「最後に1点多ければいい」――焦らず貫いた昭和の野球 田村芳輝が粘投、畠山海李が勝負強く2本の適時二塁打
愛媛県で開催中の「高円宮賜杯第46回 全日本学童軟式野球大会 マクドナルド・トーナメント」に北海道北代表として初出場している昭和ブルーホークス(釧路市)が8月9日、2回戦で新潟県代表・両川スポーツ少年団を8-6で破り、全国16強入りを決めた。初回に4点を先行される苦しい展開。しかし、ベンチに焦りはなかった。「まだ初回!1点ずつ返していって、最後に相手より1点多ければいい!」。荻原監督の言葉通り、二回から毎回得点。2番手・田村芳輝(6年)が粘り強く試合を立て直すと、畠山海李(6年)の2本のタイムリー二塁打などで逆転した。最後は先発の伊勢谷爽真(6年)が再びマウンドへ。0-4からひっくり返した一戦には、誰かが苦しい時は誰かが補う――初の全国舞台でたくましさを増す昭和ブルーホークスの強さが凝縮されていた。
イニングスコア
◆2回戦(8月9日、今治市営球場)
昭和ブルーホークス(北海道北)8-6両川スポーツ少年団(新潟)
昭和ブルーホークス
022121=8
410100=6
両川スポーツ少年団
(昭)伊勢谷、田村、伊勢谷−谷口
(両)笹原、山森、廣瀬、窪田−保坂
▽二塁打:田村、加藤、畠山2(昭)、芳賀、山森、笹原、保坂(両)
「まだ初回」――4点差でも揺らがなかった
いきなり突きつけられた「0-4」。
全国大会の一発勝負。しかも初回で4点を追う展開となれば、ベンチに重苦しい空気が漂っても不思議ではない。
だが、昭和ブルーホークスは違った。
先発・伊勢谷は立ち上がり、制球に苦しんだ。3四球と2安打を許して3失点で一回途中に降板。ここで荻原監督は迷わず田村をマウンドへ送った。
それは想定外の継投ではなかった。
「試合前から、伊勢谷が厳しい場合は田村に継投すると決めていました」
そして、4点を先行されても指揮官は慌てなかった。
「うちのチームの強みは攻撃力なので、初回に4点を取られたことは、私自身も子どもたちもそこまで気にしていませんでした」
選手たちへ掛けた言葉はシンプルだった。
「まだ初回!1点ずつ返していって、最後に相手より1点多ければいい!」
大量点を一気に取り返そうとしない。焦らない。いつも通り、自分たちの野球を続ける。
その言葉通り、昭和はここから一歩ずつ追い上げていった。
田村の一打から反撃開始 畠山が試合を振り出しへ
二回、一死から6番・田村がセンターオーバーの二塁打を放った。続く内野ゴロで三塁へ進むと、8番・柬理隼希(6年)の内野ゴロが相手の失策を誘い、田村が生還。さらに二死から9番・加藤勇次郎(5年)が右中間を破るタイムリー二塁打を放ち、2点を返した。
0-4から2-4へ。
反撃の空気が一気に高まる。
三回には二者連続四球を足掛かりに、5番・畠山がセンターオーバーの2点タイムリー二塁打。
4-4。
ついに試合を振り出しへ戻した。
そして四回。一死三塁から1番・北川陽大(6年)がセンターへ犠牲フライを放ち、5-4。初回の4点差をひっくり返し、ついに昭和が前へ出た。
その裏、両川も二死から連打で1点を奪い、5-5。
追いついて、追い越して、また追いつかれる。
全国舞台での一戦は、ここからさらに激しさを増した。
畠山、再び勝負強く 干野のスクイズが決勝点
勝負どころの五回、昭和打線が再び動く。
先頭の4番・谷口が四球で出塁し、バッテリーミスで二塁へ。ここで打席には、三回に同点打を放っている畠山。
再び、そのバットが火を噴いた。
センターオーバーのタイムリー二塁打。勝負強い一打で6-5と再び勝ち越した。
さらに犠打で一死三塁とすると、7番・干野健悟(6年)がスクイズを敢行。三走が生還し、7-5とリードを広げた。
結果的に、この1点が決勝点となった。
六回にも二死二塁から相手の捕手の送球ミスに乗じて二走が一気に本塁へ。8-5と突き放した。
初回は「0」だったスコアボードに、二回から「2、2、1、2、1」。
荻原監督が口にした「1点ずつ返していく」を体現するように、昭和は二回以降、最後まで得点を重ね続けた。
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田村がつないだ5イニング 再び伊勢谷へ託した最後
逆転劇を呼び込んだのは、打線だけではない。
一回途中、苦しい場面でマウンドを託された田村だった。
二回、四回と得点を許しながらも、大きく崩れない。三回、五回には三者凡退。走者を背負っても粘り、味方が追いつき、追い越すまで試合を壊さなかった。
その粘投に打線が応えた。
そして8-6と2点リードで迎えた最終六回。
二死までたどり着いたところで、荻原監督が再び動いた。
マウンドへ向かったのは――伊勢谷爽真。
一回途中でマウンドを降りた背番号1に、最後のアウトを託した。
伊勢谷は最後の打者を一塁ゴロ。
ゲームセット。
一度マウンドを譲ったエースが、最後は自ら試合を締めた。田村が粘ってつなぎ、打線がひっくり返し、伊勢谷が帰ってくる。昭和らしい全員野球でつかんだ全国2勝目だった。
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「みんなで補い合って勝っている」全国で深まる昭和の強さ
初出場で全国16強。
しかし、荻原監督がこの2試合で感じ取ったものは、単なる「2勝」という結果だけではなかった。
「組み合わせが決まった時から、子どもたちとは『長曽根ストロングスさんと試合をする!』ということを目標にしてきました」
初戦では主力が力を発揮して全国初勝利。ところが、この2回戦はその主力が思うように打てない場面もあった。
そこで前へ出たのが、ほかの選手たちだった。
「2回戦はその主力がなかなか打てない中で、他の選手たちがしっかりカバーしてくれました」
投手が苦しめば、次の投手が粘る。
主力が打てなければ、別の選手が打つ。
誰かが出塁すれば、次の打者が送り、還す。
「誰か一人が活躍するのではなく、みんなで補い合って勝っている。それが今の昭和ブルーホークスらしさだと思います」
0-4からの逆転勝利は、まさにその言葉を映し出す一戦となった。
ついに長曽根ストロングスへ 「思い切りぶつかっていく」
初めて立った全国大会で2勝。
そして次戦、昭和ブルーホークスが迎える3回戦の相手は、組み合わせが決まった時から目標としてきた名門・長曽根ストロングス。
ついに、そこまでたどり着いた。
だが荻原監督は、大一番を前にしても変わらない。
「長曽根ストロングスさんに勝つというよりも、今、自分たちにできることを一人ひとりがしっかりやって、みんなでカバーしながら思い切りぶつかっていきたいと思います!」
4点を追いかけても焦らなかった。
エースが苦しめば仲間が支えた。
主力が打てなければ、別の誰かが仕事をした。
そして最後には、全員で勝った。
「最後に相手より1点多ければいい」――。
その野球を貫いた先に待っていた、憧れの相手との一戦。
全国初出場の昭和ブルーホークスが、今度は名門に真正面から挑む。
協力:昭和ブルーホークス
