「微差が大差」全国で知った現在地 東川大雪、雨を越えてつかんだ1勝と「まだまだやれる!」

「微差が大差」全国で知った現在地 東川大雪、雨を越えてつかんだ1勝と「まだまだやれる!」

2日間の雨天中止を越え、粒江ビックスターに4-1 続く東京・いずみスワローズ戦で味わった全国の強さ 小林監督「自分の強みも弱みも知ることができた」

イニングスコア

▽第一試合

東川大雪少年野球クラブ(北海道)4-1粒江ビックスター(岡山県)

東川大雪少年野球クラブ
21001=4
10000=1
粒江ビックスター
(五回時間切れ)
(東)広田、古村、広田、古村ー中川
(粒)永井、竹田ー石田

▽第二試合

東川大雪少年野球クラブ(北海道)2-13いずみスワローズ(東京都)

いずみスワローズ
4207=13
0011=2
東川大雪少年野球クラブ
(四回コールドゲーム)
(い)鬼光、山形、中松ー小堀
(東)森山、上島、古村、広田ー中川
▽三塁打:山田、山形(い)
▽二塁打:小寺、中松、鬼光(い)

写真左から東川大雪、いずみ
写真左から東川大雪、いずみ

待たされた2日間――ようやく立った全国の舞台

 20日、雨。

 21日も、雨。

 北海道から全国大会へ乗り込んだ東川大雪だったが、待っていたのは予定通りの開幕ではなかった。

 悪天候による2日間の中止。大会方式も変更され、選手たちは試合ができないまま現地で時間を過ごした。

 いつ試合ができるのか。

 どのような形で大会が再開されるのか。

 小学生にとって、気持ちと体のコンディションを保つのは決して簡単ではなかった。

 小林弘明監督にとっても、これまで経験したことのない全国大会だった。

「これまでの野球人生の中で、ホテルに1日缶詰状態で準備を進め、選手たちにとっては心も体も準備も難しい状況だったと思います。そうした中、先発投手の広田と捕手の中川は、よくコミュニケーションを取りチームの士気をあげてくれました。初戦突破を目標にしていたので、勝てて本当に嬉しいです」

 そして22日。

 ようやく、その時が来た。

 相手は岡山県代表・粒江ビックスター。

 待ち続けた東川大雪の全国大会が始まった。

(写真・東川大雪少年野球クラブ提供)
(写真・東川大雪少年野球クラブ提供)

先制した東川大雪 広田の一打、そして4年生・佐々木湊

 初回から東川大雪が動いた。

 一死から2番・中川莉杜(5年)がライト前へ運ぶと、すかさず二盗。全国の舞台でも積極的に次の塁を狙い、得点圏へ進んだ。

 3番・佐々木湊(4年)が四球を選び、打席には4番・広田英汰(6年)。

 その広田がライト前へタイムリーを放った。

 1-0。

 全国大会での最初の得点を、自分たちから奪いにいった。

 さらに6番・早川仁太(6年)の内野ゴロが相手のミスを誘い、もう1点。

 初回に奪った2点目が、結果として決勝点となった。

 初回裏に1点を返されたが、東川大雪は流れを渡さない。

 二回。

 再びチャンスで打席に立ったのは4年生の佐々木だった。

 ライト前へのタイムリー。

 3-1とリードを広げる。

 そして五回にも佐々木がタイムリーを放ち、4-1。

 全国大会の緊張感を感じさせない4年生のバットが、東川大雪に大きな得点をもたらした。

「良いミスが出ているな」

 4-1。

 スコアだけを見れば、序盤からリードを奪って逃げ切った快勝にも映る。

 だが、小林監督が見ていたものは少し違った。

「東川大雪の野球ができたかというと、決してそうではありませんでした。バント失敗やツーストライクアプローチの失敗、走塁ミスもありました。しかし、そのほとんどのミスが、先の塁を狙う積極的なミスなどでしたので、良いミスが出ているなといった感じでした」

