったと思います」

以前は十分に意識していなかった身体のケア。

柔軟性のある部分もあれば、硬さの残る部分もある。今では自分自身の身体の特徴にも目を向けるようになった。

投げるために必要なのは、肩や肘の強さだけではない。

身体を整え、正しく使い、日々のケアを積み重ねること。

その大切さを、佐々木は故障を通して学んでいる。

兄の背中を追って始めた野球 忘れられない学童時代の記憶

佐々木が野球を始めたのは、小学3年生の12月ごろ。

きっかけは、3歳年上の兄だった。

「お兄ちゃんが野球をやっている姿を見て、面白そうだなと思って始めました」

地元の栄北ナインスターズに入団。

小学4年生の春ごろから投手を任されるようになったが、当時は球速にも制球力にも特別な自信があったわけではない。

それでも、野球が楽しかった。

小学5年生では、マクドナルド・トーナメントの札幌支部予選で忘れられない一打も放っている。

対戦相手は強豪16丁目フリッパーズ。

1点を追う場面、無死二塁で打席が回ってきた。

そこで佐々木が放ったのは、同点に追いつく二塁打。

さらに次打者の遊撃ゴロの間に本塁へ生還し、一時逆転に成功した。

試合は2-6で敗れたものの、強豪相手に放った一打は大きな自信となった。

「そのときは、ちょっと自信になりました」

小学6年生になると、チームのエースとしてマウンドを任され、打順も一番を担った。

思い出に残っている試合の一つが、小学6年生で出場した高円宮賜杯全日本学童札幌支部予選での東ハリケーンとの一戦だ。

途中からマウンドに上がり、四球などでピンチを招きながらも、最後は踏ん張って相手打線を抑えた。

投げて、打って、走る。

野球の楽しさを全身で感じていた少年は、中学校でも野球部に入り、競技を続ける道を選んだ。

120キロ級の直球を捉えた一打 打者としても光る存在感

左投げ左打ち、身長171センチ、体重63キロ。

投手としての復帰を目指す佐々木だが、打撃にも強い思い入れがある。

本人に投手と打者のどちらが好きか尋ねると、返ってきたのは「バッターの方が楽しいです」という答えだった。

その言葉を裏付けるような打撃を見せたのが、今年のチャレンジカップだ。

対戦したのは、新人戦でベスト4まで勝ち上がった実力校。

相手先発は、佐々木の話によると120キロ前後の直球を投げる投手だった。

その速球を捉え、センター方向へ鋭い打球を放った。

学校のグラウンドに設置された高いネットを越える一打もあり、打者としての手応えをつかんだ。

試合には敗れたものの、投球以外にも自分の可能性を感じられたことは、今後につながる経験となった。

故障によって投手としての時間が制限される中でも、野球への情熱は失われていない。

佐々木啓太投手(札幌栄町中・2年)
佐々木啓太投手(札幌栄町中・2年)

顧問の先生が届けてくれたストレッチポール 感じた周囲の支え

リハビリの日々を支えているのは、医療スタッフだけではない。

学校の顧問の先生も、佐々木の身体を気遣い、肘や肩のケアに役立てられるようストレッチポールを用意してくれた。

その心遣いが、佐々木にはうれしかった。

自分の回復を気にかけ、支えてくれる人がいる。

何気ない行動の中に感じた温かさが、前を向く力になっている。

また、たきうち整形外科スポーツクリニックのスタッフについても、感謝の言葉を口にした。

「スタッフの人は本当に明るくて、挨拶も笑顔でしてくれるので、すごく気持ちがいいです」

故障を抱える選手にとって、リハビリは身体だけでなく、気持ちの面でも根気が求められる。

そんな時間の中で、明るく声をかけてくれるスタッフや、学校で見守ってくれる先生の存在は大きい。

佐々木は今、周囲の支えを受けながら、少しずつ復帰への階段を上っている。

「自分が投げて勝ちたい」――その一球のために

佐々木には、明確な目標がある。

中学3年生で迎える最後の中体連。

チームで全道大会への出場を果たし、自らの投球で勝利に貢献することだ。

「3年生では中体連で全道大会に出て、僕が投げて勝つことが一つの目標です」

さらに、その先の高校野球も見据えている。

「高校に上がってもピッチャーをやって、僕が投げて勝つ試合を作りたいです」

進学先はまだ決まっていない。

それでも、将来もマウンドに立ちたいという思いに迷いはない。

かつては、投げることが当たり前だった。

試合になればマウンドへ上がり、腕を振り、打者と勝負する。

しかし今、その当たり前がどれほど大切なものだったのかを知った。

故障によって立ち止まった時間は、決して無駄ではない。

身体のケアを学び、フォームを見直し、周囲の支えに気づいた。

そして何より、もう一度投げたいという気持ちを確かめることができた。

目指すのは、再び仲間とともに戦うマウンド。

左腕・佐々木啓太は、焦らず、しかし確かな決意を胸に、その日へ向かっている。

札幌都心部で評判の「たきうち整形外科スポーツクリニック

「たきうち整形外科スポーツクリニック」は札幌都心部(札幌市中央区南1西6、北辰ビル2階)に位置する利便性と、専門性の高い診断、治療を行うスポーツクリニックとして全道的に名が知られている評判の整形外科病院。

瀧内院長は、プロ野球帯同ドクターや高校野球全道大会の担当医師などを務める、スポーツ障害治療の第一人者で活躍している。

また、リハビリ担当の理学療法士らも豊富な知識と経験を持ち、迅速かつ確実な治療で患者の日常生活への早期復帰をサポートしている。

当サイト・ストライクで連載した瀧内院長の「ドクターのフォームチェック」は野球少年・少女ら選手・監督やコーチにも人気となった。

♦問い合わせ♦

たきうち整形外科スポーツクリニックへの問い合わせはメール、info@takispo.jp

011-241-8405へ。携帯電話から受付対応する「シマフクロウ・コール」が便利。

☆受付・診療時間☆

昼の部=午前11時~午後3時(水曜日除く)

※第1、3土曜日診療は昼の部のみとなります。

夜の部=午後4時30分~午後8時(水曜日は夜のみ診療)

休診日=日曜・祝日、第2、4、5土曜日

取材協力:たきうち整形外科スポーツクリニック

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