 失敗はあった。

 それでも、失敗を恐れて動けなかったわけではない。

 先へ。

 もう一つ先の塁へ。

 全国の舞台でも自分たちから仕掛けようとした結果のミスだった。

 だから小林監督は、それを「良いミス」と表現した。

 投げては広田、古村健(6年)、広田、古村とつなぎ、粒江ビックスター打線を初回の1点だけに抑えた。

 4-1。

 東川大雪が、難しい全国初戦をものにした。

(写真・東川大雪少年野球クラブ提供)
(写真・東川大雪少年野球クラブ提供)

中川が「バチバチ刺した」 4年生、5年生を支えた6年生

 初戦を振り返った小林監督が真っ先に名前を挙げたのは、5年生と4年生だった。

「特に活躍した選手は5年生キャッチャーの中川莉杜(りと)と4年生野手の佐々木湊(みなと)です。中川は相手の盗塁をバチバチ刺してくれました。

佐々木湊は、ここぞの場面でヒットを打ちチームに得点をもたらしてくれたのです。

2人の若いメンバーが伸び伸びとプレーすることができたのは6年生の優しさや気配りのおかげです」

 中川は捕手として相手の足を封じ、攻撃では初回のチャンスメーク。

 佐々木は勝負どころでタイムリーを重ねた。

 しかし、その活躍を若い2人だけのものにはしない。

 小林監督が見ていたのは、その後ろにいる6年生の存在だった。

 4年生、5年生が全国の舞台で伸び伸びとプレーできる。

 そこには最上級生の「優しさや気配り」があった。

 東川大雪がチームでつかんだ、全国1勝だった。

パーフェクトノック成功――高揚感のまま迎えた第2戦

 初戦を勝利した東川大雪は、次の試合との合間に行われた年中夢球の「パーフェクトノック」に挑んだ。

 そして、見事にクリア。

 全国大会で初戦を勝ち、さらにパーフェクトノックも成功した。

 チームの空気は一気に高まった。

 そのまま迎えたダブルヘッダー第2戦。

 相手は東京都代表・いずみスワローズだった。

 だが、野球はわずかな狂いで表情を変える。

 初回。

 東川大雪は打者8人に2四球、3安打などで4点を失った。

 二回にも2失点。

 0-6。

 小林監督は、試合の入りをこう見ていた。

「試合と試合の合間に行われた年中夢球さん(本間さん)のパーフェクトノックをクリアして、気持ちが舞い上がっていたのかもしれません。いつもは低めにコントロールされた投球が若干浮いてしまったところを相手に捉えられてしまいました。相手のいすみスワローズさんはとても素晴らしい打線でした」

 いつもなら低めに集まるボールが、少しだけ高い。

 少しだけ甘い。

 その「少し」を、全国の強打者は逃してくれなかった。

「微差が大差」――全国で突きつけられたもの

 三回、東川大雪も反撃する。

 0-6から2四死球などで走者を出すと、バッテリーミスを突いて1点。

 大きくリードされても、まだ終わってはいない。

 しかし四回、いずみスワローズ打線が一気に襲いかかった。

 打者11人。

 5安打に守備のミスも重なり、一挙7失点。

 森山景太(5年)、上島青空(6年)、古村健(6年)、広田英汰(6年)と投手をつないだが、全国レベルの打線の勢いを止めることはできなかった。

 その裏、東川大雪は1点を返す意地を見せたものの、2-13。

 四回コールドゲーム。

 全国大会での戦いが終わった。

 全国との差は何だったのか。

 小林監督の答えは、短く、そして重かった。

「微差が大差というところです。「少し甘いコース、少し高めに浮く」などほんのわずかな差ですが、それを捉えられてしまします。今後はその微差を埋めて行く指導の徹底力が課題です」

 圧倒的に何かが違うのではない。

 ほんの少し。

 だが、その「ほんの少し」が積み重なれば、スコアには大きな差となって表れる。

 微差が大差。

 全国だからこそ知ることのできた現在地だった。

(写真・東川大雪少年野球クラブ提供)
(写真・東川大雪少年野球クラブ提供)

勝って知った自信、負けて知った自分

 第一試合、4-1。

 第二試合、2-13。

 一日の中で、全国大会で「勝つ喜び」と「負ける悔しさ」の両方を味わった。

 それでも0-6となった三回に1点を返し、さらに大量失点した四回にも1点を奪った。

 最後まで得点を奪おうとした選手たちを、小林監督はこう見ている。

「全国の舞台で、自分を知ることができた選手たちです。自分の強みも弱みも知ることができて、これからの道しるべを手に入れることができたように思います」

 勝ったからこそ分かった、自分たちにも通用するもの。

 負けたからこそ見えた、これから埋めなければならないもの。

 全国大会は、選手たちにその両方を教えてくれた。

 だからこそ、小林監督が北海道へ持ち帰ってほしいものは、悔しさだけではない。

「まだまだやれる!という自分自身への期待と、課題克服へ向けたワクワク感です」

 まだまだやれる!

 2-13というスコアを、単なる大敗で終わらせない。

 できなかったことがあるから、これからできるようになる楽しみがある。

 全国で見つけた課題は、次へ進むための「道しるべ」になった。

(写真・東川大雪少年野球クラブ提供)
(写真・東川大雪少年野球クラブ提供)

「試合中はガチンコ勝負。試合が終わったらノーサイド」

 雨で試合ができなかった。

 ホテルで待った。

 ようやく始まった全国大会で勝った。

 仲間と喜んだ。

 そして、全国の強豪に敗れた。

 悔しくて涙を流した選手もいた。

 そのすべてを経験して、東川大雪の全国大会は終わった。

 小林監督は最後に、選手たちを支えた人たちへ感謝を口にした。

「子どもたちにとって、この全国大会での経験は、何にも変えられない大きな経験となりました。

悔しくて涙を流す場面も
嬉しくて笑顔が溢れる場面も

すべて、親御さんや対戦していただける野球仲間。運営してくださる役員の方々のおかげです。

試合中はガチンコ勝負。
試合が終わったらノーサイド。みんなが「子どものために」と同じ方向を向いて走ることができたと思います。

私は口下手で、感謝を伝えることも、人を褒めることも下手くそですが、本当にみなさんのおかげと感謝しています。

また、こうして東川大雪のためにシルバーウィーク全てをこの大会に注ぐことを許してくれた妻と3人の息子たちにも感謝してます」

(写真・東川大雪少年野球クラブ提供)
(写真・東川大雪少年野球クラブ提供)

全国で手にした「次への道しるべ」

 北海道から挑んだ全国大会。

 結果は1勝1敗だった。

 だが、そこに残ったものを勝敗だけで測ることはできない。

 2日間の雨天中止にも耐えた。

 全国で1勝をつかんだ。

 4年生、5年生が躍動し、その背中を6年生が支えた。

 そして全国トップレベルの打線を相手に、「少し甘い」「少し高い」というわずかな差が、大きな結果の差につながることも知った。

 「微差が大差」

 その言葉は、敗戦を振り返るだけのものではない。

 これから埋めるべき差が見えた、ということでもある。

 自分の強みを知った。

 自分の弱みも知った。

 そして、次に進むための道しるべを手に入れた。

 雨に待たされ、勝って笑い、負けて涙した全国大会。

 東川大雪少年野球クラブが北海道へ持ち帰るものは、全国1勝という結果だけではない。

 「まだまだやれる!」

 その思いこそが、この全国大会で手にした何より大きな財産となった。

第2試合終了後、いずみスワローズと東川大雪少年野球クラブ
第2試合終了後、いずみスワローズと東川大雪少年野球クラブ

最後に

 このたびの台風により、千葉県や神奈川県をはじめ各地で大きな被害が発生しております。

被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げますとともに、お亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

被災された地域の一日も早い復旧と、皆さまに穏やかな日常が戻ることを心より願っております。

発行人・大川祐市

協力:東川大雪少年野球クラブ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA